1. 内外情勢に対する認識、アスベスト全面禁止の導入 要請書前文で述べたような内外の情勢を踏まえ、日本においてもクリソタイルを含めたアスベストの輸入・製造・使用等の禁止を早期に実現するようイニシアティブを発揮されたい。内外情勢に関する貴省としての認識もお聞かせ願いたい。 【回答】 国際的に禁止の流れがあるということは認識している。当省に権限が与えられている問題ではないという部分が多々あるのだが、環境省の所管している解体業、改修に関しては、その低減について、これまでも対応しているところだが、問題があればできるところからやっていきたい。 大事なのは解体時の排出のことかなと思う。実質的に出さないということが非常に大事なわけだが、どんなものが対象になって、出さない、排出しないよう(にどのよう)な作業を踏んでいかなくてはならないかという点について、施工される方々にご承知いただき、対策をとっていただくというところに力を入れていくのかなという感じを受けているところ。 平成12年度事業としては、一般の方、事業者の方向けに、各自治体でもいろいろな働きかけをしているが、そうした地方での取り組みも踏まえて、普及・啓発に努めていきたい。 ※ 普及・啓発と言っても現状はまったく不十分であり、具体的な対応を示すよう要望。例えば、アメリカの環境保護庁(EPA)のホームページには、特別の「アスベスト」のページがある。 2. 関係省庁連絡会の開催 総合的なアスベスト対策を確立するための、責任体制をはっきりとさせた、関係省庁連絡会を開催するようにされたい。 以前、アスベスト問題関係8省庁連絡会議(?)が旧環境庁を事務局として設置されていたと承知しているが、現在、どうなっているかお聞かせ願いたい。 【回答】 以前の8省庁連絡会議については、旧建設、労働、厚生、通産、文部、……、環境の8省庁で構成され、時期としては平成7年に数回開催されたと記憶している。この連絡会の開催の趣旨は、阪神・淡路大震災があり、被災地域で一斉に復旧のための建物の取り壊し工事が行われる事態に対応したものであった。こういう緊急的なものだったということもあるが、一斉に取り壊し等が始まるということは、一時にアスベストが飛散するおそれが非常に高くなってきたというようなことがあった。やはり、災害復旧と言えども、環境に影響を及ぼすようなものが一度に出るというようなことになると、問題になる可能性があるということで、被災地のモニタリングという観点で、当然、環境庁の方では測定の必要があるのではないかという認識をもったようだ。そのへんの背景があって、環境庁が事務局を受け持った次第だった。 現在はどうかというと、そういった大量の建物が一気に取り壊しされるという事態は想定されていないということもあり、また、一般環境中のアスベストの濃度がそれほど高いと想定されない、通常の平常時において、そのような体制を設ける必要があるかどうかというところについては、あまり必要性の高さはないのかなと考えている。 なお、平成9年には大気汚染防止法そのものも改正し、アスベストの排出を伴う作業についても規制を強化しているので、連絡会そのものの開催は、今のところ必要ないのではないかと考えている。 3. 大気汚染防止法に基づく建築物解体等に係るアスベスト飛散防止対策 @ 特定粉じん排出等作業を行う建設工事(特定工事)の届出件数および「(推定)カバー率」、計画変更命令、作業基準適合・作業一時停止命令、報告・検査の各件数、および、各々の違反に係る罰則適用件数を示されたい。 【回答】 平成10年度の大気汚染防止法に基づく特定粉じん排出等作業実施届出数は、881件。工事の規模要件として、建築物の延べ面積が500m2以上、アスベストの使用面積が50m2以上の解体工事を対象としたものとなっており、一方、労働安全衛生法に基づく届出があり、こちらは規模によらずすべて届出ということになっているが、そちらの方の数が厚生労働省の統計によると、1,055件。したがって、大防法の方は8〜9割カバーされている。 平成10年度の特定粉じん排出等の作業規制の遵守状況を調べたところ、計画変更命令数については13件、勧告その他の行政指導件数については1件、立入検査の実施件数は349件。なお、違反に関わる罰則の適用件数については、調査の項目としておらず、自治体から罰則が適用されたというような話もあがってきていない。 A 平成12年度の石綿飛散防止対策施策として、一般向け・事業者向け・自治体用の手引きを作成される予定とのお話であったが、その成果物を提供していただくことを含めて、平成12年度の施策についてお聞かせ願いたい。 【回答】 平成12年度について、「石綿飛散防止対策基礎調査」として、委託事業で、一般向け・事業者向け・自治体用の手引きを作成することとしていた。