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対策情報 アスベスト対策情報

●アスベスト対策情報 No.34


(2005年6月1日発行)



2004年世界アスベスト東京会議
(GAC2004)

東京宣言




世界の40余の国と地域から、2004年11月19日から21日まで2004年世界アスベスト東京会議(GAC2004)に集まった参加者は、立証された発がん物質であるアスベストのすべての種類による破壊的な健康への影響に鑑み、各国の政府、団体、グループと人びとに対して、次のようなアピールを発する。アスベスト・リスクを根絶するための国際的なイニシアティブを強調しつつ、参加者はさらにそれらを強固なものにするために緊急な行動を起こしていくことに同意する。
@禁止:
 すべての国が、アスベストの採掘、使用、貿易、再利用の禁止を採用すべきである。確立された規則と手順に従って、アスベストの安全な除去と廃棄が行われなければならない。
A労働者及び一般の人々の保護:
 アスベスト含有製品に曝露する可能性のある労働者および一般の人びとは、それらの人々自身が積極的に参加して開発された適切なリスク・マネジメント手段によって保護されなければならない。環境的に損傷を受けた地域の回復も、優先して取り組まれなければならない。
B代替品:
 より有害性が少く、かつ実用可能であることに十分配慮しながら、アスベストの代替品が使用されるべきである。
C情報交換:
 国際機関、関連団体と関心をもつ人々との共同作業によって、すぐに利用できる情報資料を開発し、普及すべきである。注意を喚起するキャンペーンが、継続的かつ組織的に取り組まれなければならない。
D公正移行及び開発途上国への移転の防止:
 アスベストの禁止によって影響を受ける労働者および地域社会のための公正な移行と社会的保護を確実にするために、あらゆる努力がなされるべきである。産業開発の進行中の諸国に対する、アスベスト生産とアスベスト製品および廃棄物の移転を、共同の努力によって、阻止しなければならない。
E補償及び治療:
 アスベスト被災者およびその家族が、速やかに治療を受け、正当な補償が受けられるようにしなければならない。地域でのキャンペーンに参加し、また直接に行動を起こすことを通じた、被災者とその家族のエンパワーメントに、高い優先順位が与えられるべきである。
F人々の協力:
 国際的な協力が不可欠である! 被災者、労働者、一般の人びと、政策立案者、専門家、弁護士、労働組合、草の根団体、関連機関および関心をもつ人びとの積極的な参加が求められている。この協力により成果のあがった経験は、既存のおよび革新的なネットワークを通じて共有されるべきである。
 地球上のすべての人々のためのアスベストのない環境に向けた、国際的行動を持続していくためには、上記のすべての分野における進展状況を、継続的かつ世界的にモニターしていくことがきわめて重要である。未来のためにともに行動することによって、私たちは変化を起こすことができるし、変化を起こさなければならず、そして変化を起こしていくと決意する。


2004年世界アスベスト東京会議
(GAC2004)

国際建設労働組合組織
の共同宣言



 国際建設木産労働組合連盟(IFBWW)、国際建設労働者連合(WFBW)、建築木材建築資材労働組合インターナショナル(UITBB)は、建設産業、そして全ての他の産業部門からの、すべての種類のアスベストの世界的な禁止を積極的に促進し、また、解体、改造、修繕およびメインテナンス作業におけるその場のアスベストに関わる作業の実効性のある規制を促進するために最大の努力を払っている。
・クリソタイルを含む、すべての種類のアスベストは、国際がん研究機関(IPCS)および国際化学物質安全性計画(IPCS)によって、既知の人間に対する発がん物質に分類されていること
・クリソタイル・アスベストの90%が、アスベスト・セメント製品に使用されていること
・毎年、10万人の労働者が、アスベスト曝露に起因する疾病によって死亡していること
・多くの国でアスベストおよびアスベスト含有製品の製造および使用の包括的な禁止が採用されるまでに、長期間にわたる努力と適切な代替品の出現に30年間を要したこと。また、これらの諸国は現在、解体、改造、修繕およびメインテナンス作業中に、厳格に管理された作業条件のもとで、その場のアスベストを取り扱うことしか認めていないこと
 以上に鑑み
IFBWW、UITBBおよびWFBWは、すべての国の政府および社会パートナーに対して、以下のことを求める。
・可能な限り速やかに、すべての種類のアスベストおよびアスベスト含有製品の採掘、製造、使用および再利用を禁止する迅速な措置をとること
・経済循環からアスベストおよびアスベスト含有製品を根絶し、また、アスベストをより有害でない製品に代替することを目的としたあらゆる手段を実行に移し、また支持すること.
・アスベスト曝露からの労働者の防護を優先課題とすること
・アスベストの使用における安全に関するILO第162号条約(1986年)を批准、実行し、また、付属の第172号勧告の諸条項を、それを下回ってはならない最低基準として実行すること
・アスベスト関連疾患の被災者に対する適切な補償を確保すること

 IFBWW、UITBBおよびWFBWは、また、国際労働機関(ILO)に対して、以下のことを求める。
・すべての種類のアスベストおよびアスベスト含有製品の使用の根絶を支持する、明確な衛生の観点に基づいた立場をとること
・加盟国に対して、アスベストの使用における安全に関するILO第162号条約(1986年)を批准、実行し、また、付属の第172号勧告の諸条項を、それを下回ってはならない最低基準として実行するよう、促進し続けること
・加盟国に対して、第162号条約が、アスベストの使用の継続の正当性あるいは裏打ちを与えるものではないということを明らかにする、明示的な見解を示すこと
・すべての加盟国において、すべての種類のアスベストおよびアスベスト含有製品の使用の根絶を促進する決断をすること
・労働環境および社会環境において、アスベストを管理、規制し、根絶するための国の行動計画を策定することによって、加盟国を支援すること

