(社)日本石綿協会との意見交換 トップページへ

2002.1.3 
業界  業界の取り組み



石綿含有製品及び無石綿製品の将来動向に係わる国内調査
(平成12年度経済産業省委託・石綿含有率低減化製品等調査研究報告書)
平成13年3月
(社)日本石綿協会)から


1. はじめに

わが国ではじめに石綿スレート類が生産されたのは1920年代のはじめである。以後夏期において高温多湿となり、また、火災の多いわが国では耐久性及び耐火性に優れた有用な建材として使用されてきた。しかし、1980年ころから石綿を長期間にわたって吸引した場合の生体に及ぼす影響が問題化しはじめ、1980年には飛散性の吹付け石綿が使用禁止となり、その撤去工事や封じ込め工事が着手された。一方、セメント等で固化した製品については、十分な管理のもとでの製造及び使用が認められ現在に至っている。この間、わが国では石綿含有率の低減に係わる技術開発を行い、石綿含有製品と同一の性能を確保できるものについては、逐次技術移転を行ってきた。

このような状況下で、欧州、米国などの先進国においては石綿使用禁止あるいは禁止への移行の傾向にあり、2005年には飛散の恐れのない石綿製品についても使用禁止が適用されることとなった。

そこで、本章では繊維強化セメント板、屋根材及びサイディング材等を製造しているメーカーについて現状並びに2005年の対応状況について調査することとした。


2. 生産量及び石綿使用量の推移に関する調査

波板、ボード、珪酸カルシウム板、サイディング、屋根材、パルプセメント板、スラグ石膏板及び押出製品について生産量及び当該製品に含有されている石綿の量に関する調査を行った。繊維強化セメント板協会から提供を受けた資料をもとに整理した。

整理結果を以下に示す[グラフ類は省略]。なお、資料は次のような方針で整理した。[右表は「2.」節の末尾に掲載されたものである。]

@ 製品の生産量及び石綿の使用量とも統計は1980年以降とする。

A 生産量については、製品の形状、厚さ等、またその数え方が枚数、質量、面積等で表示されており、統計的な処理が困難なことから、指数表示とする。

B 石綿の使用量についてもAと同様に処理することとした。

C 指数の基準年は、1980年とする。

2.1 波板、ボード、珪酸カルシウム板について [本頁の表参照]

(1) 生産量

波板及びボードについては1980年を基準とした場合、全体的に見て漸次減少の傾向を示し、1999年には前者で約22%、後者で約34%にまで低下している。この主な理由としては、競合製品の出現が挙げられる。一方、珪酸カルシウム板については、1990年までは漸増を示し、その後は若干の微増を示しながら、3倍前後の生産を行っている。

(2) 石綿使用量

1980年の石綿使用量を基準とした場合、波板及びボードについては現在16〜25%にまで低下している。珪酸カルシウム板については、1998年以降は無石綿化に技術移転している。3製品を合計すると石綿使用の低下率は12%、すなわち1980年の約1/8まで低減している。

2.2 サイディング、屋根材、押出製品について [次頁の表参照]

(1) 生産量

1980年に比べてサイディングは8倍から10倍の大幅な増加を、屋根材は2倍前後の増加を示している。これに対して押出製品は1996年から統計開始以降約10%の低下を示している。

(2) 石綿使用量について

1980年に比べてサイディング及び屋根材とも最大時で3倍、2倍の石綿使用量を示したが、現在では1980年と同じ使用量となっている。

2.3 パルプセメント板、スラグ石膏板 [本頁の表参照]

生産量は1980年に対して、ほぼ±10%の範囲で推移している。無石綿で製造している。


3. 石綿含有製品及び無石綿製品の将来動向に係わるアンケート調査

1) 調査方法の概略

(a) 調査目的

石綿使用に対する今後の動向等の現状を把握するために、(社)日本石綿協会ならび日本窯業外装材協会に対してアンケート調査を行う。

(b) 調査対象、発送数、調査時期

調査対象は、(社)日本石綿協会加盟団体から「波スレート」、「平スレート」、「パルプセメント板」、「押出板」、「住宅屋根」、「サイディング」を扱う25社、ならびに日本窯業外装材協会から「サイディング材」、「住宅屋根」を扱う4社としている。

