1. アスベスト禁止に向けた国際的な情勢を踏まえ、日本においてもクリソタイルを含めたアスベスト
の輸入・製造・使用等の禁止を早期に実現するようイニシアティブを発揮されたい。国際的な情勢に
関する貴庁としての認識もお聞かせ願いたい。
【回答】 大気規制課
国際的には、アスベスト禁止の流れになっていると承知している。
EUのクリソタイル禁止決定(英文新聞報道で把握していた)は、大きな影響を及ぼすのではないか。
日本においてもよく研究したうえで規制が必要だと考えるが、環境庁には権限がない。
2. 1996年改正大気汚染防止法令の施行状況についてお聞かせ願いたい。
・ 特定粉じん排出等作業を行う建設工事(特定工事)の届出件数および「(推定)カバー率」
・ 計画変更命令、作業基準適合・作業一時停止命令、報告・検査の各件数、および、各々の違反
に係る罰則適用件数
・ その他、適正な施行のために実施した施策、問題点等
【回答】 大気規制課
近く平成9年度の届出件数をまとめられる予定。昨年12月の集約時点では509件で、労働省の方
が約900件ということなので、それと比較したカバー率だと60%弱くらいか。罰則を適用したという話は
聞いていない。
問題点として地方自治体の現場からあげられていることは、工事の14日前が届出期限になって
いるが、遅れたり、工事が終わってから届け出る、石綿が使用されているかどうかの事前把握・判定
が難しい、等々である。
平成10年度は、皆様にもご協力をいただいたが、「建築物解体に係るアスベスト飛散防止対策マ
ニュアル」をリニューアルし、今年2月に出版することができた(次項参照)。また、札幌市と千葉市の
協力を得て、石綿の事前使用把握調査事業も実施した。この結果がまとまるのはこれからであるが、
札幌市では、租税台帳(?)等から建築年代を把握したりして市内の石綿が使用されている建築物の
マップを作成するなど、貴重な経験が得られているので、今後、各地方自治体の参考に供せるように
していきたい。
3. 最近(1999年2月)出版された『建築物解体等に係るアスベスト飛散防止対策マニュアル』(監修:
環境庁アスベスト飛散防止対策研究会、発行:
富士総合研究所)に関して、1998年8月6日付けの石綿対策全国連絡会議の要請との関係について、以下の点(要請が取り入れられなかったと思わ
れる点)を含めてご説明いただきたい。
・ 吹き付けロックウールにアスベストが含まれていたのは1979年までであるとする根拠を明示され
たい。
・ 囲い込み工事、封じ込め工事の場合もアスベストが飛散するので、負圧と集じん・排気装置の使
用を明記されたい。
【回答】 大気規制課
前者については、ロックウール工業界調べによるもので、一般的に言われているということなので、
根拠は明示しなかった。
後者については、飛散するおそれがあれば除去工事をせよと指示しているところであり、その必要
がないということは一般に飛散の可能性は小さいと考えられることから、そこまで指示なかった。
* 全国連の要請内容は上記2点以外はほとんど取り入れられての発行となったが、取り入れられた
点については次頁参照。
4. 以下の点を含め、今後さらに対策の強化を図るようにされたい。
・ 「特定粉じん等排出作業」に、すべての石綿吹きつけ建築物および石綿含有保温材、成形板等使
用建築物の解体等作業を含めること。
・ 代替製品および代替化の状況に対する情報を提供して、代替化の促進を図ること。
・ 関係地方自治体と労働基準監督署で定期協議を実施し、現場レベルでの情報交換、連携を強化
すること。
【回答】 大気規制課
平成10年度には、2.で回答したことに加えて、年度末に、代替化の実態に関して、企業へのアン
ケート調査を実施した。ゼネコン、ユーザー側には意識面の調査、メーカーには社内規定等を含め
て代替化への姿勢を聞いている。集約はこれからである(31頁参照)。
連携強化ということでは、建設省で建築物解体・リサイクル制度が検討されており、これが法制化
されれば、建設省からも情報を提供していただくようにして連携していきたい。
* 廃掃法、安衛法等も含めた制度の整合性と拡充も含めて議論を行った。
5. 国会で審議中の「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する
法律」の第1種指定化学物質(PRTR―排出量等の把握・届出等の対象)にアスベストを指定された
い。
6. 上記法律の「指定化学物質等の性状及び取り扱いに関する情報の提供」(MSDS)の対象にア
スベストを含めるとともに、提供する情報に以下の内容を含むようにされたい。
・ 肺がん、悪性中皮腫等を引き起こす発がん性があることを明示すること。
・ アスベストの含有率を表示させること。
【回答】 環境安全課
各々の対象物質については、法律が制定されてから、中央環境審議会(環境庁)、化学品審議会
(通商産業省)、生活環境審議会(厚生省)の3つの審議会で検討してもらうことになる。また、パブリッ
ク・コメント制度によって広く国民からも意見を募ることになる。
