(社)日本石綿協会との意見交換 トップページへ

2002.11.4
業界  業界の取り組み



(社)日本石綿協会と石綿対策全国連との意見交換
2002年9月5日14:00〜16:10

石綿対策全国連絡会議側出席者

古谷(事務局長・全国安全センター)、老田(事務局次長・全建総連)、永倉冬史(事務局次長・アスネット)、名取(事務局次長・労住医連)、大内(運営委員・アスベストを考える会)、西田(運営委員・神奈川労災職業病センター)、外山(東京労働安全衛生センター)

(社)日本石綿協会側出席者

富田(環境安全衛生委員会委員長)、朝賀(環境安全衛生委員会委員・WG員 浅見氏の代理出席)、井上、関谷(広報委員会委員長)、唐沢(広報委員会委員・調査委員会委員長)、福田(専務理事)、平井(石綿処理部会部会長)[敬称略]

※ 以下では、富田、福田氏以外の協会側出席者の発言は「協会」と記してあります。



■ 「管理使用」の原則

富田 昨年出たのは私と井上のふたりだけで、あとは全然変わってしまった。古谷さんから、私の方から先に話をと言うことなので、話させていただく。昨年の2月に私の方から協会の立場なりを話させていただいたが、その骨子―「クリソタイル石綿は管理すれば使える」という考え方に変わりはない。当然のことながら、管理の度合いとか様々なことがあることはわかっているが、いろいろなものにリスクが伴う―そのリスクをどう考えるかで立場が異なるのではないか。これは、前回と基本的に変わっていない。

■ 角閃石系石綿の問題

昨年も申し上げたが、まずひとつ、石綿の種類の問題があるのではないか。

例えば、私も古谷さんも参加した4月9日に日本産業衛生学会で発表された将来予測の研究。あれは、過去の事例を用いて数学モデルを使ってやったものだと認識している。学会の場でも質問が出たと思うが、石綿の種類がどうかという点、それと中皮腫の診断基準の問題などが取り上げられてディスカッションがなされていたと思う。

なかでも角閃石系石綿はどれくらい日本で使われたかという統計が、全然、今のところない。これはやはりいろいろな恰好から調べていく必要があるのではないか。十把ひとからげで石綿でこうですというのではなく、まずきちっとそういったところをつかまえ、かつ、曝露の実態はどういうかたちで、どういうところで使われていたかということをきちっと調査をするべきではないのか。

角閃石系については、大枠のところでつかんでいるのは、吹き付け石綿には当然使われていた。それから、保温材関係がほとんど角閃石系石綿。協会に入っていたかどうかわからないが、下水管を含めたところにもクロシドライトが使われていた。それから、建材の一部に角閃石系が使われていた。そのへんで、すべての統計をとることは難しいかと考えてはいるが、過去のある部分でだいたいこうだというものを、いまそろえつつあるところ。これは推測も含めてで、われわれの力だけではできないので、ある先生に力をお借りして、過去から平成7年―実質的には平成5年で角閃石系はやめているが―その間でどれくらいかということを出したいと思っている。

もうひとつは、これも国際レベルでもデータが全然ないのだが、発じんの度合。角閃石系と蛇紋石系での発じんの度合いがどうなのかという部分。これはやはり曝露との関連も出てくる。経験的な話だが、多分同じ量のものをやった場合には、10倍とか、10何倍くらいの発じんの違いがあるのではないか。これもきちっと定量的なデータをとっていく必要があると考えている。角閃石系の使用量の問題もさることながら、曝露という視点で見て、リスク的な部分のことも考えていかないと、本当の石綿の全体像というものが見えてこない。十把ひとからげにあれも悪い、全部悪いというのではなくて、リスクの評価をきちっとやっていくべきではなかろうかと考えている。

もうひとつ、角閃石系でも、輸入して使っているのではなく、いわゆる「不純物」で存在しているものも、非常に大きな問題になるのではないか。これがいまでも法律的に、どこまでどうなっているのかわからない部分があり、タルクはご存知だと思う。それから、バーミキュライト、アタパルジャイト、セピオライト、このへんはトレモライトというアスベストが、ものによって数%、含まれていることがわかっている。そうすると、知らずにそういうものを作業現場で使っていて、それに起因してなることも否定できないのではないか。今後そういう視点からも見ていく必要がある。

われわれもクリソタイルがこうだとか言っている割に、不明確な部分もあるので、やはりそのへんをきっと整理していくべきではないかと考えている。

■ 濃度レベル

前回も話したと思うが、過去はかなりの濃度レベルであった。日本の法規制が昭和46年―じん肺法をとれば昭和35年になるが―数値が出てきたのがそれから1年くらい後に、2mgという数値で、これは33f/cm3くらいに相当すると言われている―これが正しいかどうかはわからないが―そういう流れ。ずっと測定値できて、昭和58年、59年くらいに、管理濃度という概念が、統計論的に出てきている。濃度レベルがかなり違ってきている。当然、曝露による健康影響の問題も、かなり違ってきているのではないか。

いまの厚生労働省の管理濃度2f/cm3が、これがいいかどうかということはさておき、われわれ協会としては0.5fというのを今年1月1日から自主基準として決めているが、測定数値でいくとやはり0.1とか下回ると業界が把握できなくなるレベルになる。

過 去のレベルが33とか40、もっと実際に100fというレベルだったとすると、当然のことながらすごい曝露を受けていたことはありうる話。そういう曝露の問題もきちっと整理して考えていかなければならないと思っている。

石綿はすべて安全ということではなく、リスクは一応ある。ただ、うまく使えばリスクは回避されるという基本思想を持ちながら、いろいろな施策をいま進めているところ。

■ 代替化の方向

今回6月29日の閣議で政府見解が出された。これはご承知のとおり、中村敦夫議員が5月に質問趣意書を出したものに対する政府見解。それに伴って厚生労働大臣が、自分の私見なのか正式なものか私にはわからないが…。政府見解の中味をみると、石綿代替化ができるかどうかの方向を検討したうえで禁止措置を検討していきたいというのが、文書になっているものだと理解していて、協会としても、そういう政府見解は、それなりの受け止め方をしている。

われわれは先ほども言ったように「管理すれば使える」という観点から考えると、代替化の方向というのはやむを得ない部分かなあと。これはやはり政治的な面、それから…(しゅりょう?)…を含めたそれで判断する面があるのかなあという点は…。

代替化がどう進んでいるのかということをよく聞かれるのだが、協会は先ほど来言っているように「石綿をうまく使っていきましょう」という立場でやっているので、会員それぞれが独自にやられているとは思うが、具体的にどうなっているかとかいう調査は今のところやっていない。ただ、「管理すれば」という視点に立てば、取り扱う過程ですごくほこりが出るとか、そういうものはやめましょうよと。これは協会としても進めるべきことだし、言っている。

代替化といったときに、一般的なものの考え方になると思うが、代替するものが石綿から全く別の素材に代わる場合と、石綿の代わりになる繊維を使う場合と、ふたつにわかれるだろう。他の繊維が本当にどうなのかという議論も考えなければいけないという話になる。同時に、製造上も含めて物性の問題も当然のことながら、最近、エネルギーの問題、地球環境、資源、それから廃棄物の問題などいろいろな全体的な問題…。例えば、代替化することによって5年しかもたなくなったとすると、それはすべて廃棄物になってしまう。そういうことを総合的に勘案しながら考えていかなければいけない。ただし、使うことによって管理も本当に行き届かないような品物については、それはリスクが高くなるからやはり考えるべきであろう。

エネルギーとか地球環境的な部分を含めた全体的な問題と健康影響の問題、それから性能、さらに市場というのはやはりコストで動く部分があることは否めないので、そういう全体を考えながら、代替化できるものは当然すべきではないかと思っている。

製品リスト・使用状況

政府答弁の別添で載っている商品名と製造会社名があるわけだが、あれについては100%載っているとは、思っていない。これは非常に難しいというか、協会に加盟しているところ、アウトサイダー、やめたところ、こういういろいろな要素が出てくると、把握してくれと言われてもなかなか把握が…。

例えば、私の会社でも、ある部分は私自身がそういう部分を受け持っているから、ある程度わかる。ところが人が変わってしまったりすると、その履歴が全然残らない。まして、ここ10年くらいなら何とかなると思うが、20年、30年たってしまうと、もうその人たちはリタイアしていないとか。ある程度の規模の会社だと、5年、10年と同じ人がやっていれば、記録として残っている場合があるが、協会全体では、すべてを網羅してやるのはなかなか難しい。

とくに工業製品関係は、ありとあらゆるところに使われているので、これをつかむというのはやはり…。輸入商社がどこに売っているかということをつかまないと、われわれもつかむ道がない。ところが、輸入商社の方でも、企業秘密的な部分とか販売権とかあるのかわからないが、なかなか教えていただけない面がある。

福田 輸入商社にも、アウトサイダーもある。

富田 そう。あれも今の法的仕組みでは個人輸入も含めていろいろできる。そういう観点でいくと、多分100%ではなく、せいぜい…どれくらい?

