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石綿の代替化等検討委員会報告書

注意:報告書の正確な内容は、後日、厚生労働省より公表される予定の、「石綿の代替化等検討委員会報告書」をご確認ください。

※厚生労働省のHPに掲載されましたhttp://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/04/h0404-4.html



石綿の代替化等検討委員会報告書報告書

平成15年3月
石綿の代替化等検討委員会

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第1部
石綿の代替化等検討委員会について


1. 経 緯

石綿は、吸入することにより人に石綿肺、肺がん、中皮腫を発生させることが明らかになっている。
職場で取り扱われる石綿については、労働者の健康障害防止の観点から、労働安全衛生法に基づき、1995年に、代替化が進んだアモサイト及びクロシドライトについて、その製造、輸入、使用等が禁止された。
アモサイト及びクロシドライトを除く石綿については、発がん性はあるが、優れた耐熱性、耐腐食性等の性能を有し、他の物質への代替が困難であったため、これまで使用等の禁止までは行われず、局所排気装置の設置、呼吸用保護具の使用等のばく露防止対策等が義務付けられてきた。
しかしながら、近年これらの石綿についても代替品の開発が進んできていることを踏まえ、厚生労働省では、国民の安全等にとって石綿製品の使用がやむを得ないものを除き、原則として、使用等を禁止する方向で、検討を進めることとした。
2002年8月、厚生労働省は、石綿製品のメーカー、ユーザー団体等を対象に「石綿及び同含有製品の代替化等の調査」を行い、その調査結果をも踏まえ専門技術的観点から代替化の困難な石綿製品の範囲等を絞り込むため、同年12月、学識経験者による「石綿の代替化等検討委員会」を設置した。
本報告書は、石綿の代替化等検討委員会における石綿製品の代替可能性等についての検討結果をとりまとめたものである。
2. 検討委員会委員名簿
[前掲と同じ]

3. 開催経過
[前掲と同じ]

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第2部
石綿について


1. 石綿及び石綿製品の状況

(1) 石綿の種類
石綿とは、天然に産出する繊維状の含水珪酸鉱物の総称であり、蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)と角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの6種類がある。
日本では、クロシドライト、アモサイトについては1995年に労働安全衛生法に基づき製造・輸入・譲渡・使用等が禁止されており、現在も使用されているのはクリソタイルである。アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトについてはまれにしか産出せず、他の石綿鉱床に不純物として含まれることがあるが、石綿原料として国内の産業界では使用されていない。

(2) 石綿の輸入量の推移
日本で使用される石綿原綿はほぼ輸入に頼っている。年間の輸入量は、1960年代に急激に増加し、1974年の35万トンを最高に、1970年代及び1980年代は25万トンから35万トンの高水準で推移してきたが、1990年代に入り年々減少し、2001年は7万9千トン、2002年は4万3千トンであり前年の45%減、ピーク時の88%減と大幅に減少している。
日本への主な輸入元は、カナダ56.4%、ジンバブエ25.8%、ブラジル6.9%である(2002年)。

(3) 石綿製品の種類と用途
石綿はその9割以上が建材製品に使用されており、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、石綿セメント円筒に加工され、建築物の壁材、屋根材、外装材、内装材等に使用されている。
建材製品以外では、ジョイントシートやシール材に加工され、化学プラント等の配管や機器のガスケット、漏洩防止用のグランドパッキン等に広範に使用されているほか、耐熱・電気絶縁板やエスカレー夕のブレーキ等の産業用摩擦材等に使用されている。