現在作業中で、夏くらいまでには完成する予定なので、完成のおりには見ていただきたい。また、インターネットとホームページを活用して、掲載をし、情報を提供する予定で考えている。「飛散防止」では、平成12年度の事業はそれだけ。 「飛散防止」以外では、平成2年頃から、自治体の担当部署の方向けの石綿測定の技術者研修。走査顕微鏡とか電子顕微鏡など難しい機械を使うので、そういう専門技術研修を実施している。実績としては、毎年40名程度、約10年くらい実施してきている。 B 平成13年度の石綿飛散防止対策施策の計画についてお聞かせ願いたい。合わせて、過去の施策について、別掲の一覧から漏れているものについて、ご説明いただきたい。 【回答】 吹き付け石綿に関わる飛散防止対策については、平成12年度に手引きを作って提供していくということで、一応一段落ついたものと考えている。今後については、吹き付け石綿以外の形態のアスベストについて、まだまだ飛散の状況であるとか、どんなかたちで出ていくかということも不十分ということもあるので、まだ予定が立っているわけではないが、勉強していきたいと考えている。別に、「石綿測定技術者研修」事業をやってきていることは、前述のとおり。 ※ 「石綿飛散防止対策基礎調査」事業が平成12年度で終了したということではないことを確認。 委託研究がすべて民間のシンクタンク。もっとわれわれやNPO等を交えたかたちで、研究会をやるとか考えていただきたいと要望。 ★ 38-39頁の一覧表に漏れがあるか、平成9年度の内容、等は後日確認することに。 C 建設リサイクル法の施行とも関連して、また、国土交通省における「非飛散性アスベスト含有建材の取扱い」の強化(平12.3.31営計第44号等。事前撤去、隔離、手ばらし、散水、個人保護具、清掃・後片付け、集積・運搬・輸送・廃棄物処分対策等)等も勘案して、現行法令で「非飛散性アスベスト含有建材」とされているものの解体・改修・廃棄等におけるアスベスト飛散防止対策の強化が必要であると考えられるが、いかがお考えかお聞かせ願いたい。 【回答】 これらについては、通知の対象について国土交通省に確認したところ、環境営繕部で取り扱う建物に限定しているという考えのようで、他省庁とか民間の建物を対象に入れることは考えていないという話だった。環境省としては、前述のとおり、今後の吹き付け石綿以外の形態以外のアスベストについては、さらに勉強し、必要に応じて検討していきたい。 ※ これは大気環境課の回答なので、産業廃棄物課では国土交通省の通達を知っているか確認したところ、「承知していないので想像でものを言うのは申し訳ないないが、行政としてではなく、発注者=契約当事者として出したもの、法で規制するという話とは違うのではないか」。「(非飛散性アスベスト含有建材の)大気環境上、労働安全衛生上の影響が問題にあるレベルだということになってくれば、法的な対策がとられるのではないかと、一般的には考える。国土交通省が―官庁営繕部だからその一部だと思うが―直轄工事の一部にそういう指導をしているというのは、より安全というか―より確実という言い方の方がいいかもれないが―ところの方向性を示しているのではないか」との回答だった。 D アスベスト処理工事の届出という観点からみると、労働安全衛生法、大気汚染防止法、廃棄物処理法および地方自治体の条例等に基づくものに、さらに建設リサイクル法に基づく届出が加わることになる。この際、共通する部分に関しては、最も網のかけ方の広い届出対象に斉一化するようにされたい。 【回答】 一般的には、法律はそれぞれの目的があるので、共通する部分もあろうかとは思うが、単純にもっとも網のかけ方の広いところに統一するというようなことは、法技術的には難しいのかなと考えている。例えば、労働安全衛生法の対象にはなるが、大防法の対象からは外れてしまうというところも出てきてしまう。これらのところについては、われわれの方も勉強はしていきたいと思うが、できれば個別に、どういったところが、どうなのかという指摘をいただければ、助かる。法技術的には難しいところがあるということで終わってしまうが、それをやはり打破していくうえでは、いろいろな見方があると思うので、具体的に指摘していただければありがたい。 ※ 建設リサイクル法によって「解体工事」そのものの届出が義務づけられることになるので、それを活用してアスベスト使用の有無のチェックができるのではないか、また、建設リサイクル法によってかえってアスベスト建材が中間処分場に流れ込むことにならないか危惧しており、処分場に持ち込まれる前のアスベストの分別という点からも、この問題が重要であることを指摘した。実際に対応していただいた青森県の事例でも、環境省から電話してもらった前と後では青森県の大気環境課の対応が違っている。