2001.2.25 |
ジュネーブ、6月14日(ロイター発)―世界貿易機関(WTO)のパネルは、フランスがアスベストの輸入を禁止して国際貿易のルールを犯しているというカナダの訴えを却下することで調整がとれた、と外交官たちは水曜日に語った。 国際的な環境団体の情報に基づく話だとして、その外交官たちは、フランスの措置はWTO協定の下における健康予防の観点から許されるとした、3名の委員からなるパネルの中間報告[interim rulig]が出されたと語った。 このケースは、WTOの紛争解決システムに現在かかっているもののなかで最も関心を集めているもののひとつであり、また、その多くがこの貿易機関を厳しく批判しているたくさんの環境グループ関係者が、その結果を待ち望んでいた。 これは、カナダにあっては重要な政治問題でもある。なぜなら、何百万ドルも稼ぐアスベスト産業は独立の志向性をもったケベック州に集中しており、海外貿易を永久的に失うことは何千名もの労働者の職に影響を与えるからである。 カナダは、1998年5月に開始したフランスを相手取ったこのケースを通じて、カナダのアスベストおよびアスベスト製品は完全に安全で、健康に対する危険要因ではないと主張した。 1996年の法令のもとでフランスがとった措置は、その出所を問わずすべてのアスベストおよびアスベスト製品を対象としたものであり、また、EU全体をカバーする同様の行動の先駆けとみられていた。 この動きは、アスベストは様々な種類のがんおよび他の深刻な疾病を引き起こすとした科学的研究がまとめられたことを受けたものであった。 公式には厳重に機密のものであるこの中間報告は、火曜日[6月13日]にオタワとブリュッセルに送られた。現在までのところ、ジュネーブにおけるカナダとEUどちらの貿易使節団からも正式なコメントはなされていない。 ● 最終裁定は4週間以内 最終報告[final ruling]は、EU―WTOにおいて加盟15か国を代表している―とカナダからのコメントが返ってきてから約4週間以内に下されるだろう。これが中間報告を確認するものになることはほとんど確実だ、と外交官たちは言う。 外交官たちと環境問題の情報筋は、パネルは、現実には、国内市場において外国の製品に国内製品と同様の扱いを与えることと規定している―あるWTOのルールを破っていることを認めた。 しかし、3名の専門家はまた、この違反は実際には、加盟諸国に人間および動植物の生命と健康を防御する必要があるとみなす措置をとることを認めた別のWTOのルールによって無効になっていると認めた。 最終的に承認されれば、紛争ケース―[紛争解決手続が]1995年にはじまってからWTOに持ち込まれた合計202件―のうちで、この規定のもとでパネルが貿易を制限する措置を認めたはじめてのケースになる。 このニュースは、昨年11月にシアトルの閣僚会議において、ある面では強行路線の環境活動家たちに煽られた大衆的抗議行動によって揺さぶられた―WTOシステムの支持者たちとその批判者の多くの双方にとって歓迎された。 長年WTOとその前身であるGATTにかかわってきたある年配の貿易専門家は、中間報告は、この機関が多くの反対者が言うようにもっぱら産業界を擁護するだけのゆがんだものではないということを示していると語った。 ジュネーブに本拠を置く環境団体のあるトップ・リサーチャーも、―カナダがWTOの上級[上訴]委員会でパネルの結論をひっくり返すように要請する可能性について警告しながらも―この明白な結果を歓迎した。 これまで、環境団体は、パネルの裁定は、環境上の配慮―ウミガメ、イルカと再生ガソリンのケースを含め―よりも自由貿易を前面に押し出し、「親産業界的偏向」をさらけ出していると苦情を呈してきた。 *****
