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●アスベスト対策情報 No.32
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(2003年2月1日発行)
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石綿対策全国連絡会議第16回総会議案
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2003年2月8日 東京・渋谷勤労福祉会館
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T 2001年度活動報告案
はじめに
2001年度は石綿対策全国連絡会議にとってまさしく「画期的」な、「激動の一年」となりました。1987年の全国連結成以来15年目にして、ついに日本におけるアスベスト禁止が現実のものとなってきたのです。この一年間をふりかえってみたいと思います。
1. 第15回総会・記念講演「アスベストの健康被害と代替品の健康リスク」
2001年12月4日、東京・全建総連本部会議室において第15回総会を開催しました。総会では、以下の方々に現場報告をお願いしましたが、日本でたたかわれているアスベスト関連裁判等の勢揃いといった趣きがありました。
・ 米海軍横須賀基地石綿じん肺訴訟原告団、米海軍横須賀基地第二次直接請求団、横須賀地区じん肺被災者の会、じん肺・アスベスト被災者救済基金の皆さん
・ 三菱長崎造船じん肺訴訟原告団長の太田哲郎さん
・ 日本板硝子共闘労働組合委員長の鈴木雅之さん
・ 旭硝子船橋工場・石綿肺がん労災行政訴訟弁護団の有坂修一さん
・ 日本エタニットパイプ家庭内石綿曝露損害賠償裁判を支援する村上博子さん
引き続いて、大阪府立成人病センター参事・森永謙二氏を講師に迎えて、「アスベストの健康被害と代替品の健康リスク」と題した記念講演を行いました。総会議案、現場報告及び記念講演の内容は、「アスベスト対策情報」No.31(2002年3月1日)に収録しています。森永氏の講演は、斯界の第一人者による最新の知見の紹介であり、同氏が編者となって翌2002年1月に出版された『職業性石綿ばく露と石綿関連疾患―基礎知識と労災補償―』ともども関係者の恰好の参考書として活用され、「アスベスト対策情報」No.31は在庫切れの状態です。
なお、2002年3月23日に、(社)神奈川労災職業病センターとじん肺・アスベスト被災者救済基金の主催、神奈川県と横須賀市の後援により横須賀市内の生涯学習センターで開催された「がん対策特別市民講座」の横須賀共済病院内科部長・三浦溥太郎氏の講演「アスベスト疾患を診て30年―中皮腫の症例を中心に―」も、長年の経験と最新の知見を踏まえた充実したものでした(同氏は前掲『職業性石綿ばく露と石綿関連疾患』で「中皮腫―臨床」の執筆を担当しています)。
また時期はずれますが10月に発行された『環境と公害』(岩波書店)第32巻第2(秋)号は、「アスベスト問題の新展開」という特集を組んでいます。鈴木康之亮氏(ニューヨーク・マウントサイナイ医科大学)「Irving
J. Selikoff教授のアスベスト関連疾患研究に関する貢献」、森永謙二氏「21世紀に課題を残したアスベスト問題」、全国連事務局次長でもある名取雄司(亀戸ひまわり診療所)「臨床面からみたアスベスト関連疾患の状況」、同じく事務局長・古谷杉郎(全国労働安全衛生センター連絡会議事務局長)「アスベスト全面禁止に向かう世界と日本」、村山武彦氏(早稲田大学理工学部複合領域教授)「アスベスト汚染による将来リスクの定量的予測に関する一考察」、「アスベスト汚染による労働災害の事例」、村山氏、名取、古谷と、文京区さしがや保育園父母の会の今井桂子さんによる座談会「アスベスト問題をどうとらえるか」、と充実した内容になっています。
2. 「わが国における悪性胸膜中皮腫死亡数の将来予測」
2002年4月10日に、神戸国際会議場で開催された第75回日本産業衛生学会において、「わが国におけるアスベスト被害の将来予測」とも言える研究結果が発表されました。車谷典男(奈良医大衛生学)、村山武彦(早稲田大理工・複合領域)、高橋謙(産業医大環境疫学)の3教授と名取雄司医師(亀戸ひまわり診療所)の研究チームによる「わが国における悪性胸膜中皮腫死亡数の将来予測」です。
全国連でも結成当初にアスベスト被害の将来予測ができないか検討されたことがありましたが、データ等を揃えることができずに断念した経緯があります。ここ数年、欧米等において、「疫学調査に基づく死亡数の予測―原因からのアプローチ」という従来からの手法ではなく、「過去の死亡数に基づく将来の死亡数の予測―結果からのアプローチ」とも言える新しい統計分析手法による将来予測の研究成果が発表されるようになり、同様の手法を用いることによって可能となったものでした。
この研究成果によれば、わが国の悪性胸膜中皮腫の死亡数(男性)は2000〜2029年の30年間で約5万8,800人、2000〜2039年の40年間では10万3,000人に達するものと予測され、後者の値は1990〜1999年の10年間の死亡数(2,088人)の49.3倍に当たります。
これは、わが国でも中皮腫による死亡が顕在化し始めてきたという不幸な現実の上に初めて可能であったということ、この将来予測は過去のアスベスト使用の結果であって、直ちに全面禁止を実行したとしても避けられない現実であること等々、多くの意味で衝撃的なものであるとともに、アスベスト被害が確実に増大しつつあるという相談等を通じた私たちの日頃の実感を裏づけるものでもありました。
この研究内容は、4月2日付け朝日新聞朝刊や4月28日付け毎日新聞朝刊等により全国的に大きく報じられました(各紙の英字新聞でも報道されています)。これらの報道が、「アスベストは過去の問題」と言わば信じ込まされてきた世論を喚起し、6月の厚生労働大臣発表に至る政府の決断を後押ししたことは間違いないでしょう。朝日新聞には、「国は救済策に真剣に取り組むべきだ。先進国の多くは全面禁止にしており、早急に輸入を禁止すべきだ」、という全国連事務局長の談話が掲載されています。
全国連では4月17日に、東京・全建総連本部会議室において、村山武彦氏を講師に迎えて「緊急報告集会」を開催し、この研究の成果と意義を学習しました(前頁写真)。緊急報告集会ではまた、参加者に中皮腫という疾病の実態をより理解してもらうために、東京電力の変電所での保守点検、清掃作業に従事していた夫を悪性胸膜中皮腫で亡くした大森華恵子さん(埼玉)と、関西電力の下請けとして火力発電所や焼却炉、浄水場のプラント設備の建設に従事していた夫を悪性胸膜中皮腫で亡くした古川和子さん(大阪)に、実体験を話していただきました。
3. 毎日新聞のスクープ「厚労省 石綿の全面禁止検討
関係省と協議」
上記将来予測の研究結果を報じた4月28日付け毎日新聞朝刊は、その一面で「厚労省
石綿の全面禁止検討 関係省と協議」という特ダネをスクープしました。「厚労省が先(3)月末、石綿に関係する法令を所管する環境省や経済産業省と、実務者レベルの協議を始めた。全面禁止を検討する省間協議が開かれたのは初めてだ」、という内容です。
全国連ではこれに先立つ4月23日に、「アスベストの早期禁止の実現および健康被害の増加に対する対応を含めたアスベスト対策の一層の強化に向けた要請」を厚生労働省に提出し、交渉の日程を調整している最中のことでした。上記特ダネ記事には、「歓迎したい。結論を先延ばしにすれば、被害者はもっと増える。建物などに使われている石綿を処分する際の対策など課題は多いが、早急に全面禁止に踏み切ることが問題解決の第一歩になる」、という全国連事務局長の談話も掲載されています。
