(社)日本石綿協会との意見交換 トップページへ

2002.1.3
業界  業界の取り組み



(社)日本石綿協会と石綿対策全国連との交渉記録
 2001年2月9日10:00-12:00
日本ビルディングセンター「銀座アクトプラザ」


■ 石綿対策全国連側出席者―10名

富山洋子(代表委員、日本消費者連盟運営委員長)
古谷杉郎(事務局長、全国安全センター事務局長)
老田靖雄(事務局次長、全建総連労働対策部長)
永倉冬史(事務局次長、アスベスト根絶ネットワーク代表)
大内加寿子(運営委員、アスベストについて考える会)
西田隆重(運営委員、神奈川労災職業病センター)
林充孝(運営委員、じん肺・アスベスト被災者救済基金)
外山尚紀(東京労働安全衛生センター)
和島美佐男(全建総連青森県連会長)


■ (社)日本石綿協会側出席者―6名

(協会を代表しているので名字のみで、所属企業名も名乗らないということだった。敬称略)

事務局長・星野圭司
環境安全衛生委員会委員長・富田
広報委員長・橋本
青木、北島、井上


※ 上記出席者の自己紹介の後、富田氏から、要請書の5項目への直接の回答ではなく、協会の「基調」(的考え方)の発言があり、その後、星野氏に若干の協会の説明をしてもらってから、ディスカッションを行い、最後に富田氏が、議論の中で協会側が検討を約束した点を確認した。


富田「(社)日本石綿協会の基調」

・ 個人的には、1986年のILO石綿条約の議論に使用者側として参加して以来の関わり。
(1) 協会の基本的スタンスは、「管理して使用すれば安全」
(2) 一番大きな問題は過去の問題


@ 過去の濃度レベルの高さ

・ 日本における石綿規制が行われたのは、昭和35年じん肺法、昭和46年(労働基準法下)特化則(特定化学物質等障害予防規則)、昭和47年労働安全衛生法制定。

・ その間の石綿の規制基準、濃度レベルが、当時は知識がなかったせいもあり、重量で2mg/m3(立米)という数値基準。

・ いまはf/ccという濃度レベルの基準でいっているが、イギリス等の考えでいくと、2f(/cc)=0.12mg/m3。自分も技術屋なので、これが正しいかどうかちょっと疑問のところもあるが、それをベースにすると、30数fという濃度レベルが基準になっていた。

・ いまさら言っても仕方ない話だが、やはりすごい曝露だったであろう。そこから病人が出ないというのは逆に(おかしい)。知識がなかったからやむを得ないといった部分があるのかもしれないが、そういうことで曝露した人から疾病は出ざるを得ない。

・ そういう過去の問題を今現在も引きずっている。

A 蛇紋石系と角閃石系

・ もうひとつ大きな問題は、蛇紋石系と角閃石系の知見が当時なかった。

・ クロシドライト(青石綿)については、ある業界では昭和49年くらいにやめていたが、最終的にやめたのは、1986年にILO石綿条約の中に青石綿禁止という項目が入って、その次の年くらいに全面的に業界としてやめた。

・ アモサイト(茶石綿)については、これもいろいろな経過があるが、基本的には平成4(1992)年にやめた。

・ 当然、クロシドライト、アモサイトに曝露した人からは病気は―可能性として、リスクの問題として考えた場合には、あるのではないか。

・ これからもこ(過去)の問題は増えるだろうし、

B 吹き付け

・ われわれもわからなかったという部分もあるのだが、本当の悲劇は、吹き付けアスベストを施工した人たちの問題と、

・ 現に今まだ吹き付けアスベストが存在していて、それを今度除去を含めてやる人たちの問題を考えておかなければ、

・ また将来、同じような過ちを起こすおそれがあるのではないか。

(3) 協会・環境安全衛生委員会の対策


・ そういう過去の問題をよく認識した上で、どう管理してきちっと使っていけばいいのかということが、われわれ、とくに環境安全衛生委員会が協会内にあるというのは、どううまく使っていくと役に立っていくのかというのが視点にあって、われわれの方としては、そのためには、

@ 建材への「a」マーク

・ 建材には「a」マークを普及させて、これは使うとき、それから取り壊すときも、それなりにきちっとしていかなければいけないだろうということ。

A もろい、発じんしやすい製品には使用しない

・ それから、過去の経緯を踏まえて、やはり、もろいような、とくにアスベストが発じんしやすいような製品はやはりまずい。
・ いくら管理、管理と言っても、そこまでは保障できるか、というのはやはりあると思う。
・ だから、そういう意味で、そういうものはやめていく。

(4) 現在の協会の課題

・ そういう経緯もあるし、皆さん方のやっているいろいろなことを含めて読まさせていただいてもいるし、まあなかなかすごい勉強されているな、海外のことも含めてすばやく翻訳されているなと、そういう意味では感心も含めて、いるわけですが、

・ いま石綿協会としてやるべきことは何かということで、われわれがいま考えているのは、大きくふたつあるのではないかと思っている。

@ 吹き付けへのアクセス

・ ひとつは、イギリスで問題になり、それがフランスに飛び火して、アスベストが禁止された。

・ ポリティカル(政治的)な面が結構あるということは、われわれも認識している。これは科学の問題とは別に、ポリティカルな部分で動いた。

・ なぜイギリスで問題になったかというと、ジュリアン・ペト(ピート)という人が論文を発表して、将来予測をしているわけだが、あの論文の中で一番大きな問題点というのは、吹き付けアスベストにアクセスする労働者の問題。

・ 何もしないでやって、アクセスすることによって曝露する。それによって将来、中皮腫を含めて起こるのではないかという予測した論文が当時発表になって、それがイギリスのマスコミ、テレビなどで放映されて、それがフランスに飛び火して、フランスでああいうような動きになったという経緯があるわけで、

・ われわれとしても、ひとつ、吹き付けアスベストを施工しているところにアクセスする人たちの問題―除去などとは別に。

・ ここを何らかのかたちでやっていかないと、将来また同じようなことが起こる可能性があるのではないか。

・ いまの労働安全衛生法でも、その部分のところはクリアになっていない部分だ。

・ まずその前に、アクセスするときにどのくらいの濃度レベルに本当になるのか、ならないのか、それによるリスクはどうなのか、そのへんをやはりきちっと把握した中で、リスクはなるべく避けるようなことをすることが重要ではないかという認識をもっている。

A 窯業系建材切断時対応マニュアル

・ ふたつ目だが、いま石綿の用途は建材が90数%になっているところだが、これも切断・加工、とくに現場における切断という問題があるのではないか。

・ これについては、いま協会の中で、窯業系建材の切断時の対応のマニュアルを含めて、どういうふうにやっていったら濃度レベルの低減が図れるかを含めて、いまやっているところ。

・ とくに窯業系建材の場合には、アスベストの問題もさることながら、遊離珪酸、結晶性シリカの問題も当然考えて、視野に入れておかなければいかないだろうということで、やはり粉じん対策として物事を考えるということで、どういうことをしていったら濃度レベルが下がるかということでの検討をいまやっている。

B 不純物問題

・ もうひとつは、蛇足だが、われわれは石綿を輸入してやっているわけだが、もうひとつ石綿の問題が難しいなとわれわれ自身が考えているのは、不純物の問題。

・ たとえば、タルクという鉱物があり、天然にとれるもので、その過程で不純物としてアスベストが存在する。これもいまの段階では何も規制的なものがないので、フリーで、まあ粉じんとしての規制はあるわけだが、フリーに扱われて、やはりそれによる問題が起こっても…これはわれわれのせいではないわけだが、ただそれによって起こったとすると、それはそれなりに考えておかないといけない問題ではないか。

