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2001.2.25

安全センター情報


1998年8月号



5月28日にカナダ政府が、フランスの昨年のアスベスト禁止措置が非関税貿易障壁であるとして世界貿易機関(WTO)に正式に提訴したことに対して、6月30日には、イギリス、デンマーク、オーストラリア等において、現地のカナダ大使館に抗議するデモンストレーションが取り組まれた。

イギリスの建設安全キャンペーン(Construc-tion Safety Campaign)がこの抗議行動への参加を呼びかけたビラから、この間の動きを再度整理して紹介しておこう。
× × ×

1997年6月20日; トニー・ブレア(注: 当時選出したばかりのイギリス新首相)が、イギリスのアスベスト禁止に関心をかき立てているカナダの首相と会見。 1997年9月17日; カナダ政府は、開発途上国向けのアスベストの安全管理(疾病)に関する教育プログラムに“25万ドル”の援助を行うと発表。
1997年9月30日; カナダの“専門家”の代表団が、アスベストに関する情報を交換するために、イギリスの安全衛生局(HSE)の担当者たちと会見。
1997年10月22日; カナダ首相が、ロンドンにおけるイギリス連邦政府首脳会議の場で再びトニー・ブレアと会見。
1997年12月18日; 6つのアスベスト生産諸国(ブラジル、カナダ、ロシア、南アフリカ、スワジランド、ジンバブエ)の合同ミーティング開催。
1998年2月; 欧州共同体(EC)が、ブレーキへのアスベスト使用を禁止する指令(directive)を発令。
1998年3月; カナダのアスベスト生産業者が、クリソタイル・アスベスト製品の使用を促進するために、ヨーロッパのジャーナリストたちのカナダへの旅行を主催。
1998年4月22日; 欧州連合(EU)が、ヨーロッパにおけるアスベストの禁止を要求したレポートを採用。
1998年5月28日、カナダ政府は、世界貿易機関(WTO)に対してフランスのアスベスト禁止(およびそのイギリスに対するあらゆる影響)を紛争処理手続にかける意向をプレスリリースによって発表した。
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イギリスのカナダ大使館抗議行動


London, U.K., 1998.6.30



* 以下は、Rory O'Neill(Hazards/WHIN, U.K.)からの6月30日13:03付けE-mail。

百名のイギリスのアスベスト禁止キャンペーン活動家たちが、今朝(6月30日)、ロンドンのカナダ大使館前で抗議行動を行った(前頁写真)。
アスベスト被災者や他の労働災害被災者、イギリスの労働組合活動家を含むキャンペーン・グループは、欧州連合(EU)がアスベストを禁止する計画を阻止しようとする法的挑戦を放棄するようカナダ政府に対して要求した。
カナダ大使館の前で、Mick Holder(ロンドン・ハザーズセンター)は、「カナダ大使館を訪れたカナダ人たちは、彼らの政府がこの毒物を世界中に売りまわっていることを知らず、それを知ってショックを受けていた」と語った。 カナダは、アスベスト製品の主要な生産国ではあるが、主要な消費国ではない。全生産量の90%以上を輸出しているのであり、その半分以上が開発途上国向けである。
開発途上国においても徐々にアスベストの使用を制限あるいは禁止しつつあるが、開発途上国へのアスベストの輸出は、毎年7%ずつ上昇してきている。カナダ政府は、開発途上国への攻勢の意図を隠していない。 アスベスト禁止キャンペーンを支持する組織は、EUおよびそのメンバー諸国、ヨーロッパ労連(ETUC)、国際建設・林産労働組合連盟(IFBWW)、イギリス国内の各労働組合および安全衛生キャンペーン組織を含んでいる。
われわれは、カナダ、アメリカ、オーストラリアおよびヨーロッパ中の組織から、この行動を支持するメッセージを受けた。 カナダの高等弁務官代理(Deputy High Com-missioner)は、抗議の手紙を受け取るべきである。
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デンマークのカナダ大使館抗議行動