パブリックコメント・提出意見


労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案に対する意見

2003年5月 石綿対策全国連絡会議



 「製造、輸入、使用等が禁止される物として、石綿を含有する製品のうち、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、石綿セメント円筒、断熱材用接着剤、ブレーキ及びクラッチに使用される摩擦材を追加するものとすること。」という「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案概要」に対する意見

1. 7種類の製品についてのみの禁止とするのではなく、使用等が許される製品を除き、原則全面禁止とすること。
 今回の提案は、昨年12月12日に結果が公表された「石綿及び同含有製品の代替化等の調査」等により、現在なお石綿含有製品が存在している10種類の製品(建材5製品、非建材5製品)について、代替が困難な石綿製品の範囲を絞り込み、今後の非石綿製品への代替可能性等を検討した「石綿の代替化等検討委員会報告書」(4月4日公表)において、7種類の製品について「代替化は可能」とされたことを踏まえてなされたものと考えられる。
 一方で、今回の提案に至る検討が、「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないものを除き、原則として、使用等を禁止する方向」で進められたことは、厚生労働省自身によって表明されている。したがって、提案の本来の趣旨も、7種類の製品についてのみの禁止ではなく、現に石綿含有製品が存在しているもののうち、完全に「代替化は可能」とされなかった3種類の製品を除き、すべての石綿含有製品の使用等を禁止するということにあるものと理解されるところである。
 しかし、残念ながら、提案は、この本来の趣旨を反映するという意味では、不十分である。
 今回の調査・検討からもれているかもしれない現存の石綿含有製品、過去に存在しすでに代替化等がなされている3,000種以上の石綿含有製品、石綿その物(原綿・バルク)、及び今後新たに登場するかもしれない石綿含有製品の使用等を確実に禁止するために、使用等が許される製品を除き、原則全面禁止とすべきである。
2. 今回の調査・検討からもれているかもしれない現存の石綿含有製品の使用等を禁止すること。
 今回の提案に至る調査・検討によって、現在なお存在している石綿含有製品は網羅されているものと信じたい。それでも、今回検討された10種類の製品以外に、調査・検討の対象からもれた石綿含有製品はあるかもしれない。しかし、仮にあったとしても、それが「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないもの」とは、到底考え難いから、そのような石綿含有製品が仮に存在していたとしても、「野放し」にされることがないように、それらの石綿含有製品の禁止を確保すべきである。
 念には念を入れるということであれば、今回調査・検討の対象とされた10種類の石綿含有製品以外に、現在なお使用等しなければならない石綿含有製品が存在する可能性があるのであれば、「石綿製品の使用がやむを得ない」とする科学的根拠等を示して、意見の提出を求めるというプロセスを、パブリック・コメント手続等によって実施すればよいものと考えられる。
3. 過去に存在しすでに代替化等がなされている3,000種以上の石綿含有製品の使用等を禁止すること。
 石綿は、「工業原料として広範多岐に使用され、その製品は生活のすみずみにまで及んでいるといって過言ではない。製品の種類は少なくとも3,000以上あった」と言われている(環境庁「建築物解体等に係るアスベスト飛散防止対策マニュアル」)。
過去に現実に存在したが、すでに代替化等がなされたことによって存在しなくなった石綿含有製品の種類が「少なくとも3,000以上」あったと考えられる。これらの製品については、現に代替化等が可能であったこと、現時点で使用等する必要性がないものと考えられるから、これらの石綿含有製品の使用等を禁止すべきである。
4. 石綿その物(原綿・バルク)の使用等を禁止すること。
 特定の石綿含有製品の使用等のみの禁止ということだと、石綿その物(原綿・バルク)を輸入すること自体はまったく規制を受けないことになる。こうして輸入された石綿は、使用等を禁止されていない石綿含有製品を製造するために使用等されるばかりではなく、石綿その物(原綿・バルク)のかたちで使用等される可能性がある。現実に、産業廃棄物処理場で、原綿をいずこかから入手して、重金属等の吸着剤として使われている例があるなどとも伝えられている。
 石綿その物(原綿・バルク)のかたちでの使用が、石綿繊維の飛散性がきわめて高く、人間・環境への有害性も大きいことは自明である。ましてや、「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないもの」とは到底考えられないことから、石綿その物(原綿・バルク)のかたちでの使用等を禁止すべきである。
5. 今後新たに登場するかもしれない石綿含有製品の使用等を禁止すること。
 過去及び現在存在したことのない製品用途において石綿含有製品を使用等することは、「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないもの」とは、到底考え難い。
 「石綿の代替化等検討委員会報告書」でもふれられているように、アメリカは、現時点においては、今なお一定の製品用途への石綿の使用等を許容しているが、わざわざ「新たな用途への使用」を禁止することを規定している。現在存在していない製品用途に、石綿が使用等されることはないだろうと楽観視することは危険である。
6. 吹き付け石綿を全面的に禁止すること。
 吹き付け石綿は、諸外国においても禁止の最優先対象であり、また、わが国においても、飛散性の高い、より有害なものとして、労働安全衛生法令以外の大気汚染防止法、廃棄物処理法等の他の法令によっても、既存の吹き付け石綿への対処に関して、規制されているところである。
 労働安全衛生法令では、特定化学物質等障害予防規則第38条の7によって、吹き付け石綿(アモサイト及びクロシドライトを除く)は「原則禁止」されていることになっている。しかし、同条自体は、作業場所の隔離と個人保護具・衣の使用等の措置を講じた場合のほか、石綿吹き付け作業に労働者を従事させてはならない、と規定しているもので、条文上は、措置を講じれば現在もなお可能である。
 これは、1975年当時、「石綿等の吹き付けによらなければ建築基準法に基づく鉄骨等の耐熱性能を確保することができない」場合があったことによると説明され、現実には、関連業界によると、吹き付け石綿は1975年以降、石綿含有吹き付けロックウールも1980年以降は、使用されていないことになっている。