・ だから、石綿の問題というのは、われわれ自身が考えても非常に難しい問題というのは、天然にとれるというところがあるということ。

・ 日本は蛇紋岩地層だから、黙っていてもアスベストは存在している。これは輸入して使うのとは別に、天然に蛇紋石系は不純物として存在している。

・ 鉱山にならないというのは、鉱山でとれるだけの採算性がないということでたまたまないだけであって、蛇紋石には含まれている。

・ タルクもそうだし、アメリカでも昨年1月からかけて問題になったのはバーミキュライト(園芸用品等にも使用)の問題。あれにも不純物として入っているというような問題。

・ そういうような不純物の問題も含めながら、過去のわけのわからない時点でいろんな曝露を受けて、それによって疾病が起ってくる事例も当然あるわけで、そのへんをいかにリスクを少なくするかという視点でわれわれ考えながら、いろいろな活動をやっているところで。

・ とくに、アスベスト根絶ネットワークさんでしょうか、アスベストの除去を含めていろいろなチェックをやられていると言うのは、非常に…。へたをするとずさんな工事が行われて、それによって被害が起こる。とくにああいう除去工事というのは非常に濃度レベルが高いという問題があるので、やはりそのへんはきちんと管理をしてというかたちでやらないとしないとまずいのではないか。このへんは、われわれは協会という立場で、先ほど申し上げたように、こういうふうにしなさいとかいろいろなパンフを作ってPRする。そこの位置づけでしかなくて、それ以上深くはいけない部分が足かせとしてある。行政とかに対しては、コミュニケーションが当然あるので、ある部分でそういう部分の話をやることは可能だが、やはりリスクをどうするか…。このリスクの概念というのはたぶんお互いに物の考え方が違うところであろうと(思う)。私自身は、リスクは何にでも存在しているというとらえ方でいて、リスクの確率を全部足したら地球上から人間がいなくなってしまう。だから、あくまでも確率の話であって、その存在で物事を見ていくべきではないかという、まあそんな感じで。いろいろな問題をなるべく低減しながら管理してきちっと使っていきましょうと、これがわれわれのスタンスというか考え方で、アスベストは何もしなくても安全だという気持は全くないし、やはりきちっとそれなりに対応はすべきであるという認識はもって、それなりの対応は進めてきている、ということである。


星野「(社)日本石綿協会の概要の紹介」

・ 名称は、(社)日本石綿協会、略してJAA、Japan Asbestos Association。

・ 事業活動の主なものは、(a)石綿に関する生産、流通、貿易、利用消費についての総合的な調査、(b)石綿およびその代替物の試験、研究、(c)石綿製品に係る安全衛生の確保。

・ 組織については、当然総会が母体となり、理事会で運営され、会長がそれを統括する。そのもとに、環境安全衛生委員会、広報委員会、大きくこのふたつの機関がある。必要に応じてその下にワーキンググループを設けるということで、環境安全衛生委員会では、実務的ないろいろなプロジェクトをこなしていくのはワーキング委員会でやっている。

・ 環境安全衛生委員会の目的は、「石綿及びその代替物の使用から派生する環境問題を調査・解析し、その解決策を考究して日本石綿協会を構成する会社の環境衛生対策の向上に資するとともに、石綿及び石綿製品を利用する者、その他の石綿問題に対する正しい理解・認識の高揚に資するをもって目的とする」ということで、広く皆様にアスベストの問題、アスベストそのものについて理解をしていただく。いい悪いという問題もあることながら、アスベストの基本的認識をしていただき、それをベースにいろいろな論議をしていただきたい、というようなことをやっている。

・ 協会の構成は、現在は、全部会社単位で会員になっていただいている。過去はいろいろな団体も入っていたが、10数年前に会則を変更して、法人が中心の会員で、団体会員というのは現在ない。

・ 関連というか盟友団体として、日本石綿製品工業会、せんい強化セメント板協会(スレート協会と耐火被覆板協会が合併して2000年4月に設立)、その他に、過去には大阪石綿紡績工業組合というのがあったが解散している。(それ以外の過去関連団体として名前があがっていたものについては、自動車摩擦材協会は、石綿の使用がだんだん減っていて、個々の会員がまだ籍を置いている。自工連の関係団体。石綿パイプ協会は、名前だけはあるが、実質的にはパイプの生産量は非常に少なくなっている。解散には手続上の問題等々があるので、現状をそのまま放置して大きな問題にはならないだろうということで任意団体として存立している。日本窯業外装材協会は、素材的にはいろいろな素材でやっている団体で、とりわけ石綿だけということで絞ると、ウエイト的には非常に低い。)

・ 会員は、最盛期には130-140あったが、現在ではたしか73社。そのうち、営業を専門にしているところを除くと、製造事業に携わる社は45社(PRTRの裾切り要件に該当するところはないということなので、すべて常用労働者21人以上)。


本のアスベスト輸入量

[古谷] 日本の石綿輸入に占める協会の割合は? ほとんど占めていると言ってよいか。

[星野] 過去最高の輸入は1973年の35万トン台。2000年(の日本の石綿輸入量)はどうも10万トンを切るのではないか。大蔵省の貿易統計(通関統計)の方で数字が近々に出てくると思うが、9万8千トン前後というところに落ち着くのではないか。かなり減っている。(2000年の確定値は98,595トン、69頁の貿易統計の上段「輸入」の「2524」の欄を参照)

[古谷] 9万8千トンのうち協会の占める割合は?

[星野] こまかい数字はわからない。というのは、関係ないというと変な表現になるが、異業種で使うところもある。先ほどの盟友関係の団体にも籍をおいていない、われわれからみるとアウトサイダーがある。

[古谷] 輸入専業の商社もいれば、メーカーで自分で輸入しているところもあるという理解でいいですね。

[星野] はい。過去は山元と代理店は割合密接な関係にあり、したがって商社というものが非常に機能していた。ところがオープンになってからは、使用するそれぞれの企業が直接ひくということもやっている。

[富田] 石綿協会の成り立ちが、戦後、「割り当て」というところから発足しているという経緯がある。

[古谷] 原料アスベストについては協会がかなりのシェアを占めていることは間違いないと思う。9割をこえるのは間違いない?

[富田] たぶんなっているのではないかなとは思う。

[星野] はっきりは言えないが、8割から9割くらいは石綿協会に加盟している会員が使用しているのではないかと見ている。

[老田] 石綿協会が日本の輸入のすべてを掌握しているのではないのか。

[星野] それはできない。

[老田] わが国に入ってくる石綿で9万8千トン以外のものはないのか。

(少し聞き取れず)

[古谷] 原綿(原料アスベスト)以外のかたちでアスベスト含有製品を日本に輸入しているところはあるか。協会加盟会社ではどうか。

[富田] それはあるだろうし、協会外のところで入れている場合もあるだろう。われわれとしてはわからない。推計したこともない。製品については。

[星野] 通関ベースではアスベストがたしか2524というコード番号で、アスベストという字句が入るとすべてこの中に統計上カウントされる。すべてがバルク(原綿)であるかどうかは検証できない。

[古谷] 9万8千トンの中に、原料アスベストだけでなく、アスベスト含有製品が入っているという可能性はあるか。

[富田] 可能性…ウ〜ン…

ただご存知のように混ざり物だから、別なもので混じったやつでアスベストといって入ってくる場合はあるかもしれない。製品というかたちでは統計上は入ってこない。

[古谷] 建材を輸入するということはそんなにないのではと思うが。

[富田] 建材はないでしょうね。

[古谷] 布、紡績はいくらかある気はする。

[富田] 紡績の場合は、韓国を含めてありますよね。中国からの輸入というのも部分的にはあるでしょう。

[古谷] 最近、中国の石綿紡績工場を調査した複数の研究者から、その工場では製品を日本に輸出していると言っているという話を聞いたが、関税統計の数字には中国からの輸入はないことになっている。

[富田] あるでしょうが、そんなに大きな量ではないだろう。

[永倉] 海外の工場でアスベスト含有製品を製造して輸入するということは?

