2002.1.5

安全センター情報


2001年10月号



チリのアスベスト禁止、再び
Laurie Kazan-Allen, IBAS, 2001.8.1


2001年初め、チリ共和国政府は、アスベストの輸入および使用の禁止を通知し、2001年7月というデッドラインが提案された[3月号33-34頁参照]。法令第656号は、広範囲にわたって、クロシドライト、クリソタイル、アモサイト、アクチノライト、アンソフィライト、トレモライト、その他の種類のアスベストおよびそれらを含有した製品の製造、輸入、流通、販売および使用を禁止していた。第2条では、アスベストはいかなる建材にも使用されてはならないと明確に述べていた。このラテンアメリカの労働安全衛生にとって画期的な出来事は、政治家、政府の3つの省(住宅、運輸、保健)の当局者、アスベスト被災者、曝露労働者、労働組合活動家、環境NGOや関心をもつ個人たちを含むキャンペイナーたちの連携した努力によってもたらされたものであった。

アスベスト禁止という決定に至った討論と協議のプロセスは5年以上に及ぶものであったが、その間に問題点が様々に研究され、議論された。簡単に行われた、あわただしい決定ではなかったのである。2001年6月29日にカナダ首相ジーン・クレティエンが、クリソタイル(白石綿)の禁止をやめさせようとチリ大統領リカルド・ラゴスに個人的に電話をしたという知らせを聞いたときに、チリの禁止支持者たちはどのように反応したか? (注: カナダは現在世界第2位のクリソタイル輸出国であり、カナダ国内では、連邦・地方政府とも国内のアスベスト産業を熱心に、率先して擁護してきた。)

● カナダの干渉に対するチリ国内の反応

公式声明のなかでクレティエンは、「ラゴス大統領に話をし、クリソタイル・アスベストは安全に使用することができるという―明確な科学的証拠に基づいた―カナダの経験を力説した」ことは認めた。チリ全国建設労働者連合会長のセルジオ・トロンコソは、「外国政府が、その多国籍企業のために、わが国の国内問題に干渉するなどというのは不穏当かつモラルに反することである」と語る。チリ大学の毒物学者でチリ医学会環境委員長のアンドレイ・チェルニチンは反駁する。「他のものより相対的に有害性の高いアスベストがあることは事実だが、すべての種類のアスベストががんを引き起こすと証明されている…チリにおける調査研究結果は、アスベスト曝露が発がんリスクを何倍も高めるということを明らかにしている」。反アスベスト・キャンペーンの先頭に立ってきた政治生態学研究所[Instituto de ecologia politica、http://www.iepe.org/]の所長は、カナダの政治家たちの振る舞いを大いに批判している。「カナダ人たちは、チリとの貿易関係において、ダブル・スタンダードを行っている。彼らは、環境の問題を憂慮すべきだと主張しているが、その輸出が脅威にさらされるや、自国の利害のためにチリの法律を転覆させようとしている」。

● マスコミの反アスベスト行動報道

7月12日のデッドラインまでの助走期間は、危険ぶくみであった。チリの禁止擁護者たちは団結して、主要な新聞にカナダの干渉を非難する広告を掲載、ラゴス大統領への全国的な要請運動を開始し、世界の仲間たちに支援を要請して、首都サンチャゴでデモ行進を行った。カナダのマスコミもこの話を取り上げ、一時はアスベスト問題がカナダのマスコミで広く議論される話題となった。7月12日には、トロント・スター紙にイル・シラーの記事「アスベストの悲哀を後押しするチリの禁止措置」が載った。シラーは、「情報公開法によって入手した、オタワ[カナダ連邦政府]が―産業界のロビー活動機関であるアスベスト研究所と一緒になって―外国の当局者に不本意な方向転換を強いる徹底した外交攻勢をかけていることを示す文書」について詳しく述べた。同記者は、「チリ政府に対する全般的攻撃とチリ保健大臣ミシェル・バチェレットに対する個人攻撃を開始」することを記した、アスベスト研究所長クレメント・ゴッドボウトがカナダ国際貿易大臣ピエール・ペティグリューに宛てた1月の手紙を引用している。アスベスト研究所の手紙は、チリはカナダ政府に対して「傲慢」な態度をとっていると非難し、ペティグリューはそれを黙過すべきではないと主張している。

トロント・スター紙の翌日の論説では、「クレティエンがアスベスト産業のために便宜を図っているように見えるだけでなく、他国の安全衛生上の関心をカナダが尊重しているかどうかにやっかいな疑問を生じさせるものである」としている。グローブ・アンド・スター紙の論説は、伝統的な立場をとって、「クレスティエンには、ラゴスに電話をして、カナダの経験を主張する権利がある」と主張している。「世界中あまねく」、政治生態学研究所のバーナード・レイズに対するカナダ放送協会[CBC]のインタビュー番組が報道された。レイズは、7月12日の大統領官邸前のデモ行進、クレティエン宛ての手紙を在チリ・カナダ臨時大使ヒューズ・ルソーに提出したことを含め、反アスベスト・キャンペーンについて話した。アスベスト被災者委員会会長セルジア・チャパ、政治生態学研究所長マニュエル・ヴァケダーノとチリの4つの主要労働組合の委員長、CUT書記長ホセ・オルテスが署名したこの手紙は、「取り扱う者に大きな脅威を生じさせることが科学的に証明されている鉱物を受容するよう、開発途上国とその貧しい国民に圧力をかける必要があるのか? カナダ人にとってリスクが高く、有毒な製品は、より未熟な安全衛生法令と執行体制しかもたない開発途上国に対して、より以上の大きなインパクトを与えるだろう」、と書いている。