また、調査時期は、平成13年2月始めから3月始めまでの1か月間である[注: ちょうど22頁の新聞記事と石綿全国連の「緊急質問」(23頁参照)と重っている]。

(c) 調査内容

調査は、(社)日本石綿協会ならびに日本窯業外装材協会それぞれに対して行っており、無石綿化への見通し、長寿命化に対する取組み状況、廃材リサイクルへの取組みの実態を把握するために実施している。

(2) アンケート発送数、回収数(率)

表[右表]に実施したアンケート調査における発送数及び回収数(率)を示す。

発送は、日本石綿協会ならびに日本窯業外装材協会加盟団体29社に対して、取り扱っている各石綿入製品に行っている。複数の石綿入製品を取り扱っている業者が存在するため、総発送数は36、総回収数は30、全体の回収率は86.3%である。

石綿入製品ごとにみると、「押出板」、「住宅屋根」、「サイディング」を取り扱う団体に対して、それぞれ3、4、4件発送を行い、回収率は100%となっている。また、「波スレート」は、10件発送を行い回収率は90%、「平スレート」は9件発送を行い回収率は77.8%となっている。最も回収率の低かった「パルプセメント板」に関しては、6件発送を行い回収率は50%であった。


3.1 (社)日本石綿協会に対する調査結果

(社)日本石綿協会に対しては、加盟25社に対して32件発送を行っている。そのうち回答は、21社、26件寄せられ、(社)日本石綿協会だけの回収率は、81.3%であった。以下、調査結果を示す。

Q1. 石綿入及び無石綿建築材料の2000年生産量、石綿含有率

表[下参照]に石綿入及び無石綿建築材料の2000年生産量と石綿含有量を問うたQ1の回答結果を示す[「合計」及び「割合」欄は編集部で追加したもの]。「波スレート」を除く、「平スレート」、「パルプセメント板」、「押し出し板」、「住宅用屋根材」及び「サイディング材」は、その比率に品種毎の差はあるものの、無石綿製品との併産もしくは無石綿のみの生産となっている。これに対し「波スレート」は、回答9社の全てが無石綿製品をしてない状況にある。

Q2. 石綿、無石綿製品製造ラインについて

石綿入製品製造ラインと無石綿製品製造ラインについて問うたQ2の調査結果を図[省略、延べ回答数16件]に示す。石綿入製品及び無石綿製品を製造する際、同じラインを使っているのは、12件、75%となった。別々のラインにより製造しているのは、回答が寄せられたうち1社、6%と少数であった。また、その他の3件では、「品種による」、「現在、石綿入製品は製造していない」といった回答が寄せられている。

Q3. 無石綿製品生産切替え時について

無石綿製品に切替えの場合、設備の新設、改造又は既存設備等のクリーニング等について問うたQ3(3.1 設備の新設、3.2 改造、3.3 クリーニング)の調査結果を図[省略]に示す。

Q3.1 設備の新設

無石綿製品生産に切替えの場合、設備を新設するかどうかに関しては、設備を新設するが2件、新設しないが12件となっており、新に設備を新設する必要が無いと考えている業者が多くなっている。その他の2件では、「一部新設する」、「検討中、品種による」といった回答が寄せられている。[延べ回答数16件]

Q3.2 設備の改造

設備の改造に関しては、改造する必要があるが10件、改造は不要であるが5件となっている。また、その他2件では、「一部改造する必要がある」、「品種による」といった回答が寄せられている。[延べ回答数17件]

Q3.3 設備のクリーニング

設備のクリーニングに関しては、日常の管理で十分であるが9件、切替えのためのクリーニングが6件となっている。[延べ回答数15件]

Q4. 無石綿製品製造技術について

無石綿製品製造技術について問うたQ4(4.1 独自の技術、4.2 技術導入、4.3 技術提供)の調査結果を図[省略]に示す。

Q4.1 独自の技術の所持について

無石綿製品生産について独自の技術を所持しているかどうかに関しては、所持してるが11件、一部所持しているが2件、何も所持していないが6件となっている。[延べ回答数19件]

Q4.2 技術導入について

技術導入に関しては、導入する必要があるが3件、導入は不要であるが13件となっており、大半の業者において新たな技術を導入する必要がないと考えていることがうかがえる。その他では、「検討中、場合による」といった回答が寄せられている。[延べ回答数17件]

Q4.3 技術提供について

技術提供に関しては、技術提供をするが2件、技術提供はしないが12件となっている。その他では、「場合によっては考える」といった回答が寄せられている。[延べ回答数15 件]