 「現実には使用されていない」ことは、業界以外の第三者によって公正に確認された情報ではないことは別にしても、法令上、製品としての吹き付け石綿等の使用等も、石綿を吹き付ける作業も、「禁止」はされておらず、その状態は、今回の提案によっても解消されない。
 吹き付け石綿も禁止しないで、「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないものを除き、原則として、使用等を禁止」したとは到底言えないのではなかろうか。吹き付け石綿を全面的に禁止すべきである。
7. 石綿含有建材の使用等を全面禁止すること。
 「石綿はその9割以上が建材製品に使用され」(石綿の代替化等検討委員会報告書)ているだけでなく、現在及び今後、アスベスト関連疾患のリスクが最も高くなると考えられる集団が建設労働者であること、労働者だけでなく住民・環境にも大きな影響を及ぼすものであることから、石綿含有建材の使用等を禁止することは重要である。
 今回の提案は、5種類の製品の石綿含有建材がなお存在していることが確認され、5種類すべてについて石綿含有製品の使用等を禁止するという趣旨であると理解している。
 また、「石綿の代替化等検討委員会報告書」が、第4部「石綿含有建材の代替可能性について」のなかで、5種類の石綿含有製品の個々について検討した後に、あらためて「6. 石綿含有建材の代替可能性について」という項目を立てて、「石綿を含有する建材製品の使用は安全確保等の点から不可欠なものではなく、かつ、技術的に非石綿製品への代替化が可能であると考えられる」と総括していることは、5種類の製品のみに限定せずに、すべての石綿含有建材の「代替化は可能」と判断しているものと読むことができる。
 しかし、既述の意見と同様に、過去に存在しすでに代替化等がなされている石綿含有建材、今後新たに登場するかもしれない石綿含有建材製品、及び、例えば原綿を直接吹き付けたり、建設関連の塗料等に混入して使用する等、石綿その物(原綿・バルク)の使用等を確実に禁止するために、石綿含有建材の使用等を全面禁止すべきである。
8.「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」以外の非建材の石綿含有製品の使用等を禁止すること。
 提案に至る調査・検討のなかで存在が確認され、なおかつ完全に「代替化は可能」とされなかった製品の種類は、「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」の2製品のみである。
 したがって、既述の意見と同様に、「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」以外の非建材の石綿含有製品の使用等を禁止すべきである。
9. 「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」について、温度・圧力・使用有害物等の「使用限界」及び/または原子力発電所内の特定用途等の「使用される機器の種類等」から「代替困難」の要件を特定等することによって、使用等が認められる石綿含有製品の範囲を絞り込み、それ以外の石綿含有製品の使用等を禁止するとともに、使用等が認められる石綿含有製品については、その期間を限定すること。
 「石綿の代替化等検討委員会報告書」は、「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」の2種類の製品について、「代替化が可能なものがあると考えられるが、一部のものについては、安全確保の観点から石綿の使用が必要とされており、現時点で代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である」、と結論づけた。
 これは、「代替が困難な石綿製品の範囲を絞り込む」という同委員会に与えられた本来の任務に照らして、まったく不本意な結果と言わざるを得ない。
 同報告書によっても、「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」という同じ製品範疇の製品であっても、「代替化は可能」な製品がかなり存在していることは確認されているのであるから、「代替化は可能」な石綿含有「耐熱・電気絶縁板」、石綿含有「ジョイントシート・シール材」は禁止すべきである。
 同報告書では、本文中で、「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」については、一定の範囲について、イギリスあるいはフランスにおいても「施行時期を猶予された」旨の指摘もみられる。しかし、同報告書資料4「海外の石綿の使用禁止措置の比較」をみてもわかるように、フランスではいずれの猶予措置も2002年1月1日までには廃止され、イギリスでも2005年1月1日までには廃止されることになっている。
 EU(欧州連合)では、例外は、実質的に「既存の電解設備用のダイアフラム(耐用年数終了又は適当な代替物が入手できるまで)」のただひとつのみであるが、これも2008年1月1日までに行われる見直し措置によって、例外が廃止されることが見込まれている。業界関係者によると、日本においては、電解設備用のダイアフラムについては、非石綿製品に代替化済みとのことであるから、この点は問題にならない。
 既存の特定の用途を指定してアスベストの使用を容認しているアメリカでも、つい先ごろ、環境保護庁が委託した調査報告書が、アスベストの全面禁止を勧告している。
 EUやアメリカ等で「代替化は可能」とされているにもかかわらず、日本でだけ、代替化ができない石綿含有製品が存在するということの合理的な説明が十分になされているとは到底言い難い。
 仮に「耐熱・電気絶縁板」、「ジョイントシート・シール材」について、例外―猶予措置を設けるとしても、合理的に説明される「使用限界」及び/または「使用される機器の種類」等を特定等することによって、使用等が認められる石綿含有製品の範囲を絞り込み、それ以外の石綿含有製品の使用等を禁止するとともに、使用等が認められる石綿含有製品については、その期間を限定すべきである。
10. 「石綿布、石綿糸等」について、意見9による要件を満たす「シール材として使用されるか、二次的にシール材等に加工される」石綿含有製品に限定して、それ以外の石綿含有製品の使用等を禁止するとともに、使用等が認められる石綿含有製品については、その期間を限定すること。
 「石綿の代替化等検討委員会報告書」は、「石綿布、石綿糸等」について、「それら製品がシール材として使用されるか、二次的にシール材等に加工されることから、シール材等の代替可能性に連動すると考えられる」、と結論づけた。
 しかし、「石綿布、石綿糸等」は、仮に現時点における主要な用途がそのようなものであったとしても、およそあらゆる用途に使用できるものであり、現実に過去及び現在も使用されているのが実態である。
 また、貿易統計によると、その90%以上が中国、韓国等のアジア諸国から輸入され、決して減少傾向にあるとは言えず、増加傾向を示す場合すらある。それら諸国の生産企業が、今後の日本への輸出の増加を期待し、見込んでいるという話もおりにふれて伝わっており、また、用途がシール材のみに集中しているという実態と言えるのかどうかも定かではない。