福田 80%くらいじゃないか。

富田 80%いきますかね。

福田 あの時点でずいぶん調べたんですよ。例えば、お酒のフィルターで使っているかもしれない。では酒屋はどこか、とか。協会をやめたところで、使っているかもしれないと思えば、いま使っていますかと問い合わせたり。ただ、調査の期間が非常に短かった。中村敦夫議員からでた質問趣意書に対する回答を出す期間が。総会の時期で、ちょうど大変な時期で、えらい思いをしたのだが、あれが精一杯だった。

富田 工業製品の方はほとんど…。まだあるはず。抜けている部分がある。抜けている部分では、産業用の摩擦材の部分が全く抜けている。これは厚生労働省にも言ってある。カタログがきちんとあるものと、ないものもある。産業用製品はほとん特化製品になってしまうので、わざわざカタログを作ってというのは…。とくにブレーキの部分というのは、クレーンでもエレベーターでも安全の問題が一番大きい。そのためにはいろいろ実験をやっていって、これでOKとなったものが使われる。今はこれも代替が進んでいっていると思うが、それも検証をしたなかで使えるかどうかと。代えたはいいが、エレベータが落ちてしまったら話にならない。そういう意味で、協会で調べたときに、カタログがみつからなった部分もあったのではないか。

福田 特定の顧客にしか売っていないから、カタログにも載せていない。

富田 このリストはまだ調べる必要があるのではないかと思う。ただ、われわれもわかる範囲とわからない範囲がある。以前、石綿の輸入量と協会で使った使用量を比較して、1万トンくらい違いが出た。この1万トンがどのように使われているか、全然わからない。

福田 昨年の輸入量が7万9千トンで、今年がだいたい、年間で4万5千トンペースで進行している。

富田 そのうち協会でやっているのがどれくらいかということで、いま8割以上は占めていると思うが…。

古谷 いま協会は何社になられた?

福田 63社。

古谷 石綿処理部会の新設で増えた?石綿製品を製造している会社は?

福田 建材も含めて、50社くらいはあると思う…。石綿処理といっても会社自体はメーカーで、増えたのは3社だけ。

永倉 去年の意見交換の記録では、製造は45社ということだったが。

富田 私は、いまは30社くらいだと思っている。販売のみのところもある。協会で作業環境のデータをとっている部分でいくと、もう30社程度。合併とかで記録が散逸する場合もあるし、脱退や廃業―石綿協会で廃業は意外とあまり少ない。

福田 工業製品ではとくにそう。工業製品では社歴が100年をこえて、いまの社長で4代目というケースもある。

協会 スレートでは少しある。

富田 そういうこともあって、なかなか協会でもすべて網羅できない。専務理事の言った酒屋のフィルターも、以前に新聞で話題になったことがあったので、場合によっては使われているかもしれないということで調べた。廃棄物処分場で吸着剤として使っているという話もある。クリソタイルという石綿は中が空洞になっているので、重金属とかを濾過するとか、いい吸着剤になる。

古谷 製品は特定できている?

富田 いや、全然わからない。たぶん買ってきて、中に詰めて使っているのでは。それも可能だ。個人輸入ということはないと思うが。それから、茶道で使う灰にクリソタイルを使っている。たまたま自分の会社に茶道部あって、見ていて、あっ、これはクリソダイルだと驚いた。

永倉 問い合わせがあったなかに、クワガタを飼育するためのシートのなかに、名前は忘れたがいかにもアスベストが入っているのが使われているという話もあった。塗料に粉のまま混ぜるという話も…

富田 それは多分クリソタイルのなかでもグレードが悪い…

福田 7クラス

富田 そういうものを使う。ご存知と思うが、北海道の山部で採集している―テーリング…

古谷 あれも政府答弁の一覧表から抜けている。

富田 あれは外れてしまったのでは。建材製品、その他のどちらにも当たらなくて。われわれもそこの部分はあまり関係がない。事実としてそういうものがあるということは知っているが。

古谷 昨年、過去の分を含めた石綿含有製品のリストができないかと要請したところ、早速「石綿含有建材一覧表」を作成していただいて「せきめん」誌に掲載、現在は協会のホームページにも掲載していただいていることはありがたく思っている。今の話でも本当の実体をつかむのは難しい。それで今、厚生労働省がアンケート調査をやっており、経済産業省もつい先日調査票を送ったと聞いている。

富田 厚生労働省の方は、政府見解に添付された一覧表に記載されているものについてだけ。われわれも協会加盟会社についてはだいたいつかんでいるが、それ以上つかめと言っても、話で聞いていたりはするが、実際には難しい。工業製品にの部分ついても、アウトサイダーで抜けているのが見つかったので、厚生労働省に話してある。

古谷 それは摩擦材について?

富田 摩擦材ももちろんだが、例えばジョイントシートでいろいろ書かれているのでも、抜けている社がある。わかる範囲では、そういうフォローはしていこうと思っているが、100%というのは至難の業。

古谷 今度、経済産業省もアンケートを送ったところだと聞いたが…

富田 業界団体だけでしょう。

古谷 協会加盟以外にも送っていると言っている。

富田 わかるところだけでしょう。

福田 例えばブレーキライニングで車両用に使われている可能性はあるというような情報は差し上げている。そうすれば、経済産業省の方で車両工業界なり個別のメーカーに問い合わせて、ありそうなところにアンケートを送っているはず。

古谷 皆さんの承知している範囲の話は、すでに経済産業省や厚生労働省に話している?

福田 もちろん、そうです。

古谷 PRTRに関して環境省と話をしていて、裾切りで届出が義務づけられていない小規模・少量取扱事業所分を国が算出する推計方法について、パブリックコメント手続が行われているが、その資料を見ていて、いま話しにも出た産業廃棄物処理業についても推計をしている。過去のパイロット事業を見ても、産業廃棄物処理業からの数字は上がっていないので、この数字がどこから出てきたのか聞いたところ、環境省と経済産業省で昨年、届出外排出量を推計するためのアンケート調査をやっていて、そのなかで出てきた数字を使っているらしい。調査結果自体はまだ製本されていなくて、近々できたら送ってもらうことにしているが、パブリックコメントの資料ではデータだけを先に使ったとのこと。産業廃棄物処理場はいまの吸着剤のことかなと。過去のパイロット事業で、アスベストについて届出のあった業種では、プラスチック製品製造業…

協会 使っているとすると耐熱。昔―昭和のはじめ頃?にはソケットに使われていたという話は聞いている。

永倉 生産ラインでは使っていない?

富田 生産ラインでも、熱のかかるところは、過去も含めて使っている可能性はある。とくに紡織品関係が多いのではないか。ボイラーなどになると保温材になる。

永倉 ガラス屋さんなども?

富田 ガラスはもう基本的に工場給付品としてかなり多く使われるケース…ガラスの製造でも大物を作るのか小さい物を作るのかでも全然違ってくると思う。だんだん代替品も含めて変わってきていると思うが、一部―これはユーザー・サイドの話になるので何とも言えないが、すぐだめになってしまうからやはりアスベストの方がいいと、代わりがあってもコスト的な部分でなかなか取り替えてくれない部分もあるかに聞いている。

古谷 パイロット調査ではそれから窯業・土石製品。

協会 スレートは窯業。

古谷 あっ、そうですね。

富田 昔はアイロン、トースター、ドライヤーとか使っていた事例があるが、もう何十年も前にやめている。家電とか一般消費者向けの製品では日本の場合はわりと早く代えている。

古谷 PRTRのパイロット調査は、特定の地域でしかやってないし、1社か2社くらしかアスベストの届出は出てきていないが、それとは別のデータが出てきているということ。各々の業界から話が出てきているということなので、また、製本された調査結果が出たら検討してみたい。

■ 原則禁止の方向について

古谷 ところで、いま両役所がやっているアンケートでどうですか? 基本的に代替化が可能かどうかということだと思うが…

富田 先ほど言ったように、協会は代替化がどうこうという部分については… これは各社の対応の問題で…

古谷 いまこの製品については代替可能というような話も…ない? 例えば、去年の話との関連で言えば、スレートはどうなるだろうとか…

富田 建材(メーカー)の方に聞いた方がいいだろうが、建材についてはけっこう…ないと言ったら嘘になる話。後は先ほど言った長持ちの部分とかそういう部分とのからみも当然あるのかなと…

古谷 以前には高層ビルのエレベーターまわりだとかは無理という話を聞いた覚えもあるのだが、そういう部分も含めてか?