2. 職場における石綿による健康障害防止対策

1971年
労働安全衛生法に基づく特定化学物質等障害予防規則が制定され、石綿の取扱作業に関して石綿の発散防止設備の設置、作業環境測定の実施、特定化学物質等作業主任者の選任等が義務付けられた。
1975年
特定化学物質等障害予防規則の改正により、石綿の吹付け作業の原則禁止、石綿等の湿潤化による発散の防止等が義務付けられた。また、健康管理対策として、労働者の雇入れ時、石綿の取扱業務への配置換え時及びその後6月以内ごとの特殊健康診断の実施が義務付けられた(それ以前はじん肺法により健康診断が義務付けられていた。)。
1995年
労働安全衛生法施行令の改正により、アモサイト及びクロシドライトの製造・輸入等が禁止された。
また、労働安全衛生規則の改正により、耐火建築物等における吹付け石綿除去作業の計画を事前に労働基準監督署に届け出ることが義務付けられた。
特定化学物質等障害予防規則の改正により、石綿等の切断作業等における湿潤化、呼吸用保護具・保護衣の使用、石綿除去作業場の隔離等が義務付けられた。

3. 石綿の代替繊維の種類と有害性


(1) 石綿の代替繊維
石綿の主な代替繊維には、人造鉱物繊維、天然鉱物繊維、合成繊維等がある。
人造鉱物繊維はガラス、岩石等を溶融し繊維状に加工したものであり、主に、グラスウール、ロックウール、スラグウール、ガラス長繊維等が、断熱材、建材、摩擦材、シール材等に使用されている。
天然鉱物繊維は天然に産出する繊維状の鉱物であり、主に、セピオライト、ワラストナイト等が、建材、接着剤等に使用されている。
その他、化学的に合成した繊維や天然の有機繊維があり、主に、アラミド繊維、ビニロン繊維、パルプ、炭素繊維等が、建材、摩擦材、シール材等に使用されている。

(2) 石綿の代替繊維の有害性の評価
国際がん研究機関(IARC)において、従来、石綿の全種類がグループ1(ヒトに対して発がん性がある物質)に分類されるとともに、その他の人造鉱物繊維についてグループ2B(ヒトに対して発がん性の可能性がある物質)又はグループ3(ヒトに対する発がん性については分類できない物質)に分類されていたが、2001年10月、グラスウール、ロックウール、スラグウールについてグループ2Bからグループ3に再評価された。

4. 石綿の使用等に関する国際動向


(1) ヨーロッパ
欧州連合(EU)では、1999年に、加盟国が2005年1月1日までに全種類の石綿の売買・使用を禁止する所要の法令等を施行することを定めた欧州委員会指令を公布した。
指令では、既存の電解設備用のダイアフラム、各国での禁止措置の実施以前に既に設置・使用されている石綿製品の使用、各国での禁止措置の実施以前に市場に出回っていた石綿繊維・石綿含有製品(在庫品)の売買、研究分析目的での使用等は禁止措置の適用を除外されている。
なお、ドイツは1993年、フランスは1996年、英国は1999年に、一部例外を除き全種類の石綿の使用等を原則禁止する法令を既に整備している。

(2) アメリカ
アメリカでは、環境保護庁(EPA)において、1993年に製造・使用等が可能な製品18種類が指定されるとともに、波形紙、ロールボード、商業用紙、特殊用紙、フローリングフェルト、新たな用途への使用が禁止された。

5. 石綿及び石綿製品の代替化等の調査結果の概要


2002年8月、厚生労働省化学物質調査課において、石綿の代替化等の状況を把握するため、アンケート方式の調査を実施した。調査対象は、石綿製品の製造企業26社、石綿製品の製造企業の団体10団体、石綿・石綿製品の輸入事業者8社、石綿製品のユーザーの団体19団体であった。

(1) 石綿製品の製造企業の回答の集計結果


197種の石綿含有商品について回答があり、そのうち、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、石綿の使用が必要でないと回答があったものが140商品(71.1%)、必要であると回答があったものが57商品(28.9%)であった。さらに、その57商品のうち、安全確保のため必要と回答があったものが25商品、安全確保以外の理由で必要と回答があったものが32商品であった。石綿の使用が必要との回答がなかった製品は、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、断熱材用接着剤、耐熱・電気絶縁板、その他石綿製品であった。
197種の商品のうち、建材は107商品であり、そのうち石綿の使用が必要でないと回答があったものが64商品、必要と回答があったものが43商品、うち、安全確保のため必要と回答があったものが11商品、安全確保以外の理由で必要と回答があったものが32商品であった。一方、90種の非建材商品のうち、石綿の使用が必要でないと回答があったものが76商品、必要と回答があったものの14商品はすべてが安全確保のため必要と回答があった。