パチンコ屋の解体工事で吹き付けアスベストがきちんと除去されないまま解体されそうになっていたものを、アスネットのメンバーが気付いたのだが、当初の県の対応は、「そんなものは現場の人に聞いてもらわなければ困る」とか、県庁のすぐ近くの現場なのに行って見もしないという対応だった。環境省からの電話の後は態度がまったく変わって、これからもどんどん通報してください、という話になった。しかし、担当の方の話では、「これは届出があっただけでもまだいい方だ」という、これが地方の現状。同じことが繰り返されないための抜本的対策が必要した。全建総連からも、実際に施工している建設職人が毎日アスベストを吸ってしまっている現実を変えていくため、最善の対策を積み重ねる必要を強調。 E 同様に、労働安全衛生法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、建設リサイクル法および地方自治体の条例等が適正に遵守されているかどうかを関係省庁・地方自治体等が共同で調査・監督する体制を確立するようにされたい。 【回答】 それぞれの法制度を所管する部門において、施行の状況についていろいろと作業をやっていると思う。われわれも、自治体にお願いして、努力しているところ。それを、さらに共同で監督する体制の必要性とか、全体的に見ることが一番望ましいということであれば検討しなければいけないだろうが、今のところ、そこまでの必要性というのはどうかな、と考えている。とくに自治体については、地方分権化の流れの中で、今の時点でどうかなと。むしろ、完全ではないので、取りこぼしもあると思われるので、行政以外の部分からこういう部分がどうだというご指摘があれば、検討しながら、みんなで解決していく方向を考えていくということになると思うので、そういう協力関係において解決していくのが望ましいのではないかと考えている。 4. 化学物質管理促進法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律) @ 同法施行に関連した通達・通知等があればお示し願いたい。 【回答】 パンフレットや事業者向けのマニュアル等はあるが、通達等はとくにない。 A 対象事業場の業種および数の見込みを示されたい。大気汚染防止法の「特定粉じん発生施設設置工場」との関係(重複状況等)についてもお聞かせ願いたい。 【回答】 正直言って届出が始まってみないとよくわからない。特定粉じん発生施設設置工場の方は、平成10年度の数字で、事業場数で247。PRTR法の事業者の要件として、常用雇用者数とアスベストの取り扱い量で決まってくるわけだが、基本的にはこれのほとんどは対象になってくるのではないかと考えているところ。 B 経済産業省・環境省の「PRTR排出量等算定マニュアル」(平成13年3月)、(社)日本石綿協会の「PRTR排出量推計マニュアル」も策定されたところであるが、PRTR対象事業者が行うアスベストに関する排出量等の具体的把握方法についてお聞かせ願いたい。 【回答】 経済産業省・環境省の「PRTR排出量等算定マニュアル」(http://www.env.go.jp/chemi/prtr/2/2index3.htmlで入手できる)は、特定の業種等に偏らず、共通の考え方のマニュアルとして作成している。日本石綿協会出だされている方は中小企業(総合)事業団のホームページ(http://www.jasmec.go.jp/kankyo/index.htm、目次のみ)でご覧になっているかと思うが、基本的にはこれにのっとったかたちで事業者が発行することになろうかと思う。 C PRTR対象業種に含まれないこととされた建設業等、対象業種であっても裾切り要件からもれる事業者(常用雇用者20人以下、年間取扱量0.5トン未満)、アスベスト含有ブレーキ・ライニング等装着車輌の道路走行等や自然界に存在する非点源の排出源等から環境中へのアスベスト排出量について、状況をどのようにお考えか、また、どのように把握されるか、独自のデータ収集の計画や利用可能と考えられるデータ等の把握状況なども含めて、お聞かせ願いたい。 【回答】 正直に言うと現状の把握が困難な状況であるということ。実際には来年の後半になるわけだが、それまでにいろいろ検討していかなければと考えている。 ※ 要請で指摘した事項に加えて、特別管理産業廃棄物として処理されているアスベスト廃棄物とそれ以外の廃棄物に含有されているアスベストを含めた廃棄物処分場からの排出量も把握する必要があることを指摘した。 ※ PRTR法では、データベースの作成と人材の育成がうたわれているが、アスベストに関しての具体的対応を質し、「アスベストに関してというより、全体としてデータベースのかたちにしてホームページ等で提供するということになる」とのことだったが、現在提供されているアスベスト関連の情報が古いことなども指摘して、最新、わかりやすく、一般に使いやすいデータの提供・更新を要望。