富田 これはたぶん変わっているんじゃないか。時間が必要だが。例えば、OKだということになっても、試験に2、3年かかるようだ。やはり、安全でないと、もし事故でも起きたらPL(製造物責任)法も含めてそれどころではなくなる。試験を繰り返して大丈夫だという検証がないといけない。代替品ができて、提案してから、OKが出るまでに当然2、3年はかかると見ておいていただいた方がよい。一応できているものはある。検証期間が必要ということ。

古谷 国土交通省と話をして、国交省と総務省、検察庁の入っている24階建ての合同庁舎を建てるのに、アスベスト含有製品はいらなかったと、営繕の人は言っている。そういうことも含めて、建材あるいは建築物を建てるのに、よほど特殊な用途でなければ、代替品がないものはないと考えている。

福田 工業用品では(代替品がないものが)あると思う。

富田 建材については何とも難しい部分―さっきの年数とかいろいろなことを考えたときにどうかという部分はあるが、(代替品が)ないとは言えない。そういう部分と、廃棄物を少なくしましょうとかいろいろ言ってきているなかでみたときに、果たして本当に全部代えていいのかという部分もひとつ検討する必要がある。何でも代えればいいというものではなく、やはりトータルにものを見たなかで、それでもやはりこれはまずいとなったらこれは代わるべきだと思う。ある部分だけをみてこれはやめようというのではなく、こっちも見てここも見て考えていくのが本来。

古谷 厚生労働大臣の発言内容は、原則使用禁止にしたいという話。これ自身について協会は…

富田 これはもう政治的な部分を含めて考えるのであって、そういう方向に行くなら、これはやむを得ない話。ただ、それは逆に言うと、最終的な消費者を含めていろいろなところに、コストアップになってつながる話になるかもしれないし。それはそれぞれが決める話で、協会としては管理すれば安全だと言っていても、市場としてそのようになればやむを得ない話ではないかと思う。

古谷 われわれは、コストダウンになることを大いに期待している。

富田 ならないでしょう。すべてコストアップになるだろう。

永倉 アスベスト製品がなくなれば、代替品同士の価格競争になるからまた違うと思うが、今のところは両方あるから…

富田 価格の見方も、イニシャルコストというものを見るのか、ライフサイクル的にコストを見るのかによっても考え方が違ってくる。

古谷 この時代、やはりライフサイクルで見ないといけないと思う。

富田 ライフサイクル―LC的な視点でいろいろなアセスを考えていく―リスクもそうだが―やはりそういう視点から考えていくことになる。石綿に限らず、すべてがそういう視点からの見方が必要になるだろうし…どうも日本はイニシャルコストが安ければというところで行ってしまう。石綿そのものが安いとしても、本当はライフサイクルではコスト的に高いかもしれない。もうひとつは、エネルギーという視点で見たら、石綿を使っていた方がエネルギー的には少なくてすむかもしれない。このへんのバランスを見なければいけないのではないか。

古谷 ますます廃棄のことも考えなければいけない。協会が禁止に賛成か反対かという聞き方はおかしいのだろうが、おそらく厚生労働省は労働安全法施行令の改正で対処することになるのだと思う。

富田 でしょうね。

古谷 そうすると、青と茶石綿についてはすでに記載されているわけだが、今度はどのようなかたちになるのか。単純に白も追加するとか全石綿とは行きそうもない。何らかの例外が残るとするとどのようなかたちになるのかなと。

■ クリソタイルの健康影響

富田 個人的考えだが、法的に言うと、政令の部分で行くのか、特化則の吹き付けのように入れていくのか、方法は2つあるのでは。ただ、協会の立場としても、クリソタイルの健康影響の部分をもう少しクリアにしていただきたい。本当にどうなのかという。古谷さんならご存知かと思うが、環境省が10年くらい前に動物実験をやっている。中災防のバイオアッセイ(研究所)を使って。これが報告されていない、未公開。0.2と2ファイバーという濃度レベルだったと思うが、たしか1年か2年くらいクリソタイルについてだけの吸入実験をした。やった結果、全然何も出てこなかった。

名取 どこ産のクリソタイル?

富田 そこまでは…されていない。

名取 よく論争になるところなので。本当にピュアなクリソタイルはどうやって確保したか。

富田 たぶんUICCを使っているのではないか。お金もかかるわけだから、本来は公表してほしい。われわれは内々に1枚のレポートだけはもらった。たぶんご存知かと思ったが。

古谷 いや私自身は知らない。

富田 スパイクタイヤもご存知のように、有害と言われていたが、実際に動物実験をやったら起こらなかった。ところ政治が決めてしまったから結局そのままでいく。公表されない。いいデータでも悪いデータでも公表してほしいというのが基本にある。

名取 出ている実験もある。

富田 注入実験では。だからプロトコルそのものがいいかどうかという部分も。きっちりレポートを見たなかで検討する必要がある。バイオアッセイはグッドラボラトリーのあれをもっているから、きちっとされている実験だろうと思っているのだが。

名取 仮にクリソタイルが問題がなかったとしても、実際に製品としてあるやつにはある程度不純物が入っていて製品としては問題ということになる。実験室レベルで本当にピュアなものをやったとしても、製品もそういうピュアなものになるのでなければ、結局リスクはある。環境省の委託研究についてははっきりしてもらわなくては困る。

大内 有害性がないということか?

富田 いや、有害性がないと言っているのではなく、そういう結果もひとつあるということと、諸外国を見ると石綿肺とか石綿肺がんの事例はかなり出ているので、それはそういうことだろう。ただ、中皮腫の問題の議論は、クリソタイルについてはまだはっきり決着はついていない。実際にグレーゾーンだ。クリソタイルの成分は珪酸マグネシウムだから、生体内に入ったら溶けるのではないかとか―溶けると言っても、大量に入ったら生態の防御機能を考えても当然残るが、ある量以下なら溶けて、排出される可能性もあるのでは。そういう視点でものを考える必要もあるのかなと。

名取 最近、中国などでちゃんと測るとピュアなクリソタイルだけだと言われるところでも、疫学的にだいぶ被害が出ているという報告も出ている。

富田 ご指摘の論文は間違っていたようだ。

名取 間違っているとお考え?

富田 いや、きちっと調べたら角閃石系もあったというこのようだ。

古谷 いろいろな役所がやった委託研究や調査研究はきちっと公表されるべきだと考える。ここのところ私たちなりにも調べてきていているが、過去のものは担当者が変わってしまっていてわからないとか…

富田 環境省のその委員会には私は出ていないので全然わからないが、他のアスベスト関係の委員会にはだいたい委員として出ているので、そんな隠すことなどはない…

古谷 旧労働省の関係は、隠すという面と、報告書を捨ててしまうと。せっかくやったものを、文書保存期間が3年間だからそれより前のものは捨てましたと言う。継続性という面、せっかくの成果はガラス張りにということで、こちらもそうしていきたいと思う。ピュアなクリソタイルの健康影響云々という話をここでこれ以上続けても何かなと。ただ、不純物の話で言うと、タルクは私たちも経験があり、バーミキュライトはやはり園芸用などですか?