: もし承認されれば、アスベスト禁止についてカナダの意に反してフランスを支持する裁定を下すという世界貿易機関(WTO)の決定は、この致死的な繊維を禁止する世界の労働組合のキャンペーンに新たな勢いを与えることになるだろう。アスベストは、毎年10万人以上の人々を殺しており、今後30年間に100万人以上の人々の死を引き起こすだろうと予測されている。労働組合のキャンペーンは、アスベスト貿易から総計10億ドルを稼いでいる強大な産業界の妨害に直面している。この問題は、世界の労働組合の様々な論説によってすでに十分確かめられている。 「神がわれわれにアスベストを与えてくれたのだから、それを使わなければならない」。これは、最近あるジンバブエの生産業者が使った言葉であるが、お隣の南アフリカの、イギリスの多国籍企業ケープ・グループにこの天然繊維の有害な影響について何も知らされないまま長年働いて被った損害の賠償を請求しているざっと3,000名の労働者にとってはまったく納得できるものではない。この3,000名の労働者の多くが、現在、アスベストによって引き起こされる不治の、恐るべき肺の疾患である石綿肺に罹患している。44歳の混血の看護婦で3人の10代の子供たちの母親であり、つい最近、直接アスベストと関係していると考えられている肺のがんの一種である中皮腫に罹患していることがわかったステファニー・ジャンセンのように、自らに残された日々が数えるほどしかないということを知っている者も多い。「われわれには何もできない」とステファニーは言っている。「鉱夫だった私の父は、母や姉と同様、すでにがんで死亡している。精錬所が操業中は、青い雲が町中を覆っていた。誰もがそれを吸っていた。」 問題の町は、プリースカ[Priesk]といい、南アフリカの心臓部、オレンジ川の川岸にある。1980年から1979年にかけて、アスベストは15,000人の住人の、そして、とりわけこの地域で12のアスベスト鉱山を操業していたイギリス企業ケープの財産であった。当時、まだアパルトヘイトのくびきのもとにあった南アフリカは、世界第5位のアスベスト生産国であった。しかし、イギリスが、イギリス人労働者に対しては1931年の初めにはこの繊維の危険から防護する計画を立てた(明らかに不十分なものではあったが)にもかかわらず、この「神からの贈り物」の危険性に関する最初の法律を南アフリカ政府が採用したのは1987年になってからだった。 ● 毒入りの遺産 このヨーロッパの多国籍企業はずっと以前に撤退していたが、恐ろしい痕跡は持ち帰らずに残したままであった。例えば、国際化学エネルギー鉱山一般労働組合連合(ICEM)は、プリースカで、鉱滓の山からさほど離れていない場所に目印のない墓が200から250あることを発見したと報告している。ICEM傘下の南アフリカ全国鉱山労働組合によれば、これらは、アパルトヘイト体制が権力を持っていた時代に、アスベストの犠牲になって死んだ鉱夫たちの墓であることは疑いないという。 アスベストは殺人者である。また、その主張によれば「根拠のない攻撃から産業界を守る」ことを目的とした悪名高い国際アスベスト協会(AIA)のような―産業界やその国際団体の先兵をしばしば務めるエセ科学団体がこの問題について何を言おうが、この鉱物による破壊活動は大量殺戮であると言ってよい。AIAも1965年から1999年の間に259,000人の死亡―すなわち毎年4,000人の死者―がアスベスト繊維に曝露したことによるものである可能性があることを認めているとは言え、ヨーロッパ連合(EU)は、フランスだけで、毎年2,000人がアスベストによるがんの犠牲になっていると指摘している。それゆえに、EUは、ヨーロッパ規模での死者は数万人になるに違いないと主張しているのである。 EUは、昨年、正当にもすべてのアスベストの使用を禁止した。ICEMによれば、アメリカでは、毎年10,000人の労働者がアスベスト曝露に関連した疾患によって死亡している。また、ハンガリーでは、アスベスト加工産業で働いていた3,000人の労働者が毎年死亡しているという。アスベストへの初回曝露から長年(多くの場合35年以上)たってからでないと現われてこない場合が多い潜在している石綿肺や中皮腫を考慮に入れれば、人々をただはっとさせるような悲観的な予測の多くを正当化する根拠が存在する。アスベストの使用およびアスベスト除去作業に対する厳しい管理で有名なイギリスでは、この鉱物が今後35年間に150,000人以上の死亡を引き起こすかもしれない。ヨーロッパ規模では、今後35年間に250,000程度の中皮腫の発生が予測され、アメリカでは、同じ期間に200,000の死亡が予測されている。イギリスの労働組合会議(TUC)が2000年2月に発行したレポートは、アスベストは労働関連死亡の主要な原因であることに言及している。