(パブリック・コメントについては、対象物質として考えている物質のリストを示して意見を聞くことに
なると思われ、今年の年末くらいに1か月程度の期間で実施することになるのではないかとのこと。
そして、2000年3月末までに対象物質を選定し、PRTRの方は2001年度のデータから把握してもらう
ようになる見通し。)
MSDSの記載内容についてもこれから詰めていくことになるが、ISOで示しているMSDSの16項
目等を参考にして、おそらく御指摘の内容は含まれることになると思われる。
* 昨年の話し合いでは、「粉じんについては排出量を把握(推計)する技術的方法が難しい」等と、PRTR
の対象物質に(少なくとも当初の段階で)アスベストが含まれることはなさそうなニュアンスであった
が、今回は、「すでに制度を実施しているアメリカ、カナダ、イギリス、オランダではアスベストを対
象物質に入れている」など変化してきている様子がうかがわれた。
PRTRの対象物質にアスベストをというのは3年越しの要請になるが、パブリック・コメントの段
階で提示されるリストの中にあらかじめアスベストが取り入れられるよう、あらためて強く要請した。
建築物解体に係る石綿飛散防止対策マニュアル(出版用)の修正点一覧
3 最終行が脱落→印刷のミス
6 6〜8行目 石綿と喫煙との因果関係に定説がないため、「なお、石綿と喫煙の関係は相加作用
と相乗効果の間にあると言われている」と修正
6 出典で、「Healthe」を「Health」に修正
9 11行目 自動車部品の代替化は補修部品に当てはまらないため、「新車に対して」を挿入
10 2行目 木造でもスレート等の石綿製品が大量に使用されているため、「木造には〜用いられな
いが」を削除
10 《吹付けロックウールに石綿が含まれていたのは1979年までという根拠を示す》―示されなかった
14 「石綿を1%を超えて含有する吹付けロックウール」に、「、吹付けひる石(吹付けバーミキュライト)、
パーライト吹付け、発砲けい酸ソーダ吹付け石綿等」を追記
18 7行目 「作業室内の石綿濃度が外気と同等まで低下したことを確認できるまで」を挿入
20 大気汚染防止法施行規則第13条第1項を追加して、届出書の提出部数を明記
23 「これらの罰則は〜適用されることはない」を削除
33 「石綿を1%を超えて含有する吹付けロックウール」に、「、吹付けひる石(吹付けバーミキュライト)、
パーライト吹付け、発砲けい酸ソーダ吹付け石綿等」を追記
35 いくつかの資料から作成しているため、図表3-6及び図表3-7の出典を削除
36 吹付け石綿の説明欄で、アモサイト吹付けは茶色であることを追記
36 「石綿を1%を超えて含有する吹付けロックウール」に、「、吹付けひる石(吹付けバーミキュライト)、
パーライト吹付け、発砲けい酸ソーダ吹付け石綿等」を追記
39 図表3-9 吹付けひる石と吹付けバーミキュライトは同じ物質であるため、吹付けひる石(吹付け
バーミキュライト)と記述
45-47 事例が少なくイメージが掴みにくいため、具体的な作業事例と届出書記入例を追加
52 11行目 「一定時間」を削除、「継続して」を挿入
57 C 「施行区画内の石綿濃度が外気と同等まで低下したことを確認できるまで」を挿入
60 下から2行目 「排出作業を実施する場合は、近隣説明会を開くことが望ましい」を「その旨を近隣
住民にも見やすい箇所に掲示したり、説明を行うことが望ましい」に変更
61 「除去届」を「除却届」に変更
65 6行目 「39ページ」を「36ページ」に変更
65 「石綿を1%を超えて含有する吹付けロックウール」に、「、吹付けひる石(吹付けバーミキュライト)、
パーライト吹付け、発砲けい酸ソーダ吹付け石綿等」を追記
105 分析機関の確認(「年月日」と記述追加)
(注) 数字は出版用マニュアルのページ
環境庁委託/(株)富士総合研究所
これは、「海外における石綿規制の動向」および「石綿製品の代替化の動向」の2つの調査からなっ
ている。
● 海外における石綿規制の動向
国際機関としては、ILO(国際労働機関)とWHO(世界保健機関)の2つ。
ILOについては、1986年の「石綿の利用における安全に関する(第162号)条約」の概要を説明。
WHOについては、「石綿の作業環境におけるばく露限界報告書」(クリソタイルについて1f/cm 3(8時間・時間加重平均))、および、「1996年9月9日の専門家グループによるクリソタイル・アスベストの
評価に関するプレスリリース」の内容について紹介している。
WHOの前者については、後述の各国の石綿規制(33頁参照)よりもかなり緩いすでに過去のもの
と言ってよい。
後者については、この作業の結果として、1998年11月にWHOから「環境保健クライテリア203/ク
リソタイル・アスベスト」が発行されているわけで、こちらの最終結論を紹介するべきであろう(3頁で紹
介している)。とくに、この作業の経過では、カナダや当時はクリソタイルの禁止に反対していたフランス