● 禁止の背景

1999年、保健省が、アスベストの労働衛生リスクについて調査を開始した。彼らは、ILOアスベスト条約(第162号)と曝露労働者の関心、公共住宅へのアスベスト使用禁止を勧告した住宅問題省の委員会の結論を考慮した。同国のアスベスト問題の重大さが認識され、さらなる調査を行うために、労働衛生部に委員会が設置された。委員会のメンバーたちは、曝露労働者と会い、アスベスト製造業者との技術的討論に加わり、アスベスト代替品の技術的可能性について分析した。これらの検討を通じて、チリの主要アスベスト含有建材製造業者のひとつが、ノン・アスベスト技術の採用を検討していることがわかった。労働組合活動家セルジオ・トロンコソが、建設労働者のアスベスト曝露の現実のリスクについて関係機関の見解をまとめるうえで重要な役割を果たした。トロンコソによれば、チリにおける建設作業の多くが、安全衛生問題をまったく考慮しない下請業者によって行われている。委員会は、建材へのアスベスト禁止が必要であり、他の製品への使用も厳しく削減されるべきであると結論づけた。結果として、法令案が保健大臣と大統領に提案された。これが承認され、2001年1月13日のチリ官報で公布された。

第5条のもとで許される免除措置は建材については除外され、他の製品については、「技術的または経済的に可能な代替品が存在しない」ことを保健機関に納得させた場合に免除され得る…製造業者は、製造する製品または部品の性質、使用するアスベストの種類、採用する労働者の健康へのリスク管理対策、工業プロセスで発生する廃棄物の除去方法および粉じん管理システム、アスベストを他の別の繊維で代替化することが可能でないという技術的正当性を示す技術報告書を提出しなければならない」。チリ・アスベスト被災者協会、ACHVAのメンバーたちは、第5条とすべてのアスベスト含有製品に対する迅速な表示[ラベリング]制度の義務づけを欠いていることが、アスベスト産業の代表たちにアスベスト製品製造を継続する余地を与えるのに利用されるのではないかと危惧している。

● ラテンアメリカにおけるその他の進展

クレティエンの最善の努力にもかかわらず、大統領布告は7月12日に署名され、チリにおけるアスベストの使用は違法と宣告された。キャンペイナーたちは歓声を上げて喜んでいるが、強力なアスベスト・ロビーは決してタオルを投げたわけではない。カナダのアスベスト関係者から送り込まれた「アスベストの健康問題専門家たち」は、新たな法律を廃止するために、保健省の当局者たちを「教育」する努力を継続すると約束/脅迫している。よい知らせは、チリの運輸・建設セクターが、すでにブレーキ・ライニングのアスベスト部品を代替品に代えているということである。サンチャゴ首都圏の環境保健当局は、環境キャンペイナーたちと、執行および監督について議論している。

今回のチリの禁止は、安全衛生活動家たちに熱狂的に歓迎され、ラテンアメリカ全体のアスベスト禁止を促進させるものと考えられている。1980年代半ばにエルサルバドルがアスベストを禁止した後、最近、ブラジルのオザスコ市、サンカエタノドスル州、モギミリム市とマトグラッソ州、リオデジャネイロ州およびサンパウロ州での禁止まで、わずかな動きしかなかった。ブラジルにおける国レベルの禁止はまだなされていないが、上述の禁止によって、ブラジルのアスベスト市場の70%以上がカバーされている。チリは、アスベストを禁止することによって、自国民の健康を防護することを決定した諸国―EU加盟15か国のうちの12か国(7月3日にスペインが最新のアスベスト禁止EU加盟国となった[2002年1月1日から禁止])、他のEU以外のヨーロッパ諸国、オーストラリア、サウジアラビアを含む―に加わった。

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アルゼンチンもアスベスト禁止

Laurie Kazan-Allen, IBAS, 2001.8.1


※ ローリー・カザン・アレンからアルゼンチン保健大臣Dr.ロンバード宛ての手紙

あなたからの公式な報せで、決議[Resolution] 823/01が公布されたことを知りました。これが、アルゼンチンが、2か月以内に多数のアスベスト製品の使用を禁止し、2003年1月1日までにアスベスト含有建材の使用を禁止することを意図したものであることを理解しています。労働者と一般公衆の安全と健康を防護するため、かかる積極的なステップをとったことに対して、貴下および貴国政府にお祝いを申し上げたいと思います。国際アスベスト禁止事務局(IB

AS: http://www.ibas.btinternet.co.uk)のコーディネーターおよびブリティッシュ・アスベスト・ニューズレター(BAN: http://www.lkaz.demon.co.uk)の編集者として、私は、1世紀にわたり世にはびこった、野放図なアスベスト使用が引き起こしている恐るべき遺産についてよくわかっています。科学者たちは、今世紀の30年の間に、ヨーロッパの6か国だけで50万の人々がアスベスト関連疾患によって死亡するだろうと予言しています。この統計数字から判断すれば、地球全体の死亡者数は数百万人に達するに違いありません。

アスベスト産業による「管理使用」という呪文が、何度も繰り返し持ち出されてきました。アスベストを安全に使用する唯一の方法は、使用しないことです! 自由貿易論者の友人である世界貿易機関[WTO]ですら、同意しています。画期的なケースにおいて、すべての種類のアスベストが有害であり、アスベストの安全使用は存在せず、より安全な代替品が存在している、と結論づけたのです。ケベックのアスベスト研究所とカナダの政治家たちに先導された国際アスベスト産業が、今回の法律を撤廃するよう貴国政府に対して圧力をかけようとすることは、間違いないと考えています。それは、彼らがチリで行ったことであり、いつものやり方だからです。貴下の決定が正しいものであることを確信してください。生命を救おうという目的は、闘う価値のあることです。貴下の取り組みに賞賛をお贈りするとともに、その重要な仕事を継続されんことを祈念いたします。
× × ×