 「石綿布、石綿糸等」も、石綿繊維の飛散性、それゆえに有害性の高い製品であり、また、ほとんどの用途は「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないもの」には該当しない。したがって、仮に例外―猶予措置を認めるとしても、より一層要件等を限定する必要がある。
 「石綿布、石綿糸等」について、9による要件を満たす「シール材として使用されるか、二次的にシール材等に加工される」石綿含有製品に限定して、それ以外の石綿含有製品の使用等を禁止するとともに、使用等が認められる石綿含有製品については、その期間を限定すべきである。
11. 禁止は、すべての「石綿」を対象とすることとし、現行労働安全衛生法施行令第16条第1項の第4号「アモサイト」と第5号「クロシドライト」を統合して、新たに「石綿」と規定すること。
 今回の提案は、労働安全衛生法第55条の製造、輸入、使用等の禁止条項を適用する「物」の範囲を定める、労働安全衛生法施行令第16条第1項を改正することを予定しているものと考える。すでに同項の第4号でアモサイト(茶石綿)、第5号でクロシドライト(青石綿)が規定されているところである。
 したがって、条文上は現在使用等が禁止されていないのは「石綿(アモサイト及びクロシドライトを除く)」ということになるが、他方で、現在、実際に輸入・流通等している「石綿」はクリソタイル(白石綿)のみであるともされているところである。
 しかし、石綿の種類としては、アモサイト、クロシドライト、クリソタイル以外にも、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライト等がある。したがって、具体的な条文化にあたっては、クリソタイルのみに限定して追加するのではなく、すべての種類の「石綿」として規定すべきである。
 提案が「クリソタイル」ではなく「石綿」という語を用いているのは、同じ趣旨であると理解してはいるが、念を押す次第である。
 具体的には、「第4号及び第5号を除く一定の石綿製品」等といった新たな項を加えて対処するのではなく、第4号「アモサイト」と第5号「クロシドライト」を統合して、新たに「石綿」と規定したうえで、意見1〜10に述べた趣旨の例外―猶予措置を規定するようにすべきである。
12. 0.1%を超えて含有する製品を禁止の対象とすることとし、現行労働安全衛生法施行令第16条第1項第10号もそのように改正すること。
 また、同項の第10号は、「第2号から第8号までに掲げる物をその重量の1%を超えて含有する製剤その他の物」と規定している。
 今回の提案にある「石綿含有製品」も、「石綿をその重量の1%を超えて含有する製剤その他の物」のことを意図しているものと考える。
 しかし、これは、含有率1%以下の石綿含有製品の使用等を認めることになるという一般的意味以上に、問題がある。なぜなら、環境省と経済産業省、それに厚生労働省自身も一部を所掌する化学物質管理促進法では、石綿を含めた発がん性の化学物質に対しては、対象化学物質を0.1質量%以上含有する製品を規制の対象としていることとの、明らかな齟齬が生じるからである。化学物質管理促進法は、PRTR(有害化学物質排出・移動登録)及びMSDS(化学物質等安全データシート)という2つの化学物質管理手段を提供しているが、いずれも対象製品の要件は、発がん物質については「0.1質量%以上含有」である。
 一方、労働安全衛生法第57条でも、MSDS(化学物質等安全データシート)について規定しているが、こちらの対象製品の要件は、「使用等の禁止」の場合と同様、「1重量%超含有」である。石綿は、2つの法律によるMSDSのどちらの対象にも含まれている。
 労働安全衛生法令の「1重量%超含有」という要件は、これまで、1%以下であれば積極的に規制の対象から外すという趣旨ではなく、対象化学物質が含まれているかどうかを検出することのできる限界値という意味である、と説明されてきたのではないかと理解しているところである。
 そのような趣旨であるとすれば、石綿に限らず、発がん物質については、化学物質管理促進法に合わせて、「0.1%以上含有」するものを含有製品として取り扱うようにすべきである。
 ちなみにイギリスの労働組合会議(TUC)が求めている「最低制限レベル」は0.05%である。
 労働安全衛生法令の枠組みのなかでだけ「禁止」されたと言っても、「0.1%以上1%以下」の石綿含有製品が、現に化学物質管理促進法のもとでPRTRやMSDS等の規制の対象となり続けているという状況が続いたのでは、国際的にも国内的にも、「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないものを除き、原則として、使用等を禁止」が実現したとは、到底言い難い。
13. 製品によって禁止の実施時期に差を設けずに、遅くとも2005年1月1日までに禁止を実施すること。
 今回の提案では、禁止の実施時期についてはふれられていないが、一日も早く実施するべきである。可及的速やかに労働安全衛生法施行令の改正を行うことはもとより、施行までの間に周知期間を設けたとしても、どんなに遅くともEUがデッドラインとして設定している、2005年1月1日までに禁止を実施すべきである。
 また、「石綿の代替化等検討委員会報告書」によっても、製品の種類によって異なる禁止の実施時期を設定しなければならないような、合理的な理由は示されておらず、製品によって禁止の実施時期に差を設けないようにすべきである。
14. 禁止が猶予される石綿含有製品については、法令上の規定及び行政指導等の両面において、代替化を促進させる措置をとること。
 「石綿の代替化等検討委員会報告書」は、第6部「代替化の促進について」のなかで、石綿製品メーカー及びメーカー団体、石綿製品ユーザー及びユーザー団体、及び国、各々が代替化の促進に努めるべきことを勧告している。
 代替化促進の努力義務等を法令上規定することが望ましい。
15. 禁止実施から3年ごとの見直しを規定すること。
 禁止が猶予される石綿含有製品が残ることになるとすれば、すでに述べたように、猶予措置の期間を限定すべきである。
 それもなされなかった場合、また、なされた場合であっても、代替化技術の発展等はまさに日進月歩であることを踏まえて、禁止が猶予される石綿含有製品の範囲及び期限を、3年ごとに見直すこととすべきであり、そのことを法令上規定すべきである。
16. 石綿含有製品製造の海外移転等を阻止する実効性のある施策を講じること。
 日本国内で使用等を禁止された石綿含有製品の製造を日本企業が海外に移転させたり、石綿・石綿含有製品の第三国への輸出で利潤をあげたりすることを放置するならば、今回の改正の趣旨に反するばかりか、新たな貿易・社会紛争を惹起しかねない。労働安全衛生法施行令の所管する事項ではないかもしれないが、国は、この面における実効性のある施策を講じるべきである。