Q5. 無石綿製品生産切替え時における生産コストについて

無石綿製品生産に切替えた場合に、生産コストがどうなるかについて問うたQ5の調査結果を図[省略、延べ回答数19件]に示す。無石綿製品生産に切替えた場合の生産コストに関しては、その他「品種による」の1件を除き、生産コストは向上するといった回答であった。コスト向上の割合については、10%向上が4件(21%)、20%向上が9件(47%)、30%向上が4件(21%)となっている。また、その他のもう1件は、生産コストが5%向上であり、無石綿製品に生産を切替えた場合は、生産コスト向上は、免れない感があることがうかがえる。

Q6. 無石綿製品と石綿入製品との性能(耐候性、耐久性、耐火性等)比較について

無石綿製品と従来の石綿入製品とで耐候性、耐久性、耐火性といった性能を比較した場合について問うたQ6の調査結果を図[省略、延べ回答数21件]に示す。無石綿製品と石綿製品の性能を比較すると、無石綿製品の方が石綿入製品よりも性能が上回るといった回答は0件であった。無石綿製品と石綿入製品の性能は、ほぼ同等であるが8件(38%)、劣るが13件(62%)となっている。また、珪酸カルシウム板に関しては、ほぼ同等であるが、波板では対候性、耐久性に劣るという回答が寄せられている。

Q7. 無石綿製品への切り替わり時期について

従来の石綿入製品から無石綿製品への切り替わり時期について問うたQ7の調査結果を図[省略、延べ回答数19件]に示す。石綿入製品から無石綿製品への切り替わり時期は何年頃かに関しては、2002年から2003年、2004〜2005年が[各々]7件(36%)、2010年頃が3件(16%)、切り替わり時期については不明であるが2件(11%)となっている。

Q8. 石綿代替品について

Q8.1 どの材料と切り替わるか

石綿が全く別の材料へ切り替わる場合、どの既存製品がどの材料に切り替わるかについて問うたQ8.1の調査結果を図[省略]に示す。「波スレート」がどの材料に切り替わるかに関しては、金属系材料が8件、ゴム・プラスチック系材料が1件と金属系材料に回答が集中している[延べ回答数9件]。「平スレート」に関しては、金属系材料が2件、セメント系材料が2件、石膏系材料が3件、ゴム・プラスチック系材料が1件と回答が分散している[延べ回答数9件]。「パルプセメント板」に関しては、セメント系材料が4件、石膏系材料が7件、粘土系材料が1件、ゴム・プラスチック系材料が1件となっており、セメント系、石膏系材料に回答が集まっている[延べ回答数13件]。「押出板」に関しては、金属系材料が1件、セメント系材料が8件、石膏系材料が1件となっており、セメント系材料に回答が集中している。「住宅屋根」に関しては、金属系材料が6件、セメント系材料が7件石膏系材料が1件、粘土系材料が4件、ゴム・プラスチック系材料が1件となっており、金属系、セメント系材料に回答が集中している[延べ回答数11件]。[「サイディング」は、金属系材料が4件、セメント系材料が6件、石膏系材料が1件[延べ回答数11件]。]

Q8.2 代替品コストについて

代替品に切り替えた際のコストについて問うたQ8の調査結果を図[省略、延べ回答数16件]に示す。石綿入製品を代替品に切り替えた時のコストに関しては、コストが上がるが10件(62%)、コストが下がるが1件(6%)、コストは変化しないが2件(13%)、その他が3件(19%)となっている。コストが上がると回答された内、10%程度向上が3件、20%程度向上が1件、30%程度向上が1件となっている。また、その他では、代替品に切り替えた場合、メンテナンス費用が大幅に上がってしまうといった回答が寄せられている。

Q8.3 別素材の性能(耐候性、耐久性、耐火性等)について

従来の石綿入製品と比較した場合、別素材の性能について問うたQ8.3の調査結果を図[省略、延べ回答数17件]に示す。別素材による代替品と従来の石綿入製品の性能を比較すると、別素材による代替品の方が石綿入製品よりも性能が向上するといった回答は0件であった。別素材による代替品と石綿入製品の性能は、ほぼ同等であるが8件(47%)、劣るが9件(53%)となっている。