[富田] それはありうる。

[永倉] その場合には、この統計には出てこない?

[富田] 出てこない。いずれにしろ、製品輸入しているのは統計的にわからない。原綿については、9万8千トンなりが日本に入ってきている量である。その中で協会会員がどれくらい使っているかは見えない。まあたとえば8万8千トンくらいが協会かなあと。これは推測が入っているが。

[大内] 協会で調べることは可能か。

[富田] いや、それは無理だ。

[大内] 協会から各会員に調査してという可能性は?

[富田] 可能性としては、経済産業省あたりに言われた方が…彼らは、やろうと思えば、会員の個々の企業に調査することはできる。協会というのは、それぞれがいくらというのは、逆に必要性がない。

[大内] 事業のひとつとして取り上げようという方針がたてば、ある程度できるのかなという気もするが。

[富田] 以前に一度だけやったことがあるが(うまく調査できなかった)。

[星野] お手元の方でもよく使われている協会調べの「わが国における石綿製品等の使用状況(直近のものは1996年)」(用途別使用量)も、あれをやるのに大変だった。トレンドとしては、変わっていないと見ている。大蔵の数字にあの数字を掛けてそんなに変わらないだろう。建材というのはそのときにすでに90%。全体的に工業製品とかフリクション・マテリアル(摩擦材)というジャンルが減ってくる分だけ、建材の方にシフトする。そして、全体のボリューム―輸入総量が減ってくるという関連でご覧いただければよい。

[古谷] これは苦労されたと思うが、出し方として、協会各社の調査結果を積み上げた実数ではなく、調査をもとに推計されたということで理解していいですね。

[星野] はい。推計というのがなかなかむずかしい。

[古谷] ご苦労はわかるが、これについては毎年だしていただけるとありがたい。

※ 貿易統計に基づくアスベスト含有製品等の輸出入については、今回整理して68-71頁に紹介した。


今後の使用量

[古谷] 富田さんのお話でいろいろ議論したいことはあるが、まず、最盛時35万トン強がだんだん減ってきて、それでも1996、97年が17万トン台後半。たしかに1998年にがくっと減って12万トン、一昨年が11万7千トン、そして昨年がお話だとどうも10万トンを割るのではないかと。以前事務所にお寄りしたとき、なぜ1998年に減ったのかという話もしたが、使われなくなってきているという面と、経済不況の面とどっちが大きいのだろうと、あの時点で見ると不況の影響が、とくに建設関係が冷え込んでいるのでかなりダイレクトに響いているだろう。

[星野] ふたつの面があると思う。ひとつは、景気、バブルの崩壊ということで、極端に建築物が減少した。もうひとつは、過去から、アスベストというのは総量が未来永劫たくさん出てくるものではない。それを大事に使っていく。合わせて無駄に使う必要はないということで、低減化を各事業会社が進めてきている。これは技術的な問題解決が合わせてないとできない。たとえばフレキシブルボードは、古いJISの時には混入量が%で明示されており、30%。現実に技術的開発とあいまって企業で努力して、現時点では10%前後、3分の1になっている。そういうふうなことがあいまって数量的には減少しているということだろうと思う。

[古谷] スレートの含有率は現在どんな感じか。

[星野] スレートにはプレート状(平板)のものとコルゲート(波板)のものがある。コルゲートの方は、生産量そのもの、裏返すと需要がすごい減退してきている。それとコルゲートに関しても、現在の混入量は5%前後が主流で、10までいくのはあまりないだろう。

[永倉] 一時ノンアスのスレートが市販されたという話があり、築地でそれを使えという話をしたことがあるのだが、その後また含有の物しか手に入らないという。

[橋本] 各企業においても、せんい強化セメント板協会でも業界としていろいろな面から検討は進めているが、物性上とか、耐候性の問題、とくにコルゲートだと屋根の上だから非常に過酷な条件になるとか、まだ完全に解決されきれてない面もある。だから、現在使っているということは言えるが、いろいろ減らす方法とかどこまで減らせるかとか検討している。

[永倉] ノンアスのスレートはまだ商品化されていない?

[橋本] 市場にはそう数多くは出ていないと思う。やはり耐候性の問題、とくに長期耐性の問題とかいろいろな問題が未確定な部分があるので、そのへんを追いかけないと商品として完全には出せないという問題もある。それから実績の問題もあるので、移行しきれていないというのは事実です。

[古谷] この間の日本の輸入量・使用量の趨勢は、おっしゃられるとおり、景気の問題もあるし、業界の皆さんの低減化の努力もある。われわれとしては、加えて、できるだけ使わなくしようとしている努力もあると思うが。

[星野] ようするに、低減化したものを指向していかなくてはいけないということは、それぞれの企業にある。

[古谷] ぶっちゃけたところ、見通しをいかが考えられているか。

(沈黙の後)

[星野] まずぶちまけて話すと、ゼロになったら協会として飯の食い上げになる。

[富田] 市場の動向によるのではないか。アスベストに対するイメージなり何なりからユーザーサイドが拒否するなら、当然、市場はそれを受け入れるのは必然的にいろいろなものでもそうだと思う。先ほど言ったように、われわれの考えは、きちっとすればできるという考えに基づきながらやってきているが、結局は、市場が決める話になるのではないか。


「管理使用」をめぐる議論

[永倉] クボタのニューコロニアルの製品カタログに「アスベスト使用」と明記されていない。、「アスベストを使っているのではないか」と聞くと、「いや、使っていない」と。「では、どのような原料を使っているのか」と聞くと、「無機質繊維が使われている」と答えた。アスベストについて一定の知識を持っている消費者であっても、このような説明をされたら、誤解してアスベスト含有建材を使ってしまう可能性はある。現在の広告等についてどうお考えか。指導されているか。

[富田] 一昨年労働安全衛生法第57条の2が改正になり、1%を超えるもの―PRTR(法)の場合は0.1%になっているが―情報を出さなければいけないことになっている。業界としては、あの趣旨に沿って、モデルもつけて、必ずMSDSをつけてだしなさいということでやっている。

[永倉] 一般消費者に見えるものでは? 「石綿」、「無石綿」と書かれているカタログもあるが、「石綿」にはどのような危険性があって、「無石綿」はどういうものかという違いがはっきりわからない。一般の人にはわからないかたちになっている。

[星野] 法的には労安法を含め周知徹底をするように指導している。会員の協力を得るように…

[富田] 一般消費者に対しては、労安法上も今回の化学物質管理促進法でも、そういう[法的]義務づけがないということがある。

[永倉] 日曜大工が好きな人とか、自分で切ってしまう人も現実にある。その人が家を壊すときに、屋根材などをどうすればよいか、ほとんど知識として残らない。「管理」というものが、どの程度可能なのか。

[宮田] 「a」マークを付けだしたのが平成に入ってからだから、「a」マークがついていればそこで見分けができる。そのために「a」マークというものを考えた。

[永倉] 施主の人が「a」マークを見たからといって、わかるかわからないか。

[老田] われわれ建設産業に従事していて、まさに製品を使用して毎日アスベストを吸っている第一線の大工だとか左官屋だとかいる。ずさんな工事が行われているという話があったが、建設に従事している人間に、アスベストがどんなに危険なものであるかということをまず言わないでおいて、ずさんな工事をして消費者に迷惑をかけているみたいな言い方は非常に心外である。

[星野] あたかも何も知らされていないで使っていると、で問題なんだというお話だが、全建総連さんの方で立派なパンフレットを作っておられる。そういうもので、やはりその段階でも普及していく努力を、実は私どもとしてはお願いしたい。

