渡辺信義さん(旭ガラス船橋工場に33年間勤務、肺ガン)



被害者の声 目次

渡辺アキ子さん

 船橋から参りました。
主人渡辺信義は、旭ガラス船橋工場に33年間勤めまして、1992(平成4)年今から10年前に肺ガンで亡くなりました。肺ガンが脳に転移して、あと3ヶ月の命と宣告されました。脳の方は、すぐに手術しないと昏睡状態になってしまうと言われました。肺の方はCTとタンの検査をしました。

主人には肺ガンとは言わず脳腫瘍とだけ話しました。主人は頭を手術すれば治ると信じていました。頭は10時間に及ぶ手術でした。手術後2−3日は話もできましたが、その後脳死になって入院からたったの2週間で亡くなりました。主人は、何がなんだかわからないであの世に行ってしまいました。

葬式の時にご近所の方が、「お宅のご主人旭ガラスにお勤めなので職業病じゃあないか?」と言われました。その時は訳がわかりませんでしたが、ちょうど一周忌の頃、NHKのテレビニュースを見ていましたら、アメリカのガラス会社に肺ガン患者が多いので、日本のガラス会社にもマスクを義務づけるという厚生省の発表を聞きました。

その時、「あっこれは主人が、カタキを打ってくれ。」と言っている様な気がしました。知人の御世話で、船橋労災職業病何でも相談にワラをも掴む思いで相談に行き、芝病院の海老原先生を紹介して頂きました。主人のレントゲン写真とCT写真を見た先生は「胸膜肥厚斑があり、職業病として労災が認められる。」と診断されました。

1995(平成7)年11月船橋労働基準監督署に労災の申請をしました。しかし監督署は「CT写真では石綿が原因である事が明確でない。」と監督署が依頼した医師の意見を採用、労災を認めませんでした。審査請求、再審査請求も棄却されたため、1999年11月千葉地裁に行政訴訟を起こしました。2002年2月には、会社に対し損害賠償請求の訴えを起こし、現在ふたつの裁判を闘っています。

裁判で会社は「石綿による疾患は一人もいない。」と言っていますが、在職中や退職者の中で肺ガンで亡くなった人が11名います。また退職者の中で肺ガンで現在治療中の人が1名、石綿肺(じん肺管理区分2)と認定された人が2名、健康管理手帳(石綿)を交付された人が3名、今後ますます石綿による健康被害が続出すると思います。

 更に許せない事は、旭ガラスは法の定める健康診断を行わなかった事です。1975年から、6ヶ月に1回の胸部エックス線直接写真の撮影が、法的に義務づけられています。旭ガラスが行っていたのは、小さな間接撮影でしかも年1回です。もし会社が法の定めた通り半年に1回の直接撮影の健康診断を行っていれば、主人の肺ガンも早期に発見でき、死なずに済んだのではないかと思うと、悔しくてなりません。先日裁判官が工場の中に現場検証に入りました。

私も入りびっくりしました。工場の中は窓もなくトンネルの中の様でした。機械の騒音と高温で不気味でした。窓も換気装置もないトンネル内の様な職場で、昔は全部手作業だったそうです。高熱と石綿粉塵舞い散る中で主人は働いていたんだなあ、と思うとぞっとしました。こういう所でマスクもしないで仕事をしていたら、どうなるか裁判官にもわかって頂けたと思います。

今でも石綿が年間8万トン弱輸入されていると聞きました。一日も早いアスベストの全面使用禁止をお願いします。
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