決議第823号

アスベスト曝露に発がん性があるという、争う余地のない科学駅証拠が存在すること、

国際がん研究機関(IARC)が、アスベストを証明済みの発がん物質としていること、

世界保健機関(WHO)が、国際科学物質安全計画(IPCS)の1998年の環境保健クライテリア203において、アスベスト曝露の慢性影響は、曝露量から独立しているため、曝露の安全レベルを立証することは不可能であると述べていること、

汎アメリカ保健機関が、1983年の一連の出版物ECOにおいて、いくつかのアスベスト曝露の非職業的原因(家庭内・環境曝露、容易に確認できる自然界の発生源)を指摘していること、

世界労働機関(ILO)が、1986年のアスベストの使用に関する第162号条約において、可能な限りアスベストをより有害でない製品または技術に代替するよう勧告していること、

欧州連合(EU)が、1999年7月27日の指令76/769/EECにおいて、2005年1月1日からクリソタイル・アスベストを禁止したこと(大多数のEU諸国では以前から禁止が実行されていた)、

2001年3月12日付けの世界貿易機関(WTO)の裁決が、「クリソタイルは確立された発がん物質であり、安全な閾値は存在せず、管理使用は国家的禁止に対する有効な代替措置ではない」として、「クリソタイルのような発がん物質を含有する製品の輸入および使用を禁止する加盟国の権利」を確認したこと、

発がん物質・製剤のリストの施行に関する1995年の規範[Disposicion]第1号において、労働・社会保障大臣が、アスベストを第1グループ(人間に対する発がん性の十分な証拠あり)に含めていること、

1996年の指令第658号において、曝露労働者に中皮腫および肺がんを発生させる可能性があることから、アスベストを職業病リストに含めたこと、

1997年に保健大臣が組織した、持続可能な化学物質管理における優先事項の確認のための全国ワークショップにおいて、アスベストがわが国の優先問題とされ、その優先性が2000年に開催された優先事項の確認のための第2回ワークショップにおいても確認されたこと、

1999年9月に本大臣によって開催された、アスベスト―労働と健康セミナーが、「アスベスト曝露は健康に対するハザード(危険有害要因)、アスベストは証明済みの人間に対する発がん物質であり、この原因による疾病と死亡のリスクを最小化するための措置を実行する必要がある」と結論づけたこと、

保健省ヘルスケア局長[Secretaria]の決議第55号および保健政策局長の決議第148号によってアスベスト―クリソタイルに関する諮問委員会が設置されたこと、

全国書誌目録に、アスベスト曝露による肺がんおよび中皮腫の事例報告があること、

アスベストを含有する製品の製造、使用、修理または廃棄を通じて飛散するアスベスト繊維への環境曝露によって、広範囲におよぶ国民がリスクにさらされていること、

アスベストよりも安全と考えられる代替製品の開発に著しい進歩があり、それらは、それを製造するのに必要な技術とともに、国内で利用可能であること、

使用中止について検討するため、この分野における経営者団体、および関心をもつ非政府団体(NGO)との協議が行われたこと、

最終消費者にわたる商品の生産に用いられる物質は、想定される使用状況のもとで彼/彼女の安全を脅かさないということを保証することは、国家が他者に委ねることのできない職務であること、

1999年12月13日の指令第20号が、リスクファクターが発覚する前に国民の健康を守る措置を採用することが保健大臣の職務であると定めたこと、

司法長官[Direccion General de Asuntos Juridicos]が、この問題に積極的に関与していること、

現行の規範[medida se dicta]が、法律25.233によって改正された「Ley de Ministerios-T.O.1991」の趣旨に沿ったものであること、

に鑑みて、保健大臣が策定する。

第1条 アスベスト、その一種であるクリソタイルとそれらの含有製品の製造、輸入、流通および使用は、国中において、2003年1月1日から、禁止される。

第2条 第1条に示した期日までの間は、クリソタイル・アスベスト繊維およびそれを含有する製品の製造、輸入および流通は、製造者および提供者が、旧労働・社会保障大臣が発行した1991年の決議第577号によるラベル表示および発がん性化学物質登録(1995年の規範第1号)に関する規範、職業上リスクに関する法律24.557、消費者安全に関する法律24.240、有害廃棄物に関する法律24.051、および、現行および将来発効するその他の関係する規範を実行している場合に限って、許される。

第3条 第1条の例外は、アスベスト織物、アスベスト紙、アスベスト板、アスベスト・ゴム、アスベスト・プラスチック、および、アスベスト含有フィルター、ガスケット、ペースト、ペンキであり、これらの全面禁止は、官報で本決議が公布されてから60日後に実施される。[これは、第1条の2003年1月1日を待たずに禁止される製品に関する規定である。]

第4条 前条の規定にかかわらず、市場において交換または代替品の入手が不可能と証明されるアスベスト製品の流通および使用は、1年以内の期限を限って認可される。当初の認可後、当該事情が継続する場合には、認可は延長される可能性がある。

第5条 すでにアスベストが設置されている建築物および構造物のメインテナンス、改造および解体の仕事は、資格のある組織によって規制される。
第6・7条 省略―本決議の送付、通知先等に関する規定