[老田] 一生懸命アスベストの危険性だとか啓蒙・宣伝している。アスベスト解体時の対策などPRはしているが、そもそも私が言いたいのは、過去の分も含めて、600万近くいる建設産業に従事している方々に、アスベストの問題についての周知徹底は必ずしもできていない。私たち全建総連は75万人の組織で、今日は青森から県連会長も出席している。第一線でアスベスト含有建材を使う労働者に、建材を作っている会社の方からの提示はない。「a」マークを付けているから、それでよいという問題ではない。

[永倉] 包装だけでなく製品に刻印もされているとは言っても、たとえば切れ端をどうするのか。そういう問題があるから、管理すれば安全というのはそぐわないのではないか。

[橋本] 通常においてある段階では発じんすることはない。カッティングしたりする段階で発じんすると理解しているので、小さい切れ端が置いてあったからといって、ここで発じんするということはない。

[永倉] 築地市場の場合でも、たとえばスレートをその場で切断しているケースも見ている。管理して使用すれば安全だというが、どのようなイメージで言っているのかわからない。廃棄まで考えているのか。中間処分場でガチャガチャ壊されるとか、最終処分場での管理をどうするのかという対策があってしかるべきだ。現状では野放しで、家の近くに中間処分場ができそうなのだがアスベストの問題はないでしょうかなどという相談が多い。現場に行ってみると野積みになっている。

[富田] 管理という視点は結局、濃度レベルをどう考えるかというところから出てくると、私自身はそう思っている。ある基準があって、それを超えることによってリスクが高まるというとらえ方でいる。具体的にだいぶ以前に協会として自主基準を決め、それが守られている限りはリスクは非常に少ないという考えでいる。いまの話でいくと、そういう対応をしたときにどれくらいの濃度レベルになるのかという検証もしなければならない話。そこで対応策なり何なりを…

[永倉] いまの話は僕は違う…

[富田] ですから、そこらへんがたぶん考え方の違う点で、われわれは、ある基準―どの基準が正しいのかということはわからない部分もあるかもしれませんが、われわれの考えとしては、それを守ることによって、リスクは非常に少なくなるという考え方で、いろいろな活動をしている。

[永倉] 管理濃度にしても、すべての地点で把握することは不可能。たとえば文京区の保育園でずさんな工事があったが、その事件でいっても、どこでどのくらい出たかということは、どこまで調べていってもわからない。わからないものを基にして管理濃度といってみても、一般的な指標はできるかもしれないが、絶対的なものではないし、微量であってもやはり有害性があるという特異性がアスベストにはある。

[西田] 解体の場合に濃度を測定したことがあるか?

[星野] 過去のものはありますよ。行政でもやっている。

[富田] 協会としても、実験レベルでやって、何もしないときはどうかとか、どのくらい出るかとか、こういうふうにすればこれくらい低減するとか、そういう実験もやっている。

この4月か5月に、先ほど申し上げた窯業系建材の切断時におけるマニュアルの中で、データを示して、だから、こういうかたちで対応しないとだめだとか、こういう事例がいいのではないかというようなものを作るべく動いている。

[西田] 管理すれば安全だという基本でいけば、たんに製造過程だけでなく、解体や廃棄まで、安全であるということをきちっとデータで示していかなければならないのでは。

[富田] もちろんそうです。

[星野] 基本のところはそのとおりだと思う。ただ、管理論の問題をここであまり長くやってもどうだろうか。


会としての使用中止の決断

[古谷] 少し戻させていただき、大所高所のところ一番の問題だが、われわれとしては、ぜひ協会として英断を下していただき、将来にわたってアスベストの使用を中止していただけないか。

(沈黙の後)

[橋本] 基本的に、世の中がどうなっていくかということで、影響をしていくのではないか。いろいろな管理して使うとかあるし、結局市場からなくなれば、作れない、使えないということは、ある面においては考えられますけどね。でも、私どもはきちっと管理して使うという面で使っているうちではそういう影響はないと考えておりますから、ここで協会としての英断とかそういうものではないというふうに解釈しますけど。

[古谷] ここ2〜3年、協会内外から、協会として期限を決めて使用中止を検討しているようだという話も寄せられているのだが。名前は言えないが、協会の加盟会社の関係者からも、そのような話が社長さんたちで出ていると聞いたが本当か、などという話を耳にしている。このような噂は直接お聞きした方が早かろうと思うのだが。

[富田] 各社の政策上の問題ではないんでしょうかね。協会という立場と各社のというのはまた別になると思いますよね。

[古谷] 各社でそのような話が出ているのか。

[富田] 協会としては何とも言いようがない。

[星野] それぞれの企業の経営のべき論の問題になってくると思う。協会としては、そこまで踏み込むまではいかない。一部の企業の方でそういうことをお話しされているのは、絶対ないとは言えないと思う。それはその企業の考え方で話されるだろうと思うのでね。

[古谷] 協会という立場で、あるとしたら、そういう話が煮詰まってきて、一つひとつでばらばらやるよりも皆さん一緒にやりましょうかという話だろうとは思うが。

[星野] 最初は一粒の雨がだんだん集まって、いまおっしゃったような潮流になるということは、いくつかの考え方の中にはあると思いますよ。

[古谷] もう一歩踏み込んだ話をすると、もしそういうふうになってきたら、おそらく体力のある企業はいろいろなかたちでできるかもしれないが、中小零細の皆さんなどは、この間も通産省などと構造改善で苦慮なさっているように、むしろ逆に一緒にハードルを越えるためには、何らかの行政的なバックアップなりがあった方がいいのではないかと思ったりする。

[富田] そういうふうになった段階では、それなりの動きをしないと、いけないかたちになるでしょうね。

[古谷] その点では私たちは皆さんと足並みをそろえて、力のないところに対する必要な援助も含めて、むしろきちっとしたかたちでアスベストに対する規制を作って、それによって助けるべきところは助けようというパートナーシップが組めないかとも思っているのですが。

[星野] おっしゃるのは、アスベストをゼロということを前提にですね、めざすところは。そこが、再三お話ししているのは、業界としてお話をして、なかなかかみ合わないところで…

[古谷] 10年前はわれわれが規制法を作ろうという立場で皆さんとの話し合いもあって、そこでは立場が違うということもあったかと思うが、10年たって10万トンも割るという状況の中で、あるいはそういう話がないかと思うが。「まだそこまでは(行っていない)」というのは、われわれの言い方だが。

[老田] 25、6年前には35万あったものがすでに10万トンを割るということは、だんだんと年を追うごとに自然と輸入量も減ってくるということかという気もする。

[星野] やはり、市場原理とそれぞれ会員の政策なりとのからみではないかと思いますよね。協会としては、本当はもっと増えた方が財政的にもありがたい話ですけれど。ありえない話ですけれど、それはそうはいかない部分はやはり…



■ 低減化と代替化の問題

[大内] 協会として代替化を進めようという考えはないのか。

[富田] だから、それは市場の動向とのマッチングになるのではないか。

[古谷] 低減化・代替化というのは協会としてのひとつの方針だと理解しているのだが。

[星野] 代替化という言葉の定義をしっかりしておかないといけない。製品そのものの代替化と、補強繊維として入れている物質を代替化していくという両面がある。市場は、どれを使うのかという大きな流れを作っていくものだと思う。補強繊維としての石綿の混入量を減らしていこうというのが低減化である。この努力はしているので、両面でこれは進めていかなければいけない。

[大内] ということはアスベストの輸入量を減らす方向に働きかける流れを作りたいという考えなのか、それとも先ほどの話のように増えた方がよいということなのか…

[星野] それは冗談で。

[老田] そういう冗談はいきすぎだ。EU等の情報も入っているだろう。すべてのアスベストは使わないという方向に世の中はなっている。

[星野] いかに低減化を進めてきたかという努力を申し上げているわけで、本流はそこにある。

[大内] 輸入量が減ってきているのは、ある程度協会の側からの働きかけというか、活動があるのかなということも期待している。

[星野] 先ほど言ったように、ひとつは低減化努力というもので減ってきている。

[大内] それでは総量が減る方がよいという考えは協会では持っていない?