実際、TUCは、イングランドではアスベストは年4,000人の死亡を引き起こしており、これは交通事故よりも多いことを指摘している。 ● 偏 在 別のつらい事実は、アスベストは、それを取り出していた鉱夫またはそれを加工していた労働者だけの問題だけではないということである。その高い断熱性、絶縁性および原料加工の適用範囲が広いことから、アスベストはたくさんの用途をもっていた。いま、あなたは、アスベストで処理された壁や屋根がある建物のなかに座っているかもしれない。あるいは、アスベストを含有したタイルの上を歩いているかもしれないし、あなたの家の屋根は悪天候から防御するためにアスベスト・タイルで覆われているかもしれない。もし壁にひびが入れば、そこを埋めるのにアスベストを含有した製品を使うかも知れず、同様の特徴をもったペンキで壁を塗るかもしれない。空中の電線の上を歩くのなら、その絶縁物はアスベストを98%以上含有しており、あなたが着ている防護服も同じ物質で汚染されているかもしれないことを知るべきである。別のよく知られている悪いことは、あなたの車のライニング、ブレーキ、クラッチに使われている物質もまたアスベストを含有しているかもしれない。こうしたことによって一杯飲みたくなったとしたら、再びよく考えてみる必要がある。なぜなら、つい数年前まで、ワインがアスベスト・フィルターで濾過されていたことは一般的なことだった。それなら、水を飲めばよいか? 水道管もアスベストを含有している場合が多いから、これも確実ではない。要するに、アスベストはわれわれのまわり中にあり、しばしば思いがけないところにも存在しているのである。例えば、5月後半に、シアトルの日刊紙ポストインテリジェンサーは、子供たちが使っている色クレヨンに含まれていることを暴露した。業界は4度にわたってこれを否認したが、同紙が提出した反駁できない証拠―いくつかの場合には含有量の数値は許容できる最小値をはるかに上回っていた―に抗うことはできなかった。 危険なほどの偏在、アスベストはまた別の特徴をもっており、それは安価であってごっそり儲けることができるということである。このことは疑いなく、すでにいくつかの諸国によって採用され、また、国際建設木産労働組合連合(IFBWW)、国際化学エネルギー鉱山一般労働組合連合(ICEM)および多くのNGOのイニシアティブを支持する国際自由労連(ICFTU)の昨年12月のアピールがバックアップしている、国際労働機関が1986年の[アスベスト]条約で要求しているアスベストの使用禁止に反対して、産業界が開始したキャンペーン[の理由]を説明している。「致死的なものであるということが知られているとは言え、アスベストは、建設産業その他において今なお非常に広く使用されている」とマリオン・ヘルマンは言う。「この理由はきわめて単純であり、それを抽出する鉱山企業とそれを加工する多国籍企業に大金をもたらすからである。」 最も信頼できる推計によれば、1998年に、200万トン近いアスベストが世界で産出された。この繊維に関連する産業は、年10億ドルの利益を上げている。このうまみのある推定総額は、この産業が注意深いかのように思わせている暗黙の了解を正当化するだろうか? 明らかなことがひとつある。たくさんの「無分別な行動」が存在するということである。ベルギーでは、FGTB労働組合は、1970年代にある企業で石綿肺の事例を発見したある産業医が、どのようにして「はるかに『視力の鋭』くない同僚」に替えられたか報告している。南アフリカでは、プリースカの鉱山に雇われていたピッカード医師が、1942年以前にアスベストの危険性について警鐘を鳴らしていたことを確認している。「しかし、アスベストは戦略上重要な鉱物だと思われた。政府と鉱山の経営者は、沈黙を守るように私に圧力をかけた」と、同医師は最近ベルギーのジャーナリストに語っている。ある大きな国際組織で働いていた別のインド人の専門家S.R.カマス医師は、産業界のロビーストが、「産業界の利益に歩み寄れないならば」、アスベストに関する発言をトーンダウンするよう強要したと言っている。 チリでは、セメント工場労働者だったジルベルト・ファリアスの妻が、いまでは永久に酸素マスクと人工栄養にたよって寝たきりの夫が最初に手術を受けたときのつらい記憶をかかえている。