(2) 石綿製品のユーザー団体の回答の集計結果


建材については、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、繊維強化セメント板(平板)、繊維強化セメント板(波板)、窯業系サイディングのそれぞれについて1団体から石綿の使用が必要と回答があり、それらを除き、すべての団体から安全確保等のためには石綿の使用が必要でないと回答があった。
非建材については、ジョイントシート、シール材、その他石綿製品について多くの団体から石綿の使用が必要と回答があった。また、断熱材用接着剤についてはすべての団体から石綿の使用が必要でないと回答があり、耐熱・電気絶縁板については2団体から石綿の使用が必要と回答があった。

(3) 石綿の代替化についての全般的な意見の概要


石綿の代替化について、
・ 建材の石綿製品の代替化は可能である
・ 石綿製品は、耐久性、耐熱性等の性能,価格,維持管理のコスト面で総合的に非石綿製品より優れており、代替化は困難である
・ 化学プラント、発電所等で使用するシール材で、特に、高温、高圧、危険な化学物質の接触下等で使用するものを非石綿製品に代替化した場合のリスクが不明であり代替化は困難である
等の意見があった。

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第3部
代替可能な石綿製品の範囲について


石綿製品の代替可能性の判断に当たっては、次の点に留意することとした。
1. 原則として、個別の商品ごとでなく製品の種別ごとに判断する。
2. 石綿代替品の範囲については、石綿以外の人造鉱物繊維、天然鉱物繊維、合成繊維等の代替繊維を用いた製品のみならず、金属等の非繊維製品についても対象として考慮する。
3. 次の製品については、代替が困難と判断する。
(1) 石綿代替品の使用により安全の確保が困難となるおそれがある石綿製品
(2) 石綿代替品がないか又はその性能等が石綿製品に比較して著しく劣り、当該石綿製品を使用しないこととした場合に社会的に許容しがたい問題となるおそれがある石綿製品
なお、石綿代替品が石綿製品と比較して強度、耐久性等の性能が低い場合であっても、JIS等の水準を満足している場合には代替は可能と判断する。

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第4部
石綿含有建材の代替可能性について


1. 押出成形セメント板

厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、4種類の商品すべてについて石綿の使用を必要とする理由はないと回答があった。また、これらの商品について、代替見込み時期は2003年〜2005年頃と回答があった。
一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
押出成形セメント板の規格については、日本工業規格「押出成形セメント板(ECP)」の原案が策定されているところである。既に製造されている非石綿製品で使用されている代替繊維には、ワラストナイト、パルプ、有機繊維、セピオライト等がある。
押出成形セメント板については、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
・ 既に商品化されている非石綿製品があり、技術的に非石綿製品への代替化は可能であると考えられること。
・ 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカー、メーカー団体及びユーザー団体から石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。
・ 安全確保の観点から石綿製品の製造、使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

2. 住宅屋根用化粧スレート


厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、7種類の商品すべてについて石綿の使用を必要とする理由はないと回答があった。また、これらの商品について、代替見込み時期は2003年後半と回答があった。
一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
住宅屋根用化粧スレートについては、日本工業規格「JIS A5423 住宅屋根用化粧スレート」で性能等が規定されている。既に製造されている非石綿製品に使用されている代替繊維には、パルプ、ワラストナイト、ビニロン、セピオライト等がある。
住宅屋根用化粧スレートについては、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
・ 既に商品化されている非石綿製品があり、技術的に非石綿製品への代替化は可能であると考えられること。
・ 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカー、メーカー団体及びユーザー団体から石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。
・ 安全確保の観点から石綿製品の製造、使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