■本意見は、アスベスト対策情報No.33に掲載したものですが、次頁の意見とも関連しているため、再掲しました。
■厚生労働省の2003年度以降のパブリック・コメント手続きの実施結果については、「電子政府の総合窓口」(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public)で公表されています。

特定化学物質等障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案に対する意見

2004年9月17日
石綿対策全国連絡会議



●改正政令施行日前に製造・輸入された石綿含有製品も禁止すること
 提案では、「改正政令の施行の日前に製造され、又は輸入された石綿含有製品(改正政令附則第2条第1項に規定する石綿含有製品については、なお従前の例により取り扱うこと」とされ、「永遠」に使用等が可能とされています。
 1995年のクロシドライト(青石綿)・アモサイト(茶石綿)の使用等禁止のときにも同様の措置がとられ、このことは、管理濃度等検討会の参集者からも疑問に感じる発言がなされています。
 とりわけ今回は、昨年10月の改正政令公布から施行までに1年間の周知期間を設けていることでもあり、改正政令施行日前に製造・輸入された石綿含有製品を「従前の例により取り扱う」とする省令改正はすべきではないと考えます。
 改正政令附則自体も、この際、見直すべきです。直ちに禁止できないのであれば、1年以内に禁止するという期間の限定をすべきです。
●禁止規制の仕方の見直し、少なくとも左官用モルタル混和材を禁止すること
 未公表の平成15年基安化発第第1119001号「石綿含有製品等の製造等禁止に係る労働安全衛生法施行令改正の周知について」(別添)では、「石綿を含有する建材」はすべて禁止される5製品「のいずれかに該当」するとしていました。
 堂々と無石綿等と表示して販売されていた「左官用モルタル混和材」を見逃していたことは大失策です。
 特化則改正で対処することはできませんが、労働安全衛生法施行令における禁止規制の仕方を見直(例外として使用等を認めるもの以外はすべて禁止する旨を明記)すべきです。
●禁止の対象外石綿含有製品対策について
 これも未公表の平成16年基安化発第0330001号「石綿含有製品の代替化に係る計画等の提出の依頼について」(別添)は、関係団体に対して代替化計画等の提出を求めています。
 「提出いただいた資料は原則公開の扱いを予定」と明示され、提出期限は8月31日です。一日も早くこの結果を公表し、その結果を踏まえた禁止のあり方の検討を早急に行ったうえで、禁止施行の10月1日を迎えるようにすべきと考えます。

特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令並びに作業環境測定基準及び作業環境評価基準の一部を改正する告示に対する意見