4. アジアの労災被災者ネットワーク会議で特別報告
5月8-10日には、タイ・バンコクにおいて、アジアの労災被災者・支援団体のネットワーク―ANROAV(Asian
Network for the Rights of Occupational Acci-dent
Victims)の年次総会が開催され、タイ、香港、台湾、インド、ネパール、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、日本の9か国から34人の代表が参加しました。
全国連の2001年度活動方針で「世界的趨勢のなかで日本を含むアジアの動向が最も注目されること、などに焦点を当てていく必要がある」としているところでもあり、運営委員会等の場でも、アジアで連携できる労働団体、市民団体等とのネットワークをどう広げていくかということが議論されてきました。
ANROAVのネットワークのなかでは、アスベストや職業がんの問題はまだまだクローズアップされているとは言えない状況ですが、今回、全国連事務局長でもある全国安全センター・古谷事務局長が「アスベスト問題」についての特別報告を行う機会を与えられ、世界の動向と日本での取り組みに韓国、台湾、フィリピン、シンガポール、マレーシア等、知り得る限りのアジア関連の情報も加えて報告しました。
2000年9月のブラジル世界アスベスト会議に、ANROAVのインド、香港のメンバー等が参加していることもあり、問題の所在に対する認識は思いのほか高かったという印象です。インドでは、環境、安全衛生関係の団体等が中心になって、アスベスト禁止キャンペーンが本格的に始まりました。また、このネットワークとは別ですが、マレーシアでも、ペナン消費者協会が中心となってアスベスト禁止キャンペーンが行われているという情報も伝えられています。
5. 厚生労働省交渉―遺族・被災者の声をぶつける
全国連の厚生労働省との交渉は、5月20日に設定されました。前述の毎日新聞のスクープ記事が出る以前から、今回は全国からアスベスト健康被害の被災者本人や遺族の方々に参加していただき、直接その声―実状と願いを伝え、4月に発表された悪性胸膜中皮腫死亡の将来予測の結果とも合わせて、アスベスト禁止導入の決断を迫りたいと考えていました。そのため、従来、1時間、人数10人未満で実施していたものを、今回は特別に2時間、最低20人は確保してほしいと要望し、認められていました。
しかし、スクープ記事を踏まえて、いよいよ禁止実現への具体的手順について聞くことができる、禁止は第一歩であり、増加が確実視される今後の健康被害等の抜本的対策を確立せよとの要望を、被災者・遺族から直接伝えることができるという私たちの期待は、無残に打ち砕かれてしまいました。
厚生労働省側は、労働基準局から安全衛生部の化学物質調査課と労働衛生課から各1名、労災補償部補償課から2名、健康局生活衛生課から1名の計5名が出席したのですが、まずスクープ記事を踏まえて禁止に向けた厚労省のスタンスと今後の取り組みについて説明を求めたのに対して、その場のリード役さえ決まっておらず、お互いに顔を見合わせる始末。顔ぶれからいって化学物質調査課の担当者に回答を促したものの、「4月から担当になったので、(報じられた3月の「省間協議」には)出席しておらずわからない」、「引き継ぎは受けた」とは言うものの、具体的な説明は何もできませんでした。
これには参加者全員が怒り心頭に達し、「対応できる責任者を連れてこい!」ということになって、担当者が部署に戻り、前年、前々年とも全国連との交渉に出席していた係長を連れて戻るまで、交渉は中断してしまいました。この係長は3月の「省間協議」にも参加していたようですが、「協議というようなものではなかった(情報交換とか意見交換、勉強会等いろいろな言い方をしていました)ということ、また、前年の全国連の「関係省庁連絡会議を開催するようにされたい」という要請も踏まえてそのような場を持ったとも言うものの、その具体的な内容や今後の方針については明らかにしませんでした。翌21日付けの毎日新聞朝刊が、「石綿被害
遺族が全面禁止陳情 厚労省担当者、鈍い反応」と報じたとおりです。
特別に2時間確保されていた時間もここまでで1時間を費やしてしまい、結局、「残りの時間、遺族・被災者の実体験と要望を真剣に聞いて、あらためて回答の場を設定するように」と求めました。交渉には、前出の埼玉の大森さん母娘、大阪の古川さん、第15回総会で
弁護士から報告がされた旭硝子船橋工場で働いていた夫の石綿肺がんの労災認定を求める行政訴訟の原告である千葉の渡辺アキ子さんとご自身も石綿肺で渡辺さんの裁判を支援している元同僚の方、三菱長崎造船じん肺訴訟原告団長の太田哲郎さん、横須賀からは6名のご遺族と横須賀地区じん肺被災者の会会長の宇野林蔵さんらがかけつけてくれました(全国連側参加者24名)。遺族・被災者の方々は、アスベスト疾患の恐ろしさと被災者本人・家族の苦しみ、悔しさ、願いを、生々しく、切実に訴えてくださいました。厚労省側出席者の目に浮かんだ涙も、その場限りのものではなかったと信じたいと思います。
なお、この日は、交渉の前後に厚労省近くに場所を確保して、食事や飲み物を取りながら参加者の顔合わせ、交流と今後の決意を確認する場としました。とくに、各地の遺族の皆さんが初めて顔を合わせた貴重な場になったと思います。全員が次回の交渉にも参加すると言ってくださいました。
その場で、次回の交渉は人数制限なしで議員会館等で、できれば各省顔をそろえさせて、等の要望が出されたこともあり、また、具体的な話を聞けなかった厚生労働省の動向を確認して禁止実現に向けた戦略を練るために、全国連結成以来相談に乗っていただいている五島正規衆議院議員(民主党)に協力を要請しました。五島氏から早速、厚生労働省に質していただき、5月20日の交渉における不誠実な対応に対しては、安全衛生部長から正式な謝罪がなされ、今後このような対応のないようにする、と明言されました。どうも、スクープされたことなどによる内部の混乱等があったようです。
6. 厚生労働大臣の「石綿原則使用等禁止の検討」表明と全国連の「声明」
坂口力厚生労働大臣が「石綿原則使用等禁止の検討」を公式に表明したのは、この厚生労働省交渉から1か月後のことでした。
運営委員でもあるアスベストについて考える会の大内加寿子さんからの働きかけも受けて中村敦夫参議院議員から5月17日付けで「アスベスト禁止措置に関する質問主意書」が提出されていました。これに対する政府の「答弁書」が6月28日の閣議で決定され、その閣議後の記者会見の場において、坂口大臣の方針が表明されたのです。
政府「答弁書」は、「今後とも石綿による労働者の健康障害の防止措置の実施を事業者に徹底させるとともに、現在使われている石綿についても、他の物質により代替できないか等を調査し、その結果を踏まえ、石綿の使用等の禁止措置について検討を行ってまいりたい」、としています。
一方、記者会見における大臣発言は、「近年白石綿の代替品の開発が進んでまいりましたことも踏まえまして、白石綿につきましても国民の安全、社会経済にとりまして石綿製品の使用がやむを得ないものを除き、原則として使用等を禁止する方針で検討を進めているということでございます。やむを得ないものという中には、例えば化学プラントなどの時にこれに代わるべき良いものがないといったようなこともあって、全部とは言っておりませんけれども、しかし原則としてこれも使用等を禁止する方針で検討を進めてまいりたいというふうに思っております」(http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2002/06/k0628.html)というもので、「原則使用等禁止」の方針を明確に打ち出しています。