■ 分析・検証方法

富田 これも、日本の生産量がいまどれくらいでとかいま調査を…ただ、すべてのバーミキュライトに入っているということではない。それと、分析方法を含めてそのへんが日本の場合はまだ全然されていない。どこまでを検出限界とするか―PRTRは0.1%以上を対象としたが、本来絶対測れっこない。数値を決めるのはいいが、検証方法の統一とかをきちっとして、同じ方法でチェックできる仕組みを作ってくれないと。代替品と言われるものを買ってきて知らずに使っていたら、実際はアスベストが入っていたという話にもなりかねない面もある。分析はこういう方法でやって、ないものはないと判定するという取り決めなり方法論を―これは経済産業省にもだいぶ前から言ってはいるが、この部分がなかなか答えてもらえない。やはり、検証方法が一番重要ではないか。入っていないということを皆さんよく言うのだが、どのような方法論で分析して、どこまで入っていないのかまず明示してほしい。アスベストだけの問題ではないが、一番困る。これは是非とも、そちらからも、定義、検証方法を…

名取 皆さんの方で調査をしていれば教えてほしいのだが、例えばある製品に入っているかどうかサンプリングをした場合に、同じボードならボードでも、ばらつきがあって

富田 ばらつきはある。

名取 1箇所とったらそこはアモサイトが何%で、クリソタイルが何%だったが、別の箇所をとったらデータが違ってしまうというような、ちょっと違ってしまうようなデータが、どうすれば出なくなるのか―この製品には入っていないと判断するにあたって。そのへんの調査はされているか? つまり、サンプリングについても、あるところをとれば確証できるというようなところの検証。

富田 スレートの方は(…?…)に入れてあればわかるので、そこまで検証しなくてよい。あと入っているかどうか調べるには、やはりばらつきがあるので、1箇所ではなく何箇所かとってみるしかない。

名取 そこらへんの検証はされていないか?

富田 していない。

名取 ぜひ一度やっていただきたい。どれだけ誤差が出てしまうのか―実際にあるようなので…

富田 分析方法で、例えばX線の精度があって定量では、1%くらいまでがいいところ。定性的には0.5%くらいまでいくのかもしれない。だいたい0.5から1%くらいまでが可能な範囲。それでもX線の分析技術の問題もかなりある。ガスクロとかを使ってやるならいいのだが、なかなか難しい部分があるので、だからアメリカなどは1%。ただアメリカはご存知のように、偏光顕微鏡を使ってやる方法論で言っているから。せいぜいそれくらいかな…

古谷 検証方法の統一といった場合、どこの役所にプッシュするのがいいのか?

富田 製品だと経済産業省だろうか。ただ厚生労働省で、例えば1%を除くとしているわけで、この1%の検証をだれがどうするのか。たぶん回答としては、企業の責任でそれを信じるしかないということになるのかもしれないが。作る方にとっては、入ってないと言っても、お客から証明を求められた場合に、自分らは自分らの分析方法でこうやってこうですという証明の仕方しかできない。ところが相手が違う方法でやって入っているとなった場合には、信用問題になる。

永倉 そういう話は実際に聞く。

古谷 セピオライトを自動車ブレーキに使っているところで、製品から検出はされないのだが、産地の話で不純物として入っているという話を聞いて、これをアスベスト含有と表示すべきかどうかという相談があった。

富田 悩むだろう。

古谷 産地にもよる?

富田 セピオライトは、トルコ産やスペイン産は入っていないようだが、中国産はかなり入ってくるケースが…不純物といっても1%を超えている。3%くらい入っているとか、ものによっては9%とか。

古谷 先ほどあげられたタルク、バーミキュライト、アタパルジャイトについても1%を超えるケースがある?

富田 あり得るのではないか。産地によるから何とも言えない。それで、タルクなどは全部粉じん則に該当して、粉じん則では質量濃度で管理濃度が決まっているので、検証方法をきちっと作っておかないとまずいのではないかという話は厚生労働省にもしている。結局、濃度レベルとかリスクとかいう視点でみていかなければならないわけだから。その前に分析方法の統一も、ずっと主張している話だが、なかなか動いてくれない。公式にどこかで検討機関を設けて決めないと混乱を招く。吹き付けについては、厚生労働省から出されたのでいいのだが、その他の製品についての検証方法を決めることは必要でないか。

■ 代替不可能な用途

古谷 少し話を戻させていただき、禁止賛成・反対は蒸し返さないが、代替化の方向がだいたいやむを得ないという流れになってきて、これは経済産業省とも話したのだが、この業界、この地域については、一気に代替化にもっていくために何らかの応援をしたりとかいうことがなければできないということがあるのであれば、そういうことを考える必要はあるのではないかと。もっとも役所の方も、仮にそういうことをやるとしても、だらだらとやることはできないし、期間を区切っていつまでにということならあり得るかもしれない。具体的に何かそういうことを考えているわけではないという話ではあったが。私たちは、この際代替可能なものはきちっと一気にやってもらいと思っていて、その点で意見が違うかもしれないが、仮に応援措置があればいけるという部分があるのなら、そうした方がよいと思っているのだが、そういう話はあるか。

協会 協会のなかではお互いが作る立場の方がたくさんいて、そこの部分はお互いのノウハウをもってやっているわけで、うちはできているといってもなかなか言わないところもあるだろうし。先ほどあったように代替の部分だけを先行して調査をしていないから。非常にありがたい話だが…あまりにも扱っている範囲が広いので、どこの業種がどうということも…そういうことでやったことはない。

古谷 禁止のやり方ともかかわるが、われわれとしては施行令で石綿と書いてしまうのが理想だが、それでいかないとすれば、いかない部分をかなりぎちぎちと規定して、その部分をどうするという話をするのが前向きだと考えている。わからないからと、何となく残してしまうとうまくない。であれば業界としてもここまでやるから応援してくれという話が…

協会 石綿の混ぜ方ひとつでも各社のノウハウがある。そこからお互いになかなか開示しないから、こういう協会のなかでもお互いにある面では市場で競争している。やっていかなければならない部分はあるかもしれないが…

古谷 建材については、含有製品でなければだめというものはないだろうと。ジョイントシートでも、多くの用途向けにはありますよね。

富田 それはもう、新設の場合は切り替えは可能だと思う。既設は、既存のものを換えていくしかたぶん…。もしそれで代えて事故が起こってしまったら大変。既設のパートは生きているかぎり必要になるのだろう。

名取 ただヨーロッパなどでは、実際にそれでも代えていったのでは。実際はどうなのか。ジョイントシートでもガスケットでも代替品は売っているわけだから。

富田 前も話したように、考え方の視点がちょっと違う。日本の場合、天井でも何でもそうだが、面がきちっとしていないといけないという概念と、向こうは、機能さえ果たせばいいと。その特殊性の違いはかなり大きい。

名取 製品に対する考え方が違うと。

富田 ええ。例えば、熱を断つ機能さえあれば形などどうでもいい。日本人は、こうきれいにしないとだめという、ユーザー・サイドがそういうことを求める。それに合わせるためにはいろいろな工夫をしていって、だから改良に改良を重ねる。

名取 美観の問題が入るということか。

富田 そう。建材の場合でも。向こうはそんなことは関係ない。

古谷 例えばジョイントシートでいまのような仕切りができるのならいいのだが、新設の場合にもどうもアスベストが入っていないとだめだというものがあるようだとか…仮にあって、それを特定できないからジョイントシートそのものが、結局いまのままで、コスト差も変わらないままといった事態を心配している。本当にだめならば、だめなものを非常に具体的に特定して、そうでないものはコスト的なものも含めて代替化する規制なり指導なりのあり方があるだろう。例えば、船舶の関係が変わった。

富田 ええ、SOLAS(海上人命安全条約)が変わった。

古谷 われわれは、過去旧運輸省と話してきた経過では、たしか1970年代後半くらいから、国内では使っていないと聞いている。

富田 あれは断熱材だろう。保温材の関係は、たしか昭和55年前後くらいに全部変わっているはず。ただ、シール材の部分はまだ使っていたのではないか。そこらへんは私どもちょっとわからないが。

古谷 そこにあるような仕切りの仕方はできるのか。例えば、何度以上の高温とか何パスカル以上の高圧向けの用途の場合にはどうしてもだめだとか。

協会 そういうやり方と、もうひとつは、例えばこういう用途のモーターだとか。そういうあれはできるのではないか。

富田 温度と圧力と液体がからむ話なので…

古谷 原子力発電所向けはどこで使っているのか。

富田 シール材。配管なしではいけないので、耐火、それから漏れてはいけない。シール材はほとんどほこりは出ない。例えばゴムで固形化されている、現時点では。気をつけなければならないのは、やはりメンテ(ナンス)のときに―まあ水をかければたぶん出ないと思うが―その部分くらいだろう。