2004年9月17日 石綿対策全国連絡会議



●安全レベルではないことを周知徹底、一層の引き下げを指導すること
 石綿(アモサイト及びクロシドライトを除く)に関する管理濃度(改正案)の0.15f/cm3は、日本産業衛生学会のクリソタイルのみのときの「過剰発がん生涯リスクレベル10-3に相当する評価値」と結果的に同じ数値ですが、産衛学会の「評価値」は、「この濃度レベルにすれば、生涯(18〜65歳)、労働環境で曝露しても、石綿による肺がん・中皮腫の発症を千人に一人までに抑えられる」という意味です。
 したがって、とりわけ石綿を含めた発がん物質に関する管理濃度については、この管理濃度を遵守していれば健康被害は生じないという安全レベルではないことを周知徹底させ、単に遵守すればよしではなく、可能な限り一層の引き下げに努めるよう指導すべきです。
 管理濃度等検討会においても、座長が、(発がん物質に関しては)「もう技術的に可能なぎりぎりのところまで下げる、という考え方しかないのです。」と発言しています。
●石綿に関する管理濃度を0.15f/cm3ではなく0.1f/cm3とすること
 現在、欧米を中心とした事実上の国際標準は0.1f/cm3になっていると言えます。
 管理濃度等検討会における議論では、実現可能性の観点から、管理濃度は「定量下限」=測定できる最低レベルの10倍以上とされていますが、石綿の定量下限は0.0057f/cm3とのことなので、この原則でいえば、0.06f/cm3でもよいわけです。
 ところが、この定量下限値は、実験室的な環境で石綿しか存在していない場合の理論値のようなもので、実際の作業環境では他の一般粉じんが存在しているため、他の粉じんが重なり合って計数が困難になるということも、事実でしょう。大気汚染防止法上の環境規制値は0.01f/cm3ですが、これも一般環境で、他の一般粉じんがそれほど混在していない状況だから計数可能だということも理解できます。また、現行の2f/cm3だとサンプル採集に空気を1リットル吸引すればよいのが、0.15f/cm3レベルを計測するためには5リットル引かなければならず、他の粉じんもその分混ざってくるという議論も一定妥当性はあると思われます。
 しかし、具体的な数値の決定にあたって、「作業現場としては大体0.15から0.2ぐらいでないと、測れないところが結構出てくる」ことから、「たまたま日本産業衛生学会の評価値と同じ0.15f/cm3」ということになったということのようですが、なぜ、0.1f/cm3だと駄目で、0.15f/cm3なら可能かという科学的根拠が明確には示されていません。
 0.1f/cm3だと実現可能性がないという科学的根拠は見当たらず、国際水準に合わせて、0.1f/cm3にすべきです。
●石綿に係る屋外作業環境管理対策を確立すること
 ILO石綿条約を日本が批准できていない主な理由のひとつが、この規制がないことです。
 今年10月1日から、石綿の原則使用等禁止が実施されるわけなので、建設現場を中心とした屋外作業環境管理をしないのであれば、新たに設定される石綿の管理濃度が機能する場所はほとんどないことになります。管理濃度等検討会においても、この点が指摘されているところです。
 原則使用禁止後の、石綿対策の主軸が建築物等の改修・解体時等の対策であることを踏まえて、この際、この問題に迅速に真っ向から取り組むべきであると考えます。

石綿障害予防規則案に対する意見

2004年11月8日 石綿対策全国連絡会議


新省令制定
(1)「石綿障害予防規則を新たに制定する」ことに賛成します。
要綱第一 総則
一 事業者の責務
(2)事業者の責務の第一は、「労働者が石綿にばく露される程度等を最小限度にするよう努める」ことではなく、「労働者が石綿に曝露することがないよう努める」こととすべきです。
(3)事業者の責務の第二としてあげられている、「石綿を含有する製品を計画的に石綿を含有しない製品に代替するよう努めること」に関して、代替化の達成目標時期を本規則施行後1年と明示し、その時点で本規則の見直しをすることを規定すべきです。
(4)事業者の責務の第三として、現在石綿を使用・含有していない用途・製品への新たな石綿の使用・含有をしてはならないこと、を追加すべきです。
二 用語の定義
(5)「石綿等」の「等」に関して、現行では、「石綿をその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物」に限定しているところですが、再三主張しているように、発がん物質規制の対象範囲に関しては「重量の0.1パーセントを超えて含有する製剤その他の物」に拡大すべきであり、仮にそれが現在困難であるとしても、「意図的に石綿を含有させた場合には1パーセント以下含有する製剤その他の物」も対象に加えるべきです。
(6)「建築物等」に関して、提案は「建築物又は工作物」を想定しているものと理解できますが、「建築物」以外に「工作物」も対象となることを明示すべきです。
(7)「解体等」の「等」に関して、現行の解釈例規では、「改修が含まれる」とされていますが、「改修」及び「維持管理(メインテナンス)」も対象となることを明示すべきです。
(8)要綱第二の一の5の(1)及び第二の三の4に事業者の「表示」義務が提案されていますが、「表示」は、当該作業に従事する労働者、関連する労働者や関係者のみならず、当該作業場所周辺の住民がその内容を容易に知ることができるように行うべきことを明示すべきです。