※ UK TUC Risksによる英文概訳によった。
※ 決議823/01は2001年7月26日に署名され、官報に公布されて7月31日に法律になった。

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ラテンアメリカ・アスベスト会議

Laurie Kazan-Allen, IBAS, 2001.8.29


今夏はじめの政府によるアスベスト禁止を監督してきたアルゼンチン保健省政策・衛生局長Dr. Hector Moguilevskyは、今秋ブエノスアイレスにおいてアスベストに関する3日間の会議を開催する計画を発表した。多くの諸国からの参加者と様々な課題が取り上げられることが見込まれる、刺激的な発表や討論盛りだくさんのこのプログラムは、2001年10月1日に開始される予定である。各国の大臣や政府のアドバイザー、国際NGOや社会運動家が、アルゼンチン、ブラジル、チリ、エクアドル、メキシコ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイの経験を吟味することになるだろう。アスベスト関連疾患、疫学、補償やアスベストの除去手順等といったトピックスも吟味されるだろう。この集まりのユニークな特色は、ワークショップにたっぷり時間を割り当てていることである。

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スペインも2002年までにアスベスト禁止へ
CC.OO, Spain, 2001.7.17


1976年に、当時非合法であったCC.OO[労働組合のナショナルセンター]が、規制と禁止を求める、アスベストのリスクに関する見解を発表してから、何年もが経過した。この間に、多くの労働者とその家族が健康や生命を失い、さらに、多くの者が今後影響を受けることになるだろう。1984-85年にかけて、CC.OOはOIT[同前]とともに再び、国際条約と勧告によって、この物質を禁止する必要性を訴えるキャンペーンを展開した。最近の数年間、労働組合は被災者や専門家たちと緊密に連携し、また、ヨーロッパ労連(ETUC)の支援を受けながら、アスベスト禁止を支持し、被災者の裁判闘争を支援する取り組みを展開してきた。

さる7月3日に、CC.OO書記長のJose Maria Fidalgoと労働衛生・環境部長Joaquien Nietoは、保健大臣Celia Villalobosと会合を持ち、2002年1月1日までにアスベストの使用および流通を禁止する法案を承認する方向で一致した。スペイン、そしてギリシャとポルトガルだけが、EU加盟諸国のなかで、2005年までのアスベスト禁止に遅れる可能性のある国であった。

CC.OOは、過去数年間にわたって、労働者、疫学者、腫瘍学者、呼吸器学者、衛生学者、法律家、進歩的な労働監督官、被災者団体、イギリス、スウェーデン、フランス、イタリア、アメリカの専門家と労働組合から受けた支援に感謝したい。

われわれの闘争は本日その成果を獲得し、スペインのアスベストに残された日々はわずかであると発表することができる。遅れはしたが、わが国の何千もの市民に死をもたらし、また、もたらすであろう鉱物の禁止に向かうという政府の決定を歓迎しなければならない。

保健大臣との会合において、CC.OOは、禁止規則に統合されるべき一連の方策について提案した。現実に禁止によって生ずる可能性のある雇用問題を克服するための財政的援助、職業病の認定、早期引退システム、被災者補償基金の創設という3点に沿った被災者に対する補償という計画を要請した。これらの提案は、アスベスト曝露労働者の健康サーヴェイランス計画の協定化に向けて議論されてきたものである。

禁止法を効果的なものとするためには、財政措置および関連する人的、技術的、財政的資源をともなわなければならない。最後に、CC.OOは、この問題に関する政府の政策を調整することを目的とする各省委員会の創設を提案した。

※ UK TUC Risksによる英文概訳によった。

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すべてのアスベスト製造業者に破産の危機 U.S.A., 2001.8.15


カリフォルニア・サンタモニカ(ロイター)―増大し続けるアスベスト関連疾患に罹患した人々の企業に対する補償請求によって、アメリカの主要なアスベスト製造業者のすべてが2年以内に破産しそうである―8月15日に発表された調査研究結果はこう述べている。

カリフォルニアにあるインディペンデントな市民正義のためのランド研究所の調査研究によると、何10億ドルにものぼるアスベスト関連の経費が、すでに41の企業を連邦破産法第11章による破産申請に追いやっている。

この報告は、増大し続ける訴訟事例をあげて、アメリカ合衆国のアスベスト請求に対処するやり方を見直すべき時期にきていると述べる。

この問題は、「アスベスト被災者が何らかの主体から補償を受けられるべきかどうかという問題ではなく、むしろ、どのような主体がこの金銭的負担を背負うべきかということである」と報告は言う。

その難燃性の特性により、アスベストは、1970年代初めまで、製造業、建設業、造船業においてひろく使用されてきた。

1940年から1979年の間に、アメリカにおいて、推定270万の人々が仕事によってアスベストに曝露してきたと考えられている。後に、この物質は、他の多様ながんや肺疾患である石綿肺と同様、致死的ながんである中皮腫の原因であることが判明した。

1980年代初頭以来、50万件以上のアスベスト関連請求が起こされ、今後起こされる訴訟によってこの数字はすぐにその2倍になるであろう、とランドはしている。

「主要なアスベスト製造業者のすべてが24か月以内に破産しそうである」と、ランドの報告は予言している。

報告によると、「アスベストに関連した破産の件数は、この18か月のうちに急騰」し、2000年1月以降、8社の主要なアスベスト製造業者(被告)が、連邦破産法第11章による破産を申請した。

アスベスト製造業者は、高価な訴訟に直面しているだけではない。

「訴訟が続くのにつれて、訴えられる企業の数も劇的に増加してきた…現在までにわれわれが見積もってきた不完全な企業リストは、アメリカ経済における産業の半分以上に及んでいる」とランドは言う。