大内 製造過程での飛散はないか。

富田 製造過程では当然、局所排気装置を設けるなどして

大内 密閉されたなかでやっているわけではない。

富田 人が入るかたちになるので…当然、囲い式のフードのかたちにはなるが。そこを通ればゴムと混ぜることになる。

古谷 SOLASで使用できるとされているのはは、摂氏350度を超える高温下または7メガパスカルを超える圧力下で、火災若しくは腐食の危険性または毒性がある液体の循環に使用される水密継手と内張り、摂氏1,000度を超える高温下で使用される軟性及び弾力性の必要な断熱材と、ロータリー式圧縮機及びロータリーポンプに使用される羽根車。

富田 今後たぶん、それぞれの部分で、この部分はできるけど、この部分はできないということがあるだろうし、ヨーロッパでこうだからと言っても日本ではそうじゃないという部分がかなり。例えば、ヨーロッパで除外措置にされている電解隔膜などは、日本では30年前にもうやめてしまっている話。それをいまでも使っているというのはどうもおかしいなというのもあるし、アメリカでも現在でも、使えるというリストがあるが、日本ではすでに代わっているものがかなりあったりする。日本で残るというのは、そういういろいろな部分を見ながらやっていって、残らざるを得ないという部分、とくに工業製品だろう。それも、ユーザーの要求もあることもあり、少しずつ代えていく。だからヨーロッパの設備や機械の構造と…日本は産業界も含めてユーザーが性能以外の部分も非常に求める。建築でも同じこと。

永倉 そういうふうにこれしかないというものに代えていくと、感触としては何%くらいまで拾うのか。

工業用製品

富田 工業製品、いまどのくらいになるだろうか。

福田 いま輸入されている石綿の、工業製品で使われている量が1%。ただし、これは解散した日本石綿製品工業会というのがあり、そこの会員内で調べたもので、アウトサイダーは入っていない。99%は工業製品以外の用途で、いかに工業製品が量的には少ないかわかる。

富田 ただ輸入品もある。

古谷 今後はそのへんの統計をとるのも石綿協会の方で引き継がれると聞いた。

福田 石綿製品工業会から、解散したけれど統計部分だけは石綿協会に移管するということになっているのだが、実際まだ手がついてはいない。

古谷 経済産業省の方から、そうお願いしたと聞いている。

福田 どんどん小さくなっている。理由のひとつは、工業製品はわずか1%だが、その1%のなかの90%はジョイントシートのようだ。その肝心のジョイントシートが海外に工場移転しているために、統計の意味をなさなくなってきている。海外で出来上がったジョイントシートが日本に入ってきているかどうかは、わからない。まだ1社か2社、国内で石綿を使ってジョイントシートを作っている会社はあるが、アウトサイダーであって会員ではない。…まだ会員でも1社か2社、残っていたか?…

古谷 禁止規定のあり方について、協会としてこうしたらいいのではというようなことを言ったり、協議したりはしていない? 個別企業対応?

富田 代替化は各社で考える。協会は先ほど言ったように、うまく使うにはどうしたらよいかというところがメイン。ただやはり、ある部分では調べなければいけないところは調べなければならないのだろうが…

協会 こういう状況になってくると、メーカーが代替製品に行かなければいけないのじゃないかと、もう自分たちも思っている。だから、方向としては、もうそっちに行かざるを得ないと思う。

永倉 コマーシャルを見てても、ノン石綿でやっているところもあるし…

協会 あれも言葉遣いでいろいろ問題がある。本当にゼロなのかどうか。

古谷 そこは絶対残ると思う。さっき富田さんが言われたような問題はありながら、法律的な仕切りは結局1%とか言うところでひとつは動くと思う。だから、仮にそれが動いたところで、では1%未満のものが本当になくなったのかどうかという検証は引き続き必要ということだと思う。

福田 こういう話がある。日本のあるメーカーがオーストラリアに機械を輸出する。石綿ジョイントシートは使ってはいけないので、仕様書には無石綿のジョイントシートが装備されていると記載されている。ところが機械を入れてみたら、所定の機能を発揮しない。それでジョイントシートだけをアスベスト入りに切り替えた。何を言わんとしているかというと、日本の工業用品のレベルは無理やり無石綿にすると下がる部分があるということ。国際競争力で負けるという状況が生まれてくる可能性があると言うこと。

大内 日本の石綿輸入量が4万5千トンレベルに減るということは、どのような部分が減ったのか。

富田 それはもう、ご存知のとおりの話なので、あえて言わなかった。そこが非常に多かったのは事実。

福田 あとは景気もある。

大内 その他の会社、工業製品とか他の部門での代替化が進んだことによる減少では?

福田 平成13年度の石綿輸入量が7万9千トンで、石綿製品工業界で使ったのが790トン。ちょうど1%。ほとんど影響がない。

富田 工業製品はもともとそう。ただ、あっちこっちあるので…

古谷 貿易統計で気になるのは、自動車を含めたブレーキライニング。量は多いのだが、そのうちアスベスト含有製品がどれくらいなのかがとんとわからない。

富田 自動車は全部代わっている。ただし、新車。

古谷 その中古車の交換用。

富田 あと5年くらい分の貯め置きをして、昨年4月をもって(生産を)打ち切ったと聞いている。中古車は、型式の検定が必要だから、代替品に取り替えられない。事故が起こったらまずいから。

古谷 PRTRのパイロット事業でも、自動車整備業は出てくる。

富田 あとは車両用―列車でもある部分はまだ一部分あるかもしれないし、飛行機も…いろいろなブレーキがあるから、このへんはちょっと私どもでは全然把握できない。何らかの面で止めるところがないとという部分は、何らかのかたちで使われているか、代わっているかだろう。

過去の使用実態

古谷 話をお聞きして、石綿が使われなくなったとしても、どういうかたちにしろ石綿協会がやることはありそうだ。先ほどの話で、角閃石系石綿のことをいろいろ調べられているなんてことを、どこかでまとまるのか?

富田 できるだけそうしたい。いろいろな仕事があるのでそれにばかりかかっていられないが、遅くとも今年か来年にかけてきちっと―推測も入ってだが―やっていく必要があると…

古谷 パブリッシュできそうか。

富田 協会というかたちになるか、先生と一緒にやってというかたちになるか、いまの段階では言えないが、いずれにしろ何らかのかたちでしていきたい。

名取 これは1900年初頭まで戻ってということか。

富田 いや、せいぜいできて1950、60年くらいからということになるだろう。

名取 戦後の再輸入しはじめた頃からということ。

大内 どういう方法でクロシドライトの輸入量とかを調べるのか。

富田 それは先ほど言ったように、これはだいたいこういう用途にしか使われていないだろうと、若干統計の残っている部分とか、含有率とかもある程度推測していけば、ある程度推測可能かなと。例えば、下水道関係のある時期の統計はある。その時のクロシドライトの含有率がある程度わかっているとすると、生産量とかけていくと、この年度はどうだといけるのではないか。そういうところから推測していこうと考えている。下水管がいまどのように解体等されているかわからないが、あれはクロシドライトだから…

名取 昔の製品をかなり大量に調べていられると言われたが、これも同じ調査か。

富田 細かな部分についてはわからないが、大雑把な用途で大量に使われているというのはだいたいわかる。下水管に保温材、吹き付け。建材はだいたいクリソタイルだということがはっきりしている。

大内 輸出元の国のデータは使えないか。

富田 それはある程度使える…難しいか。アモサイトはだいたい南アフリカしかないからこれははっきりしている。クロシドライトは…

名取 南ア、ジンバブエ、オーストラリアあたり?

富田 角閃石系石綿が全石綿輸入量の20%いくことはないと思う、たぶん。

大内 でも戦後はクロシドライトやアモサイトはどんどん減っている?