Copenhagen, Denmark, 1998.6.30



* 以下は、コペンハーゲン建設労働組合共同行動(Cooperation of Construction Trade of Copenhagen)の Henrik Blaabjerg 氏およびAAA(Aktionsgruppen Arbejdere Akademikere)の Jesper Nielsen 氏連名のデンマークのカナダ大使館およびカナダ政府宛ての公開状である。

労働安全衛生の専門家および建設労働者の代表たちのグループとして、われわれは、カナダ政府が今年5月に脅迫から行動に移り、フランスのアスベスト禁止に対抗する提訴を世界貿易機関(WTO)に申し立てたことを知ったときのわれわれの強い嫌悪感(disgust)を示すためにこの手紙を提出する。
フランスはしかし、すでにアスベストを禁止したヨーロッパの多くの国々のひとつでしかない。デンマークにおいては、われわれは10年以上も前にそのような禁止措置をとっており、また、以前のアスベスト曝露によってがんに罹患する多くの人々をいまなお目撃している。われわれの組織は、そのような被災者を見続けているからこそ、長い間アスベスト禁止のために取り組んできたのである。

今回の行動によって、カナダは、労働および環境に起因したがんの予防に真剣に取り組んでいる国としての自らの評判を損なうことになると信ずる。われわれは、カナダ政府はWTOから提訴を撤回すべきであると要求する。肺がんや中皮腫のような致死的な疾病を引き起こすことが40年以上も前から科学的に知られているこの物質を禁止すべきことを、世界中の保健問題の専門家たちが勧告している。今日では、この危険性についての科学的論争などはとっくに過去のものとなっている。
われわれは、カナダのアスベスト鉱山では約2,000人の労働者が働いていることを知っている。しかしながら、われわれの見解では、これらの仲間たちは、その高利益を維持するための不正義の闘いをすすめる少数のアスベスト企業による人質となっている。われわれはそれらの仲間たちに、たとえば環境と健康にやさしいアスベストの代替物質の製造を開始するなど、社会的に持続可能な移行のために闘うよう呼びかける。

WTOから提訴を撤回した上で、われわれはあなたに、最近建設・林業労働者の国際産別組織であるIFBWW(国際建設・林産労働組合連盟)が要求(22頁参照)したように、デンマーク、フランスおよび他のヨーロッパ諸国とともに、アスベストおよびアスベスト含有物の採掘、貿易、製造および使用を世界的規模で禁止するために働くよう要求する。
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カナダ国内における抗議行動


Windosor, Ontario, Canada, 1998.6.19


* 以下は、ウインザーがん予防連合(Windsor Cancer Prevention Coalition, Ontario, Canada)のカナダ副首相 Herb Gray 宛ての6月19日付けの手紙である。

われわれは、カナダ政府によるアスベスト貿易の防衛に重大な関心を寄せている。あなたの政府は、科学的な証拠およびこの貿易によって引き起こされるリスクを誤って伝えている。
100か国以上の数千万人の労働者を代表する労働団体とともに、われわれは、アスベスト関連疾患の流行という確実な根拠のある疫学的証拠に基づいた―ヨーロッパのアスベスト輸入の禁止に対するカナダ政府のWTOにおける挑戦は恥ずべきものであり、避けることのできる数万人の死亡者につながることになると信じている。カナダ政府は、地球規模での産業虐殺を積極的に助長しているのである。
カナダの労働者たちも、アスベスト疾患に対する免疫はない。教師、航空機乗務員、事務労働者、建設労働者、化学産業の労働者、アスベスト貿易のなかで働いている労働者たちが、この国内においてもすでに死んでいるし、死に続けている。
アスベストの使用を促進するという政策はシニカルである。カナダ政府は、ヨーロッパにおける市場が次第に減少していることを知っている;

成長し続けている第3世界における市場を確保し、守ろうとしている。輸出の50%以上がこの市場向けのものである。
適切に管理されていればアスベストの使用は安全だというカナダ政府の主張は、適切な法律も安全規則も強制力もない国々を基本的な輸出市場としていたのでは、内容のない飾り物である。
そのうえ、カナダ政府は、アスベストを防衛するために虚偽あるいは誤った情報を用いている。ヨーロッパにおいて、アスベストの代替品もアスベストと同様の危険性と、不適当なリスクを生じさせる可能性があると主張している一方で、自らの Health Canada ウエブサイトでカナダ国民に対しては、「代替物質は一般住民に対して重要なリスクを引き起こすことはなさそうだ」とアドバイスしているのである。