要綱第二 石綿等を取り扱う業務等に係る措置

一 解体等の業務に係る措置
(8)提案では調査内容が「石綿等の使用の有無」となっているが、現行特化則第38条の10においては、「石綿等が使用されている箇所及び使用の状況」とされ、解釈例規では、「『使用の状況』の把握については、吹付け材、スレート材等といった石綿等の使用形態及び使用量を把握」することとされています。「石綿等の使用の有無」だけではなく、「石綿等が使用されている箇所及び使用の状況」、とりわけ、石綿等の「張り付け」、石綿等の「吹きつけ」、「石綿等が使用されている保温材等を張り付けた物」―すなわち「飛散性の高い石綿等」の有無、使用箇所及び使用の状況を調査すべきことを明示すべきです。
(9)提案では「目視等により調査」となっているが、現行特化則第38条の10においては、事前調査は「設計図書等」により調査することとされており、この「等」に関して解釈例規では、「施工記録、維持、保全記録、建築管理者・建築物の所有者・施工者等からの情報、目視も含まれるものであること」とされているところであり、「設計図書等による調査」とすべきです。
(10)現行の国の各種解説等における、吹付け石綿等が使用された目安期間に関する情報は誤っており、例えば東京都の「練馬区アスベスト対策大綱」にはより適切な情報が盛り込まれています。施工年を目安とした「石綿等の使用の有無」の判断は、正確な情報に基づかないとかえって有害です。前記を教訓として、関連業界からの一方的情報のみに基づく目安等は示すべきではありません。
(11)事前調査は、一定の特別教育を受けた者が行うべきものとして、事前調査を行う者に対する特別教育に関する規定を設けるべきです。
(12)要綱では、事前「調査を行ったにもかかわらず石綿等の使用の有無が明らかとならなかったとき」は、「分析による調査」を行うこととしつつも、「石綿等が使用されているものとみなして措置を講ずる場合」は「分析による調査」を免除することとしていますが、「講ずべき措置」の内容が要綱では明らかでありません。また、事前調査によって「石綿等の使用の有無が明らかとなったとき」に一般的に「講ずべき措置」の内容も、要綱では、「あらかじめ、作業計画を定め、当該計画により作業を行うこと」以外については明らかでありません。両者は同一の内容とすべきです。提案は、@解体等される部材等を湿潤な状態のものとし、A労働者に保護具、作業衣等を使用させる等の措置、を想定しているように思われます。個人防護対策以外は「湿潤化」しか示されていないわけですが、解体の場合はともかく改修や維持管理においては湿潤化が困難な場合も想定され、また、現行特化則第38条の8では「ただし、石綿等を湿潤な状態のものとすることが著しく困難なときは、この限りでない」ともされているところであり、これだけでは全く不十分と言うほかありません。一般的に講ずべき最低限の措置には、@湿潤化又は飛散抑制剤の使用等、A手ばらし・カッターナイフによる切断等及び粉じんを飛散させる機械器具の使用禁止、B呼吸用保護具・作業衣の使用、C当該作業場所への当該作業従事労働者以外の者の立入禁止(特定元方事業者による実効確保措置を含む)、D当該作業場所内の気中石綿濃度測定の定期的実施、結果の記録及び表示、E「石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」を実施中である旨及び立入禁止である旨の表示、が含まれるべきです。
(13)「石綿等が使用されているものとみなして措置を講」じて、「石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」を行うときも、「あらかじめ、作業計画を定め、当該計画により作業を行うこと」を明示すべきです。
(14)当該作業場所内の気中石綿濃度測定を実施した結果、濃度が一定の基準を超えた場合、または、事前調査によって明らかとならなかった吹き付け石綿等の飛散性の高い石綿等の存在が明らかとなった場合には、事業者は、直ちに作業を中止、現場を隔離、立ち入りを禁止、その旨を表示したうえで、所轄労働基準監督署に届け出、許可を受けてからでなければ作業を再開してはならないこととすべきです。
(15)「事業者は、建築物等の解体等の作業を行うときは、あらかじめ、石綿等の使用の有無を目視等により調査し、その結果を記録する」とともに、「その結果を表示する」こととすべきです。この表示には、事前調査実施の有無(実施時期、実施方法、調査者氏名等)と石綿等の使用の有無のみならず、石綿等の「張り付け」、石綿等の「吹き付け」、「石綿等が使用されている保温材等を張り付けた物」―すなわち「飛散性の高い石綿等」の有無、使用箇所及び使用の状況及び表示内容に関する問い合わせ先に係る情報が示されるべきです。事前「調査を行ったにもかかわらず石綿等の使用の有無が明らかとなら」ずに「分析による調査」を行った場合にはその結果、「石綿等が使用されているものとみなして措置を講ずる場合」はその旨も示されるべきです。「事前調査で石綿等の使用が明らかとなった場合」及び「石綿等が使用されているものとみなして措置を講ずる場合」には、当該作業場所内の気中石綿濃度測定を定期的に実施し、その結果も表示すべきです。
(16)実効性のある措置が義務づけられることを前提に、「石綿等が使用されているものとみなして措置を講ずる場合」は「分析による調査」を免除することに賛成し、適切な事前「調査を行ったにもかかわらず石綿等の使用の有無が明らかとならなかったとき」は、「分析による調査」を奨励するよりも、むしろ、「石綿等が使用されているものとみなして措置を講ずる」ことを奨励する規則の運用がなされることを希望します。
(17)「所轄労働基準監督署長に届け出る」ことが必要なのは、現行労働安全衛生法施行規則第90条では、「石綿等が吹き付けられている一定の耐火建築物等における石綿等の除去の作業を行う仕事」とされていますが、要綱第二の一の3では「石綿等が張り付けられた一定の建築物等の解体等の作業を行うとき」と記し、「これ(吹付け石綿等の除去)に準じて粉じんを発散するおそれがあるもの」、「具体的には、石綿等を使用した耐火被覆板を張り付けた建築物の解体作業など、粉じんを著しく発散するおそれがある建築物又は工作物等の作業を想定」と説明されています。また、「これ(吹き付け石綿等の除去)に準じて粉じんを発散するおそれがある石綿等が使用されている保温材、断熱材等を除去する作業」についても、ふれられているところです。「所轄労働基準監督署長への届出」が必要な作業としては、@「石綿等が吹き付けられた建築物等」、A「石綿等を使用した耐火被覆板を張り付けた建築物等」、B「石綿等が使用されている保温材等を張り付けた物等」の全てについて、当該石綿等を除去する場合に限定せず、改修等を含めた「解体等」作業を対象とすることを明示すべきです。@〜Bに重なる部分があるのか定かではありませんが、要するに、「飛散性の高い石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」全てを、「届出」の対象とすべきということです。「飛散性の高い石綿等」については、嵩比重等の客観的基準を示したうえで、該当する可能性のあるものをわかりやすく明示すべきです。