全国連では、その日のうちに「アスベスト禁止に関する坂口厚労省の記者会見に対する石綿対策全国連絡会議の声明」を作成して発表しました。「声明」では、この方針を歓迎し、「一日も早く具体的に禁止措置を実行することを強く要望」し、また、禁止措置からの除外や猶予措置を不合理に拡大したり、それら措置の検討にいたずらに時間を費やして、禁止の実行が遅れるようなことがあってはならず、とりわけ代替品が存在しないものはない建材に例外を設けることのないよう釘を刺しました。
同時に、「アスベスト全面禁止の早期実現」は問題解決への最初のステップであり、
@今後の健康被害対策、A既存アスベスト対策の2点を柱とする様々な問題に具体的に対処していくために、「政府が強力な指導力を発揮して、関係省庁が垣根を越えて包括的な取り組みを行うべきことをあらためて要望」しています。
坂口大臣発言については朝日、毎日、日経等各紙も報道しましたが、全国連の「声明」も英訳されて、全国連のホームページ(http://homepage2.nifty.com/banjan/html/statement.htm)、日本消費者連盟の英文ニュース「Japan
Resources」や前出ANROAVのニューズレター、Eメール等を通じて世界に配信されて大きな反響を呼び、お祝いや激励のメッセージが多数届けられました。
なお、政府「答弁書」では、毎日新聞のスクープ記事に関連して、「御指摘の『省間協議』とは、本年3月29日に、厚生労働省が開催し、防衛庁、文部科学省、経済産業省、国土交通省及び環境省の実務担当者が参加した会議を指すものと考えられるが、当該会議は、関係各省庁における石綿対策の取組状況についての情報交換を目的とするものであり、御指摘の報道のような石綿の全面的な使用禁止について検討が行われたわけではない」、としています。
7. 既存建築物アスベスト対策確立に向けた取り組み
4月の第75回日本産業衛生学会では、(NPO)東京労働安全衛生センターの外山尚紀氏らによる「建築物解体作業場における石綿曝露に関する検討」という研究成果も発表されています。これによると、現在法令による規制がかけられていない、天井部の吹き付け石綿除去前に実施された無石綿の天井板撤去作業によってもアスベストが飛散しており、既存建築物のアスベスト飛散防止対策の見直しの必要性を示唆するものでした。
このことの重要性と坂口大臣発言が関係業界にも波紋を投げかけていることを好機ととらえて、全国連は7月に、アスベスト除去業者向けの「アスベスト除去に関する緊急アンケート」を実施しました。把握できた除去工事業者62社にアンケート用紙を郵送し、18社(29%)から回答がありました。法令で規制されていない部分でも安全施工を確保しようという努力も見られる一方で、不況のあおりもあって「役所発注物件以外は、石綿があるにもかかわらず、ないものとして解体しているのが実態」などという「率直?」な回答もあり、既存アスベスト対策に本腰を入れて取り組まなければならない必要性を感じさせました。
全国連ではその後、回答をいただいた数社を訪問して、実状や問題点をさらに洗い出す作業も進めました。また、9月に環境省環境管理局へアンケートの速報と天井裏に吹き付けアスベストがある場合の天井板の撤去でアスベスト粉じんが発生するという外山報告について話をし、現行のアスベスト工事の手順では解体業者のアスベスト曝露、環境汚染は防げないことを指摘しました。アスベスト工事のフローチャートの見直しが必要です。10月29日のNHKのテレビ番組でも、東京23区の区有施設における既存アスベスト対策の実状に関する独自調査の結果も報道されています。
アスベストの新規使用は禁止されるという新たな事態のもとにおける、建築物を中心とした既存アスベスト対策のあり方を提起していくために、全国連のなかに「既存建築物アスベスト・プロジェクト」を設置することにして、11月8日から作業を開始したところです。
吹き付けアスベストやアスベスト含有建材の改築や解体の実態を把握するとともに、作業中のアスベスト濃度や技術的対策の検討を行い、事前調査から安全な作業と廃棄に関して実効性のある対策を提言していこうと考えています。
8. 国土交通省、経済産業省、環境省連続交渉
7月24日に全国連は、国土交通省、経済産業省、環境省との連続交渉を実施しました。
今回のこれら各省との交渉は、厚生労働省の方針に対する出方を探り、禁止に向けて妨害をさせない―より積極的には「省間協議」等に手間取ることなく禁止の早期実現を促進する、という狙いがたぶんに込められたものとなりました。
国土交通省は、建築基準法を所管し、過去物議を醸す発言の多かった住宅局建築指導課が、「厚生労働大臣が発言したように全面禁止という方向で使用禁止されてくれば、『反射的に』建築基準法上も、耐火建築材料として使えるものとして挙げられているアスベスト含有建材の例示を削除する方向で対応していくことになるものと考えている」、と回答しました。「建築基準法上禁止する必要性があるという認識には至っていないが、規制を管轄されている他の省で禁止されることになれば、『反射的に』…」ということで、反対はしないということだと受け止められました。
一方、国土交通省が発注者となる立場の官庁営繕部は、以前から「アスベストの有害性も認識しつつ、ノンアス化を推進」という方針でしたが、現実に発注した工事でアスベスト含有建材を使わねばならない箇所があったという経験があるかどうか尋ねたところ、24階建ての中央合同庁舎2号館建設の場合も含めて、「基本的にはない」ということも明らかになりました。また、今後の既存アスベスト対策との関わりで重要な動きとして、現在法令による規制のかかっていない「非飛散性アスベスト含有建材」の取り扱いについて、従来課長通知や「建築副産物適正処理推進要綱」等で扱われていたものを、「環境配慮(グリーン)改修工事」として平成14年度版の「建築改修工事共通仕様書」の中に組み入れたという報告がされました。これは、法令によるしばりのかかる「飛散性アスベスト含有建材」に基本的に準じた取り扱いを求めることとしたものです。
他方、建設リサイクル法を所管する総合政策局建設業課は、新しい法律の施行に手いっぱいという様子でしたが、同法の目的である「再資源化」に適さないアスベスト含有建材の適切な取り扱いの確保やアスベスト処理「業」自体の規制のあり方など、今後、議論しなければならない点は山積みです。
また、旧運輸省の関係では、7月1日から発効した、新造船及び既存船への新たなアスベストの設置を禁止する国際海上人命安全(SOLAS)条約の改正に対する国内法令の対応を確認しました。実は、日本で初めての(クリソタイルも含めたすべての)アスベストの使用を原則禁止する法令として、2002年7月1日から、船舶安全法の船舶設備規程、小形船舶安全規則、小形漁船安全規則が改正されて、すでに施行されているわけで、その内容は以下のとおりです。
船舶(小型船舶、小型漁船も)には、次に掲げるものを除き、石綿を含む材料を使用してはならない。
@ ロータリー式圧縮機及びロータリーポンプにおいて使用される羽根車
A 摂氏350度を超える高温下又は7メガパスカルを超える圧力下で、火災若しくは腐食の危険性又は毒性がある液体の循環に使用される水密継手及び内張り