訴訟による打撃を受けた企業は、鉱山会社や造船業者ばかりか、従来アスベスト訴訟と関わりのなかった精油所、紡績工場、小売商、保険業者、その他の産業にまで及んでいる。

アメリカの歴史において、(アスベスト)補償請求と個人傷害(訴訟)は、もっとも長期間連続している集団不法行為訴訟となっている、とランドの報告書は言っている。

アスベスト請求ないし訴訟の全国的な登録システムは存在せず、アスベスト請求を解決するために支払われた金の総額についての公式な推計もないため、将来を予測することは困難である、と報告は言う。

しかし、アスベスト事件に関与した弁護士や保険会社から集めたデータや情報を使って、報告は、アメリカの保険会社は現在までに約216億ドル支払い、5つの会社だけで各々がアスベスト訴訟事件に100億ドルずつ支払っていると推計している。

上下両院司法委員会のスタッフとの会合の説明用に用意されたペーパーによれば、報告は、訴訟事件の数がいずれなくなるのか、増大し続けるのかについて、訴訟関係者の間で意見の一致はみられていないという。

1990年代初めには、中皮腫による請求件数は減少したが、1990年代半ばには再び増加している。中皮腫以外の病気による請求件数は増加し続けている。

※ 原文は、http://news.excite.com/news/r/010815/00/science-health-asbestos-dcで入手できる。



上院小委員会でアスベスト禁止を要求

U.S.A., 2001.8.1


< Star Tribune>

ワシントンD.C.―7月31日、アメリカのアスベストに曝露した労働者のなかで、2030年までに死亡者数が50万人にも達するだろうということを指摘して、公衆衛生の専門家たちが、議会と政府に対して、アメリカもこの物質を禁止している他の20の諸国に加わるよう要求した。

前公衆衛生総局(PHS)次長リチャード・リーマン博士は、この推計には、ブレーキ機構、食器洗い機、床、電灯のソケット、キャットリターなどの「アスベスト含有製品を使用した無自覚な数え切れない消費者」は含まれていない、と述べた。

「アスベストに関する科学的データと知見のすべてに照らして、なぜその使用が今なお許されているのか?」 彼は、上院の健康・教育・労働・年金委員会の前でもたれた盛りだくさんの内容の公聴会において尋ねた。

「いまやアメリカ合衆国も、数が増えつつある将来のアスベストの輸入および使用を禁止した国々のリストに加わるときである」。

公聴会のなかで、パネラーたちは、アスベストに汚染されたモンタナ州のバーミキュライト鉱山跡地の労働者とその家族、その他の住人の悲惨な犠牲を予防するために、もっと多くのことをしないのかと言って、連邦機関を厳しく批判した。

医師、弁護士や家族たちは、バーミキュライトに汚染された土壌から飛散する微小な繊維によって、モンタナ州リビー(Libby)の鉱山町の200人もの人々と、鉱石を加工していたミネアポリス北東にあった2つの工場の少なくとも22人の労働者が死亡していると非難した。

ミネソタ州の保健局が、アスベスト関連疾患のリスクにさらされている可能性のある者を確認するために、ひとつの工場近隣に現在および過去住んでいた数千人の住人の調査を行っている。

何度もリビーを訪れ、そこで展開されている事態をみている上院議員マックス・ボーカスが、この日のヒアリングの最初の証人だった。

彼は、環境保護庁(EPA)、労働安全衛生庁(OSHA)、鉱山安全衛生庁(MSHA)とモンタナ州は、10年以上も「問題を放置」し、「責任を転嫁」した罪があると宣告した。

「かつて見たことのない最悪の悲劇」と言って、ボーカスは、「1,000から2,000のリビーの住民がアスベスト関連疾患で死ぬことになるのではないかと危惧している」と語った。

最近、職場の安全衛生を監督する小委員会の議長に指名された上院議員ポール・ウエルストーンは、なぜ、鉱山安全機関のアスベスト曝露基準は、OSHAが規制する他の労働現場に対する基準よりも200倍もゆるいのかと疑問を呈した。

EPAは、1989年にアスベストを段階的に禁止しようと試みたが、同庁が代替物質のリスクを十分に分析しなかったとして、連邦裁判官が当該規則を否決した。同庁は、新たな用途および多数の紙製品や床用フェルトを含む6つのカテゴリーのアスベスト含有製品を禁止した。

現在は、エモリー大学の公衆衛生学教授であるリーマンは、職場におけるアスベスト曝露による、1980年以降の推定死亡数が189,000から231,000にのぼることを紹介した。彼は、今後30年間に、さらに27万から33万の死亡が予測されると述べた。

アスベスト被災者の治療に当たっている2人の医師が、この物質の使用禁止を力説してリーマンに加わった。

「私は、あなた方が人々の生命にどれだけの価値を認めているか知らない」と、ボーカスは、ブッシュ政権で新たに指名された鉱山安全機関の長官デビッド・ローリスキ、OSHAの代理長官、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、EPAスーパーファンドの有害廃棄物浄化プログラムの当局者を含む、委員会の出席者たちに話しかけた。「ここで示したのは死に直面している人々なのである」。

4人の当局者は全員、この夏にリビーを訪問することに同意したが、公聴会の場でアスベストの即時禁止を支持した者はいなかった。

※ 原文は、http://webserv0.startribune.com/stOnLine/cgi-bin/article?thisSlug=ASBE01&datで入手できる。
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< Seattle Post-Intelligencer>

7月31日、臨床的および情熱的双方の証言を聞いて、上院の小委員会は、アスベストの危険性と、研究者によく知られながら一般には知られていなかった、発がん物質から労働者と消費者を防護するうえでの立法者の怠慢と向かい合うことになった。