[星野] 総量は減っていくと思う。たとえば、(含有率)30%が半分になって同じ量使うのであれば当然減っていく。決して無駄にどんどん使えとかいう気持は毛頭ない。

[古谷] 聞き方をかえて、協会の雑誌を見ても、アメリカの規制状況の中で最新のところでアスベストの年間使用量が16,000トンくらいと紹介されている。低減化、代替化を進めても、どうしてもこれ以下はいけないという意味で、これくらい必要だとか落としどころはこれくらいという話はあるのか。

[星野] 協会の中でそういう議論はないですね。

[富田] 先ほど申し上げたように、管理の概念が非常にむずかしい面がある。やはり使う方も含めてどうしても管理がむずかしいという製品は少なくする、なくすようにということは、協会として考えることになると思う。

[大内] 10万トンを超えるということになると、各国との比較の問題もあるし、消費者の側からの批判も強いということもあるから、もう少し減らしておかなければいけないというふうな意向というか、感覚はおもちなのかなと。たとえば10万トンを超えてては恥ずかしいというような意識があって、業界全体として働きかけをされているのかとも思ったのだが、そういうことはない?

[富田] 先ほどもいったように、発じんの非常に多いようなものはやめようと、そういう考え方で来ている。

[大内] そういうことを積み重ねてきた結果がこうなったと?

[富田] そういうことですね。

[大内] とくに何らかのそういう動きとか働きかけをしているわけではない?

[星野] だから、低減化というのはひとつの目標。

[橋本] ただし、協会としてそれを各メーカーに対して指導しているとかいうことはやっていないということになると思いますね。

[大内] 先ほど市場原理が決めていくという話があったが、実態としては、カタログなどでも石綿表示は徹底していないし、有害物質を使っていないという表示があっても意味がなく、使っているという表示がなければ意味がないのだが、実際には行われてないために、消費者としては知らずに使っているということが非常に多い。消費者の側にダイレクトに石綿ということでもっとはっきりわかるようにしていく流れを強くして、協会として…

[古谷] 整理させておかせてもらうが、石綿全国連としての皆さんへの公式の要請のひとつは、英断という言い方をしたが、そういう話ができる時点になったらパートナーシップをありうると思っている。いまの時点でここで「はい」と言うことではないということだから。ただ、私たちはオファーを留保するというか、いつでもそういう用意があるということで、整理しておきたい。

そのうえで、いくつかの議論があると思うが、いま大内さんが言った点はどうか。消費者への情報提供については、いま法規制がないということもあるわけだが…


■ 一般消費者への情報提供(1)

[富田] これは私の知識不足かもしれないが、本当に一般消費者に行っている製品はどのくらいあるのかなということもある。

[大内] 消費者が家を建てるときに建材を決める。どういうものを発注するかというときに、カタログを見たり、施工者に聞いたりするわけだが、選ぶときに、施工者や販売店の方が、アスベストなんてもう日本では使っていないんだから含まれていないと説明している。業界のセールスをしている方が、アスベストを使っているなんてことを全然知らない。「そんなことはない、コロニアルには含まれていますよ」と言うと、「えっ、そんなはずはない」。会社に問い合わせても、会社の人が「わかりません」という感じ。結局、アスベストが使われているとういう情報が末端の方に全然流れていないという状況がある。カタログにも書いていない…

[富田] 協会としての「a」マークをつけなさいということは、板にやりなさいということと、それからMSDSなんかにはっきり「a」マークをつけなさいと。で、カタログについては、各社に任せるということでいままで来ていたんですね。今の話を聞くと、協会としてカタログに表示すべきではないかという推進はできるのではないか。いままでカタログまでの強制はやっていなかった。

[永倉] もうひとつ気になったのは、ラジオで施工業者がふき替えをしませんかと宣伝していた。それはナショナルの屋根瓦でこれも石綿を使っていますという話もなく流れていたので、ラジオ局に電話をして、石綿を使っていればその旨を説明しないと、石綿を使いたくないという人まで自動的に使ってしまうのではないかといった。そうしたら、ラジオ局からまわってきて施工業者の人と話をしたら、「使っていません」と言う。本当ですかと聞くと、カタログを読みながら「無機質繊維」と書かれているという言い方をして、「使っていない」と。これは、言わば嘘ですよね。

[富田] それは、ちょっとね。

[古谷] この話は事実で、あとで通産省と話したところによると、業者向けの施工マニュアルには注意書きが入っているらしいが、消費者用のカタログにはそういう記述。

[大内] カタログから選ぶわけですよ、これにしてくださいと。アスベストと書いていないから、安い方がいいと使ってしまうことになる。

[永倉] さらに、アスベストを1%以上含有している建材があれば、本来「アスベスト業」として解体工事をしなければならないわけですよね。そのために必要な費用という問題もある。そういうきめ細かな内容が盛り込まれていないで、知らずに消費者が買ってしまう。

[富田] いま[永倉]の話は置いておいて、私自身は、PL法も含めて製造物責任とかいろいろあるし、やはりある程度情報は知らしめるべきで、協会としてもそういう部分でやってきている部分もある。たまたまカタログについては自由意志に任せるということで、協会としては指導もしてこなかったということは事実なので、これは今後検討したうえで考えていきたいなというふうに思う。

[古谷] 「無機質繊維」というのはあんまり。ミスリードする。

[星野] 石綿以外を「無機質繊維」と呼んでいるケースが非常に多い。

[富田] それと石綿の分析とかももうひとつの問題ではある。石綿が入っていないのに入っているという分析結果が出てくることもある。これは分析機関を含めた教育レベルのアップという問題も、もうひとつ必要なのかなとは思っている。

[古谷] 分析の問題などについては、最近の「せきめん」誌でもいろいろ書かれているので、拝見して勉強させてもっらているが。協会として、消費者への情報提供ということについては、ひとつ検討してほしい。われわれとしては、石綿の有無、量、取り扱いの注意プラス危険性についてということなど、基本的最低的な内容を…

[富田] これは本来PL法という法律の趣旨からいくと、やはりそういう情報は知らしめるということ。

[古谷] われわれも法的枠組みが必要ということで通産省等とも話しているが、現状ではうまくマッチする法律がないという言い方もされたりする。

[富田] それぞれの企業において自主的に製造物責任を考えるかどうかということにも…

[星野] 業界団体によっては、カタログに全部つけろという指導を行っていて、その会員会社は全部やっているというところも知っている。私が以前そこにいて環境部会長もやったし、PL法の問題もある。カタログ上にも表示をせよと。だから業界によってはあるということもご承知置きいただきたい。何らかの方向を打ち出していかなければいけないかといううふうに思う。

[古谷] こういう要請をすることが、アスベストをこれからも使い続けてよいという立場ではないということもご承知置きいただきたい。


■ 過去使用されたアスベスト建材のデータベース


[古谷] 合わせて要請したいのは、過去様々なアスベスト含有建材が使われてきた。同じ商品名称でも含有率が変わっていたり、アスベストを使っていたときと使わなくなってからの商品名が同じという商品もないわけではない。建材名鑑などでその年度の建材についてはどうだというような調べる努力はわれわれなりにし、インフォメーションとして流していたりもするわけだが、過去のアスベスト含有建材名一覧、しかもどの時期にはどの程度入っていたというデータベースを協会なりで整備することは不可能か。

(しばし沈黙の後)

