|
2002年12月3日
厚生労働省御中
石綿対策全国連絡会議
代表委員 加藤 忠由 (全建総連委員長)
竹花 恭二 (自治労副委員長)
富山 洋子 (日本消費者連盟運営委員長)
広瀬 弘忠 (東京女子大学教授)
担当: 事務局長・古谷杉郎(全国安全センター事務局長)
〒136-0071 東京都江東区亀戸7-10-1 Zビル5階
PHONE(03)3636-3882 FAX(03)3636-3881
URL: http://homepage2.nifty.com/banjan/
Email: banjan@nifty.com
「石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準」見直しに係る要請
貴省において「石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会」を参集して、同認定基準の見直しに着手されたことを踏まえて、以下の検討を行われるよう要望いたします。昭和53年に定められた現行認定基準は先見性のあったものであり、一定の要件を明示した後、「それ以外は本省にりん伺すること」という記載により、定めた以降の時代や研究の変化に対応できるものでした。今回の基準の改訂が、現時点までの研究や臨床の成果を盛り込みつつも、現基準同様の先見性をもたれる検討が行われることを期待します。
なお、本要請を検討会にも提出され、検討に資していただくよう申し添えます。
1. 改正認定基準の広い周知の実施
ヘルシンキクライテリアは、中皮腫の80%がアスベストの職業性ばく露としています。ところが日本では中皮腫死亡の数%しか労災認定を受けていません。この一因として、認定基準の存在を、多くの呼吸器内科・胸部外科医が知らないことが挙げられます。認定基準の内容の検討もさることながら、改正基準の幅広い周知が重要です。中皮腫や肺癌を診断し治療する日本呼吸器学会、日本肺癌学会及び日本呼吸器外科学会の全会員等へ、改正した認定基準の周知がはかられなければ、診断されても労災認定がされない現状は一向に改善されないと考えます。認定基準とともに、胸膜肥厚斑のCT診断、石綿肺のdot
shadowやSCLSの読影の紹介、誘発法による聴診の仕方、職歴の聴取の仕方等石綿肺、中皮腫、肺がん等のわかりやすい説明をあわせた解説の小冊子の配布、及び、各地域単位での医師向けの研修会の開催も是非要望いたします。
2. 悪性胸膜中皮腫の認定基準
1) 胸部レントゲン写真で石綿肺と考えられる不整型影0/1以上の場合は、5年以上のアスベスト曝露歴に相当すると考えられるますので、ばく露歴の長さに関わらず認定すること。
2) 石綿関連所見にはCTでの胸膜肥厚斑の診断も含めること。その際剖検で診断される胸膜肥厚斑が多い事実に鑑み、狭い基準とすることのないよう十分留意されたいこと。
3) 中皮腫の診断精度を向上させた、現在の病理診断方法を例示していただきたいこと。
4) 1年以上の石綿ばく露作業従事歴が明確な場合は、石綿関連所見がなくても認定すること。
5) 逆に、過去のばく露歴の詳細は不明でも、職業起因性相当の石綿関連所見(0/1以上の石綿肺や石綿小体数)が明確であれば認定すること。
(以上の要望は、1年程度の石綿ばく歴のみあり、労災申請時本人が死亡され、会社も倒産及び同僚証言が難しい事例があるためです。)
6) 石綿小体数は施設間差も多いため、一定の基準を設けるのは難しいと考えます。
(とくに職業性ばく露のないコントロール群でばく露歴聴取の方法を厳格にすることが極めて重要です。)
3. 肺がんの認定基準
1) 肺がんでは中皮腫の取り扱いに準じた変更を行うこと。
2) 石綿工場や造船所及び建築作業等、石綿ばく露歴が明白で、同じ職種での認定例が既にある場合は、仮に石綿関連所見がなくても一定年数(5−10年)以上のばく露歴のある肺がんは認定すること
(進行肺がん例では、手術ができず、治療も難航することから、剖検は行わない事例が増加しています。すでに同僚でレントゲンやCT所見は陰性でも手術や剖検で病理学的に石綿所見がありとされる例がある場合でも、同様のばく露歴でもレントゲンやCTで所見がない場合本人が労災申請自体を断念する例がほとんどであるためです。)
4. その他の石綿関連疾患
良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚及び心膜中皮腫は、認定基準に含めること。
5. 石綿ばく露作業と職歴聴取の方法の明示
1) 石綿ばく露作業については、過去の全認定事例を含め職業を列挙し、今後の認定例のばく露職歴をホームページ等で例示し、今後本人や御家族や臨床医が参照しやすい工夫を行うこと。
2) 認定基準に職歴聴取の方法を明示すること。
造船や建築でもアスベストは吸入していないと答える患者さんは多く、臨床医を難渋させています。吸入していないと誤解している患者さんにさらに職歴を聴取する際の、アスベスト製品の聞き方、周囲でのアスベスト作業の有無等、臨床医向けの職歴聴取方法を例示していただきたい。
|