「退職したら妻と一緒に西部に行って、山に登り鹿を狩りして暮らしたいと思ってきた。しかし、現在、それは適わないことだ」と、67歳になるジョージ・ビーコラは、小委員会に対して語った。

ビーコラは石綿肺に罹患しており、それは30年近く鉱山で働いている間にアスベストに曝露したために引き起こされたものだと信じている。アスベストは、自然に生成する鉱物であり、他の鉱物を採掘する際に大気中に飛散する場合もしばしばある。

いったん吸入すると、アスベスト繊維は、がんを含む様々な病気を引き起こす。石綿肺は、肺の肥厚化と瘢痕化を生じさせ、息切れがするようになる。アスベストはまた、人間に対する発がん物質としても知られ、その危険性のために、ドイツやフランスからポーランドやエルサルバドルいたる20か国で禁止されているほどである。

アメリカ合衆国では禁止されておらず、断熱材や自動車のブレーキに見いだすことができる。ある種の園芸製品は、アスベストの痕跡に汚染されているバーミキュライトを含有している。

「自分のことは自分でできるようになりたい」と、ビーコラは、上院議員パティー・マリーが委員長を努める健康・教育・労働・年金小委員会に語りかけた。「しかし、肺が侵されているため、芝を刈ることもできない」。

ビーコラはかすれ声で話を続ける。「私は今日、自分が失ったものを、鉱山やブレーキ・ショップや工場で働く別の誰かが失うことがないようにするために、自分の話をしにここにやってきた。会社側はアスベストは問題がないと言うかもしれない―まさに私に言ったように。上院議員の皆さん、彼らは嘘をついている。アスベストのことを危惧する必要がある。わが政府がわれわれを守る必要があるのです。」

マリーは、このヒアリングは、アスベストの引き起こす危険と穴の多い規制状況に注意を向けるために開催されたものだと述べた。彼女はまた、抜け穴をふさぎ、また、鉱夫やアスベストに曝露する他の労働者に対する防護を強化する立法を提出する可能性のあることを約束した。

公聴会は、労働省、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、環境保護庁(EPA)の当局者を呼び物にした。立法者たちも、アスベスト関連疾患を取り扱っている医師や研究者が、アメリカ合衆国はアスベストを禁止すべきだと発言するのを聞いた。

「私の意見は、日常的に直面している疾患や死の多くを防ぐことができるということを知っている医師の見方によるというだけのものではない。私は、この大虐殺が起きるのを許してきたアスベスト産業と高いレベルにいるその友人たちに怒ってもいるのだ」と、多くのアスベスト疾患の患者を診ているミシガン州の医師マイケル・ハーバットは言った。

ハーバットは、「何十年間も、この社会と裁判所、多くの政府が、アスベストを法律上の厄介者とみなしてきた。私、そして患者たちは、自分たちにとってアスベストは疾病、そして死を意味しているということを理解するよう求めたい」と言って、アスベスト禁止を力説した。

マリーは、明らかに証言に心を乱されはしたが、禁止を支持するかどうか発言することは断った。

「アスベストは何十年も昔にすでに禁止されたものと信じている人々が相当いる一方で、アスベストは彼らの家、職場に存在していて、それに曝露し続けており、また、そのことを知らないでいる。人々が知らないということに、私は当惑している」と、彼女は語った。

多くの人々と同様に、マリーは、アスベストの危険性を、モンタナ州リビーの悲惨な経験から知らされた。この町の窮状とW.R.グレース社が所有するバーミキュライト鉱山が住民たちにもたらした損害は、1999年11月の初めにSeattle Post-Intelli-gencer紙が掲載した一連の記事によって焦点が当てられたものである。

本紙は、他の多くのことと合わせて、この一風変わった谷間の何百人もの鉱夫とその家族、住民たちが、W.R.グレース社が所有するバーミキュライト鉱山近隣のアスベストに汚染された鉱石に曝露することにより殺され、あるいは病気にされ続けてきたことを報じた。

この記事は、アスベストが、その悪名と規制が存在するにもかかわらず、いかに健康への脅威であり続けているか、また、上から下までのレベルの政府が、リビーの鉱山だけでなく、国中の労働現場と家屋で、この物質への曝露から人々を守ることに失敗してきたか、その跡を追った。

連邦政府は、リビーとその近隣に住んでいる、ないし住んでいた6,114人の人々の健康スクリーニングを実施している。最初の1,067人の検査の結果は、その30%がアスベスト関連疾患の徴候を有していることを明らかにした。

疾患が現われてくるまでにはしばしば20年以上もかかるため、リビーやバーミキュライトを加工していた別の場所において、アスベスト曝露によってどれだけの人々が疾患にかかるかを予測しようという者はいない。

多くのリビーの人々を診ているスポカン族の医師アラン・ホワイトハウスは小委員会に、リビーの危険性はきわめて深刻であり、外にいただけで、あるいは、鉱山で働いていた人の衣服に接触したことによって疾患にかかった人々もいると話した。

「過去5年間に、不安にさせるような数の、鉱山や鉱夫に直接曝露していないのに、リビーに住んでいたために疾患にかかった患者を診ている」と、彼は述べた。

※ 原文は、http://seattlep-i.nwsource.com/national/33423_asbestos01.shtmlで入手できる。
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6月のヨーロッパ・アスベスト連続行動 BAS, 2001.7


2000年9月の世界アスベスト会議の成功を受けて、同会議の共催団体のひとつであるアスベスト禁止国際事務局(IBAS)は、ヨーロッパにおける一連のアスベスト会議を計画した。一連の行事は、労働組合やアスベスト被災者団体、専門家団体と協力して、2001年6月に、イギリス、ベルギー、オランダ、スコットランドで開催された。その核となるのがヨーロッパ・アスベスト・セミナーだったが、それ以外の会議もたくさんの討論と関係者の連携を生み出した。