「会社は胸部のレントゲン写真を撮り、肺にははっきりとわかる跡があった。彼は、悪いところは何もなく、働くことができると聞かされた」とヒルダ・ファリアスは語る。この診断は、補償の支払いと将来の治療費の面倒をみるという問題から自らと当該企業を免れさせた相互保険会社によってなされたものであった。 しかし、今日、人々は思い切ってしゃべりはじめており、ますます多くの損害賠償請求が企業に対して提起されるようになっている。以前ケープに雇われていた労働者たちは、数百万ドルの支払いをこの多国籍企業に要求しているが、会社は、この問題がイングランドの裁判所に持ち込まれることを回避しようと頑強に努力している。チリの労働者たちも、組織をつくり、建設労働組合の法律的援助を受けるようになっている。先月ブリュッセルにおいて、多国籍企業エターニトで働いて中皮腫に罹患して死亡したある労働者の妻が、自らも同じがんと診断されて裁判を開始した。あるフランスの裁判所は、最近、同じ多国籍企業が、元労働者に対して「労働者をアスベストに曝露させることが危険であることを知っていながら、状況を改善するための何の措置も取らなかった」のであるから、「弁解できない過ち」に関与していると認めた。 アスベストに曝露して死亡した5人の労働者の家族たちが、カナダの主要なアスベスト多国籍企業のひとつであるセットフォードマインズ・アスベスト・コーポレーションを相手取り、アスベスト貨物を取り扱う労働者にそれに伴う危険性を警告することを怠ったとして告発したニューヨークではじまったばかりの裁判は、大きな波を作り出すであろうことは疑いようがない。カナダは、世界第2位のアスベスト生産国であり、年50万トン近く大量生産している。また、国際アスベスト協会[AIA]の主要な後援者でもあり、毎年約1,000万カナダ・ドルの資金提供をしている。カナダの労働組合活動家たちによれば、AIAのアスベストを開発途上国、とりわけインドに売り込もうとするキャンペーンは、「とりわけこの繊維の発がん性を覆い隠すように計画されている」。 ● WTOにおける論争 オタワにある[カナダ連邦]議会の所在している建物から危険なアスベストを除去する作業が続いているにもかかわらず、カナダが、製品を開発途上国に輸出する努力―実際、その輸出は年7%にまで着実に増大している―を維持し続けていることは、憤慨すべき皮肉である。6月初めまでは、カナダは、世界貿易機関(WTO)のパネルが、1997年以来アスベストの生産、流通、輸入を禁止することによって自由競争を阻害していることによって有罪であると彼らが考えているフランスを罰することを要求する答申を出すものと予測していた。 WTOにこの問題を提起するというカナダのアプローチは、他の生産国が第三世界諸国に対して、工業諸国がいわゆる謀議と呼んだ、救いを求めることに拍車をかけた。世界第5位のアスベスト生産国(年150,000トン)であるジンバブエは、アスベスト禁止に対する獰猛な反対者のひとつである。「アスベスト禁止は、WTOが設定した国際貿易のルールを犯すものである。7,000人の職がアスベスト生産に依存し、70,000人の人々がそれでによって生活している」というのが、ジンバブエの生産業者が言ってきたことの要点である。著名な雑誌ハザーズ[WHIN姉妹誌]の編集者であるローリー・オニールは、これを拒絶する。「それは、アスベスト禁止を主張するキャンペーンを雇用に対する脅威とみせようとするための神話である。現実には、アスベストの市場がピークにあったときに、産業界は、生産性と利益を押し上げるために、大量の余剰人員を抱えることを躊躇しなかった。その時点で、労働者の運命は実際には重要なものではなかったのである」とローリー・オニールは非難する。「アスベストが安全な代替品に取って代わられることは、人間の健康と経済学的な点の双方からみて、非常によい選択肢である」と彼は続ける。したがって、疑いなく、生産者は、金庫をずっとかかえていたいという別の理由をもっているのである。」 禁止されたアスベスト 昨年7月、ヨーロッパ連合[EU]は、事実上アスベストの可能性のあるすべての使用を禁止する指令を採択し、加盟15か国に対して2005年までにこれに従うよう指示した。9か国はすでにこの期日前に何らかのアスベスト禁止を採用している。