[橋本] 実際同じ製品でも、市場には同じ名称で出ているものでも、各メーカーによって使用量は違うし、過去から現在までそういう状況だろうと思う。むずかしいだろう。

[古谷] メーカーに問い合わせたら、いつの時代のどの製品ならどれくらいの含有率だったかということはわかるものか。

[富田] わかる場合とわからない場合があるだろう。そういう記録をもっている会社もたぶんあるだろうし、ない会社もあるだろう。かつ、業界でも、もうすでにアスベストを全く使用していない業界ではそういうものをとっているかどうか。ただ大雑把な、商品名は別として、こういう品物にだいたいどのくらいということはある程度は。正確性の問題ではどこまで正確かということはむずかしい。もし協会としていろいろなものを出すときに、過去の証拠とかいろいろなものがあって公表しないと、嘘をついたことになりかねないので、それだけの資料が本当に集まるのかなと。やろうと思えばできる部分もあるとは思うが、正確性となると何とも言いにくい。

[大内] 商品名ごとにやっていただかないと。

[星野] 商品名というのは非常にむずかしい。


■ 「リサイクル」と廃棄対策

[永倉] 建設リサイクル法が施行されることになって、アスベスト含有建材が中間処理場に持ち込まれてばたばた壊されることになるだろうと予測している。そのときにアスベストの粉じんを出さないようにするためには、解体工事現場でアスベスト製品を分別せざるを得ない。建材をどうやって分けるか。全部アスベストが入っているものと考えるか、それも無理だろう。「a」マークで確認するにしても、切れ端のはじっこにはついていない。見分けがつかない。

[古谷] その点でいうと、アスベスト含有スレートのリサイクルがどうなるだろうかと気になっている。現状で承知されていることはあるか。

(沈黙の後)

[星野] 検討課題で。

[富田] (現状についても)われわれつかんでいないので。ただ管理という視点で考えていくと、そういう部分も当然視野に入れながら今後検討していかなければいけない事項のひとつかな、という認識はもっているが。

[古谷] スレートのリサイクルということで、先ほどの解体と似たような事態が生じかねないということを気にする。

[富田] それをリサイクルしてはいけないということは、まだできていないというような話は聞いている。昨年ヨーロッパで廃棄物についてのドキュメント―これはインターネットでも見れると思うが―提案が出ているが、それにはリサイクルしてはいけないとようやくなりつつあると…

[古谷] それはわれわれも知らなかった。

[富田] 管理という視点で物事を見ていくと、いろいろなことを調べて勉強しなければいけない部分もあるので。

[古谷] そうすると、協会としては、アスベスト含有スレート材をリサイクルして使うべきだというポジションではないということか。

[富田] そうですね。

(一部聞き取れず)

[古谷] (現状を)把握する必要があるという認識?

[富田] ええ。どうしたら無害化できるか、考えていかなければならない課題で、たぶん協会だけでできることではなくて、行政を含めていろいろなところで考えていかなければならないのでは。とくに過去の角閃石系を含めたものについて、きちっと処理をうまくしないと、やはりリスクは相当増大する。それは認識は十分もっている。

[永倉] 今のところはだいたい埋めている?

[富田] ええ。

[永倉] そうすると、使用、輸入の水道の蛇口を出しっぱなしにしていると、やはりいつかあふれてしまうと思う。入り口を閉めて、過去のものを何とか処理しようというのが正しいのでは。埋め立てるだけでいいのかとも。

[古谷] (角閃石系かどうか)何が入っているかどうかわからないだろう。

[星野] なかなかむずかしいのだが、繊維色によってわかる。ある程度、専門家が見れば。吹き付けは(わかる)。

[永倉] 2、3年前に経験したあるスーパーの吹き付けアスベストの場合も、発注前に検査したところアスベストは入っていない、ロックウールだということで解体工事をしたところ、他の業者もチェックしていてそちらの結果では4%アスベストが入っていたということもあった。入っているものを入っていないと言って解体工事をしているところが現実にはたくさんある。

[富田] ですから、われわれ協会として検査方法とかなんかをきちっとして。1箇所(だけ)とってわかるはずはないので。

[古谷] スレートについては、皆さんも課題であろうと認識をもっているということなので、われわれとしては、リサイクルという流れになってしまっているので、その中で安易に過去のスレートを何でもかんでもリサイクルにまわすというポジションは望ましくないと思っているし、リサイクルすべきではないということもありうる。きちっと処分すべきであると。ただ世の中の動きが早いので、皆さんなりにも現状把握などに努めていただき、やはり…

[永倉] スレートだけでなく建材。

[富田] とくに吹き付け材は、これは絶対やってはいけないし…

[古谷] 建設省のあれ(建設副産物適正処理推進要綱や建設リサイクル法基本方針)でみると、廃掃法で義務づけられているもの以外でも、発じんのおそれのあるものについては、埋め殺してくれという指導になっているようだが。

[富田] 廃棄物の問題は管理型とか安定型とかあるが、ヨーロッパは全部安定型。管理型にするというのは水の汚染の問題であって、アスベストはそういう問題はなく、飛散することが問題だという認識はもっている。本来は安定型でもいい。ただ、どこに埋めたかということを明確にするというのが、ヨーロッパ等でも言われている話。これは非常にポイントとして重要だと思う。だから安定型でもいいと思う…

[永倉] 安定型の処分場でブルドーザーでバリバリ壊しているという問題があった。いまの安定型は…

[富田] はい。埋立て処分場の位置づけとしての安定型であって、今言ったバリバリ型の安定型でいいという意味合いではなくて。ただヨーロッパでもそうですが、場所をここだとちゃんと明確に記録を含めて残しなさいというのが基本的にある。だから水処理場が必要とか云々ではなく、将来再開発とかやったときに、そこからそういうものがでてきてとかいう部分は、やはり考えておかなければいけない問題かなという認識はもっている。

[古谷] 除去、解体、廃棄ということについては、残念ながら、現行法規が過去のアスベストについて完全に網羅しているわけではないという意味で、おそらく共通の認識があるところがあると思う。そういう点では、法規的、自主的含めて、きちっとした対策が進むために、これからも情報交換できる点はしていきたいと思っている。スレートだけに限らず、建材を中心とした廃棄が、とくにリサイクルの流れの中で、明確な分別の中で危険なものはリサイクルにまわさないようにしたうえで、きちっと廃棄するということが確立すればよいと思っているが、変な運用をされると、リサイクルが強調される中に紛れ込んで、かえって問題を生じさせる可能性があると思っている。

[西田] 成形板を解体するときに分別することは可能なのか。

[富田] (小さな声で)可能だと思いますよね。

[西田] 湿潤化して手ばらしでとは書いてあるが。量も多い。

[富田] これは私の認識が間違っているかもしれないが、労働安全衛生法の中に、何をしろということは書いていないが、アスベストが入っているような建材は事前にチェックしなさいということがたしかあったと思うが…

[全国連側] 守られていないですね。

[富田] そちらはわれわれどうという話ではないと思うが、基本的にそういうところでチェックをしてやれば、分別を含めて可能でないかなと思いますが。

[西田] そこもぜひ検討してほしい。

[富田] おっしゃることはよくわかるが。協会の立場としては、情報を流すとかということはできるが、それ以上のことはなかなかむずかしい。

[西田] われわれにはわからないのだから、生産者の立場できっちりやるということをぜひ示してほしい。


■ PRTRへの対応マニュアル

[古谷] 逆に現状やっていることでいうと、先ほど話があったが、窯業建材の切断時のマニュアルが4月か5月にはできると。

[星野] ええ。

[古谷] もうひとつ、PRTRにどう対応されるかということを検討していると聞いているが。

[富田] これはマニュアルがすでにできて、委託先の方にわたしている。協会としても、この説明会を2月21日にして周知させようと…

[大内] それには参加させてもらえるか。

[星野] 会員をまず対象にしてやる。

[古谷] マニュアルはあとでいただけるか。

[星野] はい。

[大内] 県の講習会などでは業者が対象のものでもどんどん参加させてもらっているのでぜひ参加させてほしい。

[古谷] これはあとで検討してほしい。PRTRについては、役所の方のマニュアルづくりが遅れていると。

[星野] これは、通産省―いま経済産業省の関連で、日化協とかいろいろな団体がある。この中にマニュアル委員会ができ、そこでわれわれが指導・協力を得て、アスベストに関する排出量の算出マニュアルを固めている。これはでき上がっているので、いずれ化学工学会のラインにのって、皆さんも見ることができるようなシステムになるのだろうと思う。