6月4日、「アスベスト: 今なお殺人者」と題した夜の会議が、隔年開催されるGMB(一般・自治体・ボイラーマン組合)の会議の一環として、イギリス・ブライトンで開催された。GMB健康・環境部長ナイジェル・ブリソンが、会議の議長を務めた。過去数十年間、GMBはイギリスにおけるアスベスト問題に関してもっとも積極的な労働組合であり、アスベストのリスクに対する関心を高める必要性に焦点を当て、イギリスとEU双方におけるアスベスト禁止のためのキャンペーンを展開してきた。ナイジェルは、アスベストによって引き起こされる地球的問題は国際的な連帯と行動によってのみ解決することができると言って、国際的流れのなかでのGMBのイギリスにおけるイニシアティブを強調した。GMBの国際的見地を反映して、彼は、ブラジルからフェルナンダ・ギアナージ、インドからジョシ博士、アメリカからバリー・キャッスルマンの各氏を、各国におけるアスベストに関連した諸問題の進展について組合員に話してもらうために会議に招待できたことに感謝した。

翌日は、トニー・フレッチャー博士とIBASコーディネーターのローリー・カザンアレンが共同議長を務めて、ロンドン保健・熱帯医学校(LSHTM)のマンソン講堂において、「アスベストと公衆衛生―国際的広がり」というセミナーが開催された。3時間の会議中、ジュリアン・ピート教授、バリー・キャッスルマン博士、ジョシ博士、キャロリン・スティ−ブンズ、フェルナンダ・ギアナージが、ヨーロッパにおけるアスベスト関連死亡の重荷、カナダ対欧州共同体―「アスベストおよびアスベスト含有製品に及ぼす影響」事件における世界貿易機関(WTO)裁決の公衆衛生に対する意義、インドおよびブラジルにおけるアスベスト禁止運動に対するアスベスト産業によるキャンペーン等のトピックスについて発表を行った。公式の会議の終了後、会議室で催されたレセプションの場でも、インフォーマルな討論が続けられた。

6月7-8日、東欧からの多数の代表を含む21か国・40名以上の代表が、各国のアスベスト状況を比較対照するために、EUの心臓部に集まった。ヨーロッパ・アスベスト・セミナーで行われた発表と討論の詳細については後に述べる。

停車駅なしのヨーロッパ・ツアーは、翌日午後のロッテルダムでのオランダ・アスベスト被災者グループとの会議に引き継がれた。このインフォーマルな集まりの場での報告者は、オランダの国会議員でオランダ・アスベスト被災者グループのメンバーでもあるボブ・ルアーズ、多数の被災者の代理人になっている弁護士、疫学者であるポール・スワスティ、その他のオランダのメンバー数名とブラジルのフェルナンダ・ギアナージ。世界中でおなじみのアスベスト産業による否認とアスベスト被災者の死を伝えるビデオが上映された。このドキュメンタリーには、カナダのアスベスト鉱山経営者のインタビューが収められており、アスベスト鉱山労働者にはアスベスト曝露のリスクはない、リスクがあるのは最終消費者だけだと主張していた。これは、アスベスト含有製品を販売しているインドのビジネスマンの、実際にリスクがあるのは鉱山労働者であって最終消費者は安全だと請け合ったコメントと対照的だった。オランダのアスベスト被災者の家族は、アスベストについて公の場で議論することを抑圧する秘密主義と恥部について語った。ベルギーの多国籍企業エターニトと密接な関係にある複数の工場が、かつては地元の数千名の人々の雇用を提供していた。ある発言者は、自らも家族の誰もエターニトの工場で働いていなかったのに、不幸に見舞われたアスベスト被災者の名前のリストをあげた。彼らの曝露は環境的なものであった。

一連の会議の最後は6月12日に開催され、この日までに、フェルナンダはブラジルに向けて出発し、バリーはアメリカに帰って、ジョシ博士とローリー・カザンアレンが、「クライドサイド・アスベスト行動」と共催のアスベスト・セミナーに出席するためにイギリス・グラスゴーに向かった。グラスゴー市長アレックス・マスンが、19世紀に建設されたグラスゴー市議会の建物のなかに会議室を提供してくれた。造船、アスベスト加工と重工業の歴史とともに、スコットランドは、アスベスト関連疾患による死亡率が世界中のトップクラスのひとつである。法廷弁護士フランク・マギールが、地元の状況を説明し、スコットランドのアスベスト被災者が獲得してきた補償の意義について論じた。ローリー・カザンアレンとロビン・ハウィーが、ブリュッセルで開催されたヨーロッパ・アスベスト・セミナーで報告された情報の概略を紹介。「南アフリカ行動」のディビッド・ケンヴィンが、進行中のケープ社を被告とする南アフリカのアスベスト被災者の補償を獲得するための闘争について報告。運輸一般労働組合(TGWU)の代表ヒュー・カーニーが、10代のときにスコットランドの造船所でアスベストに曝露した中皮腫の被災者がアメリカで提起した裁判において、彼とその友人であるサミー・アーヴィンが果たした役割を説明しながら、国際連帯の重要性を示した。48時間の上陸許可でヒューとサミーは、カリフォルニアに飛んで裁判で証言することに同意した。彼らが証拠を提供した後、被告たちは裁判の和解を申し出た。ジョシ博士の基調講演は、インドにおいてアスベスト禁止に向けたキャンペーンにはずみをつけようとする試みを詳述したものだった。市長の代理として出席した助役ベイリー・アイリーン・グラハムは、この取り組みへのジョシ博士の関与を称え、会議後に市が主催したレセプションで歓待した。