B 摂氏1,000度を超える高温下で使用される、軟性及び弾力性の必要な断熱材
このような具体的な使用条件等の限定は、厚生労働省が実施するアスベスト禁止措置の例外の設定にも参考になるものと思われます。
経済産業省は、坂口大臣発言の「原則使用等禁止の方針」が閣議決定されたわけではないとしながらも、「現状使われている石綿についても、他の物質により代替できないかどうかというようなことを調査して、その結果を踏まえて、石綿の使用等の禁止措置について検討を行っていきたい」という方針を示しました。1991年度から2000年度にかけて(社)日本石綿協会に委託して実施した「石綿含有率低減化製品等調査委託事業」の結論として、「技術的には代替も可能、方向としてはできるんではないかという方向付けのレポートをいただいている」ということで、方向付けは確認済みという説明でした(前年の交渉ではここまで明言はしていませんでした)。窯業建材課で把握している全アスベスト製造品製造業者(2000年度65社、2001年度59社)に対する2001年6月に行ったアンケート調査では、12社ほどが石綿を使わない製品に切り替えたいと答えているが、近々あらためて、どういう問題があってそれをクリアしたら代替ができるのかできないのかという個別調査をして今後の対応を考えていく、とのことでした。
環境省については、厚生労働省の方針に反対することはないと理解していましたが、積極的に禁止の支持・促進を図るよう要望しました。具体的な動きでは、大気汚染防止法に関連した「石綿飛散防止対策事業」(大気規制課所管)について、全国連の要望も踏まえて、吹き付け石綿以外の石綿含有建材の問題を昨年度から取り上げ、今年度は飛散の実態調査を主体的にやっていきたいという回答がなされました。PRTR(環境汚染物質排出・移動登録)制度を導入した化学物質管理促進法を所管する環境安全課も、事業主からの届出によらず国の責任で排出量を把握するものとされている非点源の排出源等からアスベストの排出として、建築物の解体改修工事からの排出についても算出されたいという要望に対して前向きな姿勢を示し、信頼できる推計方法についての知見があればぜひ提供してほしいと言っています。また、これまで全く積極的な回答が得られなかった廃棄物処理法を所管するリサイクル推進室からも、廃棄物処分場における「非飛散性アスベスト含有建材」の実態調査を行ってみようかと思っているという話まで出てきました。
この時点での各省担当者の話の限りでは、「石綿の使用等原則禁止」という基本方向に対する真正面からの反対は表明されず、また、各省においても特定の業界団体等からの反対の圧力もかかっていないとのことでした。むしろ、全般的に、坂口大臣発言がきっかけとなって、労働安全衛生法令以外も含めた行政各分野におけるアスベスト対策に新たな動きが出てく(きてい)る可能性があることが示唆されました。
9. (社)日本石綿協会との意見交換
一方、坂口大臣発言に先立つ6月16日付け東京新聞朝刊は、「危険ひそむ住宅廃材」という特集のなかで、「禁止は国際的な潮流」という全国連事務局長の話に続けて、「協会としても禁止はやむを得ない流れと考えている。アスベストを使わない屋根材や外壁材に切り換える動きもここ1、2年目立ってきている」、という(社)日本石綿協会専務理事の発言を紹介しました(なお、同記事は、「国はなぜ早く禁止しないのか。厚労省は『今後の方向についてはお答えできない』(化学物質調査課)との回答だった」と結ばれています―坂口大臣発言前の行政の対応です)。
実は2月の時点で全国連は、同協会に対して、前年に続いて意見交換の場を設定してほしいという要請を行っていましたが、協会側の人事異動や体制変更、事務所移転等々のため、落ち着いてからならばということで調整してきたのですが、これは9月5日になって実現しました。
この場で、「禁止―代替化の方向やむなし」という同協会の姿勢が確認されました。「管理して使用すれば安全という考え方に変更はない」、「(政府の決定は)政治的な判断という面もあるだろう」等々とはしているものの、前年度の話し合いのときとは打って変わった変化です。
様々な用途ごとの代替化の可能性やアスベストを「含有」しているかどうかの分析・検証のあり方等々についても意見を交換しましたが、新規使用がアスベスト含有製品でなければダメだという具体的な製品は挙がりませんでした。禁止からの除外や猶予措置に関して、協会として働きかけるということはしないということのようでしたが、逆に、個別企業レベルでそうした働きかけが必死に行われ(てい)るのではないかとも推察されました。
また、協会側からは、アスベストを使わなくなったら協会はいらないということではなく、既存アスベストの処理対策や過去のデータの管理等々の社会的責任を果たしていこうという姿勢であるという立場が表明されました。
10. 「石綿及び同含有製品の代替化等の調査」
この間、厚生労働省(化学物質調査課)が大臣発言以降何をやっていたかというと、「現時点で代替化が困難な商品及びその用途を明らかにするとともに、それら代替困難品の代替見込み時期を把握することを目的」とした、アンケート調査を行っています(当初9月30日締め切り)。この「調査結果の概要」は、12月12日に公表されましたが、石綿製品製造企業26社(建材20社、建材以外7社、1社重複)、石綿製品製造業界団体10団体、石綿製品ユーザー業界団体19団体、石綿・石綿含有製品輸入事業者8社に対してアンケート調査票を送付し、調査票の回答内容を確認するため、電話により補足的な意見聴取等を行ったということです。
他方、経済産業省(窯業建材課)も1月ほど遅れて「石綿製品についての調査票」による調査を行っていますが、こちらの結果は公表されていません。
11. アジア・アスベスト・シンポジウム、アメリカでの写真展等
9月26-27日の両日、北九州市の産業医科大学において、同大学とフィンランド国立労働衛生研究所(FIOH)の共催、WHO、ILO等の後援により、「Asbestos
Symposium for the Asian Countries」が開催されました。このシンポジウムにはシンガポール、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、東チモール、日本、台湾(テレビ電話による報告)の11か国のアジア諸国から代表が参加、残念ながら研究者を中心とした非公開の会議でしたが、全国連事務局の古谷、名取が日本の「Country
Report」の共著者として参加しました。
いまや国際アスベスト産業の最重要ターゲットととされるこの地域に関する情報の乏しさは、5月のバンコクの会議でアジアの状況を報告する準備をするなかでも痛感させられていましたが、アジアで初めての試みであるこのシンポジウムは実に実り多いものでした。まずは、情報の入手可能性の有無を含めた各国の状況が整理されたことが挙げられます。また、シンガポールや日本、韓国等で使用量が減少しているのに対して、中国やベトナム、タイ等では(著しい)増加傾向がみられるという際立ったコントラストがある一方で、アスベスト含有製品の輸出入はアジア地域内に限定されていることなども示されました(このことからも、ある国における禁止措置がたんに他の国におけるアスベスト製品製造の増加をもたらしただけということのないように注意を払う必要があると言えます)。
シンポジウムの報告書は産業医大から近く出版される予定であり、また、主催者はフォローアップの会議を開いていきたい意向を明らかにしています。