[古谷] これは協会には直接関係ないかもしれないが、PRTRの関係では、われわれは役所に、非点源の推計を国としてどうされるのかという問題提起をしている。ひとつには建設現場が抜けている。自動車、自然界、いくつかの要素が考えられるので、うまい推計をしてくれという要請はしている。そういう点で、皆さんが相談を受けたり聞かれたりしていないか。

[富田] あくまで協会は製造側の委員だから、そこでまずきちっとしたものをと…。そういう話はない。

[星野] 平成13年4月からきちっととる。その過程ではいろいろな質問がくると思うが、いまの段階では法整備が遅れているので、3月末までにいろいろな体系を作らないといけない。で、4月1日から記録を取れと。それを報告するのが平成13年4月1日以降ということで、われわれの講習会も今月中旬に行うわけだが、それで早く準備をして、13年4月1日以降に報告できるように皆さんにお伝えしている。その過程の中でおそらく、いろいろな質問とか疑問点とかあがってくるだろうと思う。化学工学会の中で、マニュアルはとにかくいい方に修正をしていくということだから、そこらあたりは十分にいろいろなものがでてきたときに検討を加えて、化学工学会の委員会の方に再度申し出すということは化学工学会の方でも考えているようで、われわれも同様に考えている。

[古谷] 協会のマニュアルの性質は、法律上21人の裾切り―義務づけがないメンバーも含めてできるだけやろうという趣旨か。

[富田] 一応法律に準じている。協会のメンバーというのは21人以下というのはいない。

[古谷] 役所もまだわからないと言っているのだが、PRTR法の義務がある事業者がどれくらいあるのか。大防法の届出数からは20人以下のところは削られるが、大防法以外で対象となるところはあるのか。

[星野] それについては、従業員21人以上、アスベストについては0.5トン以上。そうすると、協会会員でこれを外れるところはまずないと見ている。

[富田] それぞれの協会加盟の中で子会社とか協力会社とかは、たぶんそれなりの指導がいくと思うが、それを抜けたところとなると何ともいいようがない部分。

[古谷] 先ほどの協会の製造をやっている45社は対象になるだろうと。それ以外に何社くらい対象になるかは予想がつかない?

[星野] これは…はい。ただ傘下については徹底していく。今度の講習会もちょっとお応えできないのは会場が100名。会員の中で、話に出た加工している先の皆さんとかもぜひ参加していただこうとお招きしているので実はいま満杯で、非常に多いメンバーのところには少し遠慮してもらおうかということになっているので。隠すことではないし、お見えいただくのは一向にかまわないのだが、会場の制約に頭を痛めている状況。

[古谷] できれば20部ほど提供ないし販売していただきたい(講習会用分しか印刷できていないということなので、まず1冊。あとは増刷してから)。それと窯業系建材の切断時のマニュアルについてもお願いしたい。

※ 「PRTR排出量推計マニュアル」(平成12年11月、21頁)と「窯業系建築材料切断時の粉じん対策マニュアル」(平成13年9月、39頁、カラー写真あり、非会員にも1,500円で頒布)は後日、提供された。

[星野] これはむしろ宣伝していただきたい(パンフレットではなく小冊子になる予定とのこと)。

[大内] それはホームページ等で公表される予定はないのか。

[富田] 協会ではホームページを持っていないので。メールには入っているのだが扱える人がいないとなかなか。メンテとかもしないといけないので…

[大内] (私どものホームページで)マニュアルとかを載せさせていただきたいとお願いしたら?

[富田] こういうものは別に、きちっとやっていただくというのは非常に結構なことなので。


■ 吹き付けへのアクセス曝露

[古谷] 富田さんの最初の話で、イギリスの話で、吹き付けをいじるのではなくてアクセスする人間の曝露ということ、これは日本で何か具体的にやっていることはあるか。

[富田] いや。日本の場合はたぶん空調に使っている場合があるのではないかなと。天井裏の空調ラインとしてやる場合に、そこに吹き付けアスベストがあって、点検か何かで入ったときにアクセスの問題が起こるのかなあと。発電所の中にも、ご存知のように、昨年ですか中皮腫か何かで亡くなったという人のあれが典型。まあ、あれがどうだったかというのは私はよくわからないが、ああいう問題というのが、可能性としては否定できない。

[永倉] 現実に屋根裏で電気を配線したり…

[富田] あり得るんじゃないですかね。

[永倉] そういう人は衣服などでこすってしまう。

[富田] それは結構、かなり濃度…。ちょっと(測定を)やったことがないんでね。本来、昔われわれ考えたときは、そういうデータもとりたいなと。ただ場所がなかなかみつからない。現状がどうかということはやはりきちっと見ておきたい。リスクが本当にどうなるのかということは、データがないと何ともわからない部分もあるので。とくに電気工事を含めている人がたぶん(可能性が)あるのかなあと…

[大内] ビル管理をやっている人などは、清掃やフィルターの交換などで中に入っているので、ビル管理協会などにも働きかけたり、呼びかけたりしないと。そういうところは情報が流れていない。


■ 一般消費者への情報提供(2)

[大内] 先ほど話が途中になってしまったので戻らせていただきたい。商品名ごとのアスベストの含有率についての調査をしていただきたいということはお願いできるのか。

[星野] きわめてむずかしい。

[富田] 確約はできない。

[大内] 必要があってある業者に含有率が知りたいと電話をしたら、すぐにFAXで、過去何年から何年まではアスベスト何%含有、何年から何年まではどうという情報をすぐに送ってくれたことがある。場合によってはそういうことがわからない企業があるかもしれないが、すぐにわかるところもたくさんあると思うので、ぜひわかるところだけでも、過去に使っていたデータを集めてデータベースを作っていただきたい。実際に解体する場合にも、どれがアスベスト含有でどれが含有でないかいちいち調べていられないというのが現状だと思う。費用もかかる。そういうような情報提供をしていただくことが大勢の人を助けることにつながるので、ぜひそういう方向で検討していただきたい。

[富田] これはちょっと確約できないというか、わからない。まあ一応検討はしてみるが、確約はできない。

[古谷] われわれの考え方として、完全網羅でなくても重要である。

[富田] それはわかるが、協力したある特定のところだけの商品名だけが出るとなるとむずかしい面もある。

[古谷] 協会で検討した結果、あるメーカーは自分のところのホームページで出したとか、それはそれでも役に立つ。

[永倉] 事前調査でいちいちサンプルをとって調べるということは、正しいやり方だが、ある程度情報があると役に立つ。

[大内] そういう情報提供が進んでいる会社とかそうじゃない会社とかいろいろあると思うので、それを消費者の目からみて、こういう会社だったらいいなとかいろいろ判断材料にもなる。

[富田] まあ努力はしてみますけどね。確約はできないということに。

[星野] 以前に日本建築センターから建築物の吹き付けアスベスト除去の指針を出したときの経過がある。あのときに吹き付けアスベストの商品名をある程度調べられるものは載せたわけだが、ところが、網羅されていないという指摘を受けた。それで今度環境庁のマニュアルができたが、意をくんだうえで表現を変えてきている。わかる範囲ではできると思うのだが、それでも商品名というと…たとえばジャンル別で、コルゲート―波板といったらある程度決まってきますよね。まあそんな感覚でやれるところまでやってみて…