※ 原文は、http://www.ibas.btinternet.co.uk/Frames/f_eas_lka_uk.htmで入手できる。

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石綿粉じん自主基準の改正について (社)日本石綿協会環境安全衛生委員会


前号で[8月号43頁参照]、(社)日本産業衛生学会における石綿粉じんの評価値(クリソタイル0.15f/cm3)が正式に認められたことを受けて、(社)日本石綿協会におけるクリソタイル石綿粉じん自主基準(管理濃度)を従来の1f/m3から0.5f/cm3(ばく露濃度としては0.5f/cm3から0.15f/cm3に)に改正する(発効は平成14年1月1日より)と報告しました。

上述において、基準として、評価値、管理濃度、ばく露濃度という用語を使用していますが、数値が同じでも、それらの持つ意味合いが大きく異なりますので、以下、その説明、管理濃度とばく露濃度の関係、今回の改正について述べることにします。

● 管理濃度、ばく露濃度と評価値の説明

管理濃度とは、わが国が独自に定めた有害物質(石綿等)に関する作業環境の状態を評価するための指標として使用されるものです。すなわち、作業場所の空気中に含まれている有害物質の濃度を一定のレベル以下に保つための基準で、これにより、設備面、作業管理面での対応の必要性が判断されます。

一方、ばく露濃度とは作業者個人が吸入する有害物質の量をあるレベル以下に保つための基準で、許容濃度をベースとします。許容濃度とは、1日8時間、週5日間程度の作業時間であらゆる場所で作業しても、有害物質にばく露される濃度がそれ以下であれば、ほとんどの作業者から疾病は発生しないであろうという濃度です。

また、評価値とは、許容濃度が設定できないような発がん性物質に関して、(社)日本産業衛生学会の許容濃度委員会が設定した生涯リスク評価値のことです。石綿の場合は、過剰発がん生涯リスクすなわち初回ばく露を16歳、ばく露期間を50年、潜伏期間を10年、そして平均余命を77歳とした時に1000人に1人が過剰のがんにかかるリスクのことをいいます。

下記は管理濃度、ばく露濃度と評価値の比較を示すものです。

管理濃度とばく露濃度の最終目的は、作業者を疾病から守るということで一致していますが、目的、管理対象などが異なっているため、両方の数値をそのまま比較して論じることはできません。また、評価値については、累積ばく露量による発がん生涯リスク評価であり、管理濃度、ばく露濃度とは異なるものですが、強いていえばばく露濃度の考え方に近いといえるでしょう。

そこで、評価値の数値をばく露濃度に置き換えた上で、管理濃度とばく露濃度の関係を考えると、一定範囲の作業場所内で作業者がほぼ均一に作業を行っている場合は、管理濃度とばく露濃度を使用した評価方法に、ある関係が成立します。

● 管理濃度とばく露濃度の関係

一定範囲の作業場所内における測定結果(測定値の幾何平均Mgと幾何標準偏差σ)から推定される、その空間の平均濃度(EA2)と最高濃度(EA1: 危険率5%)にはEA2=(0.3〜0.4)×EA1…(1)の関係があります。これは下記の理論式から得られます。

LogEA1=LogMg+1.645×Logσ…(2)
LogEA2=LogMg+1.151×Log2σ…(3)
(2)式と(3)式を整理すると
(1.151×Log2σ−1.645×Logσ)
EA2=EA1×10…(4) となります。

通常σは経験的に2〜3の範囲をとるので、(4)式に、このσの範囲をいれると、(1)式になります。

一方、一定範囲の作業場所の平均濃度(EA2)とその場所の個人ばく露濃度(B)には、EA2=B…(5)の関係があるといわれていますが、過去(昭和61年)に慶応義塾大学医学部が、各種石綿製品を製造している7工場で測定した結果では、EA2=0.8×Bとなっており、これから考えても(5)式は安全側で評価したことになるでしょう。

そこで、(1)式と(5)式より、B=(0.3〜0.4)×EA1…(6)の関係が得られます。

(6)式において、Bはばく露濃度に、EA2は管理濃度に対応することから、ばく露濃度(0.3〜0.4)×管理濃度という関係になります。なお、EA1と管理濃度の関係はEA1≦管理濃度の場合、作業環境がよいとの判定になります。

● 今回の改正について

従来、(社)日本石綿協会はWHO(世界保険機関)がクリソタイル石綿に勧告していたばく露濃度0.5f/cm3をベースに協会の自主基準値として管理濃度1f/cm3を設定していました。今回、前述したばく露濃度とは異なり、(社)日本産業衛生学会の石綿粉じんの評価値をほぼばく露濃度に近いとみなして、これを念頭においた上で、新たに協会の自主基準(管理濃度)を0.5f/cm3を設定しました。

管理濃度を0.5f/cm3とした場合は、ばく露濃度としては、上記(6)式より、0.15〜0.20f/cm3となりますが、過去の個人ばく露濃度と作業環境測定結果等から判断して、管理濃度0.5f/cm3で、第一管理区分(作業環境がよいというレベル)に該当する作業管理を維持していれば、ばく露濃度0.15f/cm3以下は十分クリアできると考えています。

なお、昨年における(社)日本石綿協会の作業環境の調査結果では、管理濃度0.5f/cm3で、全単位作業場所の約90%が第一管理区分の作業環境となっています。

※ (社)日本石綿協会「せきめん」2001年7月号から転載させていただきました。

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