■欠陥住宅の訴訟期間
もしもあなたが購入もしくは注文した住宅が欠陥住宅だった場合に、相手方を裁判所に訴える民事訴訟手続きを行うとするならば、どの程度持間がかかるか、という点を述べる。一般に裁判は時間がかかると言われているが、貸金訴訟や離婚訴訟という通常の事件では、訴訟期間の平均は約10カ月である。ただ、その中には被告が裁判所に出頭しないので欠席判決により終了するものも含まれている。
そこで、現実に被告が裁判に出席し、証人尋問まで行った案件で平均を取ると訴訟期間の平均は約22カ月となる(1998年度の数字)。一般の訴訟ですら約2年間もかかっているのだから決して迅速とは言えない。ただ、これが欠陥住宅訴訟に限ってみるとどうなるだろうか。
大阪地方裁判所が、99年5月から約杓1年間の間に終了した欠陥住宅訴訟43件を調べた結果、その平均審理期間は30カ月(2年半)であり、また、まだ終了していない事件を調べると証人尋問までに既に40カ月(約3年半)かかっているという(
判例タイムスNo.1029より)。
この傾向は大阪だけでなく東京地方裁判所でも同じで、99年3月から約1年の間に終了した欠陥住宅訴訟92件を調べた結
果、その平均審理期間は31・5カ月(約2年半)であり、途中で和解によって終わらず、判決まで至ったもののみをとると45・8カ月(約4年)かかっているという(判例時報No.1710)。
このように時間がかかってしまう原因は、建築という専門分野が関係するため、裁判官がリーダーシップをとって争点を整理したり、自信を持って判断できないからだといわれている。現在、裁判所においても建築訴訟にかかる時間を何とか短くしようとして努力している最中であるが、当面はやはり約3年程度は時間がかかってしまうのを覚悟しなければならないのが現状である。なお絶望的なのはこれが第1審に要する期間であって、控訴したり、されたりすれば、更に1年程度かかるという事実である。
したがって、あなたは控訴審まで入れて平均で約4年間は欠陥住宅訴訟を続ける覚悟がなければならない。
■欠陥住宅の訴訟費用
次にあなたが購入もしくは注文した住宅が欠陥住宅だった場合に、相手方を裁判所に訴える民事訴訟手続きを行うとするならば、どの程度費用がかかるか、という点を述べる。
民事訴訟を提起するのに必要な主な費用としては、@印紙代A弁護士費用B欠陥調査費用−がある。
さらに、C訴訟中に「裁判所による鑑定」の費用が必要となる場合もしばしばある。
印紙代や弁護士費用はあなたが裁判の内容や求める「金額」による。建売住宅の価格として4000万円程度を念頭に置くとする。@裁判所に納める印紙代は17万7600円A弁護士に支払う着手金は189万円(日弁浬報酬規定標準額)― となる。
さらに、B訴訟提起前に建築士に欠陥調査報告蓄を作成してもらうのが一般的であるが、この費用はだいたい50万ち100万円程度はかかってしまう。もちろん調査内容により襟雑な構造計算や地磐のボーリングその他の試験を行うと更に高くなることもある。
C裁判所による鑑定の費用は、Bと同じく鑑定する事項や行う試験内容によるがおおむね50万円与100万円のあたりが多い。
以上を合計すると裁判の勝ち負けにかかわらず訴訟を起こす時点で、あなたは最低でも300万円程度の出責を覚悟しなければならない。裁判で勝訴すれば上記費用はほぼ相手方から損害として回収できるとしても裁判が決着するには前回述べたとおり3年与4年は覚悟しなくてはならない。
税金が優遇されることもあって、ほとんどの場合にあなたは住宅ローンを組んでいるだろうから、毎月の出費に加えてこれらの費用を負担しなければならないことになる。
さらに最悪なのが、あなたが仮に裁判で勝訴したとしても、相手方工務店が倒産してしまっていれば、判決で認められた損害賠償金額を現実に取得することができないうえに、訴訟にあたりあなたが出費した費用さえ回収できないということになる(医師賠償保険や交通事故任意保険がある程度整備されている医繚過誤訴訟や交通事故訴訟とは全く違うのである)。
■欠陥住宅を購入・建設しないために
以上で、あなたが欠陥住宅に関する民事裁判をおこそうとした場合、訴訟で解決するには3年から4年もの時間がかかり、また、300万円程度の出費が必要であって、さらに、被告工務店が倒産していた場合には裁判で勝訴しても結居お金が回仮できない場合すらある、という点がわかっていただけたと思う。
私は、欠陥住宅訴訟に携わる弁護士として、この3年ほどで20例ほどの案件を扱った。一番つらいのは相談者や依頼者から、「先生は、結局、泣き寝入りをしろというのですか」と言われることである。
現在の法律の枠組みでは、欠陥住宅をつかんでしまった場合、有効な救済手段が乏しいことは率直に認めざるを得ない。とするならば、分譲住宅を購入したり、住宅建設請負契約の注文者となる場合、欠陥住宅を購入しない、あるいは欠陥住宅を造らせないことが、最も大事であるという単純な事実に行き着く。
分譲住宅を購入する前に専門的知識を有する建築士にその分譲住宅の現地まで同行してもらい、アドバイスを得ることだけでも相当数の被害は回避できるのである。例えば、工事完了検査を受けているか、接道の状況はどうか、建物の壁量に問題はないか、防・耐火構造に問題はないか、など建築士が現地を見るだけで指摘できる問題点はたくさんある。もちろん完成して隠れてしまった部分までは無理としても、全く業者任せで購入することに比べれば安全であることは言うまでもない。
請負契約を締結し建物建設を注文する場合でも、設計図どおりに建物が施工されているか「監理」をすることで、極端な手抜き工事は防止できる。また、完成すれば隠れてしまう部分(筋交いなど)のチェックもできる点は大きい。
信頼できる建築士に「設計」と「監理」を依頼すれば、より安全で快適な建物になるだろう。
問題は、設計・監理は別としても、分譲住宅購入に同行したり、「監理」のみを行ってくれる建築士を一般市民が探しても、今までは、その窓口にすら行き当たらないという状況だったことである。
住宅インスペクター神戸ネットは、この欠陥住宅の予防に関する業務、言い換えれば健全な住宅を生産させるための業務を行うことを設立の趣旨としている。一生に一度の買い物であるだけに、大いに利用してもらいたいと考えている。
住宅インスペクター神戸ネットの問い合わせは(神戸市中央区二宮町4丁目6の15 電話078-272-940O)まで。
(おわり)