(16)「所轄労働基準監督署長に届け出る」内容について要綱ではふれていないが、「石綿ばく露防止対策」の内容を含めることには賛成です。
(17)要綱第二の一の4では、「石綿等が吹き付けられた建築物の解体等の作業を行う場合において、当該石綿等を除去するときは、当該除去を行う作業場所を隔離すること」としていますが、「石綿等が吹き付けられた建築物等」、「石綿等を使用した耐火被覆板を張り付けた建築物等」、「石綿等が使用されている保温材等を張り付けた物等」の「解体等」作業全て―すなわち「飛散性の高い石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」全てを対象とし、また、@作業場所の隔離に加えて、A当該作業期間中24時間当該作業場所内部を負圧とする措置、B当該作業従事労働者の保護衣着用、Cクリーンルームの設置、D隔離された作業場外の気中石綿濃度測定の定期的実施、結果の記録及び表示、等の措置を講じることとすべきです。なお、これらの措置は、「石綿等の使用の有無が明らかとなったとき」及び「事前調査で石綿等の使用の有無が明らかとならなかったものの石綿等が使用されているものとみなして分析による調査を行わないとき」に講ずべき措置に上乗せされる措置であることを明示すべきです。
(18)要綱第二の一の5では、「保温材等の除去に係る措置」を提案していますが、「石綿等が使用されている保温材等を張り付けた物等の解体等の作業」についても、「飛散性の高い石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」のひとつとして、「石綿等が吹き付けられた建築物の解体等の作業」と同等の措置を講ずべきものとすべきです。
(19)発注者、注文者等の規定を設け、また強化することに賛成します。この点では、「注文者による危険有害情報の提供等」、「請負事業者に使用させる施設・設備に関する危害防止措置の確保」等を提言した「今後の労働安全衛生対策の在り方に関する検討会報告書」が公表され、この報告書をも踏まえた労働安全衛生法改正の作業が進められているところです。改正された労働安全衛生法の規定を本規則に速やかに反映させる方策を確保すべきです。
(20)「飛散性の高い石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」終了後における隔離等を解除することのできる基準、及び、「石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」終了後における建築物等または跡地の再入場・再利用をすることのできる基準を明示し、それらの基準を満たさない限りは、隔離等の解除、再入場・再利用をしてはならないこととすべきです。
二 石綿等が吹き付けられた建築物等における業務に係る措置
(20)1「事業者は、その労働者を就業させる建築物の壁等(2に掲げるものを除く。)に吹き付けられた石綿等の粉じんが飛散し、及びその労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該石綿等の除去等の措置を講ずること」、及び、2「建築物貸与者は、当該建築物の貸与を受けた二以上の事業者が共用する廊下の壁等に吹き付けられた石綿等の粉じんが飛散し、及びその労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、1の措置を講ずること」という提案に関して、「おそれがあるとき」の客観的な基準を明示すべきです。
(21)「吹き付けられた石綿等」に限定せず、「石綿等を使用した耐火被覆板の張り付け」、「石綿等が使用されている保温材等の張り付け」等を含めて、「飛散性の高い石綿等」全てを対象とすべきです。
(21)「除去等」の「等」については、「封じ込め、囲い込み等の措置」が想定されているものと思われますが、除去、封じ込め、囲い込み等の、いずれの措置が適切であるかを判断するための基準を示すべきです。
(22)除去以外の措置が講じられた場合には、講じられた措置の時期及び内容、将来の除去計画等について表示すべきこととすべきです。
(23)除去等の措置を講じた後に、隔離等を解除し、建築物等の再入場・再利用をすることのできる基準を明示し、それらの基準を満たさない限りは、隔離等の解除、再入場・再利用をしてはならないこととすべきです。
第四 管理
(24)要綱第四の一では、「事業者は、特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任するとともに、作業の方法の決定等の事項を行わせること」とされているが、これは石綿健康障害予防規則を単独の規則として制定することの意義を著しく損なうものです。「石綿作業主任者技能講習」を新たに規定し、「同講習を修了した者のうちから、石綿作業主任者を選任するとともに、作業の方法の決定等の事項を行わせること」とすべきです。
(25)「石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業に係る業務に労働者」に対して行う「特別の教育」には、石綿等の有無等に係る事前調査に関し必要な事項も含めるべきです。
(26)「作業の記録」の保存期間は、「労働者が作業に従事することがなくなった日から50年間」とすべきです。
第六 健康診断
(27)「特殊健康診断個人票の記録」の保存期間は、「労働者が作業に従事することがなくなった日から50年間」とすべきです。
第九 報告
(28)石綿等を取り扱う事業者は、毎年1回、1年間の石綿使用量、労働者数及び代替化計画等について、所轄労働基準監督署長に報告することとして、国において、その内容を公表すべきです。



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