一方、6月3-7日にはロシア・エカテリンブルグにおいて「アスベスト及びその他の繊維状鉱物の生産と使用における
安全衛生に関する国際会議」が開催されていますが、これは石綿反対運動に対抗するためのもので、ロシア石綿協会はこの会議の開催のために多大な資金($68,500)を必要としたことが同協会の文書によって明らかにされています。同会議には、アゼルバイジャン、カナダ、中国、キューバ、フィンランド、ドイツ、インド、イラン、日本、ルーマニア、ロシア、タイ、トルコ、イギリス、アメリカ、ウクライナ、ウズベキスタン、ベトナム、ジンバブエから参加者があったとのことです(アジア等からの参加者は招待されたものと思われます)。
同会議では、2003年にEUが最終決定をする前にWHOとILOの後援のもとで一連の専門家会合を組織することなどを両国際組織に提案することで一致したなどとされていますが、ロシア石綿協会の文書では、ロシアの科学者グループが中心となって石綿禁止議論の根拠のないことを立証する資料の準備を行い、2002年7月に行われるEEC科学委員会に提出するための費用が$28,000にもなり、これも同協会の負担となると記されており、同協会の一連の動きに対する思わくは明白です。国際的なアスベスト産業がアジアを中心とした潜在的市場を自ら放棄する意志はないということであり、世界規模におけるアスベスト禁止の実現を促進する必要性を痛感させる動きです。
他方、横須賀のじん肺・アスベスト被災者救済基金や神奈川労災職業病センターが2001年3月に初めて開催した「じん肺・アスベスト被害写真展」が、2001年9月にはオーストラリア・ウィーンで開かれたヨーロッパ・ワークハザーズ会議の会場で、イギリスと南アフリカの写真を含めた3か国合同写真展として開催されましたが、2002年10月にはアメリカにも上陸することになりました。10月7-9日のUS
National COSH Network(アメリカの安全センター)の年次総会の会場及び10月12日のアメリカ公衆衛生学会(APHA)労働安全衛生部会のソーシャル・イベント(懇親会)の会場(写真)で展示されたものです(いずれもフィラデルフィアでの開催)。
日本からは古谷事務局長と神奈川労災職業病センターの池田理恵さんが参加しましたが、写真展のほか、COSHの会議では日本におけるアスベスト禁止、被災者掘り起こしの取り組みなどを紹介しました。また、ニューヨークでマウントサイナイ医科大学に鈴木康之亮先生を訪ね、最近の研究やアメリカのアスベスト事情に関する話などをうかがうとともに、7月から始まった世界貿易センター労働者・ボランティア医学的スクリーニング・プログラムのオフィスを案内してもらい、また、労働・環境医学センターのステファン・レービン博士から様々な話を聞く機会なども得ることができました。
12. 10月の集中キャンペーンによる世論喚起
在日米軍基地労働者のじん肺裁判として初の判決となる横須賀基地石綿じん肺訴訟第一陣に対する横浜地裁横須賀支部の判決は、当初7月8日に予定されていましたが、一度延期されて10月7日に期日が指定されました。原告と支援の人々の勝訴判決への確信に勇気づけられながら、全国連では、この判決前後を再度アスベスト禁止に向けた世論喚起のキャンペーンの機会にしたいと考えました。
5月20日の厚生労働省交渉の場でぶつけられた被災者・遺族の方々の話は胸を打つものばかりでしたが、この録音テープを起こして編集し、当事者の皆さんに内容及び氏名等を公表してよいかの確認、可能であれば写真等の提供をお願いして、全国連のホームページに「被害者の声」のコーナーを開設しました(http://homepage2.nifty.com/banjan/html/higaisha.htm)。
10月7日の横浜地裁横須賀支部の判決は、艦船修理等に従事して石綿じん肺等に罹患した17人(死亡原告3人(中皮腫、肺がん、管理4じん肺)の遺族8人を含む)に対して、総額2億3,100万円の支払いを国に命じました。時効による差別を排し、間接雇用方式のもとでの国の安全対策推進義務を認め、補償水準でも最高レベルなど、画期的な内容のものでした。さらに、時効の法解釈に関する論点を除き(この部分のみ控訴)、国・防衛施設庁が判決を受け入れたということも画期的で、マスコミ等により全国的に大々的に取り上げられました。
判決に続く10月8-9日の両日、横須賀のじん肺・アスベスト被災者救済基金及び全国労働安全衛生センター連絡会議加盟の全国18団体が、フリーダイヤルを設置して、「なくせじん肺!
アスベスト被害ホットライン」を開設しました。判決をめぐる全国的報道の影響が大だったと思いますが、昨年までの同様のホットラインの最高210件をはるかに上回る330件もの相談が寄せられました。
中皮腫をはじめアスベスト関連疾患を疑われる相談も多く、これまで相談のなかった地域で中皮腫の相談が増えたことも顕著な特徴のひとつでした。
この前後に、前記「アスベスト被害者の声」のコーナーを読んで、「自分たちの経験と全く同じ」あるいは「恐ろしさを知った」等と言われて、被災者本人やその家族から連絡をいただくケースが増えました。まだまだ多くの被災者や家族が、少ない情報のなかで孤立させられている実態を痛感します。
北海道内のホテルでアスベストの吹き付けられた機械室・ボイラー室で働いていた夫を悪性胸膜中皮腫で亡くし、主治医の協力のもと自力で労災認定をとられた一宮美恵子さんが、「主人はなぜ死ななければならなかったのか」という一心でインターネットで調べて全国連のホームページにたどり着かれたなどというのもその典型例です。一宮さんが寄せていただいた手記も「被害者の声」コーナーに紹介させていただいていますが、今後も手記等を書いていただける方々にはお願いをして追加していきたいと考えています。
13. 厚生労働大臣政務秘書官と遺族との面談
厚生労働省が「石綿及び同含有製品の代替化等の調査」を実施中と伝えられながら、その進行状況や今後の目途が一向に示されないなかで、全国連は、考えられる限りのルートを通じての働きかけに努めてきました。
そのなかで、田端正広衆議院議員(公明党)の斡旋で坂口力厚生労働大臣の政務秘書官・小柴博正氏とアスベスト被害遺族との面談が11月18日に実現しました。アスベスト被害の遺族として、大阪から古川和子さんと、横須賀から造船所での溶接の仕事で断熱材として使用されていたアスベストに曝露して悪性胸膜中皮腫で夫を亡くした米山よしえさんにお越しいただき、事務局・運営委員から古谷、名取、大内、西と、6名で30分ほど面談をしました。
坂口大臣の決断に感謝するとともに、全面禁止の早期実現にさらに一段の努力をお願いしたいと要望しました。古川さん、米山さんからはアスベスト疾患の恐ろしさと遺族としての希望を話していただき、また、検討中のものとお断りしたうえで、「厚生労働省関連の健康対策に関する要望(案)」も渡しました。
14. 厚生労働省「石綿の代替化等検討委員会」を設置
前述のとおり、厚生労働省の「石綿及び同含有製品の代替化等の調査結果の概要」は12月12日に公表されましたが、これは「石綿の代替化等検討委員会の設置」と合わせて発表されたものです(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1212-2.html)。石綿の代替化等検討委員会は、「調査結果をも踏まえ専門技術的観点から代替化の困難な石綿製品の範囲を絞り込み、今後の非石綿製品への代替可能性等を明らかにすることを目的とする」、とされています。
