2001.2.25

安全センター情報


1999年9月号




欧州委員会は白アスベストを禁止する


European Commission, IP/99/572, Brussels, 1999.7.27



欧州委員会(European Commission)は、残されたアスベスト使用のほとんどすべてを禁止することを決定した。6種類のアスベストのうち5種類については、欧州連合(EU)においては1991年に禁止され、残りの種類(クリソタイルまたは白アスベスト)についても、14のカテゴリーの製品向けには禁止された(訳注: 現行のアスベスト禁止に関する指令91/659/EECは、http://europa.eu.int/euro-lex/en/dat/1991/en_391L0659.htmlで入手することができる)。本日の決定によって、一定の危険な物質および製品に関する指令76/769/EECの別添Tが改正されることになる。これは、様々な特殊な用途はもちろん、アスベスト・セメント製品(主にパイプおよび屋根材)、摩擦材(フリクション)(例えば、重車両用のブレーキまたはクラッチ・ライニング)、シール材およびガスケットへのクリソタイルの使用にまで禁止の範囲を拡大する。この指令は、遅くとも2005年1月1日までに、EU内のすべてにおいて禁止が実施されることを求めている。多くの加盟諸国が、すでに実施しているか、またはそれより早く実施しそうである。この指令は、建築物にすでに存在しているアスベストの除去は求めていない。建築物内のアスベストによる健康に対するリスクは、それが乱されない限りは、一般に非常に低い。
すべての種類のアスベストが、証明済みの発がん物質である。それらは、石綿肺(深刻な肺の瘢痕)、肺がんおよび中皮腫(胸膜―すなわち肺の内膜のがん)を引き起こす。それゆえ、6種類のうちの5種類のアスベストは、EUにおいては、すでに1991年に禁止された。現在アスベスト・セメント製品に使用されている白アスベストの場合には、人間の健康に対してより危険性の少ない適当な代替物質を開発するのにより時間がかかった。
委員会の要請により、毒性、環境毒性および環境に関する科学専門委員会が、クリソタイル・アスベストとその主要な代替物質の比較リスク・アセスメント分析を実施した。1998年9月に、現在では、ほとんどすべてのクリソタイル・アスベストの用途により安全な代替物質が存在していることを確認した。委員会はそのため、白アスベストの禁止の拡張を提案した。1999年5月4日、「技術進歩への適合に関する委員会」の会議において、加盟国の有効多数が委員会の提案に賛成の投票をした。
この禁止の唯一の例外は、一定の塩素プラントの電解槽で使用されるダイヤフラム(隔膜)へのアスベストの使用だけである。ダイヤフラムは、現在のところ、安全問題(すなわち、爆発のリスク)を引き起こさずに代替化する技術的可能性のない唯一の用途であることによる、特殊なケースである。一方、密閉されたシステムの中で使用されているため、このクリソタイルの使用による人間の健康および環境に対するリスクはきわめて低い。ダイヤフラムは市場には出まわらない。この除外措置は、2003年の計画された一般的なこの指令のレビュー、および特別に2008年に再度、(独立した科学的リスク・アセスメントによって)レビューされることになる。
アスベストおよびその代替物質に関する科学的知見は、引き続き進展されている。委員会はそれゆえ、この領域においてさらなる立法措置が必要かどうかを決定するために、2003年に、科学的状況およびこの指令の除外措置についてレビューすることを計画している。
EUの15の加盟諸国のうちの9か国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン)が、すでに国内において、多様な例外つきではあるが、クリソタイルを禁止しており、2005年1月1日までに、この改正指令によって調整される必要がある。あるケースでは、これは非常に速やかに実行することができ、また別のケースでは、産業がノン・アスベスト技術に順応するための合理的な期間が必要なところでは、まるまる5年間が必要となるだろう。
アスベストの除去および修理、メインテナンス労働者を含む、現在最もリスクがあると考えられている労働者グループに焦点を当てて、労働現場における既存のアスベストの取り扱いに管理を負わせる指令(委員会指令83/477/EEC)を見直す計画が、すでに委員会の中で進行中である。
さらなる背景情報は、以下でみられる。
http://europa.eu.int/comm/dg03/directs/dg3c/index.htmJochen Kubosch 296.26.72Ingeborg Gaspard 295.22.10
* このプレス・リリースの原文は、http://www.euro pa.eu.int/rapid/で入手することができる。
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世界の労働組合はEUのアスベスト禁止を歓迎