アメリカ合衆国では、環境保護庁(EPA)がアスベストを禁止した。しかし、2年後に、上訴裁判所がアメリカとカナダの産業界が提訴した裁判に照らして、その措置を部分的に緩和した。にもかかわらず、EPAは、この繊維および禁止からはずされた残りの用途に対する厳格な管理を維持し続けている。ブラジルの労働組合は、世界第4位のアスベスト生産国であるブラジルにおいてアスベストを禁止することをめざしたキャンペーンを開始した。 労働組合とアスベスト 国際自由労連(ICFTU)による「アスベスト禁止キャンペーン」は、国際建設木産労働組合連合(IFBWW)および国際化学エネルギー鉱山一般労働組合連合(ICEM)、経済開発協力機構[OECD]労働組合助言委員会(TUAC)とともに組織しはじめたものである。このキャンペーンには3つの主要な要素がある。すなわち、アスベストの使用禁止と有毒でない他の物質への代替を提唱している(しかし強制はしていない)ILO第162号条約の批准(24か国がこの条約を批准している)。政府その他の機関がこの鉱物の使用の減少により影響を受ける労働者のための公正な移行期間を保証する措置を取ることの促進。禁止を促進し代替製品に関する新しい調査研究を促進するためのILOと世界保健機関(WHO)の共同の努力の確立・強化。 *****
● はじめに これは、[イギリス]安全衛生委員会[HSC: Heal-th and Safety Commission]の以下の提案の概要を紹介するものである。 ・ 1987年職場におけるアスベスト管理規則を強化しまた重点を見直す[refocus]すること ・ 1998年安全衛生(執行機関[Enforcing Author-ity])規則を改正すること ・ 職場建物[workplace premise]におけるアスベスト管理のための実践コード[ACoP: Approved Code of Practice]を導入すること この提案は、協議用文書[Consultative Docu-ment] CD159でくわしく述べられている。 ● 1987年職場におけるアスベスト管理規則職場建物のアスベストによるリスクの管理 すべてのアスベストに関連した作業を管理する職場におけるアスベスト管理規則(CAW)は、1987年に導入された。本規則は、1998年に、アスベストに曝露する可能性のあるすべての労働者を対象とするように改正された。これには、ピート教授[Peto J, Hodgson J 'Continuing increase in mesothelioma mortality in Britain' The Lancet 1995 345 (8949) 535-539]、HSEの疫学者およびその他のリサーチャーによって、現在リスクがある最も大きな労働者集団であると確認された、建設労働者、配管工、電気技士および大工が含められた。現在アスベスト関連疾患によって死亡している年3,000名の人々のうちの4分の1が、何らかの点で建設業で働いていた。 これらの労働者が直面している主要な問題は、彼らがいつ、どこで、仕事のなかでアスベストに遭遇したかわからないことがしばしばあるということである。多くのケースにおいて、彼らおよびその使用者は、建物内のアスベストに関する情報が入手できないために、[作業を]開始する前によいリスクのアセスメントができていない。 現在でも使用者には、リスク・アセスメントを準備し、リスクにさらされる者を防護するための書面による計画[arrangement]を作成し、また、労働者および現住者を防護するために職場建物を保守する、いくつかの一般的義務があるにもかかわらず、現行の規則は作業を行う方法については述べていない。 それゆえ、HSCは、建物の管理において人々に、以下のことを要求する明示的な義務を定める新しい規則を提案する。 ・ アスベストを含有していそうな物質の所在を確認するための合理的な手順をとること ・ アスベストを含有していないという証拠がない限り、いかなる物質もアスベストを含有しているものとみなすこと ・ これらの物質の所在に関する最新情報の書面による記録を保存すること ・ これらの物質の状態を監視すること ・ アスベストおよびアスベスト[含有]物質とみなされたものへの曝露によるリスクを評価すること ・ これらのリスクを管理するためのマネジメント・プランを準備、実行すること HSCはまた、本規則によって課せられた新しい義務に従う方法を使用者にアドバイスするための実践コード(ACoP)を提案する。 ● 化学物質指令 化学物質指令(CAD)は、1998年4月7日に欧州閣僚理事会によって採択され、加盟諸国は、2001年5月5日までにその条項を実施しなければならない。本指令は、危険有害な化学物質を取り扱う労働者の健康と安全を防護するための最低要求事項を定めている。CADの要求事項のほとんどは、現行のACoPで実施されているが、本指令は厳格に規則のなかに移転されなければならない。提案する改正は以下のとおりである。 ・ アスベストに曝露する可能性がある場合には、すべてのリスク・アセスメントは記録されなければならないことを要求すること ・ 新たなアスベスト作業を開始する前に新たなリスク・アセスメントを、また、作業または大気モニタリングの結果に変化があった場合の見直しを要求すること ・ アセスメントにおいて、管理手段の範囲および使用[方法]を示した書面による作業計画を含めること ・ アスベストに曝露する労働者の数を最小限に減らすこと ・ 作業のための防護および予防手段をくわしく特定すること ・ 管理レベルまたは行動レベルを超えた場合に、アスベスト曝露を減らすための緊急な措置をとること ・ 緊急サービスがアスベストの所在に関する情報を入手できるようにするように要求すること ・ アスベストに曝露する可能性のあるすべての者に必要なトレーニングをくわしく特定すること ● 1998年安全衛生(執行機関)規則 1998年安全衛生(執行機関)規則(EA)は、建物内で実施される主要な活動に一般的な基礎をおいて、1974年労働安全衛生法の執行の責任を、HSEおよび地方当局(LAs)の間で割り当てるものである。これには、建物内の物理的に隔離された区域で実施される建設作業を含む、EAの別表にあげられた例外がある。これは、囲いのなかで実施されるアスベスト作業についての執行は、建物がLAsに執行されていても、法律的にはHSEに責任があることを意味する。 HSCは、囲いが、たんに建物内の他の部分にアスベストが放出するのを防止する目的のみで組み立てられている場合には、執行機関の変更は起こらないものとするEAの改正を提案する。 ● 協 議 提案の全文はCD159で述べられており、これは約145頁になる。コピーはHSEブックスまたはHSEのウエブサイト http://www.hse.gov.uke のWhat's Newのところで入手できる。 HSCは、本提案に対するあなたの意見を歓迎する。締切期日は2000年10月20日である。協議手続は可能な限りオープンであり、すべての回答の記録およびあなたの意見は登録・保管され、閲覧またはコピー(管理料徴収)が可能である。 意見を非公開にしたい場合には、尊重されるが、登録簿にはそのケースが示される。 ● 費用および効果の評価 HSCは、本提案は、アスベスト関連疾患を減少させるという全体的戦略に大いに貢献するものであると信じている。規制影響評価(RIA)の概要はCD159に示してある。これは、それが非常に大きな費用および効果をもたらすものであることから、主に建物内のアスベストの管理義務に焦点を当てている。アスベスト関連疾患の発病までに、50年間はカバーしなければならないという長期の潜伏期間があることから、これらの費用および効果の評価は、非常に困難である。 RIAの結果は次のとおりである。 ・ 望ましい選択肢を選んだ場合の費用の総額は、4兆8,000億ポンド ・ 効果の総額は、リスクを避けるためならよろこんで支払うとされた額を基礎にして、6兆6,000億ポンドから8兆4,000億ポンドの間と評価された CADの実施に必要な費用は、3億2,300万ポンドと推計された。 EAの変更に伴う費用は大したものではない。 提案のタイミング 協議および閣議の承認を条件として、提案のほとんどが2001年5月までに施行する予定である。しかし、建物内のアスベストによるリスクを管理する義務についての提案については、協議の結果を踏まえて、施行までに長期の導入期間を設定するかもしれない。 *****
|