厚生労働省内部では判断しきれなかったためにこの検討委員会で一から検討し直すということであれば大事ですが、大臣発言にもあった「国民の安全、社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないものを除き」という点について専門技術的立場からの裏づけを得たいという、言わば最後の詰めの作業を依頼したものと見られます。
しかし、「調査結果の概要」の方では、企業や団体等の回答がそのまま示されているのみで、厚生労働省自身の判断が示されているわけではないので、注意深く監視していく必要があります。
上記調査に対する回答だけを見れば、建材についても「石綿の使用が必要」と答えている企業が、まだ107社中43社もあるのです。非建材では、ジョイントシートが20社中2社、シール材が69社中12社が「石綿の使用が必要」と答えており、建材が全面禁止されるかどうかということと、一定の範囲(用途)のジョイントシートやシール材の取り扱いが焦点になろうかと思われます。
同検討委員会は12月16日に第1回会合を持っていますが、「個別企業の技術的情報を取り扱うため」非公開、「報告書は公表予定」とされています。
15. アスベストの作業環境管理濃度2f/cm3→0.15f/cm3へ
7月の関係3省交渉に関連して、「全般的に、坂口大臣発言がきっかけとなって、労働安全衛生法令以外も含めた行政各分野におけるアスベスト対策に新たな動きが出てくる可能性が示唆される」と書きましたが、これは厚生労働省内部、なかでも労働行政分野にも当てはまることで、全国連の、禁止は最初のステップであって@健康被害対策とA既存アスベスト対策を2本柱とした抜本的対策の確立が必要という主張とも関連した動きがすでに始まっています。
アスベストの使用等禁止の問題を所管しているのは労働基準局安全衛生部化学物質調査課ですが、同じ安全衛生部の労働衛生課環境改善室の所管で、3月から「管理濃度等検討会」の作業が開始されています。11月26日に開催された同検討会の第5回会合において、三酸化砒素、ベンゼンとともに石綿が取り上げられました(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/11/s1126-2.html)。
このときの会合ではまず、「発がん物質の管理濃度に関する基本的考え方」が話題になっています。事務方が用意した「管理濃度設定の基本方針」では、
@日本産業衛生学会が勧告している許容濃度、A米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が提言しているばく露限界、のいずれか一方の値を原則とするとされているのですが、
@の産衛の方は、発がん物質については「許容濃度」ではなく、10-3及び10-4のリスクレベルの「生涯過剰死亡リスクの評価値」であり、そもそも
@とAを並べて比較することはできないということもあるわけですが、10-3の過剰リスクレベルという考え方を取り入れると、1,000人に1人までの犠牲はいいのかという議論が出てくる―それは避けたい、という考えが座長以下、大方の委員、事務方に共通してあると言ってよいでしょう。
現実の議論では、事務方が持っていた、実際の現場の作業環境測定結果で、管理濃度をこの数値に下げたとしたら、管理区分1、2、3とされる事業場が各々何%になるというデータ(これは配布資料には含まれておらず、口頭で紹介されたのみ)にかなり議論が左右されていました。石綿については、現行の2fでは実態はほとんど100%が第1管理区分ですが、0.15fに下げたとすると、1―56%、2―約30%、3―14%というデータが紹介され、測定技術の面からも、捕集空気量を現在の1リットルから5リットルにすれば可能、5リットル引けるポンプはあるとの委員のコメントがあると、「それなら0.15f/cm3でよいのではないか」とすんなりと合意に達しています。
ただし、その前段で出された、現行の法定作業環境測定は(屋内の)定常作業を前提としている、(建築物等の)解体作業は義務づけられていない、(使用は禁止され解体は対象外となれば)管理濃度を決めても使われないのではないか、PCBをみても使用禁止されてからいまやっと処分がはじまるというところ、解体については測定法等も含めて別途考える必要があるのではないか、等々の議論については整理されていません。また、0.15f/cm3というのは、産衛のクリソタイルのみのときの10-3リスクレベルの評価値と同じ数字なのですが、現行法令の字義上は「クリソタイルのみ」ではなく「クロシドライト、アモサイト以外の石綿」が対象となることや、クロシドライト、アモサイトの使用等を禁止した改正安衛法施行令の施行日(1995年4月1日)前に製造等されものに対する作業環境測定の規定の適用については「なお従前の例による」(クロシドライトは0.2f/cm3、アモサイトは2f/cm3)とされていることとの関係などはまったく議論されていません。
すべてのアスベストに対する管理濃度を国際標準になりつつある0.1f/cm3以下に下げるというのが全国連の以前からの要望であり、検討会の結論は年度内にもまとめられると考えられますが、注目していく必要があります。
16. アスベスト関連疾患の労災認定基準の見直し
一方、厚生労働省の労働基準局労災補償部(補償課職業病認定対策室職業病認定業務第二係)が、新たに「石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会」を参集しました。10月
29日に第1回会合が行われましたが、当日配布の資料や議事録はすでに厚労省ホームページで入手できます(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/10/s1029-6.html)。
現行の労災認定基準(昭和53年10月23日付け基発第584号)は1978年策定のものですが、「認定要件を定めていなかった心膜中皮腫について、今般、初めて業務上として認定したところであり、…心膜中皮腫を含めた認定要件を含めて認定基準に示す必要がある。さらに、認定基準に認定要件が示されていない他の疾病に係る労災請求も散見される」ことが今回の検討会開催の理由として挙げられています。「来(2003)年6月を目途に一定の結論を得る」となっていますが、それ以前でも前倒しが可能なら認定基準に反映させていくとも表明されています。
配布資料に事務方が作成した「必要と思われる検討事項」が記載されていますが、第1回会合のまとめとしては、
@中皮腫については心膜中皮腫を認定基準に明記するかの文献検討、
Aびまん性胸膜肥厚(による呼吸機能障害)を加えるかの検討、
B胸膜プラーク(肥厚斑)を疾病ではないが曝露の証拠と位置づけた上でそのCT診断等の検討(これは中皮腫等の診断基準ともからむ)、
C石綿ばく露作業の例示の見直し、 Dとくに石綿肺所見がある中皮腫の場合の従事年数要件(5年以上)を外すことの検討、等を課題としていくことが確認されたと思います。
全国連としては、この動きに合わせ12月3日に、「『石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準』見直しに係る要請」を提出しました。第2回会合は12月25日に開催されましたが、「個別症例を取り扱うため非公開」で行われています。
17. 被災者、市民団体等の取り組みの支援
@ アスベスト被災者支援等の取り組み
すでに述べているように、石綿対策全国連ホームページ上での「アスベスト被害者の声」のコーナーの開設や10月8-9日の「なくせじん肺!