CFTU OnLine, 144/990727/DD, 1999.7.27



「世界中の労働組合が、アスベスト曝露の非常に深刻な危険性について重大な関心を寄せ、その多くが、禁止措置こそが死を予防する唯一の確実な方法であると結論を下してきた。EUの行動は、多くの他の諸国の労働組合が、白アスベストの使用を段階的に廃止するための同様の方策をとるよう圧力をかけることを促進するだろう」と、ICFTU(国際自由労連)事務局長のBill Jordanは語った。
国連の国際労働機関(ILO)によれば、毎年世界中で、数億人の労働者が労働災害や有害物質への曝露を被っているなかで、100万件以上の労働に関連した死亡が発生している。アスベストはそのような物質のひとつである。
現行のEU指令に関する今回の改正は、すべてのEU加盟諸国に2005年1月までに白アスベストを禁止することを要求するものである。オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデンの9つのEU加盟諸国は、すでに白アスベストを禁止しており、残されたEU加盟諸国にもこの指令を実行することが求められている。ヨーロッパ労連(ETUC)は、精力的に禁止を働きかけ、この新しい法律を歓迎している。
今回の決定は、欧州連合域内においては、アスベスト・セメント(主にパイプおよび屋根材)、摩擦材(フリクション)(重車両用のブレーキまたはクラッチ・ライニング)、シール材およびガスケットへのクリソタイル(白アスベスト)の使用は、もはや許されないということを意味している。その致死的な影響は、深刻な肺の瘢痕(「石綿肺」として知られている)、肺がんおよび中皮腫(肺の内膜のがん)を引き起こす。

他の種類のアスベストは、欧州連合によって1991年に禁止されている。しかしながら、セメントや他の製品に使用されるクリソタイル・アスベストの適当な代替物質を開発し、生命への脅威となる疾患を引き起こす高リスク曝露を確認する調査研究が完全なものになるのにはより時間がかかった。
さらなる情報は、ICFTUのプレス・オフィスにコンタクトされたい。
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あらゆる場所で取り組みを強化しよう


Rory O'Neil, Workers' Health International Newsletter, 1999.7.29



欧州連合(EU)のアスベストを禁止するという決定の結果、必然的に、世界のアスベスト産業は、その生産と市場を開発途上国にますます移転させるようになると考えられる。それは、死にゆく産業にとって最後の希望である。
禁止を真に意味のあるものにするために、この危険な隠蔽が進行することがないようにしなければならない。 いかにこれを実行するか? 当面の計画として以下のようなことが考えられる。
1 世界中のアスベスト関係のコンタクト先のEメール・リストを作成し、彼らのアスベスト禁止キャンペーンを支援する。われわれはすでに、南アフリカ、カナダ、ブラジル、その他の多くの諸国によいコンタクト先をもっている。禁止を拡張していくために協力できるコンタクト先を知らせてほしい。例えば、ロシアは世界第1の生産国であるが…ここでは何が起こっているのか?
2 また、禁止の宣伝をする場合には常に、われわれは、アスベストおよび開発途上国にアスベストを押しつけようとする産業の試みに反対するキャンペーンを継続していることを強調しよう。
3 また、事実上はすべての諸国のアスベスト禁止に対する挑戦である―フランス政府のアスベスト禁止に対するカナダ政府の世界貿易機関(WTO)での挑戦という未解決の問題が残っている。論争はわれわれに有利に進展しているようにみえるが、勝つものと決めてかからないことが重要である。あらゆる機会をとらえてアスベスト産業に挑戦するという意味でも、われわれは勝利のために取り組まなければならない。
4 われわれは、影響を受ける分野での産業的、経済的再生を含む戦略をもたなければ、アスベスト(あるいは他の物質)を禁止することは、雇用―しばしば労働組合が組織された職場―の喪失につながるということを認めなければならない。いくつかの労働組合では、例えば「公正な移行(Just Transition)」のような、戦略をたてている。それはよいアプローチであり、いかにして彼らが、またわれわれがその実行を支援し、資金を供給するか考えなければならない。
ご意見を歓迎する。
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カナダはEUのアスベスト禁止に怒っている


Rory O'Neil, Workers' Health International Newsletter, 1999.7.29



カナダ政府は、そのフランスの禁止措置に対する世界貿易機関(WTO)での挑戦の(結果が出る)前に、欧州連合(EU)がアスベスト禁止を決定したことを怒っている。
以下のカナダの新聞記事によれば、フランスのケースの結論が出る前に、WTOにおける挑戦を全EU加盟諸国相手に広げるかどうかが検討されている。
EUがもはやアスベストの主要な市場ではないにもかかわらず、カナダ政府が関心をもつ理由はいくつかある。
1 カナダ政府のスポークスピープルたちは、他の諸国、とりわけ開発途上国の労働者たちが自国における禁止に向けて動くようになる「ドミノ効果」を懸念していることを、公然と認めている。
2 欧州連合は本来貿易圏であり、過剰防衛的な国家の安全機関ではない―貿易圏がやむにやまれぬ理由なしに、貿易の利益に反するような動きをすることは理解できないようだ。
3 アスベスト反対キャンペーンはいまや推進力をつけており、カナダ政府はばく大な費用をかけてこれを中座させる方策を探求するだろう。すでに、大使館が費用をもってジャーナリストたちをアスベスト鉱山に大名旅行させることを含め、相当の額のアスベスト・プロモーション活動に投資してきている。
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EU委員会が白アスベスト禁止を確認ブリュッセル、7月27日(Reuters):