富田 健康影響とかいろいろあって業界が自主的にやめていった。クロシドライトがやめたのは一番早く、昭和49年か50年くらいにかけてやめて、まあ下水管でその後も若干あって、最終的にクロシドライトがずっと残ったのは温泉の配管。そこの部分だけが昭和61年か62年まで使われた。そのへんはだいぶはっきりしているので、つかめるのではないか。

石綿含有建材の解体・廃棄対策等

古谷 そういう今からでもつかめる限りで過去の実態を調査なさるという話と、一方で、新設された処理部会関係の話などは、また今後ともいろいろなかたちでおつきあいさせていただくことが多かろうと思う。

永倉 経済産業省のアンケートだったか忘れたが、製造業者で、製造した端材を安定型処分場に捨てるという話があり、気になったのは、安定型に捨てるというのは中間処理施設に入るということか? アスベストの解体業者のヒアリングなどをしても、だいたいアスベスト建材については、安定型に入る前に中間施設でガリガリに破砕され減量されていくという話があり、そういうルートをたどっているかどうか。つまり、中間施設で破砕されて粉じんが発生するような危険があるのかどうか。

富田 そのまま行っているのではないか? 破砕能力が2.5キロワット以上になると大気汚染防止法に当然引っかかってくるから、そうするとコスト的に費用がかかることになるから、そんなことは…はっきりはわからないが。

永倉 気になっているもので、そういうことを調査する機会があれば…

富田 これは難しい。廃棄物処理業者の調査というのはなかなか。工場で発生する端材は何とかなるかもしれないが、建設現場から発生するものとなると…

永倉 もうひとつは石綿処理業界の話で、現場を歩いて話を聞いてみると、解体工事前のアスベスト調査はほとんどやられていない。法律違反なわけだが。そのへんをきちんとやるような動きとか活動を処理業界の方でやっていただけないか。

富田 質問のなかでも許認可制の話もあったが、本当はきちっと法律を守ってやっていればいいのだが、実際はたぶんそういうことはないだろうなと

永倉 感じとしては9割は守っていないと思う。

富田 私が思っているのは、まずあるかないかを調査するコンサルタントのような機関なり人の養成という部分が一番重要なのではないか。どの部位にどう使われているか、分析も含めたなかで、そういう養成をしていかないと、知らないでやるということはそれによって曝露するということ。禁止するしないとは全く別の話として考えてほしいが、少なくとも私自身、いかにそういう人たちの病気を少なくするかということを基本的にずっともっているので、そのためには、そういうことがわかる仕組みを作るべきではないか。壊すときに、こういうところにこうあるだろうといったコンサルトを含めたことができるような、それを試験とか講習とか何なりのかたちで養成するような仕組み作りが必要不可欠ではないか。

名取 事前調査のできる資格をもった人ということ? 建材とか、必要ですね。

永倉 残念ながら労働者の被害は今後増えていくと思う。それを防ぐには、工事をやる前に、どこまでチェックできるか。その一点にかなりかかってくる。

富田 そういうことを考えていくべきだと思うし、過去の過ちを繰り返すべきではない。

名取 そうすると、ひとつは注文だが、非飛散性アスベストという言い方自体がちょっと適切でない。建材であっても、吹き付け以外は非飛散性という言葉を使いすぎているために、改築・解体でも安全だと誤解されている方がいる。これはやはりアスベスト建材ときちんと言っていただいて、非飛散性という言い方は誤解を招くということは言っておきたい。

富田 いわゆる英語のフライアブルとノンフライアブルの使い分けで、砕けやすいものが吹き付けや保温材だということがILOの議論でもあって、それと違うという意味。日本語にどう訳すかという問題もあるが、飛ぶかどうかではなく、砕けやすいかそうでないか。

名取 実際にゼネコンの安全担当者が、いや建材から飛ぶことがあるのですかと私たちに聞き返す、というような誤解をされているような場合もあるので、そのへんは注意していただきたい。古谷 こちらは、「いわゆる非飛散性」とか「非飛散性とされている」という使い方をしている。われわれは何らかのライセンス制が必要と思うが、何かをベースにと考えたときに、旧建設省の話だとアスベスト処理を含めて比較的教育訓練をよくやっているのは全解工連だと言っている。石綿協会ないし処理部会と何らかの関連はない?

協会 そういう団体があるのですか?

富田 ただ国土交通省の監修で平成14年版の「建築・解体工事共通仕様書」が出ていて、その管理指針を含めて原案の検討からわれわれも参画しているが、ひとつは事前解体が前提とされている。建物を壊す前に、成形板を先に処理してからと。そういう場合に、成形板だけではないかもしれないが、そういう部分でいろいろチェックができる機構がないと…

永倉 そう。そこで止めないと、そこから先が止められない。最後のチャンスだ。

富田 そうなんです。

古谷 建設リサイクル法によって、解体業を業として役所が初めて取り込んだわけだが、いま認められているかたちで業のすべてがアスベスト処理を適正に行えるとは思わない。そこをどう担保させていくかということを考えている。

協会 大手ゼネコンは少なくとも事前の含有建材のチェックはしている。

富田 大手はよくても、解体には大きなビルから小さなビルまであり、一概には言えない。全体でどうかという視点でものを見ていく必要がある。

永倉 大手の話を聞くと、そうやって見積もりを出すと高くついてなかなか受注に至らないという話もある。第三者がチェックして、だれが見てもその見積もりが当たり前なんだという…

富田 そこにどうしてもコストの問題が入ってくる。

永倉 たんにコストの問題でなく、アスベストを隠すようなコストの避け方も現実に出てきている。

富田 それはまずい。管理というのは、濡らしたりいろいろなことをしながらほこりを抑えてやるということで、それによって将来その人たちからの疾病のリスクが少なくなるというのが基本的考え方だ。

永倉 事前のコンペでアスベストが入っているという調査を出したところには発注がなく、というケースがある。

富田 これは難しい。

永倉 難しい問題なので、石綿処理業界のようなところで一定の基準というか、事前チェックをする人の養成とか…

富田 そういうことはちょっと考えたいなと思っている。もうひとつ資格という問題では、特化則の作業主任者がいいのではとか、特別管理作業廃棄物管理担当者というのもあるが、特化則作業主任者については、石綿だけの作業主任者の研修ではないので、全然関係のない講習みたいになってしまう。アスベストについての作業主任者制度に変えるとかしないと…

老田 全建総連は常にそのことを言っている。だいたい特化則の作業主任者は、現場でやっている解体業者の知識では、言わば化学の世界だから取れない。石綿を取り扱う作業主任者、建物を建てたり壊したりするときには足場の作業主任者があったり、組立の作業主任者であったり、土留めの作業主任者があるのだから、石綿の作業主任者がない方がおかしい。では現場に何人の特化則作業主任者が配置されているのかと聞けば、答えようがない。そこは全く共通するから、そちらでもぜひやっていただきたい。

古谷 いまのような話や、ライセンスがすぐに無理でも、日本建築センターの技術審査を使うということも考えられるかもしれないが―これも格差がありそうだが、ともかく何らかの担保をしないと。この間われわれが言っているのは、その事前確認ともうひとつ第三者監査。ちゃんとやっていますという自己申告だけでは危ない。その点では、石綿協会の処理部会では相互監査をされているということも含めて、ここらへんの話はどういうかたちかまた機会をもてたらいいですね。

富田 日本の法体系がひとつのあれによって全部やってしまう―アメリカにしてもヨーロッパにしても、アスベストはアスベストについての規則というかたちになっている。

(★労働安全衛生法施行令の改正によって、クロシドライトとアモサイトが製造等禁止とされれ、条文上は両者に労働安全衛生法令の規制がかからなくなって以降の、既存のクロシドライト・アモサイトに関連した作業に対する法令規制に関する若干の解釈議論が行なわれたが、巻末の資料を参考にされたい。)

永倉 石綿協会の方で、これから石綿が使われなくなって役割が減ってくると言われる部分と、逆に、処理業界の方では今後取り組むべきことが多い。そういう意味で力を発揮していただきたいし、情報も交換していただきたい。

古谷 既存石綿対策の関係では私たちもいろいろ役所に要望するが、なかなか聞いてもらえない。石綿の無害化事業などについても…

富田 非石綿化については、今後もう少し考えなければいけない部分が…クリソタイルについては800度を超えると、結晶質がとんでしまって別のもに変わるという事実ははっきりしている。ただ例えば、板状に全部含まれたときにその温度で全部いくかという部分は、これから検証もしなければいけないだろう。原綿ではたしかに言えているのだが…もうひとつは、角閃石系の方がどうかというデータがあまりないので、実験でも熱がどれくらいなら変わってしまうのかいう部分も検証する必要がある。