アスベスト被害被害ホットライン」等を通じて、アスベスト被災者やその家族からの相談が確実に増えています。これまで相談のなかった県からも、中皮腫等の事例の相談が寄せられたことも大きな特徴でした。
横須賀のじん肺・アスベスト被災者救済基金では、当初、横須賀基地石綿じん肺訴訟第一陣の判決が予定されていた7月9-11日にも、今年で6回目になる「じん肺・アスベスト健康被害ホットライン」も開設しています。相談件数は20件にとどまりましたが、肺がんが2件、中皮腫が4件と深刻な内容でした。
2001年7月の「じん肺・アスベスト健康被害ホットライン」に相談が寄せられた事例で、30年間機関士として船に乗り込み、退職後肺がんと診断された方のケースがありましたが、これは船員保険での初めての石綿関連疾患として2002年1月に業務上疾病と認められました。
埼玉にあったアスベスト製品の原材料を製造するM産業で、30年以上前に10年間働いたAさんは、1996年12月に肺がんで死亡しました。上記ホットラインに遺族から相談が寄せられ、2002年2月に労災認定されましたが、死亡から5年という時効すれすれに手続きが間に合ったもので、M産業はとっくに倒産していて工場もなく、一時同じ会社で仕事をしたことがあるというAさんの実兄の証言が手がかりになりました。
長年の保温作業従事による胸膜中皮腫で2000年1月に死亡された大阪のBさんの事例では、労災保険給付の時効による権利喪失を回避するためもあって、国民健康保険から療養給付費の返還を請求してもらうことになりましたが、発病初診の1998年10月から死亡するまでの1年2か月間の切除手術を含む総医療費は1,017万にのぼることがわかりました。石綿関連疾患の実際の罹患者数に対する労災認定を受けた事例の低さを指摘してきましたが、本来労災保険が負担すべきなのに、患者本人の自己負担や健康保険で「肩代わり」している医療費の額が莫大なものになっていることがうかがわれます。
四国電力では、以前に西条火力発電所に勤務して中皮腫で死亡された方の損害賠償裁判が提起され、和解というかたちで解決していますが、この事件は時効のため労災補償を受けることができずに裁判で争われたケースでした。2002年8月には、同じ発電所で働いていた労働者の石綿肺(じん肺)+続発性気管支炎が労災認定されました。8月28日に、新居浜労働福祉会館で100名以上が参加して、「四国電力アスベスト肺労災認定報告会」が開催され((NPO)愛媛労働安全衛生センター主催)、古谷事務局長が最近の情勢について記念講演を行いました。
第15回総会で旧川崎工場と千葉工場におけるアスベスト被災者の発生が報告された日本板硝子では、M市にある工場で働いていたという元労働者から中皮腫と診断されたという相談が全国連にあり、総会で代表が報告をしていただいた労働組合の支援もあって、労災認定されています。
同じく第15回総会でご報告いただいた三菱長崎造船じん肺訴訟は、6月7日に和解が成立しました。三菱重工業に原告らをはじめ多数のじん肺患者を発生させたことに対して謝罪を行わせたこと、全国各地のじん肺訴訟の解決水準を維持し時効差別なく全員を救済させたこと、今後じん肺の予防と根絶に向け鋭意努力を行うことを約束させたこと、という成果を確認して、10月17日に東京で報告・祝賀会が行われました。また、社内じん肺補償制度も改正され、症状の確認は会社指定医療機関で行うとされているものの、管理2合併症から管理4までは現役、退職者の差別のない上積み補償と、75歳までの死亡者に高額の遺族上積み補償がされることになりました。
なお、横須賀では5月30日に、横須賀基地石綿じん肺訴訟第二陣として、じん肺管理区分2・3で合併症になった22人が提訴、第三陣の準備や住友重機械工業の退職被災者の上積み補償制度の改定・履行を求める取り組みも行われています。
全建総連及びその傘下の建設労働組合は、被災者の掘り起こしとじん肺・アスベスト関連疾患等の予防のための取り組みを継続しています。すでに述べたとおり、アスベスト禁止以後の二大課題のひとつとしての既存アスベスト対策の中で、今後もっともリスクにさらされるおそれのある建設労働者の生命と健康を守る方策が確立されなければなりません。
A 市民団体等の取り組み
今年度、アスネットに寄せられた相談を中心に報告します。
2002年2月、東京都大田区蒲田の富士通の解体工事現場で、アスベスト除去現場の確認を行いました。これは、周辺にお住まいの方からの問い合わせで、以前当該建物の一部にアスベストがあったことを確認しており、それが適切に処理されているかどうか心配で、大田区役所に問い合わせたところ納得のいく回答が得られなかったというものでした。相談された方のご心配は深刻で、町会にも理解が得られず、区役所の対応にも不信を抱かれていました。そこで、区役所で当該工事のアスベスト除去届の情報公開手続を行い、工事の確認を富士通の工事現場に直接申し入れたものです。現場で確認できたのは、アスベスト除去最終段階の、地階の一室の壁に吹き付けられたアスベストの除去でした。床養生が一部破れていましたが、養生内で空調ダクトのアスベストパッキンを撤去していました。現場を確認したあと、工事事務所で話を聞くことができました。大手ゼネコンのS建設の工事で、アスベスト除去を受け持ったT社は、吹き付けアスベスト、保温材、ダクトのパッキン等の除去は養生内で行っているものの、アスベスト含有建材の除去は、湿潤化してできるだけ手ばらしで行っているとの話でした。法的には問題ないものの、含有建材の除去も可能な限り養生内で行うべきです。この件では、大田区の環境担当課のアスベストに対する認識不足が住民の方の不信感を生み出していたように思います。大田区では他にも、営繕課が担当する保健所改修工事の際のアスベストに関する認識不足、説明不足が住民の不信感を生んだケースがありました。
1999年に東京都文京区のさしがや保育園で、園の改修工事の際に発生したアスベスト粉じんに園児が曝露してしまった事件で、区が設置した「文京区さしがや保育園アスベストばく露による健康対策検討委員会」の父母に対する中間報告が3月10日、11日の両日行われました。中間報告に続いて、検討委員会では健康対策、再発防止策等が検討され、近く最終報告案が取りまとめられる予定です。
3月22日には、同じ文京区内のK小学校のボイラー室と体育館の吹き付けアスベストを確認しました。これは同小学校の改築工事に先立ち除去するもので、区の施設課(旧営繕課)に見せてもらったものです。体育館の用具室の天井一面にアスベスト含有のロックウールが吹かれていて、相当欠落しており、一部鉄骨がむき出しになっている部分もありました。用具を出し入れする際に、天井の吹き付け材にぶつかったものと思われます。同様のものは全国的にあると考えられ、早急に全国の学校の体育館のアスベスト調査を行う必要があると思われます。
8月にさいたま市の、小学校に隣接するマンション建設に先立つA銀行の施設の解体工事の際に、アスベスト除去をきちんと行ったかどうかについて、近隣の住民の方に対する業者説明会があり、要請を受け同席しました。業者の担当者はアスベスト除去は法律に基づいて十全に行ったと説明しましたが、提出された資料には疑問点があり、担当者もアスベストについて基本的なことが説明できないなど、住民の不信を取り払えるような内容ではなかったようです。12月になって、解体した建物の設計図面が見つかったということで、アスネットに図面が送られてきています。
姫路市の住民の方から、姫路市内のマンションの解体工事で、吹き付けアスベストがあることが事前の調査ではっきりしているにもかかわらず、建物の持ち主がアスベストはないとして違法な解体工事を強行していること、この工事を中止させ、適法な工事を指導するように姫路市役所に申し入れたが、市はそのようなことはできないと違法工事を黙認してしまったという連絡がありました。急遽、姫路市の解体現場に行ってみましたが、すでに更地になっていて瓦礫が敷き詰めてある状態でした。しかし瓦礫をよく見ると、波型スレート板のかけら等が無造作に落ちている状態で、更地からもアスベスト粉じんが発生していることが予想されるものでした。この件は、姫路市役所の環境課に当該解体工事についての質問状を出し、市の対応のまずさを指摘し回答を求めました。回答は一定程度市の対応を反省したものでしたが、阪神淡路大震災の際に大量のアスベスト粉じんが発生した兵庫県姫路市の対応としてはお粗末なものです。震災当時のアスベストに対する行政の取り組みが数年で白紙に戻ってしまっています。行政担当者間のアスベストについての認識の共有、引継ぎなど、様々な行政レベルで繰り返される同様の欠落について、根治的な対策、システム化が必要でしょう。