このペテンには多くの危険な影響がある。もし、カナダがWTOにおいて、アスベスト―最もよく研究され、認識され、能力のある産業毒素(industrial toxin)―は自由に流通されなければならないという決定を確立した場合には、産業毒素を販売するすべての製造業者が、彼らの輸出は保障されていると考えるであろう。持続性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)の地球的規模での禁止を促進しているカナダの現在の努力は、元の木阿弥になってしまうだろう。
地球規模での禁止の結果として職を失うことになるアスベスト産業の労働者たちの生活に対しては、われわれはカナダ政府と関心を共有している。しかしながら、カナダのアスベスト労働者の大部分はすでに職を失っており、この産業のわずかな部分が生き残っているだけである。われわれは、責任ある政府は、理由の如何を問わず産業の衰退によって影響を受ける地域の経済的再生を促進することに注意を払うであろうと信ずる。

われわれの代表者の訪問は、3大陸におけるカナダ政府の機関に対する数多くの働きかけの最初のものとなるだろう。アスベスト防衛が成功したとすれば、次の世紀にまで継続することになる地球規模での職業病の大惨事を引き起こすことになるということをカナダ政府が理解するまで、キャンペーンは続けられるだろう。
われわれは、あなたとあなたの政府が、現代における最大の industrial killer による死を終わらせるために責任ある行動をとるよう要求する。
現在、カナダ政府の政策は、自国の名声を損なうとともに、数千名の人々の健康を損ない続けている。国際貿易交渉のなかで、国内および海外の人々の健康を無視することがないように、この政策は変更されなければならない。
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アスベストの代替物質


London Hazards Centre, The Daily Hazards, No. 59, July 1998


日々職場であるいは家庭で使われる製品で、致死的なアスベストで作られまたは含有しなければならないものは何ひとつない―にもかかわらず、いまなお3,000もの職場あるいは家庭がこの毒物を含有した製品によって作られている。 仕事や製品を再設計することにより、あるいは、より安全な別のものを用いることによって、アスベストの使用を根絶することは可能である。
製造業者は、より安全な代替繊維製品をつくっており、吸入したり健康を損なうことがないように繊維のサイズをコントロールすることが可能である。アスベスト繊維は弾性を強化するためにセメントに混入されるが、ノン・アスベスト繊維は同じ働きをさせるために使うことができる。あるいは、金属やプラスティックの層を形成することによって繊維状セメントが完全にとって替わることも可能である。

(イギリスの)アスベスト作業管理規則第8条は、「リスクを生じさせない、あるいは、アスベストよりもリスクの少ない代替物質に替えることが可能な場合には、そのような(アスベスト)曝露の防止がなされるべきである」と規定している。
健康有害物質管理規則もまた、可能な場合には必ず「より安全な代替物質」を使用しなければならないことをはっきりさせている。

イギリスの3つの主要な労働組合、UCATT、GMB、UNISON では組合員に対して、アスベスト含有製品を使用しないこと、および、この規定に従ってより安全な代替物質を要求するよう促している。他の労働組合のメンバーは、各組合の方針をチェックしてみてほしい。

アスベスト代替物質のいくつかは、完全にはリスク・ゼロではない。

アスベストの代替物質

人造無機繊維(MMF: Manufactured Inorganic Fibres)
人造繊維の最大の長所は、その直径を吸入(呼吸)可能でないように製造することができることである。
セラミック(Ceramic)繊維は、主に高温用断熱材として使用され、断熱処理した炉でよくみられる。また、ロープにも使用される。繊維の直径はコントロールされていない場合が多く、ほとんどの形状が危険な繊維を含んでいる。がんの危険性がある。 グラス(Glass)ファイバーは、現在では多くの専門家によってクリソタイルと同程度に危険だと信じられているが、産業界は異議を唱えている。以前のロンドン・ハザーズセンターの調査では、咽喉がんの危険性を明らかにしている。
多くのファイバーグラス製品が吸入可能なサイズの繊維を含んでいる。一般建築物、屋根、壁の中の断熱材、および以前につくられた機械装置、車の車体、シート等の中の工業製品として使用されている。皮膚および眼の炎症を起こすとともに、がんの危険性もある。 グラスウールおよびストーンウールは、製品の形状を維持させ、ダストの発生を減少させるために、結合材を加えた繊維と油のゆるやかな塊である。主に断熱材に使用される。両方とも吸入可能で、がんの危険性のある一定の範囲の繊維を含んでいる。