古谷 いま溶融処理するなかでの、青や茶が含まれることによるトラブルとかはあるのか。

富田 溶融の場合はとくにない。溶融してしまえば。ただ、何も使わないものに溶融するということは、エネルギーやCO2とかを全部考えると、そんな無駄なことを本当に全部やっていいものかということもあるし、やはり適切な方法で完全に変われば、それはそれで意味合いが出てくると思う。溶融というのはひとつの手段だが、コストが高いからなかなかやれないとか、やってもエネルギーを使ってしまう。だからそれがもう少し前倒しでもできるのであれば、そういう方が両方にとっていい方法かもしれない。そういう部分での研究は今後もしていきたい。

永倉 処分場の問題も…

富田 そう。処分場も今後少なくなるとかいろいろ考えなければいけないし、これからの問題なので、これは時間がかかるかもしれないが、経済産業省等とも相談しながら何らかのかたちで進めていきたいと思う。それから、先ほどの石綿処理の適切な工事をやる仕組み作りを含めて、考えていく…

協会 真剣に処理部会でもやっているのだが、(…一部聞き取れず…)くやしい思いをしているケースもある、現実には。役所の代わりにチェックにまわってもいいと提案をしたりもしているが、現状のなかではなかなか…

富田 それと、石綿製品と言ってもいろいろあって、アメリカなどでは、3段階とか、物によっての管理の仕方が異なっていて―それは全部コストに跳ね返ってくるわけだが、全部一律で同じやり方でやってよいかという―これはリスクとのからみで考えなければならない話になるが、やはり各々のリスクレベルに応じた管理手法なりというものの確立も考えていく必要がある。現実にやらなければそれだけ曝露者が増えるわけだから、理想論ですますわけにはいかず、コストとの兼ね合いも考えながら、レベル分けでやっていくということも視野に入れていく必要があるのではないか。

古谷 そういう意味では、何らかのかたちで禁止が導入されるということは、新たなステージになるわけだから、新しいステージにおける管理のあり方の重点を本来変えるべきだ。各役所にまたがっているものを。禁止の話が出て、大気とか廃棄とかでも若干元気が出てきたかなとも感じているのだが、そうでもない? とくに廃棄の方はこれまでの対応が悪かった。

富田 いまの日本の廃棄物処理法については、アスベストについては基本的に管理型にする必要はないと考えている。欧米でもそうだが、ただし、埋めたところに2、3メートルのボードをして、どこに埋めたかを明確にする。アスベストは地下水を汚染するわけではないから、欧米の方がリーズナブルなものの考え方をしている。日本の場合は、特定有害性で管理型ということにしているが、あれはただ水処理の問題だけであって…

永倉 ただ日本の安定型は、がしゃがしゃクラッシャーで砕いてしまうのが多いので、それは困る。

富田 それがある。ただ穴を掘って埋めたのでよい。そのかわり、ちゃんとこの部分に埋めたという表示をして、再度掘り返しはしないという注意をする。そういう仕組みで…

古谷 (アスベスト含有)建材の処理はそういうことを考えていかないともう無理だと思う。

富田 そう思うが、法律的に難しい部分があるみたいで…。

大内 昨年、パンフレットに石綿の表示をされたいという要望をしたが、協会として会員にそういうことを伝えている?

富田 それは当然、昨年の要望を受けてやっている。前も言ったが、基本的に産業界向けの部分が圧倒的に多い。一般消費者向けは屋根材とかはあるが。たぶん一般消費者向けのカタログというのは作っていないと思う。もしあれば教えていただきたい。

協会 一般消費者向けのものには、各社、「a」マークを入れている。

大内 石綿の表示が5ミリ四方くらいで小さくて、よく見ないと気がつかないのも多いので、もう少し大きくしてほしいということと、カタログでノンアスベスト製品と書かれているもの以外はアスベスト含有となっていて、個々の製品のところにアスベスト含有の表示がないものもある。それと、インターネットでも建材の宣伝を拝見するが、そこにアスベストの表示が出ていない。だから、カタログだけではなく、いろいろな一般の人が見るところでは、アスベストの表示を徹底してほしい。

富田 ただインターネットを含めてやるかどうかは企業それぞれの問題なので、協会としてどうのこうのとは…カタログについては、昨年の要望もあったし、指示をしているが、インターネットは出さない企業もあるし、そこまではちょっと言いにくい。

大内 しかし、わからない…

富田 それは企業姿勢の問題になると思う。われわれとしては、製品にはaマークをということと、カタログについてはやっているところとそうでないところがあり、協会として明確に言ってなかったので、カタログには今後ちゃんとしなさいという指示をした。インターネットということになると各社の問題だろう。カタログは、ないというところはまあないと思うので、これはきちっとやってもらわなければいけないが。

大内 インターネットでも製品カタログみたいになっている。

富田 協会としていうことになると、何とも言い難い部分がある。

古谷 少なくともこの意見交換の場で、そういう話が出たということは各社に伝えていただきたい。

富田 はい。それは委員会のメンバーもいるので。

古谷 とくに建材については、アスベスト含有建材が残り続けるという前提の議論ではなく、来年にはなくなっているものと考えたい。

協会 建材各社、みなそう思っているとは思う。ただ先ほどもあったように、コストのからみだとか。それと、物によっては非常に大きな投資を必要とする。中小がこういう時期にそういう投資に耐えられないから事業から撤退しなければいけないというようなことも、場合によってはありうる。

永倉 むしろ国の支援とか融資があった方が?

協会 これだけ市場が小さくなると、融資を受けても返せるかどうかという問題もある。さっきもあったが、東南アジア等からどんどん物が入ってしまう。そちらの方が製造業にとっては非常に大きな脅威だ。そちらは止められない。例えば、A社という会社が、日本にも向こうにも工場をもっている―おそらく海外の方がコストは安いと思う、そうすると国内はしぼんでくるという話になる。それでは国内の中小はなくなるかと言うと、融資とか何とかいう以前に、事業そのものが、これだけ製造業が国外に出ていくと、なかなかつらい。そのへんが大きな問題だ。

■ 協会の社会的責任

名取 話は変わるが、アスベスト関連の疾病は、最近増えてきている。現在のところ、皆さんのところで製造に携わった方々にも出ていると思う。その場合には、労災の制度があるとか、ある程度そういう方が救済される道があるわけだが、先ほども話が出たが、知らないでその製品を日曜大工で使ってしまったとか―それでなった方の経験が私も実際にある、それから、吹き付けのそばでとか環境でなるとか。そういうことでの健康障害は、あまり目に見えにくいがどうも一定量あるようだ。そこらへんの健康要害について、企業の責任として、どんなふうにお考えか聞かせていただければ聞かせていただきたいし、答えにくい質問だが。

富田 協会としては、そういうところは全然議論もしていない。ただ先ほども言ったように、管理という視点からどうしていったらいいかという視点でのなかでやっていて、それは各社まかせというか、過去の協会を脱退した会社もそうだと思うが、それぞれの各社で対応していく。そういう意味での情報交換というのは全くやっていない。

名取 健康影響が出た場合ということ?

富田 ええ。だから、それはそれぞれの社で対応という恰好にたぶん…議論したことも一切ないので、実態は全然わからない。

名取 できたら。各社、自らの従業員はある程度それなりの制度で守られてきた面があると思う。そこから落ちているような方が増えていくだろうと思う。そのへんについてどのように考えるのかということは、是非おうかがいしたい。

富田 それよりも先ほども言ったように脱退していく方が多くなってしまったら、協会をどうしていくのかというところがもうひとつ考えなければならないところなので…

老田 脱退されるというのは大変な話だ。過去のデータが失われることにもなる。それは行政の方で何とかできないのか?