3. 繊維強化セメント板


(1) 繊維強化セメント板(平板)の調査結果等

厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、40種類の商品中30種類の商品については安全確保の観点から石綿の使用を必要とする理由はないと回答、10種類の商品については石綿の使用が必要と回答、うち、3種類の商品については安全確保のために、7種類の商品については安全確保以外の理由で必要と回答があった。
石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品は経年変化についての信頼性や強度が欠ける、非石綿製品に代替化するための製造法の転換が困難等の回答があった。
また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期については、2005年頃とする商品がある他、2008年、2007〜2012年頃とする商品があり、さらに時期未定又は代替不可能とする商品があるとの回答があった。
一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回答があった。

(2) 繊維強化セメント板(波板)の調査結果等

厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、52種類の商品のうち23種類の商品については安全確保の観点から石綿の使用を必要とする理由はないと回答、29種類の商品については石綿の使用が必要と回答、うち、8種類の商品については安全確保のために、21種類の商品については安全確保以外の理由で必要と回答があった。
石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品の耐久性や強度の不足、危険物倉庫・高温高圧機器設置工場の火災・爆発時の被害軽減、化学工場・沿岸地域の工場の建屋の腐食防止、高電圧取扱建屋の感電事故防止、代替化する場合の成形上の問題・設備投資が必要・コストアップ、葺き替え補修等の回答があった。
また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期については、2004〜2005年頃とする商品がある他、時期未定又は代替不可能とする商品があるとの回答があった。
一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回答があった。

(3) 繊維強化セメント板(平板及び波板)のヒアリング結果

委員会においてメーカー及びメーカー団体からヒアリングを行ったところ、主に次のような意見があった。
● 繊維強化セメント板(平板)に比べ繊維強化セメント板(波板)の代替化は遅れているが、一部の非石綿製品については商品化されている。
● 繊維強化セメント板(波板)については「JIS A5430 繊維強化セメント板」の性能基準(本体の性能基準及び附属書1で示された性能基準等)を満足する試作品が開発されている。
● 代替繊維を用いた製品は、石綿製品と比較して収縮率が大きく、製造当初の強度は技術的に確保できるが耐久性が低い。
● 繊維強化セメント板(波板)については業界全体で非石綿化の取組みを行ってきているが、特に大波板については非石綿製品の強度、長期の耐久性等を考慮に入れた慎重な検討が必要である。
● 非石綿製品についてはプレスで密度を高め強度を上げることとなるため、大型のプレス機が必要である。
● 山むね、波のきさき等の役物スレートは非石綿繊維製品への代替が不可能なため金属製品に代替することになるが、その場合には、耐防火性能に係る国土交通大臣の認定を取得する必要があると考えられる。
● 非石綿化を図るためには技術の革新や製造設備の投資のための支援措置が必要である。
一方、ユーザー団体からヒアリングを行ったところ、アンケート調査の結果と異なり、平板及び波板のいずれも石綿製品を使用しなければならない理由はないとの意見があった。

(4) 関連規格等

繊維強化セメント板については、日本工業規格「JIS A5430 繊維強化セメント板」で平板、波板ともに性能等が規定されている。既に製造されている非石綿製品で使用されている代替繊維は、パルプ、ビニロン繊維が中心である。

(5) 繊維強化セメント板の代替可能性について

厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリングにおいて、石綿製品メーカーから、一部の製品を除き非石綿製品への代替化は困難であるとの意見が出されたが、高圧プレス装置の導入等の製造設備の変更、混和材料の添加等の原材料の変更、製造方法の変更等の必要がある場合があるものの、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。

● 技術的な可能性
@ 既に商品化されている非石綿の繊維強化セメント板があること
A 「J1S 式5430 繊維強化セメント板」で規定されたスレートの性能基準(曲げ破壊荷重、吸水率、透水性、難燃性、耐衝撃性)に適合する非石綿製品があること
B 建築基準法の不燃材料として国土交通大臣に認定されている非石綿の繊維強化セメント板があること
C 欧州において屋根材、外装材の非石綿化が進んでおり、代替品として、石綿以外の繊維を使用した製品のほか、金属が使用されている例もあり、金属等の非繊維製品への代替化も可能であると考えられること
等から、技術的には非石綿製品への代替化は可能であると考えられること