Q9. 石綿制品と無石綿製品に対するユーザーの感想で何か聞いていることがありましたら答えてください。

・ ユーザー様、工事業者様も固形化された石綿製品は無害との意識が強い。

・ 自社のユーザーではあまり無石綿に対しては言わない。

・ 石綿有無はユーザー側で判別がほとんどできないので性能に関しては特になし。

・ 大手プレハブメーカーは環境問題意識が向上、無石綿の需要大。中堅はまだ大手に比べ意識が低い。いずれも価格UPは認めてもらえない。

・ 固化されたものが安定処分場で処理できるなら健康リスクもあるが、性能低下によるリスクの方が大きいとの声もある。

・ 石綿製品は仕入れない。

・ 石綿制品と同程度の品質ならびに同コストの無石綿製品の要望がある。

・ 無石綿化により本当に材料としての信頼性はあるか。

・ 石綿製品の安全性。無石綿製品の耐候性特に屋根材に対して。これらの点に疑問ありとのことを良く耳にする。

・ 無石綿製品の品質保証に対し若干懸念を持っている。

・ 表面の平滑性が石綿に比べ見劣る。割れやすい。

・ 薄物製品(3-5t)で無石綿製品は取扱上ワレ、クラック等が入りやすい。

Q10. 既設の石綿製品の延命化対策としてどのようなことを考えておられますか。

・ 既存屋根の上に屋根を施工する工法も実用化されています。また、定期的な塗り替えをお勧めしております。

・ @二重葺き工法、A表面のカラー化等

・ 波板は新形状のサイディングのリニューアル化及び商品のグレードアップとして塗装仕様品を低コストで供給していくことが必要。

・ リフレッシュ

・ 板状製品なのでマニュアル通りすればよい。

・ 基本的には延命化は困難。無石綿化の推進を図る。

・ 石綿の安全仕様(ママ)に関するPRを高める。

・ 石綿の取扱方に十分注意すれば安全性が確保できる。よって石綿の有効利用も可能と考える。

・ 大きな問題は「石綿吹付」であり、石綿製品波スレートはセメントで固化しており飛散の心配もなく説明して使用願っている。

・ 石綿取扱環境の改善強化を実施する。

・ お客からの要望。会社方針として2001年度中には完全無石綿化。

・ 需要動向に基本的に任せるしかない。

・ 石綿の有効性のPR

Q11. 既設の石綿製品の廃棄対策としてどのようなことを考えておられますか。

・ リサイクル化を徹底する。

・ 製品のリサイクル化

・ リサイクル

・ リサイクル(少量ずつ)

・ リサイクル設備と廃棄物だけの別製品

・ リサイクル、焼成、無害化

・ 粉砕して原料化(石綿制品がある間は)

・ 粉砕し再生粉として使用し上記方針により石綿製品自体なくなる

・ 石綿製品の分別によるスクラップ原料の再利用

・ 行政が石綿セメント製品の廃棄物を無害化した上でリサイクルする方法を推奨してほしい。

・ セメント原料としての処分等

・ 石綿使用の有無にかかわらず再利用を前提に社外廃棄の減少を検討中

・ 現在は埋め立てが適当と考えております。

・ 現行含むアス品端材が安定処分場処理可能なことが変更なければ十分

・ 現状通り安定型処分場

・ 考えていない

Q12. 石綿含有率低減化の実績から今後当協会は何をなすべきと考えますか。

・ 低減化の目標を製品別に見直す。

・ 低減化対策の継続。今後拡大していくであろう解体等に伴う廃棄物(含アス建材等)の処理対策

・ 固形化された石綿製品と、吹付けされた石綿品の取扱いは明確に区分されるべき。例えばPRTR法の0.1%規制は他例に比べ厳しいのでは…

・ @「石綿の管理して使用すれば問題ない方針」を明確に打ち出してほしい、A無石綿化によりライフサイクルコスト、CO2等の諸条件が現状よりも悪くなることを明確にしてほしい。

・ 石綿の取扱い方の工夫にて安全が確保でき、石綿の持つ性能を条文活用できる場を持てるようにしていただきたい。

・ 石綿公害の報道の行き過ぎと思う。もう少し良いところ、悪いところ、使い方等を広い方面に説明してほしい。

・ 100年以上使用してきた石綿製品をなくしてほしくない。協会として利用方法を研究していただきたい。

・ 石綿の良さ、管理して使用すれば有用な商品であることのPRをお願いします。

・ 法的に石綿使用禁止の方向であれば代替繊維の安全性について検証すべきと考える。

・ 将来の石綿規制を考慮し、各社のノンアス化方針をとりまとめ、協会としての方向付けを行うべきと考える。

・ 世界中の医学的情報の普及

・ 石綿の無害化研究を推進してほしい

・ 石綿代替品のPR及び代替品の安全性確認、立証

・ 再利用に必要な設備、廃棄先に対する情報提供

・ 情報提供

3.2 日本窯業外装材協会に対する調査結果

サイディング材(当初から石綿を使用していない事業所を除く)