福田 昨年度、先行きの財政不安をなくそうということで、大幅な会費の改定を行なったところ。いま残っている会員で、多いところは前の12倍も会費が増えた。もう石綿はどんどん使わなくなっている会員がいっぱいいるのにもかかわらず、なぜ石綿協会を残すか。それは、過去の負債に対する責任を果たそうではないかというのが基盤だ。社会的責任を果たそうという意志。

名取 ちゃんとそこはしていただかないといけませんね。

老田 社会的責任を果たすためには、過去のデータをちゃんと管理しておかなければならない。脱退だけでなく倒産などという場合もあるだろうが。

富田 協会もどこまで強制力があるかという部分もあるし、このへんはやはり行政サイドでもある程度考えてもらわなければいけない部分も出てくると思う。本当はそういう人たちにも、きちっと情報をとらえて情報公開していく仕組みづくりというのもやはり重要なことではないかと思う。

あとはあまり時間もないが、PRTR初年度の排出量推計という質問があったが、あれは現在集計中。まとめた段階で当然、機関紙でこういう状況であったということを出したいと考えている。

古谷 マニュアルも出ていて加盟会社についてはそれに沿ってきちんとやられるんだろうとは思ってはいるが、それ以外の部分がどうなるかということと…

富田 そうですね。10月か11月に国からの報告が出てきて、それとの比較なども出てくるだろうし…

古谷 それと聞いておられるかもしれないが、環境省の方では、裾切り以外に塗料の関係は業界から基礎データが得られるので推計をするとのことだが、それ以外のことは今回はデータがそろわないのでやらないが、データや推計方法に関する情報があればほしいと言っていた。とくに、建築物の解体工事関係の推計はできないものかとも。

富田 先ほどジョイントシートの話が出たが、抜き屋さんのことも考えた方がいい。夫婦でやっているようなところが、全国にかなりあって、全部届出の対象外。

永倉 どこどこの地域に多いとか、傾向はないのか。

富田 よくわからない。業界は材料を売る方だから、それを買ってきて、型抜きする。

福田 だいたい工業地帯の周辺だろう。

富田 そうしたら、ひとつはインターネットの話があったが、こういう話が出たという話はするが、これは強制がどこまでできるかという問題があるので、あまり期待はしないでいただきたい。それから、解体の事前チェックとかの問題については、今後ともきちっと考えながらやっていかなければいけないと思っているし、それと、わかる範囲で角閃石系がどれくらい使われたかという調査も進めていく。それと同時に、角閃石系の発じんの度合いがどうなのかというデータがないので、このへんの基礎的なところもやっていきたい。あと、今回はあまり宿題がないようだが…

古谷 今回はひとつには、禁止の話が出て、ただしアンケート等の最中で中味はまだ決まっていないという段階で、各社と業界団体それぞれの立場もあるのだろうが、われわれとしては何度も言っているように、きちっと期間も決めて禁止を実行されることを希望している。そのときにできるならば業界でも各社でも、同じ方向の話が出ればうまく進むのかなと思うので、それは要請をしておく。どんなかたちにしろ、規制、禁止は進むと思う。そういうなかでも、協会が使命を感じて業界団体として残るというもとでは、今日のこの場で宿題がいくつということではなく、新しい状況のなかで勉強したり、お話ししたいこともある…

富田 立場は違っても、協力しあえることは協力しないといけないと思う。

古谷 当面はむしろ、そういうことでばたばた動くなかで、ちょこちょこと質問させていただくこともあるかもしれないのでそれはお願いして、処理や無害化、皆さんの研究の成果などについては、またあらためて何らかの場を設けていただきたいと思う。

富田 協会としてはだいたい機関紙を含めて公開するというのが基本的スタンスで、隠すというつもりは全然ないので、その点だけは信じていただきたい。



(社)日本石綿協会

● 平成13年度事業報告


平成13年度事業にあっては、計画に従い21世紀にはいった最初の年度を念頭に、当協会の適正な事業活動基盤の確保を重点に踏まえ、新規事業は控えるとともに、継続事業にあっても見直しを行った。

そして主だったことは、

1. 東京都中央区銀座の事務所を引き払い、東京都港区芝へ転居した。転居により借室費負担が軽減される。事務所移転にかかわる定款改正も滞りなく完了した。

2. 本協会財政見直しの結果会費規則の改正が決まり平成14年度から実施する。

3. 機関紙「せきめん」の発行、送付先、購読料等の見直し改訂実施する。

4. 環境安全衛生研修会の開催に当たって、参加費の徴収および会員外の参加があった。

5. AIA情報の激減もあって、AIA部会を廃止し総務部会扱いとし、会費にあっては、次期から半額とすることが決まった。

6. そして、ホームページの開設が決まり本年度中に準備完了し検収をし、平成14年度からホームページによる本協会の情報提供公開が始まる

等となっている。

平成14年度事業計画

平成14年度事業計画にあっては、前年度事業実績を踏まえて継続の必要な事業にあっては継続するが適宜見直しを行うこととする。事業の推進に当たっては広く会員の参加協力を得ることとし、本協会の財政運営にあっては、緊縮財政を堅持しつつ会費規則改正及び事業の方向変換に見合う事業を積極的に実施することとする。そして

各部会、委員会が事業推進を担うことを基本として、各部会又は委員会と連携して、事業実施に当たる。それぞれの主要な重点事項は、次のとおりである。

総務部会にあっては、それ自体が事業を行うものではないが、

1. 本協会事業転換の支援

2. AIAに関する事項の対応等

石綿処理部会(新設)にあっては、

1. 石綿処理に関する官公庁、団体に対する協力、広報

2. 除去技術に関する研究、除去工事の相互監査

3. 審査証明事業に関する諸事業等

環境安全衛生委員会にあっては、

1. 労働衛生行政、環境行政、建設行政等の規制動向情報の収集、考察、周知

2. PRTR法に関わる報告届出フォローアップ、適正化指導の徹底

3. リサイクル化等技術開発に関する情報収集、考察、新技術開発計画の検討

4. 研修会等の開催等

広報委員会にあっては、

1. 機関紙「せきめん」編集、発行

2. ホームページ提供情報編集、更改等

調査委員会にあっては、

1. 海外情報の収集、整理、翻訳、提供等

石綿処理部会の事業について

平成14年から新設される「石綿処理部会」の事業目的は、「石綿に関する正しい知識、情報に基づき、処理技術の向上を図ると共に適正な石綿処理を普及、推進する」ことにある。

石綿処理部会は吹付石綿対策研究会と監査委員会の2つの委員会から成る。

以下に石綿処理部会の具体的な事業について説明する。

1. 石綿処理に関する官公庁(環境省・国土交通省・住都交団等)、団体(建設関連団体)に関する情報提供協力。

2. 一般社会に対する石綿の処理に関する啓蒙・広報。

3. 石綿の除去技術に関する研究・開発、及び除去工事の相互監査による技術の維持・向上。

4. 審査証明事業に関する事業、とくに(財)日本建築センターに対し、年1回の除去工事実績及びデータ報告、除去技術変更の届出等。

以上の他に最近の傾向として、石綿含有建材(飛散性、非飛散性)の廃棄処理についての法制化の動きが出てきており、環境省に対する実施調査やアンケート協力も始まった。又、石綿廃棄物処理場が不足する現状では、本協会の石綿の無害化事業について関心が高い。

※ 当日提供された資料に、ホームページ( http://www.jaasc.or.jp/)から「平成13年度事業報告」を追加し、「組織図」は省略した。



◆資料


平成7年2月20日付け基発第76号
「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び労働安全衛生規則及び
特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令の施行について」



第1 労働安全衛生法施行令の一部改正関係

T 改正の要点

1. 製造等が禁止される有害物として、石綿のうちのアモサイト及びクロシドライトを追加したこと(第16条関係)。

3(2) 平成7年4月1日前に製造され又は輸入されたアモサイト、クロシドライト又はこれらの含有物(以下「アモサイト等」という。)は、労働安全衛生法(以下「法」という。)第55条の規定は適用しないこと。なお、その際には、作業主任者の選任等従前とられていた措置を講じること(附則第3条及び第4条第1項関係)。

(3) 平成7年4月1日前にアモサイト等を試験研究のために製造し又は使用している者については、平成7年6月30日までの間は、改正後の労働安全衛生法施行令第16条第2項の要件に該当しない場合にも、当該アモサイト等を製造し、又は使用することができること(附則第4条第2項関係)。

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平成7年3月27日け基発第145号
「作業環境評価基準等の一部改正について」



(2) 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成7年政令第9号。以下「改正政令」という。)により、労働安全衛生法施行令(以下「施行令」という。)別表第3第2号の4の「石綿」からアモサイト及びクロシドライトが除かれたことに伴い、規定の整備を行なったものであること。

なお、改正政令附則第3条において、改正政令の施行日(平成7年4月1日)前に製造され又は輸入されたアモサイト、クロシドライト又はこれらの含有物(以下「アモサイト等」という。)に対する労働安全衛生法第65条第1項の作業環境測定の規定の適用についてはなお従前の例によることとされていることから、平成7年4月1日以降においてアモサイト等に係る作業環境測定を実施した場合には、従前と同様、「5ミクロン以上の繊維として2本毎立法センチメートル(クロシドライトにあっては0.2本毎立法センチメートル)」を管理濃度として評価するものであること。



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