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全体会議セッション1
2004年11月19日(金)
09:50 - 12:30, 井深大記念ホール

全体会議セッション1
アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
座長:小木和孝、ローリー・カザンアレン

南アフリカにおけるアスベスト関連疾患の負担と賠償のための闘い
ソフィア・キスティング
ケープタウン大学公衆衛生・家庭医学校労働・環境衛生部[南アフリカ][不参加]
代理報告:フレッド・ゴーナ(全国鉱山労働組合議会担当オフィサー[南アフリカ]

 南アフリカにおけるアスベスト採掘は1895年に始まり、2001年まで続けられた。世界のアスベスト市場の縮小は、1978年以降の生産量減少をもたらした。全国鉱山労働組合(NUM)は、高レベルの曝露と疾患について憂慮し、多数のアスベスト鉱山における監視プログラムを監査する取り組みを組織した。
 職業と治療の履歴、胸部X線写真と肺活量などをスクリーニングした。胸部X線写真は、国際労働機関(ILO)のじん肺の標準分類を用いて読影された。肺機能検査は、米国胸部医学会(ATS)の基準にしたがって分類された。クロシドライトやアモサイト、クリソタイル鉱山の2,000人以上の労働者の記録が、8年以上かけてレビューされた。解雇された労働者における、アスベスト関連疾患(ARD)の有病率は、21〜39%(クロシドライト鉱山)、26〜36%(クリソタイル鉱山)、そして一つのアモサイト鉱山で37%の範囲に及んだ。また、運輸、建設、アスベスト・セメント、自動車、エネルギー、織物、廃棄物処理といった産業においても、労働者がアスベストに曝露した。さらに、広範囲に及ぶ環境汚染によって、地域住民もまたアスベストにさらされてきた。
 アスベストに曝露した労働者と周辺地域社会におけるアスベスト関連疾患の罹患者の割合が明らかになり、南アフリカ国民会議において、環境・観光局(DAET)が主催して、議会のアスベストサミットが開かれた(1998年)。主要な関係者全てが参加し、アスベスト(疾患の)流行に対処するための具体的な勧告がなされた。環境・観光局は、最近、議会において、アスベストの使用は禁止され、また、現時点で入手可能な代替品がない製品については、3年から5年の期間をかけて段階的に禁止されることになるだろうと発表した。
 労働組合と市民社会組織は訴訟と同様に、アパルトヘイトが残したアスベストの不正な遺産、貧困、不平等、そして病気の重荷に立ち向かうための試みにおいて、重要な役割を果たしてきた。
 今後の課題としては、アスベスト・サミットの勧告をさらに実施していくということ、アスベスト被害者への医療サービスの提供についての対応モデルを確立すること、影響を被った各個人の生活の質に関する指標(教育、技能レベル、雇用可能性、所得、社会保障、保健)を向上させること、地域社会の参加を伴った、持続可能な開発プログラム、環境回復や予防措置のための十分な資金提供と資源の配分などが含まれる。