殻の中の小鳥 / 雛鳥の囀 STUDiO B-ROOM / 1996年、1997年
 疲れた身体を寝台へと放り出す。
 今日、何があったかを考える前に眠りにつく。



 ちなみに、私がプレイしたのは、1999年にWin版としてリメイクされた『雛鳥の囀with殻の中の小鳥』です。
 オリジナルはDOS版。
 しかし、リメイクでも1999年ってのは凄いね。

 それはさておき。
 システムは当然古臭く、ともすれば作業となってしまうほど。
 重厚なテキストは素晴らしいが、シナリオ自体はそれほど目に付くものではない。
 だが、歴史的名作だ。

 何故なら、この作品こそが日本に於けるメイドブームの嚆矢であるからだ。
 無論、功績ではなく罪も多い。後述するが、歴史的には在り得ない描写も多々見られるし、彼の作品の影響でメイドに対する誤解が広まったとも言える。
 それでも、日本のサブカルチャーグラウンドに一大ブームを巻き起こした功績は大きい。


 以下、余談だが彼の作品の罪の方だ。
 最大の問題は、メイド=エロ=家庭内売春婦的な連想を齎した根源であると言うこと。
 メイド(メイドサーヴァント)は、無論職域にもよるにせよ、基本的には家政婦に過ぎない。日本で言えば市原悦子だ。
 主人の愛人になっていた例が無かったと断言することは出来ないが、家庭内売春婦乃至は私娼であることは無いと断言出来る。

 また、足を出したメイド服や白いメイド服も在り得ない
 ヴィクトリア朝期のイングランドでは女性が足を見せることは非常に下劣な行為とされていた。何せピアノの脚すら人目につかないようにと布で覆われていたほどだ。
 故に、メイド服のスカートはロングスカートに限られる。
 『殻の中の小鳥』、乃至は『雛鳥の囀』にて見られる、脚を露出したメイドはフレンチメイドと呼ばれた。フレンチとは、つまり「下品な、下劣な、性的な」と言った意味だ。
 彼の作品内に登場するメイド達は事実上私娼である。故に、脚を露出する。
 だが、現在の日本にはミニスカートのメイド服を来た人間など山程いる。アンダーグラウンドで散見するメイドなど殆どがそうだ。
 当然そっちの方が可愛いからと言う理由だろうが、メイド服の露出自体が『殻の中の小鳥』、乃至は『雛鳥の囀』のコスプレから始った事を考えると中々罪の深い事だなと思う。

 私の大学での専攻はフランス中世史だったので、詳しくは知らないのだけれど。
 詳細は、震空館を参照願いたい。
 非常に興味深いサイトだ。これこそがアンダーグラウンドを起点とした社会史学だと断言出来る。