自然生成結晶性繊維および他の鉱物
珪灰石(Wollastonite)は、自然に生成したカルシウム・シリカの結晶性物質である。これおよび同類の物質に曝露すると、炎症、線維症、じん肺、肺機能障害、肺気腫、胸膜の石灰化、気道閉塞等の呼吸症状を引き起こす。
パーライト(Perlite)は、膨張した火山岩であり、他の鉱物繊維および結合材と混ぜ合わせて断熱ボードをつくる。

自然有機繊維
コットン(綿)繊維は、長期的な健康影響を引き起こし、診断が遅れることもしばしばである。コットンは、綿花肺(byssinosis)という肺疾患を引き起こす。
細かくちぎった紙(shredded paper)は、壁に詰めて断熱材として使用される。眼、鼻、咽喉に炎症を起こすことがある。
セルロース(Celllose)繊維もまた、断熱材その他で使用される。入手可能な証拠によれば、がんを助長させる能力はアスベストよりもはるかに小さいとされている。しかしながら、知られていることは少なく、セルロース繊維は呼吸器系の他の疾患に寄与しているかもしれない。

人造有機繊維
ケブラー(Kevlar(パラ-アラミッド(para-aramid))繊維。欧州委員会の第3総局(DGV)に最近提出されたレポートでは、「イギリスの安全衛生局(HSE)のレポートおよびより最近の世界保健機関(WHO)と国際がん研究機関(IARC)の結論は、パラ-アラミッド繊維は、肺線維症、肺がん、中皮腫を引き起こすリスクがクリソタイル・アスベストよりも低そうであると示唆している」としている。繊維のサイズを容易にコントロールすることができ、頑丈さと断熱性が良好である。専門的な用途に限られており、一般にはみられない。
ポリビニルアルコール(PVA: Polybinyl-alcohol)繊維は、簡単に細かい繊維に割けることはない、と独立した研究機関である環境資源管理(ERM: Environmental Re-sources Management)は言っている。(ERMは、)商業的に使用されているPVA繊維の直径は、永続性の吸入可能な繊維に関連する疾患を引き起こす重大なリスクはなさそうだと考えている。 ポリスチレン(Polystyrene)は、ゆるやかに充填する断熱材シートに詰めるのに使用することができる。熱すると有毒なヒュームを発する。

代替物質の危険性

いくつかのアスベスト代替物質もまた繊維状の物質からなっており、すべての繊維が危険性をもつ可能性があることから、これらもまた一定の危険性がある。

● 吸入すると、鼻、口、咽喉、喉頭や肺の表面を汚染する。生物学的持続性のある(変化することなしに何年間も体内にとどまる)繊維は、身体中を移動することができ、その存在する場所に損傷やがんを引き起こす。アスベストおよびいくつかのグラスファイバーが、肋骨と肺の間の滑らかな内側(中皮 mesothelium)にまで到達するのはこのためである。相対的に低レベルの粉じん曝露が、鼻、咽喉、肺の身体防護機能を妨げ、炎症、感染、アレルギーのリスクを効率的に上昇させる働きをする。

● 飲み込んだ食物や唾液にそれらの繊維がつくことによる経口摂取。食道、胃、腸の傷つきやすい内側の表面を傷つけ、障害やがんを引き起こすことがある。

● 皮膚や眼への接触。組織の肥厚や基底細胞がん(一種の皮膚がん)から、かゆみ、炎症その他にいたる幅のある健康障害を引き起こすことがある。このやっかいな皮膚症状はとりわけファイバーグラス作業が関連がある。公式なアドバイス 世界保健機関(WHO)、国際がん研究機関(IARC)、(イギリスの)安全衛生局(HSE)は、これらの繊維による汚染に関する見解を表明し、様々な勧告を行っている:

