ゴア・スクリーミング・ショウ | BlackCyc / 2006年 |
この世の50.78%は怒りでできています。 残りの44.2%は憎しみでできていて、さらにその残り4.493%は糞尿です。 そしてさらに、0.246%が反吐、0.182%が空腹でできています。 直訳すると、流血の、絶叫するようなショウ。 意訳すると恐怖映画かな。 同じ様なモチーフの映画を見たような気がするけど、タイトルがさっぱり思い出せない。タイトルだけなら『気狂いピエロ』なのだけれど、内容は全然違う。ピエロ風の怪人が子供を攫う話で、一時期マクドナルドが怖かったのを良く憶えている。まあ、笑顔でも目が笑っていないドナルドは今だって薄気味が悪いけど(追記。モチーフは『IT』でした)。 復讐と贖罪の話なのかなぁ。 まあ、BlackCycらしい陵辱シーンとグロテスクなシーンは多々あるけれど、表現したいところは良く判る。 しかし上手いよね。見事なまでの表現力。 システム周りは問題なし。ちょっとショートカットの弱さが気にはなるけど、許容範囲。 原画も気にならず。まあ、今まで原画なんて気にした事もなかったけど。 テキストは誤植の多さが気にはなるのだけれど、及第点。ライターがメタルが好きだってことは良く判ったけど、あの程度でメタル語られたら困るな。 シナリオは、世界観の構築も含めて見事。 音楽も良かった。毎度のことながら、主題歌のヴォーカルが非常に残念だけど。電気式華憐音楽集団は(いつものことだけど)、シンガーのパワー不足と不安定さが甚だしい。露骨な打ち込みっぽさには目を瞑れても、そこだけは許容出来ない。あれはメタルじゃない。メタル風J-POPだ。 (エロゲの主題歌にどんだけ本気でケチ付けてんだよ、大人気ねえなぁと言われてもこれだけは譲れない。きっとライターさんだって同じことを思ってるはずだ。エロゲ界にメタルっぽい曲は数あれど、本気でメタルと言って許されるのはNitro+位なもんだ) 以下、個別。 ・一柳あかね 正義感の強い幼馴染。けれど、彼女の正義感は、被保護者への優越感と紙一重だった。その辺りは葵ルートで山程出て来るので割愛。 まー、正義感の強いこの年代の子供ってこんなもんでしょう。まだ視野が狭いからね、自分が間違ったとは思えないんだよ。それは仕方のない事で、何度も失敗して学んでいけば済むことなのさ。 大事なのは、過ちに気が付いた時、謝ることが出来るかどうか。ただ、それだけ。 エンディングリストは以下。 Good End『春は来る』: 失ったものも、恐怖も、二人で乗り越えたと。 まあ、いいんじゃないですかねぇ、どうでも。 Bad End『誤った判断』: 実にBlackCycらしい。あまりにらしくて泣けてくる。 どうしてくれるんだ。プレイ中は食事してたんだぞ。 Bad End『黒い幸福』: なんだか心底どうでも良いっつーか。二人の世界でどうぞごゆっくり。 ・双木葵 コンプレックスに凝り固まった自分が何より嫌いな少女。だからこそ、強者として親しくしてくる一柳あかねが大嫌い。 なんだか共感出来るなぁ。デスメタルが好きと言うのも素晴らしい。 コンプレックスを乗り越えたエンディングは見事でした。 エンディングリストは以下。 Good End『逃避からの帰還』: タイトル通り。 コンプレックスに駆られて現実から逃げ出し、それでも最後はコンプレックスに打ち勝った。 ま、その間に色々合ったにせよ良いエンディングでした。 Bad End『鏡の国の葵』: 実にBlackCycらしい。あまりにらしくて以下略。 Bad End『ラストコール』: 似たエンディングを『MinDeaD BlooD』で見たぞ。確か江梨衣イベントだったか。 いくら江梨衣をゲストキャラとして出してるからと言って、エンディングまで似せるのは手抜きじゃなかろうか。 心底どうでも良いけど、ドリルを使うギタリストはポール・ギルバートね。 ・深園希衣佳 異常性欲の持主と自分で思い込んでる少女。これって絶対強迫観念でさ、年齢を考えると別におかしいこっちゃないと思うのよね。 全般的にユカの、恭司への歪んだ愛情が感じられるルート。あかね・葵とプレーして来て、希衣佳まで来ると段々ユカが憎めなくなって来るんだよね。狂気の合間に、少しずつ見せる弱さが曲者だ。 しかし、このブランドはこの手の美少女(ハーフ、金髪、お嬢様)に恨みでもあんのか? 毎回この手のキャラが惨いことになってる気がするんだけど。 エンディングリストは以下。 Good End『海の向こう』: ある意味、真理をついたシナリオだった。 「俺は希衣佳と幸せになるんだ。お前のことになんて囚われていられない」との台詞は実に至言。全く持ってその通り。優先順位を間違えてはいけない。 でもね、このエンディングのユカの顔が可哀相過ぎてちょっと心が痛むんだ。 Bad End『復讐者のレクイエム』: 救いようのないエンディング。 感じられるのは、ユカの、恭司への歪んだ愛情と、早由海(と早由海にそっくりな希衣佳)への憎悪。 恭司への愛情があどけないだけに恐ろしい。 Bad End『悪夢の果て』: 復讐者のレクイエムのバリエーション。 印象は全く同じ。愛憎が強烈で泣けてくる。 ・さいたま闇子 軽いキャラクターにぼかされがちだけど、非常に大事なルート。 子供の頃の残虐さと、その贖罪の物語。 ここまで来ると、ユカが全く憎めなくなってしまって困る。 どうでもいいけど、九重真白が怖くて怖くて。病院がトラウマになりそうだ。 エンディングリストは以下。 Good End『青春の日の想い出』: リストつうても、シナリオ一本しかないんだもんなー。 まあ、エステにでも通って頑張って下さいと。 ・音無紫 復讐と贖罪の物語。 強烈なゴアのキャラクターと、グロテスクさに誤魔化されるけれど、全ての記号を取っ払ってしまえば、そこに残るのはあくまで復讐と贖罪、それに純愛でしかない。 ・九条真白 怖い、怖いよこの人。登場キャラの中で一番怖い。 言いたいことは良く判ったから、ネタバレ的な蛇足は勘弁して欲しい。 総括を。 何度も繰り返すけれど、復讐と贖罪の物語。 幼い日に受けた虐めの結果得てしまった変貌への復讐、復讐に対する復讐、そして因果を断ち切る為の贖罪。それに尽きる。 まあ、最終的には全て“純愛”の一言で片付いてしまう辺りもなんだけど、モチーフとしては非常に良かった。 世界の全てを憎んだ少女が、偶然一度出逢っただけの少年に恋をした。そんな話があっても良いじゃないか。 ● おまけ 夏の孤島の闇の声 / 2006年 ★★☆☆☆ 文字通りおまけだけあって、馬鹿馬鹿しすぎる(笑) 言えるのは、葵は本当にあかねが嫌いなんだなってことだけだ。 |