● 関連規格等の状況
平成12年6月施行の改正建築基準法において不燃材料の基準が性能規定化されたこと、繊維強化セメント板の日本工業規格については、平成13年3月の改正により石綿を含まない製品の性能基準がISO規格の内容を附属書として取り込むことにより規格化されたこと(「附属書1 繊維強化セメント板―長尺波板」で性能基準として破壊荷重、たわみ、透水性、耐凍結融解性、見掛け密度、耐温水浸せき性、耐加熱散水性、難燃性を規定。「附属書2 繊維強化セメント平板」で性能基準として曲げ強度、透水性、耐凍結融解性、見掛け密度、耐温水浸せき性、耐加熱散水性、難燃性を規定)等から非石綿製品への代替化が促進されやすい状況になっていること

● ユーザーの認識
厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリングの結果から判断して、建材製品のユーザーは安全確保の観点から石綿製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられること

● 安全確保上の必要性
非石綿繊維を用いた代替品は石綿製品に比べて耐久性が低下するとのデータがあるものの、屋根材として使用する場合の踏み抜き等による作業者の墜落の危険性は石綿製品も同様にあり、通常の使用においては、非石綿製品に代替化することにより新たに安全上の問題が発生することはないと考えられること、化学工場等の建屋に防火性能上の観点から石綿製品が不可欠であるという理由は特にないと考えられること等、安全確保の観点から石綿製品の製造・使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること

4. 窯業系サイディング


厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、2種類の商品のいずれも安全確保以外の理由で石綿の使用が必要と回答があった。
石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品の耐久性の不足、非石綿製品へ代替化する場合のコストアップ等の回答があった。
また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期は、2005年の商品と2007年の商品があると回答があった。
一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回答があった。
窯業系サイディングの規格については、日本工業規格「JIS A5422 窯業系サイディング」で性能等が規定されている。既に製造されている非石綿製品で使用されている代替繊維には、パルプ、ガラス長繊維、アクリル繊維等がある。

委員会においてメーカー、メーカー団体からヒアリングを行ったところ、次のような意見があった。
● 非石綿製品を既に販売しているが、製造コストの問題から改良の研究を続けている。
● 開発中の非石綿製品については性能上の問題は無く、生産性と原料のコストアップが問題である。
● 特に高い耐凍害性を有する製品については、代替化は困難である。
一方、ユーザー団体からヒアリング行ったところ、アンケート調査の結果と異なり、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないとの意見があった。
窯業系サイディングについては、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
● 既に商品化されている非石綿製品があること。
● 建築基準法の不燃材料として国土交通大臣に認定されている非石綿製品があること。
● 厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリングの結果から判断して、建材製品のユーザーは石綿製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられること。
● 安全確保の観点から石綿製品の製造・使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

5. 石綿セメント円筒


厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、2種類の商品のいずれも安全確保以外の理由で石綿の使用が必要と回答があった。
石綿の使用が必要な理由としては、煙突、集合排気筒として高温で使用されるため代替品がないこと等の回答があった。
一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
石綿セメント円筒の規格については、日本工業規格「JIS A5405 石綿セメント円筒」で原料、品質等が規定されている。

委員会においてメーカーからヒアリングを行ったところ、次のような意見があった。
● 「JIS A5405 石綿セメント円筒」で規定されている耐熱性能等を満足する代替繊維はない。
● 金属、ほうろう等の製品が普及しつつあり非繊維製品への代替は可能。
● 生産量は年々減少しており、代替化のためにコストをかけることは困難。
石綿セメント円筒については、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
● 金属、ほうろう等の製品が普及しつつあり、非繊維製品への代替は可能であること。
● 厚生労働省が実施したアンケート調査結果から判断して建材製品のユーザーは石綿製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられること。
● 安全確保の観点から石綿製品の製造、使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