● 可能な限り製造業者は、繊維のサイズを吸入可能でないようにするか、または少なくとも肺の奥にまで到達するほど小さくしないようにすべきである。

● 吸入可能なほど小さい直径の繊維が必要な場合には、身体の清掃機能に抵抗せず(生物学的持続性をもたない)、また、他の有害な結果をもたらさないようにしなければならない。毎日規則的に代替物質に曝露する場合には、生物学的持続性がなく、すなわち、一定の量がたえず残っていたとしても前に曝露したものは分解してしまって毎日更新されるように、注意すべきである。

● 吸入性および生物学的持続性のあるすべての繊維は、有害性およびがんを引き起こす能力(発がん性)に関する試験を受けなければならない。

イギリスのハザーズキャンペーンの活動家たちは、健康リスクが完全に調査されていない繊維への曝露は、よりよいデータが入手可能になり、その安全な使用に関する公開の決定がなされるまでは禁止されるべきであると主張している。

アスベストの代替可能な対象
―セメントパイプ、側溝、下水管、その他
―屋根、壁用のセメント板
―床タイル―パイプ保温材
―すべての形状の断熱材
―天井、壁の装飾製品
―梱包用品
―ガスケット、シール材
―車両のクラッチ・プレート
―車両のブレーキ・ライニング、ブレーキ・パッド
―空洞壁の絶縁材
―アイロン板のホット・パッド
―レンジの絶縁材
―night storage heater の部品
―ファイアー・ブランケット
―その他、多数
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アメリカの石綿労働者のイギリスへの連帯


AFL-CIO BCTD,USA, 1998.4.24



AFL-CIO 保温・保冷工、アスベスト労働者国際協会(アメリカ、International Association of Heat and Frost Insulators and Asbestos Wor-kers)議長 William G. Bernard は、イギリスの運輸一般労働組合(T&G: Transport and Gene-ral Workers Union)が提案しているイギリスにおけるあらゆる種類のアスベストの全面禁止を支持することを誓約した。

この誓約は、Bernard、運輸一般労働組合の建築・建設・民間土木工事部門(Building, Con-struction, and Civil Engineering Section)のNational Secretary、George Henderson、国立労働安全衛生研究所(アメリカ、NIOSH)のディレクター Dr. Linda Rosenstock とのミーティングの結果生まれた。Henderson は、4月20-22日に開催された(AFL-CIOの)建築・建設労働組合局(BCTD: Building and Construction Trades Department)の全国会議に海外から参加した建設労働組合の代表のひとりである。Bernard、Henderson、Rosenstock のミーティングは、アメリカにおける200万人の建設労働者の代表であるBCTD議長 Robert A. Georgine によってアレンジされた。Georgine議長はまた、国際建設研究所(ICI: International Construc-tion Institute)の議長も務めている。

イギリス政府は、他の種類のアスベストはすでに禁止しているものの、最近数か月間、“白”アスベストあるいはクリソタイルと呼ばれるものを禁止するという公約を実行することに躊躇している。この躊躇は、クリソタイルは他の種類のアスベストとは“異なり”、それらと同じように規制すべきではないと主張している、いくつかのカナダの製造業者によって指揮されたキャンペーン、ロビイング活動の結果であるとみられている。

しかし、Bernard その他がミーティングで Henderson に助言したように、クリソタイルについてイギリスにおいてカナダの製造業者たちによって提出されたこの主張は、新しいものは何もなく、また実際、多くの科学者および少なくとも2つのアメリカ合衆国政府の機関―国立労働安全衛生研究所(NIOSH)と労働安全衛生庁(OSHA)を含む―によっても、そのようにみなされ、拒絶されている。