[大内] アメリカなどのサイト(ホームページ)だと、アスベストの製品名、企業名、含有率、製造していた期間のリストがインターネットで見れるようになっている。アメリカでできて日本で不可能ということは全然ない。ぜひやってみていただきたい。精度の問題とか、どの程度完璧にということはあろうが、試みというかたちでも。


■ ILO石綿条約の批准

[古谷] 前の話で、フレキシブルボードの現状10%前後、スレート5%の低減化の今後の見込みはいかがか。

[星野] 協会としてここで申し上げることは…個々の企業の問題…そういう流れが出てくれば協会としてもつかめる。

[富田] 委員長という立場ではなく私個人の考えだが、結局あまりアスベストがよすぎたために研究を怠ってきたのではないか。だから技術的な部分で遅れたのではないか。

[古谷] 技術的に決して乗り越えられない壁ではないと。

[富田] 物によってだろうと思う。ただやはり、どのくらいの寿命か、エネルギー問題とか地球環境問題とかいろいろな問題のからみも含めてみていかなければいけない部分も、それぞれ考えているのではないかと思うし。やったはいいけれど、5年後にパーになりました。また、新しくしなければいけないでは物として成立しない。そういう部分があるのではないか。

[橋本] まあ非常にむずかしい。長期間の…

[永倉] いま作っているものが劣化して―壊されたりすることも含めて、それによる被害が何十年後に出るということで、われわれがどこまで責任を負えるのかというのはもう想像力の問題だ。そこまでつめて考えると、やはり水道の蛇口をどこかで止めないといけない。管理というのをどこまで考えるか

[橋本] それは最初の問題に戻るから、いろいろな考え方があるので。

[大内] 安全に使用するとか、管理して使用するとか、そういう前提で進められる以上は、ILOの石綿条約を批准することが一番大事なことではないか。

[富田] それはもう協会としては、ILO条約を批准してほしいということは、ずっと以前から。私自身が(条約採択の会議に)出ていた経緯もあるし、協会でもそういう話をしてきている。労働省―いまは厚生労働省だが、内閣法制局とのからみがどうもみたいで、法律上の部分でネックがあってどうもなかなかいかないという話を聞いている。協会としては、ILO条約の批准は、当然やってしかるべきだと…

[大内] では厚生労働省がネックということか。

[富田] いや厚生労働省もいろいろ検討しているのだが、私もよくわからない部分があるのだが、法律上の問題―当時聞いたのは、規則というか曝露濃度も含めた測定の部分が非常にネックになっているのだと。個人曝露と、日本の場合は「場の管理」で、違う部分がある。アスベストだけで法整備というのではなく、やはり全体論で考えているので、そこがむずかしいのだと。私自身は個人的にはこれは違うんじゃないかと思っている。なぜかというと、ILOには適用除外を含めて項目がある。その部分は置き換えることができて、日本の「場の管理」でいいのではないかと。そこのところがあるので内閣法制局とのやりとりがむずかしいと。法律論議になるので、われわれも本当のところがわからなくなってくるところがある。私が協会として彼らとディスカッションする中で出てきたのはその部分が一番ネックだと(聞いている)。

[大内] いまは協会として批准を進めるということでは?

[富田] それはもうILOについてはもともと批准すべきである。

[大内] われわれの方からも批准を働きかけるので、ぜひまた…

[老田] 労働省の考え方は、ILOの条約は日本の法律になじまないという考え方だから。

[富田] そうなんですよね。

[大内] 管理して使用する条件としてILOの条約も作ったし、批准してるからやっているというのが、使っているところでの流れなのに、批准もしないでそういうふうにやっているといっても説得力がないと思う。

[富田] それは、組合側も使用者側も含めてそういうふうになっている。


■ 「a」マーク表示の再徹底

[老田] ひとつ要請がある。「a」マークをつけるのが最近おろそかになっている。建材を囲んでいる包装には書いてあるが、現場で大工や左官やさんが使うときには、包装などはどこかにいってしまう。そこは言わば

[富田] 再確認ですね。

[老田] きちんと指導を徹底していただきたい。それと、この「a」マークが非常に小さくてめだたないというんですね。大きくするとかしないと。それと、「a」マークとは何だということを現場の作業者にもわかりやすい、これはアスベストが含まれているのだから取り扱いに十分注意しろというようなものを表示していただきたい。

[星野] ご指摘の考慮は必要かもしれないと思うが、しかし、印刷は簡単といわれるが、これはなかなか大変。コルゲートなどの場合は、印刷がしにくいので刻印。そうすると、山のところに打たなければいけないとか、限られたスペースでむずかしい面もある。

[古谷] われわれの中では、含有率によって色を変えたらよいという話もある。


■ 今後も必要に応じて

[大内] 今回は2時間と時間が非常に短くて、また、いろいろ話を伺いたいこともあると思うので、ぜひよろしくお願いしたい。

[古谷] 本当に10年ぶりくらいの機会なので、ぜひこれを機会に、顔を見ていただいたわけなので、いろいろなところで出会ったり、話があったりしたらよろしくお願いしたいということと、今日われわれの機関誌もお渡ししたが、内容の間違っているところとか気がついた点があれば指摘していただきたい。また、どんなかたちかは別にして、こういう機会は必要に応じて持てるようにしていただきたい。そのうえで、われわれとしては本当に、一日も早くなくしたい。管理使用については、ポジションの違いはあってもそれなりに建設的な議論はできるのだろうと思う。必ずしも政治的ということではなく、われわれは、とくに全建総連の皆さんをはじめ野丁場を含めた建設の現場で、そうはいってもむずかしい、ちょっと無理であるという認識はもっている。見解が違うから議論ができないということはないと思う。

[星野] それはないと思いますよ。お話しするときには当然、石綿いらないというのとわれわれ愛してるのよという立場でお話しするので、ひとつずつは熱いこともあると思う。しかし、ご教唆いただいてなるほどなという点も、われわれとして見いだすこともできると思う。古谷さんにお願いしたのは、団交方式の意見交換では議論が未来永劫にこんがらがるので、そうではなくて、それぞれの立場を踏まえてまず意見交換、そこからスタートして、理解できるところは理解したうえでひとつずつクリアしていくというようなことがよろしいのではないかと感じる。これ以降もまたこういう機会があればもう少し時間をとってもいいかと思う。


■ 富田氏「議論の中で協会側が検討を約束した点」

・ 最後にちょっと確認というか、話をずっとやってきた中で、ひとつあったのは、カタログに「a」マークをやるように協会として考えていただきたいという。これについては協会として考えたい。(「a」マーク表示だけでなく情報提供ということは確認)

・ ふたつ目がリサイクルの問題について、今後いろいろな意味で、まず、してはいけないという考えてほしいという話があったのではないかと(スレートなどのアスベスト含有製品が建材等のリサイクルという流れの中で、適切に廃棄されずに飛散を起こすことがないようにという、廃棄・リサイクルに関する問題)

・ それから、過去の(アスベスト含有)建材商品名のリストができればと。これは確約はできませんけれど、努力はしてみますというお話を、私の方からしたと思います

・ それから最後に、「a」マークをやってないところがあるので、これの再確認をぜひしていただきたいと

・ 大きくこの4つの点が、うけたまわった中で協会として対応を考えていきたいというふうに思っております。

・ (ILOの批准はあたり前。安全な管理に関するデータのこと―協会側が知らない現場で、データをとれる現場を提供していただければありがたい等の若干のやりとりがあった。)

(記録テープをもとに事務局の責任で編集)



このホームページの著作権は石綿対策全国連絡会に帰属しています。
許可なく転載、複写、販売等を行うことを禁じます。