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写真展
2004年11月19日(金) 09:30 - 18:30
2004年11月20日(土) 09:30 - 18:30
2004年11月21日(日) 09:30 - 12:30

写真展

静かな時限爆弾=アスベスト:
被災者からのメッセージ

今井明
カメラマン[日本]

 静かな時限爆弾=アスベストの災禍がいま高齢化したこの国を襲っている。中皮腫(ちゅうひしゅ)という聞き慣れないこの病名がこの国でも急増し、肺がんとともにそれが発がん物質アスベストによるものであることがようやく知られてきたのだ。不意に訪れるその宣告は、30年〜40年前の記憶の裂け目からアスベスト曝露の事実を否応もなく浮かび上がらせる。それは、高度成長時代のアスベスト消費大国日本の傷跡の深さを引摺っている。1950年〜70年代の造船、建設、その他の産業でアスベストは重宝がられて大量に消費されてきた。当時の誇り高き産業労働者も、いまは老後を迎えて我が身の老躯をねぎらう年代に達している。ところが、孫の顔見て静かに暮らすはずの老後が、いつのまにか咳と痰、息切れの絶えないじん肺症状に直面させられていることに気づく。そして、悪性中皮腫の宣告という死の不安へと駆り立てられていくのである。

 だが、それでも己が身の苦しみの由縁を知るものは、アスベスト被害のない社会のために再び立ち上がり、笑顔さえ見せるのであろうか。その時、そのヒトの写真は仕事の誇り、家族の絆、人生の苦楽を肖像画のように伝えるものになっているのかもしれない。 アスベストがわが国で「原則」使用禁止になっても、写真による被災者からのメッセージは語りかけることをやめない。なぜなら、その笑顔に託されたメッセージは全世界からアスベストの災禍がなくなるまで鳴り止まない天上からのメッセージのようでもあるからだ。アジアやアフリカからの写真も展示して開催される2004年世界アスベスト東京会議写真展を是非そのような意味での全世界へ向けた写真によるノーモア・アスベストのメッセージとしたい。