出席者たちは、いくつかの批判点について焦点を当てた。

・ クリソタイルは他の種類のアスベストと全く同様に致死的なものである:
クリソタイルが、他の種類のアスベストと同様に、肺がんによる多数の死亡を引き起こすことは明白である;
科学者たちの間での唯一の意見の相違は、クリソタイルが他の種類のアスベストと同様に、(非常にまれながんである)中皮腫による多数の死亡を引き起こすかどうかという点だけである。

・ クリソタイルは一般的に他の種類のアスベストと見分けがつかない:
クリソタイルがともかくより危険でなかったとしても、それはめったに“純粋(pure)”な状態では存在せず、しばしば他の種類のアスベストと混合しているのであり、なおこれは禁止されるべきである。

・ 適切なアスベスト(使用)およびおそらく低いレベルのアスベスト曝露による死亡、疾病に関する証拠が増大しつつある:
クリソタイルは適切に安全ではあり得ない; 二次的曝露でしかないアスベスト労働者の家族の場合と同様、学校、デイケアセンター、病院、事務所用ビルのような非工業的建築物におけるいわゆる“第3の波”の中でのアスベスト曝露による病気や死亡の証拠もかなりの数にのぼっている。実際、アメリカにおける建築物の中のアスベスト除去の要求は、学校やデイケアセンターにおける子供たちの健康に対する懸念から出発している。
・ 安全な使用を保証する法令の執行体制は不十分である:
法令による規制よりもアスベストを禁止する必要があるということは、法令が制定されたとしても、それを実行させる資源・力が欠如していることから、より強調されるべきである。

このミーティングには、Bernard、Henderson、Rosenstock の3人の他に、NIOSHの Mel Myers、アスベスト労働者の副議長 Jack Keane、屋根・防水工・関連合同労働組合(United Roofers, waterproofers and Allied Workers)の John Barnhard、アリスハミルトン労働衛生センターの Brian Christopher らが参加した。
Georgine 議長代理の Phyllis Isreal を含む何人かのBCTDの代表たち、労働者の権利擁護センターの Scott Schneider、アスベスト労働者のための弁護士 Nora Leyland もまた参加した。
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建設・林業労働者はEUのアスベスト禁止を支持


IFBWW Press Release, 1998.6.15



国際建設・林産労働組合連盟(The Inter-national Federation of Building and Wood Workers: IFBWW)とヨーロッパ建設・林産労働組合連盟(EFBWW)、ノルディック建設・林産労働組合連盟(NFBWW)は、欧州連合(EU)がアスベストを禁止することを促進し、世界規模でのアスベストの採掘、加工、流通および使用を禁止することを要求する。これは、安全な使用が存在しないアスベストのような危険な繊維から労働者を防護するための唯一の方法である。

この理由から、建設・林業労働者は、アスベストの採掘、アスベストの貿易、アスベストの加工あるいはアスベストの使用の禁止につながる各国政府のあらゆるイニシアティブを支持する。アスベストの全面的な禁止については、現在、ヨーロッパ連合(EU)の内部で議論されている。15の加盟国のうちの12か国が、委員会(Commis-sion)に全面的禁止に向けてのイニシアティブをとるよう求めている。その目標は、現在のイギリスの(EU閣僚会議)議長任期中に(注:6月末で終了)、いわゆる白アスベスト(クリソタイル)を含めたすべての種類のアスベストの禁止に関するEUとしての最終的な決定を得ることである。このような決定を妨害する試みが激しくなっている。昨年中、アスベスト産出国であるカナダは、大がかりにEU委員会(Commission)および議長国であるイギリスに対してロビー活動を行った。先週、カナダは正式に、世界貿易機関(World Trade Organi-sation: WTO))に対して、WTOの紛争解決手続を開始するよう求めた。カナダ政府の要求は、アスベストをすでに禁止したフランスが、カナダからこの製品の輸入を受け入れることである。3つの労働組合連盟は、すべての政府が、WTOのなかでカナダのイニシアティブを非難するよう要求する。

