懐かしのレーシングカー:My Dear Old Racing Cars

紫電77

SHIDEN77

*紫電77*

紫電77
-* 紫電77 *-
(デビュー時)


 紫電というのは、第二次世界大戦時、旧海軍が採用した戦闘機と同名です。のちに、紫電改となるところまでいっしょですね。

 紫電は76年後半から計画されました。設計は森脇基恭、製作:伊藤レーシング、ボデーデザイン:由良拓也、総指揮:小倉明彦、そして、それをドライブするのは高原敬武と、当時の最強のメンバーで進められました。特に、高原選手は、75、76年と2年連続で富士GCシリーズでチャンピオンとなり、また、76年は全日本選手権F2000のチャンピオンもとり、最も油の乗っていた時期でした。(73年GCチャンピオン、74年も、GCシリーズは1ポイント差の2位でしたね。)

 紫電の最大の特徴は、富士GC専用としてデザインされたクローズドボデーということでしょう。当時、マーチ、シェブロン、ローラ等のマシンが富士で活躍していましたが、それらは、国内で富士専用の高速サーキット用にモディファイされていました。外国製のマシンのモディファイでは、富士専用として他のマシンとの差を広げることは難しいと、専用マシンの開発が進められたのでしょう。

紫電77
紫電77

紫電77  それまで、多くのマシンの富士専用ボデーを手がけてきた由良拓也氏は、更なる最高速を求めてクローズドボデー、ロングテール、ローリアウィングのデザインを用意してきました。クローズドボデーで心配される揚力の増加を押さえるため、各ホイールハウスとコックピットからエンジンルームにかけての上部には、多数のスリットが切られていました。白いボデーは流麗で、前から見ると、それらのスリットを意識させない処理がされ、美しいものでした。

紫電77  シャシーは、アルミのツインチューブモノコックで、サスペンション取付け部等には鋼鈑が使われ、また、クローズドボデー特有のアルミ製ロールゲージがロールオーバーバーから前方に取付けられていました。サスペンションは、フロントがスチールパイプによるアッパーAアームと鋼鈑製のロワアーム、リヤがシングルアッパーリンク、パラレルロワリンク+上下ラジアスロッドという構成で、アップライトにはコンパクトな鋼鈑製のものが使われていました。

 マシンは77年3月に完成し、その年のGCシリーズ第1戦にお披露目として、デモンストレーションランが行われました。完成直後の走りと言うこともあり、全開走行と言うわけではありませんでしたが、その仕上がりの美しさは、今後の活躍を期待させるものでした。

 デビュー戦は、6月の第2戦でした。しかし、季節はおりしも梅雨、紫電は雨に阻まれ、クローズドボデーの雨対策に追われてしまいました。クローズドボデーは全天候型ですが、ワイパー、ウォッシャーの設定、ウインドスクリーンの曇り止め対策などに時間を取られてしまいました。紫電は、十分な走り込みを行うことも出来ず、12周でのリタイアとなってしまいました。

 その後、紫電は空力的モディファイを繰り返したり、サスペンションの改良が行われましたが、全てが新しいマシンの宿命か、いろいろな要素が絡み合い、熟成に戸惑ってしまいました。

 マシンの熟成に手をやいた高原は、77年GCシリーズをシェブロンで戦うことになってしまいました。

 翌年、紫電改となり、ショートテール、オープントップになってもマシンの熟成は進まず、高速時のリフト対策に悩まされつづけました。高原は第1戦で走らせたのみでした。その後は、関谷選手のドライブによりGCを走りましたが結果を残せぬまま、GCはシングルシーターの時代を迎え、消えることとなってしまいました。

紫電77
-* 紫電改 *-
('78)


ホイールベース2380mm
トレッド(フロント)1450mm
トレッド(リヤ)1480mm
全長4500mm
全幅1950mm
全高800mm
総重量6?0kg
エンジンBMW・M12/7
 エンジン型式直列4気筒
 バルブ型式DOHC 4バルブ
 総排気量1991cc
 ボアxストローク89 x 80mm
 圧縮比11.0
ギヤボックスヒューランドFG400
ブレーキロッキード
’77富士GCシリーズ
 ドライバーマシン第1戦第2戦第3戦第4戦第5戦
生沢 徹GRD・S74/BMW3位1位3位4位4位
星野一義マーチ74S/BMW1位8位1位1位
片山義美マーチ75S/RE13B2位3位3位
従野孝司マーチ76S/RE13B13位1位2位
鮒子田寛シェブロンB36/BMW6位4位6位8位8位
佐藤文康マーチ74S/BMW5位6位9位6位7位
桑島正美マーチ74S/BMW5位2位17位
高原敬武マーチ/BMW
紫電77/BMW
シェブロンB36/BMW
2位
 
 
 

 
 
 
 
 
9位
6位
 
 








'78富士GCシリーズ
 ドライバーマシン第1戦第2戦第3戦第4戦第5戦
星野一義マーチ74S/BMW
ノバ53S/BMW
1位
 
 
1位
 
NC
 
1位
 
片山義美マーチ75S/RE13BNC4位2位2位1位
従野孝司マーチ76S/RE13B6位10位1位2位
寺田陽次郎シェブロンB36/RE13B3位3位3位3位
高原敬武紫電改/RE13B
マーチ/RE13B
NC
 
 
5位
 
5位
 
3位
 
4位
藤田直広シェブロンB36/BMW2位6位9位5位
鮒子田寛シェブロンB36/BMW10位2位9位7位
桑島正美マーチ74S/BMW4位6位NC5位8位
生沢徹GRD・S74/BMW14位7位4位
長谷見昌弘アルピーヌA441/ルノーV6NCNC4位10位10位
11佐藤文康マーチ74S/BMW5位9位NC12位13位
12漆原徳光シェブロンB36/BMWNC7位8位6位
12ニコ・ニコルマーチ74S/BMW
GRD・S74/BMW
7位
 

 
NC
 

 
 
6位
関谷正徳紫電改/RE13B10位8位