6. 石綿含有建材の代替可能性について


石綿を含有する建材製品については、代替繊維を用いた製品で、JIS等の規格に適合又は国土交通省により不燃材としての認定を受けたものが一部製造され、既に商品化されていること等から、当該製品に必要な性能を有する非石綿製品の製造は概ね技術的に可能と考えられる。平成12年6月に施行された改正建築基準法において不燃材料の基準が性能規定化されたことや、関連するJIS規格においても性能規定化されてきていることからも、非石綿製品への代替化が促進されやすくなっていると考えられる。非石綿繊維製品への代替化は困難と考えられるものが一部あるものの、それらについては金属等の非繊維製品への代替化が可能と考えられる。また、代替品の使用により防火、耐火、耐腐食、耐久性等の観点からの安全の確保が困難となるおそれがあるとは考えられない。さらに、建材製品のユーザーは、安全確保上石綿含有製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられる。
これらのことから、石綿を含有する建材製品の使用は安全確保等の観点から不可欠なものではなく、かつ、技術的に非石綿製品への代替化が可能であると考えられる。

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第5部
石綿含有非建材の代替可能性について


1. 断熱材用接着剤


厚生労働省が実施したアンケート調査において、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」等の設問に対し、石綿製品のメーカー、ユーザーともに安全確保等の観点からは石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
また、ヒアリング等の結果、電動機のローターとシャフトの接着に石綿を含有する接着剤が用いられているものがあったが、接着剤メーカーからは数ケ月以内に代替する予定であるとの回答があった。
接着剤の規格としては、日本工業規格「JIS A5537 木れんが用接着剤」、「JIS A5538 壁・天井ボード用接着剤」、 「JIS A5547 発泡プラスチック保温板用接着剤」の各々の本文において充てん材として石綿を含有してはならないと規定されている。「断熱材用接着材」に係る日本工業規格はない。既に製造されている非石綿製品に使用されている代替繊維には、セピオライト、二酸化けい素、樹脂等がある。

断熱材用接着剤については、次に示す理由により、非石綿製品への代替化は可能と考えられる。
● 既に商品化されている非石綿製品があり、技術的には非石綿製品への代替化は可能であると考えられること。
● 厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品のメーカー、メーカー団体から既に製造を中止していると回答があったこと、またユーザー団体からは石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。
● ヒアリング等の結果石綿製品の使用が判明した、電動機において使用されているものについては、代替が確実であると考えられること。

2. 耐熱・電気絶縁板


(1) 調査結果等

厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、安全確保等の観点からは石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、2団体から石綿製品の使用が必要と回答があった。
代替が困難なものは、高温高圧ガスから保護するための断熱ゴムシート、変圧器のヒーター・磁気遮断器の電気絶縁板等の回答があった。

(2) ヒアリング結果

委員会においてユーザー団体からヒアリングを行ったところ、次のような意見があった。
● 2000℃を超える極めて高い温度で使用される断熱材は代替困難である。
● 電力用機器内のヒーターの取付けに用いられる耐熱・電気絶縁板は、機器の点検時にセラミック系のものに代替する予定である。
● 検知器の取付け部に用いられている絶縁シートは、現在代替品を検討中で見込みはある。
● 配管に巻き付ける耐熱シートについては、代替品を選定済みである。
● ジョイントシートを断熱材や高圧縦力を受ける部分の絶縁板として用いている例があり、代替可能性は不明である。

(3) 規格・関係法令等

海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)及び船舶安全法に基づく船舶設備規程等においては石綿を含む材料の使用が禁止されているが、1000℃を超える高温下で使用される軟性及び弾力性の必要な断熱材、ロータリー式圧縮機及びロータリーポンプにおいて使用される羽根車は適用を除外されている。
英国の石綿禁止法令においては、乾燥時に1900kg/m3以上の密度で500℃以上の温度に使用する板状のものは施行時期を猶予された。
フランスの石綿禁止法令においては、1000℃を超える温度に対応するため工業的環境で用いられる柔軟・フレキシブルな断熱装置は施行時期を猶予された。
日本工業規格には、「耐熱・電気絶縁板」を規定する規格はない。

