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アスベスト対策情報 No.27
県立高校にフェルト材

(2000年2月1日発行)




県立高校に大量の
アスベスト・フェルト材

藤本泰成
神奈川県高等学校教職員組合

神奈川県高等学校教職員組合で執行委員をやっております藤本と申します。


もうだいぶ前から横須賀におりました時から、横須賀の石綿じん肺訴訟を支援する会に参加させていただきまして、いまも横須賀のじん肺・アスベスト被災者救済基金の会計監査もやらせていただいているんですけれども、そういうじん肺の裁判にですね、ずっと支援する側として携わってきて、よもや私たちが勤めております県立高校でアスベストが大量に使われているということは考えもしませんでした。

それが一昨(1997)年、神奈川県にはいろいろな市民団体で作る「県民のいのちとくらしを守る共同行動委員会」というところがありますが、そこの保健医療分科会の指摘で県が調査した結果、一番最初に、設計図の中にいわゆる「フェルト材」―アスベスト・フェルト材が使われているところが、28校確認されました。ほとんどが県立の高校の体育館の屋根、ということになっています。それから、不明なところをサンプル調査しました結果、25棟。合計54棟の体育館、格技場にアスベストフェルト材が使用されている。これはニチアスという会社の「フェルトン」という材料だそうですけれども、石綿フェルト10ミリの被覆折板構造屋根というもので、85%以上が石綿です。サンプル調査の結果、全部クリソタイルということです。

私たちは高校生が体育を行う、運動を行う格技場または体育館でそういうものが使われているということを、非常に大きな問題と考えまして、県と交渉をやり、まず最初にきちんと調査をやってくれということを要請しました。これは、「県民のいのちとくらしを守る共同行動委員会」でもいつもお世話になっております神奈川労災職業病センターも一緒に要請していただいて調査をするということになりましたが、まず目視調査を行うということで、AからDの4段階にわけるということで調査を行ったんですけれども、良好だと―何が良好なのかわりませんけれども、そこにアスベストがあるのに良好なのか、という思いもあるんですが―良好だと言われたのが、23棟ですね。多少汚れがあるというふうに書かれているのが8棟。そして部分的にはがれているところが21棟。ぼそぼそはがれて、ひどい状態になっているところが―これは荏田高校というところですけれども1棟ありました。それでCとDと書かれたところの飛散調査を早急にやるということで、県は1998 年の夏に行いました。

その結果、これもまた私たちとしては解せないというか、問題のある数字のように思うんですけれども、だいたい室内で0.05f/lから全く出ないといような状態。室外でも一番大きいところで0.25、少ないところでは0.05、リットルあたりのアスベスト繊維の本数がそのような結果となりました。これについては、だいたい工業地帯、労災職業病センターの「労災職業病」の去年の11月号に工業地帯で1.16、幹線道路沿線では2.04、これは県の環境科学センターというところが測定しているんですけれども、内陸山間部で0.36。内陸山間部―山の中でも0.36なのにもかかわらず、状況としては0.05という数値しか出てこない。

県はこれについては、飛散がないというふうにみざるを得ない、ということで、今後、目視調査はやるけれど、アスベスト対策はとらないというようなことを、いま言っています。

先ほど言いました、Dとされたぼそぼそ落ちてくる―アスベスト・フェルト材というのは珪酸ソーダで固めてあるということなんで、だんだん珪酸の劣化によって、どうもぼそぼそ落ちてくるようになるらしいですね。そういう状況がわれわれの中では若干見受けられる。荏田高校においては、私たちはアスベスト対策をやれと迫ったわけですけど、県はアスベスト対策ではありませんと、天井にあるフェルト材は、防湿・防音材なんだと、これが取れてきたことによって防音防湿という初期の目的を果たせなかったということで、修理をするんだということで、そのアスベスト・フェルト材の下に新たに屋根を作ることによって被覆してしまう、というような工事を行っています。

今後も同じような対応をとるのか、ということに対しては、飛散状況がない限り、今後も目視調査を続けながら、D基準のものについては修理というかたちでやっていくんだということで、いま県はわれわれに回答を寄せているわけですけど、わたしたちは何点か問題があると思います。

ひとつは、調査結果が正しいかどうか。先ほど言いました工業地域で1リッターあたり1.16、幹線道路では2.04という数字は冬場の調査なんですね。乾燥した季候の中での調査なんですね。県立高校での調査は夏に行われた調査です。ということで、調査の季節的な問題がないのかどうか。それから分析を行った民間機関が果たして信頼が置けるかどうか。これを含めて、調査に問題がないかずっと言っているんですけれども、県はきちんとした分析であると―県の環境科学技術センターの職員がきちんとした調査であると言っているんだと、いうようなことで、冬場の調査はできないのか、また一点の調査ではなくていろいろなところで調査できないのか、また掃除してきれいな状況とか、生徒が全然動かない状況で調査するのではなくて、通常の状態で調査できないのかといろいろ言っているんですが、今のところ県はなかなか調査に動かないというような状況です。

それからもうひとつ、荏田高校で行った工事なんですけれど、これはぼそぼそと落ちてくる石綿をぜんぶはがして、きれいにして新しい屋根をはったのではなくて、そのままぼそぼそ落ちてくる状態で屋根をはってしまったということなんですね。生徒は、格技場の屋根でもバレーボールやって当てて壊したりですね、なかには掃除のモップでつついたりする生徒もいるわけですよ。だから、穴が開いたときにそういう石綿が落ちてこないのかどうかということも含めて、この工事は問題だろうと思っています。県は飛散調査の結果に基づいて、アスベスト対策ではないということを言いきっているわけで、私たちがきちっとしたアスベスト対策を講じるように、ねばり強く要求を続けていかなければいけないのではないかと考えています。

3つめとして、吹き付けアスベストが非常に大きな問題になったときに、どの県でも吹き付けアスベストについては、全部撤去というかたちで工事を行ってきたと、アスベストはあれば撤去するんだというのが基本方針ではなかったのだろうかと。そういう中で、吹き付けアスベストとは違うんだというようなそういう論理ですね。フェルト材と吹き付けアスベストは違うのだから、撤去という方針はとらないということですね。これだけアスベストが社会問題となり、すべてのアスベストを根絶するという―ヨーロッパではほとんど使われていないという、そういう中で、アスベスト対策の後退というような状況ではないか、と考えています。

何回かの交渉の中で見え隠れするのは、神奈川県の財政問題なんですね。私は一昨日と昨日と徹夜して、ちょっと寝させてもらってここに来たんですけれども、私が何で徹夜したかというと、いわゆる終期年末闘争ということで、給料あげろという闘争をずっとやってきたんですが、財政状況が非常に悪化してきている中で、今期給与も削減されるというような状況です。初めてマイナスというようなことになってしまったんですけれども。神奈川県だけではなくて、東京や千葉・埼玉といろいろなところが財政問題を抱えていましてですね、そういう中でアスベスト対策が後退していくということですね。これは決して許されないだろうと思っています。

今後も粘り強く、生徒の健康を守るという、私たちが一番重点にしている生徒の教育条件、すばらしい条件の下で教育を行わなければならないという視点に立って、継続してがんばっていこうと思っています。よろしくお願いします。




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