・ 無石綿化の今後の見通し

技術的な課題は略完了しており、すでにほとんどの事業所で無石綿化は達成されている。ここ数年でさらに無石綿化は進むと思われるが、一部特殊な用途、デザインのもの、またコスト面でごく一部に残る可能性がある。

・ 施工されているサイディング材の延命策、長寿命化への取組み状況

技術面では、メンテナンスサイクルモデルを明確にし、再塗装によるリフレッシュシステムを供給するほか、重ね張り技術によるメンテナンス、リフォームメニューを開発しつつある。また、ビジネスとしてもサイディングメーカーとしてリフォーム事業を立上げ、積極的に外壁の延命化を推進している。

・ 廃材のリサイクルへの取組み

工場におけるリサイクルの技術開発は完了し、生産工程内で発生するものは、ほぼ原料へリサイクルされている。

施工現場での廃材については、プレカット化、工場内加工比率を上げるなどの対策を進め、現場廃材の削減を図っている。また、回収リサイクルは、回収方法を中心に業界で検討中であるが、一部ではすでに広域再利用指定産業廃棄物処理業者の指定を受け回収し、原料の一部として再利用する準備を進めている。

今後の課題としては、セメントへの還元をテーマにセメント業界なども含めて再利用技術の検討を進める。

屋根材(当初から石綿を使用していない事業所を除く)

・ 無石綿化への今後の見通し

2002年度中の無石綿化をめざし各社推進中。この数年で達成されると思われる。

・ 葺かれてある屋根材の延命策、長寿命化への取組み

技術面では、メンテナンスサイクルモデルを明確にし、再塗装技術に加え、重ね葺き技術によるメンテナンス、リフォームメニューを開発しつつある。また、ビジネスとしても屋根材メーカーとしてリフォーム事業を立ち上げ、積極的に外壁の延命化を推進している。

・ 廃材のリサイクルへの取組み

工場におけるリサイクルの技術開発は完了し、生産工程内で発生するものは、ほぼ原料へリサイクルされている。

施工現場での廃材については、隅棟用屋根材を準備するなど切断残材の削減を図っている。施工現場からの回収リサイクルも、スクラップとして原料の一部とする方向でシステム開発中であるが、一部ではすでに広域再利用指定産業廃棄物処理業者の指定を受け回収し、原料の一部として再利用している。


4. まとめ


1) 1980年以降の建材への石綿使用量の推移

建材の石綿低減化は1990年前後から進展し、その技術は石綿含有率の低減化の推進と、無石綿製品への代替えとして進展してきた。その結果、最大使用量が181千t/年あった1988年をピークに1999年の使用量は、1/2近い91千t/年まで減少している。

2) 生産品種毎の無石綿化の状況

波スレートを除く、平スレート、パルプセメント板、押し出し板、住宅用屋根材及びサイディング材は、その比率に品種毎の差はあるものの、無石綿製品との併産もしくは無石綿品のみの生産となっている。これに対し波スレートは、回答9社の全てが無石綿品を生産していない状況にある。

3) 無石綿生産技術の保有状況

保有技術の有無を回答した19社の内、持っている、一部持っている会社は13社に対し、全く保有していない会社が6社あり、波スレート生産会社の無石綿化の状況と一致している。すなわち、波スレートの無石綿化の技術開発はこれから促進される段階にあることがわかる。

4) 石綿に対する意識

アンケート調査各社別コメントからは、石綿に対してその低減化を図る一方で、「管理して使用すれば安全である」というILOの指針や石綿協会の指導が普及しており、必ずしも欧米のような石綿使用禁止の動きが、わが国のメーカーやユーザーのコンセンサスとはなっていない状況にあることがわかる。石綿禁止に対する欧米の動きが世界的な傾向となったとき、国内的にこれに対応する場合には、石綿に対する認識の変化についての喚起策が待たれるところである。


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