人材の育成に関しては、「リスクコミュニケーションと言われているが、排出量のデータが公表されれば、それをどう評価するということになってくる。環境リスクの考え方を一般国民に(伝えていく)。あるいは地域住民から工場から排出量がこれくらいある、これをどうみるのか、そこでおそらく対話が必要になってくると考えられる。そうした対話を仲介するようなこと、あるいは化学物質の情報に精通している人を…。現時点では、研修をやっていきたいと考えている。物質ごとではなく、全体として」。(環境カウンセラーに関しては、担当者が出席していなかった。) 5. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 @ 建設省、通商産業省で検討されているの「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」との関連で廃掃法の見直しを検討されていないかお聞かせ願いたい。 【回答】 建設リサイクル法はすでに成立しており、法制的な整備の結果、廃棄物の処理に関する規制は廃棄物処理法で引き続き行われることになっている。 A アスベスト含有建材は「再資源化」には適さないが、現行廃掃法ではアスベスト含有建材を廃石綿と規定していないために、中間処理場に流入し、分別の際にアスベスト粉じんの飛散を防ぐことができない状況が予想される。また、安定型の廃棄物処理施設にアスベスト含有建材が廃棄されることによって、周辺環境がアスベスト粉じんに汚染されている。すべてのアスベスト含有建設廃棄物を特別管理廃棄物としての廃石綿等として取り扱われたい。 【回答】 非飛散性アスベストについては、製造・使用といった段階での推移をみながら(対応していきたい)。 B 過去、廃石綿等を受け入れている処分場の数、年度別・都道府県別の処分量等に関するデータについておうかがいしたところ、旧厚生省としてデータを集計していないとのことであったが、ぜひとも現状を把握するようにされたい。 【回答】 特別管理産業廃棄物であるアスベストを適正に処理するために、監督官庁である都道府県知事等が、厳正に指導を行っているところであり、環境省として処分量等を把握することは必ずしも必要であるとは考えていないが、アスベストの適正処理を推進することは重要だと考えており、引き続き都道府県知事等に対して助言をしていきたい。 ※ やろうと思えばできることだという指摘に対しては、「マニュフェストは、廃出事業者が廃棄物処理業者に処理を委託した場合に、委託したとおりにきちんと処理をしたかを確認するための伝票であって、問題があったような場合に自らも調べるとともに、行政にも通知するという仕組みになっている。現在のところ、必ずしもマニュフェストで行政側ががすべての流れを関知しようとしているものではない」との回答。横浜市で不渡り手形を出して倒産し、その後市が管理している中間処分場には、相当量のアスベストを含む容量を超える廃棄物が持ち込まれているという例をあげて、処分量の実態の把握とアスベスト飛散状況のモニタリングを行うべきことを要請した。産業廃棄物処分場が足りないという事実は認め、排出事業者責任が原則ということを確認しつつも、「環境省が関与して処分場ができるような仕組みを拡充していくような方向にはなっている」。 B 特別管理廃棄物としての廃石綿等に関する規制の周知・徹底を、関係者全般に対して強化されたい。 【回答】 都道府県等による指導のほか、特別管理産業廃棄物責任者に対する講習会の開催、1993年には「廃石綿等処理マニュアル」(化学日報社)を作成するなどして、適正処理について周知・徹底を図っているところである。 2-B関係一覧 [平成7年度] 構築物の解体・撤去等に係わるアスベスト飛散防止対策(CRC総合研究所) [平成8年度] 建築物解体に伴うアスベスト飛散防止対策に係る調査(富士総合研究所) アスベスト飛散防止対策検討会―建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策 →建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル [平成9年度] [平成10年度] 石綿飛散防止対策推進基礎調査(富士総合研究所) @海外における石綿規制の動向、A石綿製品の代替化の動向 石綿使用建築物事前把握手法等調査(札幌市/千葉市) アスベスト飛散防止対策検討会→マニュアル改訂 [平成11年度] 石綿飛散防止対策推進基礎調査(富士総合研究所) @大防法に係る届出の有無、A大防法の認知状況 |