の言わばひもつきで専門家の人選や作業が進められているとの批判があり、専門家の増員など様々
な動きがあっただけに、途中経過の情報の紹介は慎重にすべきであった。
国別の規制の動向では、アメリカとEUおよび欧州各国(イギリス、フランス、オランダの3か国)を取
り上げている。
アメリカについては、EPA(環境保護庁)のアスベスト含有製品の禁止を定めた1989年規則が、1991
年10月に連邦高等裁判所が規則策定手続に不備があるとして無効であるとの判決を下したこと。1989
年規則でも11品目については禁止を除外していたこと、無効判決を受けて1993年11月に石綿スレー
トなど18品目の使用を認めたこと。石綿精錬、石綿製品製造・加工業を「大気汚染有害物質発生源規
制対象リスト」から除外したこと、などを紹介している。しかし、世界最大を誇った使用量(1970年代に約
80万トン)が激減(数年前で2万トン以下と伝えられている)していることは、ふれられていない。
ヨーロッパについては、「1999年5月に予定されているEU会議において、2005年までにごく一部の
製品を除いて使用禁止、2010年には石綿の全面禁止が決定されるとされている」こと、イギリスにおけ
る1998年8月のHSEのクリソタイル使用の規制強化の諮問が行われた(行われる予定)ということは紹
介されているが、イギリスの他の動きについては新しい動きは紹介されていない(免許規則および作業
管理規則の改正とその1999年2月施行等)。フランスについては、1996年7月に禁止を公式に発表し
たこと、および、その根拠となったINSERM(国立衛生医学研究所)のレポートについての紹介。オラン
ダについては、建築物解体にかかわるアスベスト規制の内容を紹介している。
最後に、諸外国の石綿規制状況について、1992年6月、1995年4月、1998年8月現在の状況につ
いて日本石綿協会がAIA(国際石綿協会)の資料をもとに作成した一覧表を掲載している(33頁に1998
年8月現在のものを掲載。イギリスについては、クリソタイルの濃度基準が1999年2月から0.3f/cm 3に引き下げられている)。
● 石綿製品の代替化の動向
ここでは、「代替化に関する経緯」と「代替化の現状」を報告している。
前者は、もっぱら日本石綿協会の資料のみによって、「石綿製品の使用状況(1995年度)」、「石綿
含有製品の代替化状況」、「今後の代替化動向」、「現在製造中の石綿含有製品」、について紹介して
いる(34〜39頁参照、新しい資料ではない)。
後者が、今回新たに行ったアンケート調査の結果で、建材製造業者47社、建材製造時業者関連団
体6団体、建設事業者98社、建設時業者関連団体7団体が回答したという。
興味深い調査ではあるが、建材製造業関係では、もともとアスベスト建材を製造していないところも
かなり入ってしまっているようで、統計的な意味はほとんどなさそうである。
建設事業者では、「社内規定にアスベスト含有建材の調達・使用に関する事項がある」としている企
業が12社(改正中 5社、改正していく予定 43社、n=95)。規定があるおよび改正中と答えた17社中、
「アスベスト含有建材を使用しないことを定めている」企業が13社、「ノンアス建材の製品銘柄を指定し
ている」企業が5社、「使用できるアスベスト含有建材の製品銘柄をしている」企業が1社、「建材に使用
できるアスベスト含有量(含有率)の上限を定めている」企業が2社であった(複数回答)。
「アスベスト含有建材の製品銘柄リストがある」としている企業が13社、「ノンアス建材の製品銘柄リス
トがある」としている企業が8社、「アスベストの有無をチェックする手順書」があるとしている企業が6社で、「とくにない」としている企業が63社と非常に多い(複数回答、n=84)。
「発注者からアスベスト含有建材を使用しないこと(またはノンアス建材を使用すること)の要望の有無」
については、「ほとんどの発注者から求められている」としている企業が16社、「求められる場合がとき
どきある」が24社、「求められる場合はほとんどない」が40社であった(n=80)。
「下請企業に対してアスベスト含有建材を使用しないこと(またはノンアス建材を使用すること)の要望
の有無」については、「契約書や仕様書に記述し使用している建材をチェックしている」としている企業が
14社、「記述しているがチェックしていない」が2社、「とくに文書化していないが口頭で求めている」が35社、「とくに求めていない」が30社であった(複数回答、n=80)。
建設時業者関連団体に関しては、「アスベスト含有建材の調達・使用に関する自主指針等がある」と
している団体が2団体(「ない」が1団体、n=3)で、1団体は「アスベスト含有建材を使用しない」ことを定
めており、もう1団体は「使用できるアスベスト含有建材の製品銘柄を指定している」とのこと。また、「ア
スベスト含有建材の製品銘柄リストがある」としている団体は1団体であった。
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