10月には、京都Tホテルの近隣住民の方から、同ホテルの解体工事の際アスベストがないと説明を受けたが心配であること、市役所に問い合わせたが市役所は業者の言いなりで調査を行わないとの連絡がありました。そこで、市役所の環境対策の課に電話し、一般論としてはホテル等にはアスベストが使用されていることが多いこと、近隣住民から話があった以上市民が安心するためにも現地調査を行うべきことを話しました。そのあと解体業者に連絡し話を聞こうとしたところ、部外者に話をする義務はないとするかたくなな態度でしたが、近隣住民にはきちんと説明するように指摘したところ、再調査し住民説明会を開くとの言質を取ることができました。これは市役所からの指摘もあったものと思われます。
10月29日には前述のとおり、NHKの特集番組で、文京区のアスベスト問題、さらにはNHKの独自のアンケート調査に基づく東京都下23区営繕課のアスベスト調査の実態について、公共施設の調査が不十分であることが放送され、その反響としていくつかの相談がありました。その中で、信州大学付属松本小学校解体工事について父兄の方から、学校が工事説明を行ったが教頭を始めアスベストについて知識がない。学校にアスベスト工事の基礎的な工法をメールで送ってほしいというものがありました。地方の学校のアスベスト問題について、組織的に取り組む必要を感じました。
東京都練馬区のある区立保育園のアスベスト含有蛭石吹き付けが、適切な除去が行われずに解体されているという情報が寄せられたことから、練馬区民の方と区の営繕課に話を聞きに行きました。指摘された解体工事は、設計図面が解体と同時に廃棄されており確認することができませんでした。そこで、アスベストが使用された時期に建造された区の施設の設計図面(かなばかり図と内部仕上げ表)の情報公開を請求し、最近の区のアスベスト工事についての資料を求めました。その中に、年度内に行われるアスベスト除去工事として、区立総合教育センターがありました。同センターのアスベストの現状を確認したところ、驚いたことに事務室をはじめ、区民が利用する学習室、調理室、作業室など多くの部屋の天井に吹き付けアスベストがむき出しになっており、直接暖房機の風が当たっていました。さらに幼児コーナーやプレイ室など子供が使用する部屋の天井の吹き付けアスベストには、ボールをぶつけた跡が無数に見られました。11月18日に区長あてに「要請書」を提出、3日後に区が環境測定を実施、11月23日「総合教育センターの使用に関する提案」を区長、センターあてに提出、12月7日に区が利用者に対する説明会を開催と、慌ただしく事態が進展しました。練馬区は、区内の施設のアスベスト調査を約束しています。この総合教育センターのアスベストの件は、東京新聞、毎日新聞、朝日新聞がそれぞれ取材して記事にしています。
東京都中野区のサンプラザという建築物の購入を中野区が検討していること、中野区の警察学校跡地開発に向けて解体工事が始まっていることについて、中野区の関係各課に話をうかがいました。その結果を受け、アスネットと中野区の有志数名で中野区長にアスベストについての話し合いを設けるよう要請しました。中野サンプラザは、アスベストをふんだんに使った最後の建物であることを業者から聞いていました。また、警察学校の建築物にも大量のアスベストが使用されていることは以前から指摘されていました。双方ともに中野区は区の施設ではないので、それぞれの施設のアスベストについては承知していないとの見解でしたが、区の施設ではないにしても、区民が利用しまた近隣の施設からのアスベスト粉じん被害が発生する可能性について感心を持ち調査し区民に知らせるよう要請しています。中野区長との話し合いは1月中に実現することになっていますが、継続して区条例やアスベストマップの提案など取り組んでいきたいと思っています。
U 2002年度活動方針案
1. アスベスト早期全面禁止の実現
日本政府―厚生労働省のこの間の動きは「活動報告」で述べたとおりですが、「石綿の代替化等検討委員会」の作業は2003年2月中にもまとめられ、それほど遅くない時期に報告書の公表とともに「石綿の使用等原則禁止」の具体的な実施の方針が示されるのではないかと予想しています。実施までにはさらに、貿易を制限する措置ともなるのでWTO(世界貿易機関)への通報(3か月必要とのこと)等や、労働政策審議会等での審議、国内のパブリックコメント手続、施行にあたっての周知手続等が必要になるものと思われます。
建材には対象・禁止時期ともに一切の例外を設けさせないこと、非建材でも不要な例外を認めず、認める場合にも一定期間経過後には禁止ないし見直しをさせることなどを確保しつつ、可及的速やかな禁止の実現をめざします。
2. 健康被害対策、既存アスベスト対策の確立
坂口大臣発言に対する全国連の「声明」においても表明したとおり、禁止の実現は問題解決への最初のステップであって、
@今後増加が予想される健康被害対策、 A建築物等にすでに使用されてしまっている既存アスベスト対策を2本柱とした総合的な対策が確立されなければなりません。労働現場における管理濃度の引き下げや労災認定基準の改正は、その重要な構成部分とはなるものの、決してすべてではありません。
そうした対策の内容となるべき事項についての全国連としての提言を早急にまとめ、ひろく周知を図るとともに、政府にその実現を迫っていきます。
3. 被災者とその家族、市民等の取り組みの支援
参加団体の協力を得ながら、取り組んでいきます。とくに、増加を示している中皮腫の被災者・家族の自立自助・相互援助の体制および医療的、経済的、精神的サポート体制のあり方を検討していきます。被災者・家族の生の声を対行政交渉等に反映させるよう努力するとともに、その全国的な交流・ネットワークの形成を促進します。被災者・家族の写真展の開催により、広く世論の喚起も促す予定です。
4. アジア規模、世界規模での禁止の実現に向けた努力
世界規模でのアスベスト禁止の早期実現、とりわけアジアにおけるアスベスト禁止、被災者の権利のための運動を前進させるために努力します。
2000年9月にブラジル・オザスコで開かれた初の世界アスベスト会議に全国連から4名の代表を派遣させたことが、その後の日本における運動の前進の起爆剤になったことは疑いようがありません。いま第2回世界アスベスト会議を日本で開催できないかとの提案が全国連になされており、早急に実現の可能性を見極め、可能となれば上述した課題実現に向けた世論喚起や政府への圧力の一環として、また、アジア・世界規模での禁止の実現に向けた努力の具体化の一環として、全力で取り組みます。
5. 関係業界・団体等への働きかけ
上述した諸課題の実現ともからめて、関係業界・団体等への働きかけを積極的に行っていきます。
6. 組織の拡大・強化
石綿対策全国連絡会議の会員の拡大を図っていきます。
7. 会費等について
会費は、従来どおり、団体会員の中央単産等が年間10,000円、その他団体会員が年間5,000円、個人会員は年間2,000円とします。会費には、「アスベスト対策情報」1部の代金を含みます。
V 2002年度役員体制案
代表委員 加 藤 忠 由 (全建総連委員長)
竹 花 恭 二 (自治労副委員長)
富 山 洋 子 (日本消費者連盟運営委員長)
広 瀬 弘 忠 (東京女子大学教授)
事務局長 古 谷 杉 郎 (全国安全センター)
同次長 老 田 靖 雄 (全建総連)
草 野 義 男 (全港湾)
永 倉 冬 史 (アスベスト根絶ネットワーク)
名 取 雄 司 (労働者住民医療機関連絡会議)
運営委員 吉 澤 伸 夫 (自治労)
水 口 欣 也 (全造船機械)
西 雅 史 (全建総連)
吉 村 栄 二 (日本消費者連盟)
西 田 隆 重 (神奈川労災職業病センター)
鈴 木 剛 (全国じん肺弁護団連絡会議)
大 内 加寿子 (アスベストについて考える会)
林 充 孝 (じん肺・アスベスト被災者救済基金)
外 山 尚 紀 (東京労働安全衛生センター)
会計監査 仁 木 由紀子 (個人)
信 太 忠 二 (個人)
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石綿対策全国連絡会議(BANJAN)
〒136-0071 東京都江東区7-10-1 Zビル5階
TEL(03)3636-3882/FAX(03)3636-3881
銀行預金口座 東京労働金庫田町支店(普)9207561
石綿対策全国連絡会議
郵便振替口座 00110-2-48167 石綿対策全国連絡会議
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