欧州委員会は火曜日、欧州連合において唯一いまも許されている不燃性繊維である白アスベストを、科学者たちが現在ではより安全な代替物質が存在すると確認したことを受けて、禁止すると発表した。
この決定は、すべての種類のアスベストが発がん物質であり、石綿肺、肺がんおよび中皮腫または肺の内膜のがんを引き起こすという証拠に基づいて行われた。EUの統計事務所であるEurostatによれば、1995年に、6,700名近くのヨーロッパの人々がアスベスト関連疾患によって死亡している。
この決定は、すでに世界貿易機関(WTO)においてフランスの国内的な禁止措置に挑戦している、主要なアスベスト生産国であるカナダが怒るのを承知のうえでなされた。
「(アスベストを)禁止についての多くの疑問と関連をもつかもしれない、WTOにおいて進行中のケースの結論が出るのをEUが待たなかったことに、われわれは非常に失望した」と、あるカナダの外交官は記者に語った。
5月に、EU加盟諸国の政府はEUの執行機関である委員会に対して、1991年の茶および青アスベスト禁止の線に沿った規制を白アスベスト―またはクリソタイル―にも及ぼすよう要求した。
この決定は、パイプや屋根材のようなセメント製品、トラックのブレーキまたはクラッチ・ライニング、シール材やガスケット、その他の多くの特殊な用途へのアスベストの使用を2005年から禁止すると、委員会はその声明のなかで言っている。
「それが乱されない限りは」リスクは非常に低いとして、建築物内にすでに存在しているアスベストの除去は求めていない、と声明は言う。
「現在最もリスクがあると考えられている労働者グループに焦点を当てて、労働現場におけるアスベストの取り扱いに管理を負わせる指令を見直す計画が、すでに委員会のなかで進行中である」と、委員会は言っている。
禁止の唯一の例外は、今なお現実的な代替物質がなく、健康リスクが最小限であると考えられていることから、塩素プラントの電解槽で使用されるダイヤフラム(隔膜)である。
この免除規定は、2003年の計画された一般的なこの指令のレビューの一環として、再検討されると、委員会は言っている。
カナダの外交官は、カナダ政府は、フランスのケースに関する(WTOの)結論が出るのを待ってから、その挑戦をEUの15か国全部にまで広げるかどうか決定することになるだろうと語った。
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ブラジルがアスベストを禁止するだろうと発表


Fernanda Giannasi, Ban Asbestos Network Latin America, Brazil, 1999.7.29



ブラジル政府は本日(7月27日)、EUの決定に追随して、アスベストを段階的に禁止していくと発表した。 環境大臣Jose Sarney Filhoは昨日、リオデジャネイロにおいてEstado de sao Paulo紙(新聞)に対して、「われわれの考え(tendency)は、ヨーロッパがいま決定したことに続くことである」と語った。「最終期限はまだ決まっていないが、この決定はアスベスト・ロビーからの強力な抵抗に直面することになるだろう。しかし、われわれはそれを心配していない。これは進歩的な方向へ進む政治的な決断である」。 これはわれわれの政治家によるきわめて重要な発言であり、彼の努力を支持するEメールをwebmaster@mma.gov.brに届け、また、技術的な援助を提供してほしい。私は、この国の北部の有力なファミリー出身の彼が成功することを信じている(彼の父親は、独裁制後の最初の文民大統領であり、彼女の姉はマラニャン州の知事である。) 今度こそは、われわれの声が届くものと(本当に)信じている。
* 参照: http://www.estado.com.br/edicao/pano/99/07/28/ger855.html(ポルトガル語)
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イギリス環境大臣が白アスベストの禁止を歓迎


Department of the environment, U.K., 1999.7.27



白アスベストの輸入を禁止する新しい法律は可能な限り速やかに導入されるべきである、と環境大臣Michael Meacherは本日、発表した。この行動は、EU域内への輸入を禁止する欧州委員会の決定を受けたものである。
Meacherは次のように語った。
「そうすることが法的に問題がなければ、すぐに白アスベストの輸入の禁止に向かうと、われわれは常に言ってきた。この政策は決定済みであり、最終的なものである」。
「この最後の法的な障害物が除かれたわけであるから、われわれはいまや白アスベストの禁止に向かうことができる。アスベストは、毎週イギリスにおいて30人の人々を殺している。青および茶アスベストはすでに禁止されている。われわれは、今世紀がすべての種類のアスベストを禁止して幕を閉じるようになるために、立法的に白アスベストを禁止するつもりである」。編集者への注 3種類のアスベスト(青、茶、白)のいずれへの曝露も、致死的な肺疾患である、石綿肺、肺がんおよび中皮腫を引き起こす可能性がある。白アスベストは、現在主に、ブレーキ・ライニング、プラントのシール材やガスケット、アスベスト・セメント、織物のような混合物(例えば、アスベスト手袋)に使用されている。
EUの白アスベストの使用を禁止する投票に対しては、副大臣John Prescottが歓迎する意向を表明している(DETR News Release 440、1999年5月4日―6月号25頁参照)。
* この原文は、http://www.nds.coi.gov.uk/coi/で入手することができる。
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