過去数年間にわたり、カナダの鉱山産業は、白アスベストの安全な取り扱いと使用を絞り出すことは可能であり、従業員あるいは他の人々への発がんリスクはないと主張してきた。しかし、建設労働者がアスベスト含有製品の使用、また、建築物や他の製品の修理、保全、解体の双方でアスベストに曝露する、日稼仕事(day-to-day work)の状況は、そのような「管理使用」からはかけ離れたものである。とりわけ、アスベストやアスベスト含有廃棄物の輸入がいまなお認められているような開発途上国においては、まったく不可能なことである。貧しい国々の建築労働者や他の人々はしばしばアスベストに曝露している; 致命的な肺疾患を避ける(ためにそのような仕事につかない)ことが餓死につながるような国々では、非常に劣悪な安全衛生条件のもとで働いている。 労働組合組織は、現在、たくさんのアスベスト代替品が市場で入手可能であることを指摘する。にもかかわらず、多くの国々において建設業においては、アスベスト・セメント、アスベスト吹付け材や同様のアスベスト製品のかたちでいまなおアスベストが使われ続けている。この主な理由は、未加工のアスベストによるコストの節減であり、これは、アスベスト製品のための世界市場を創造している多国籍企業と同様に、アスベスト採掘企業に高利潤を生じさせている。労働者の健康および社会の長期的な経済的利益を保護するために、労働組合は、安全で環境にやさしい代替製品を速やかに使用することを要求する。長い目でみて申し分なく健康的で環境にやさしい作業場所こそが、安全な作業場所と言えるのである。

3つの労働組合連盟は、製品転換の期間中は、影響を受ける労働者たちは政府からの支援を受けるべきだと考えている。これは、社会的な混乱を避け、彼らの専門的な活動の継続を保証することになるだろう。同様の意味で、影響を受ける雇用主たちもまた政府からの支援を受けられるべきである。

* IFBWWは、115か国、272の労働組合に組織された1,300万名の労働者で構成されている。このプレス・リリースの原文は、http://www.ifbww.org/~fitbb/INFO_PUBS_SOLIDAR/Press_-_EU_ban_asbestos.html で入手することができる。
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国際建設研究所理事会の決議


International Construction Institute, ILO, Geneva, 1998.6.16-19



国際建設研究所(ICI: International Con-struction Institute)の理事会(General Board)は、関心を集めつつあるアスベストの使用の問題に関する進展の状況およびクリソタイル・アスベストの世界規模での禁止に向けた最近の動向に、慎重な注意を払った。それゆえ、科学諮問委員会(Scientific Advisory Committee)に、この問題を慎重に検討し、短期的および長期的にICIがとるべきアプローチについて結論を出すよう勧告した。委員会は、国際建設労働安全衛生(ICOSH: International Construction Occupational Safety and Health)は、クリソタイル・アスベストに関する現在の情報のすべてを再検討し、次のICIニューズレターに報告すべきことを勧告した。さらに、アスベストを含む危険な物質について検討するための専門家による科学委員会のミーティングを速やかにもつこと、および、これは“建設業の安全衛生の10年”のプログラムとプランとは別につくられるべきことを勧告した。
以上の点および(イギリスの)運輸一般労働組合(Transport & General Union)のNational Secretary、George Henderson 氏のイギリスにおける進展に関する関連した言及を考慮して、理事会は、建設労働組合の代表たちが、そのすべての組合員と家族、関係者、友人たちに対してアスベストの取り扱いと使用の危険性に対する認識を広め、クリソタイル・アスベストの全面禁止の実施を加速させるために、より一層の努力を傾けるべきであることを、決議する。
* ICIはILOの中に設置された機関
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アスベスト規則改正案の諮問期間を延長


U.K. HSE Press Release C25:89, 1998.6.16



(イギリスの)安全衛生委員会(HSC: Health and Safety Commission)は、「アスベスト関係規則・実践コードの改正提案」という諮問文書の諮問期間を1998年7月31日まで延長する(6月号9頁の囲み参照)。
この諮問文書には前例のない多数の要請があったため、当初の在庫はなくなってしまい、現在追加印刷を行っている。7月の第1週までには、お待たせしている方々にお届けできる予定である。
*この文書は、http://www.open.gov.uk/hse/press/c9825.htm で入手可能。
諮問文書本体も、http://www.open.gov. uk/hse/conducs/cd129.htm で入手可能である(PDFファイル形式で約200頁)。
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