(4) 耐熱・電気絶縁板の代替可能性について

耐熱・電気絶縁板については、厚生労働省が実施したアンケート調査においてメーカーは石綿製品の使用が不可欠とは回答しておらず、既にセラミック等の非石綿製品に代替されているものや代替が予定されているものがあり、非石綿製品への代替化が可能なものがあると考えられる。しかしながら、極高温の環境下で使用されるもの等一部のものについては、安全確保の観点から石綿の使用が必要とされており、現時点で代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である。

3. ジョイントシート・シール材


(1) 調査結果等

厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、89種類の商品中75種類の商品については石綿の使用を必要とする理由はないと回答、14種類の商品については安全確保のために石綿の使用が必要と回答があった。
代替化が困難なものは、高温用のバルブパッキン、高温の酸化性塩に係る機器に使用するもの、タイヤ加硫材のプレスのラムパッキン、300℃以上の発電用、蒸気ライン用に使用する石綿製品等と回答があった。
一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、17団体のうち9団体から石綿の使用が必要と回答があった。また、それらの団体に属する多くの企業から石綿の使用が必要と回答があった。
代替化が困難なものは、特に、高温、極低温、高圧、極低圧、酸・アルカリ・塩類・有機溶剤・熱煤・可燃性物質・腐食性物質その他有害性物質等のある条件下で使用される石綿製品、ボイラ、圧力容器、焼却炉、発電所、航空機、船舶等に使用される石綿製品と回答があった。
それらの製品の非石綿製品への代替見込時期は、2003年〜2005年頃との回答が多いが、時期未定又は代替不可能との回答も多くあった。
また、化学プラントに使用する石綿製品については、代替化を図る場合には耐久性を十分評価したうえで慎重に実施することが必要、非石綿製品は石綿製品と比べ使用温度や使用流体の範囲に限界があり、耐用年数に関しても問題が残されていることから、代替化の可能性を〜律に判断できず、代替化に当たっては、安全確保の観点より慎重に実績を積み重ねて対応すべき等の意見があった。

(2) 規格・関係法令等

○ 日本工業規格 「JIS R3453 ジョイントシート」
非石綿ジョイントシートへの移行を図る等のため、従来の石綿ジョイントシートの規格が平成13年1月に改正され、性能規定化等が図られている。

○ 日本工業規格「JIS F7102 船舶機関部管系用ガスケット及びパッキン使用基準」
石綿シール材が船舶用シール材としてほとんど使用されなくなったため、平成9年4月に改正され、石綿シール材の使用基準については本規格から削除されている。

ガスケットの種類:
 ◆ 膨張黒鉛渦巻き形ガスケット
 ◆ 非石綿渦巻き形ガスケット ン
 ◆ メタルインサート膨張黒鉛ガスケット
 ◆ 非石綿ジョイントシートガスケット
 ◆ 金属線補強クロスガスケット
 ◆ ガラスクロスガスケット
 ◆ 布入りゴムシートガスケット 等
 パッキンの種類:
 ◆ 膨張黒鉛網組パッキン
 ◆ アスミニウムはく組み合わせパッキン
 ◆ 炭素繊維網組パッキン
 ◆ フッ素樹脂繊維網組 等
液体の種類(蒸気、燃焼排ガス、空気、給水・ボイラ水等、燃料油・潤滑油等、熱媒油)、圧力、温度に応じ使用するガスケット及びパッキンの種類が規定されている。
 
○ 日本工業規格 「JIS F0602 船舶貨物管系用非石綿系ガスケット選定基準」
平成7年6月に非石綿系のものの基準が制定されている。

○ 石油学会規格「配管用ガスケットの基準 JPI-7S-81-96」
配管用のガスケットは、使用流体、圧力、温度、フランジのガスケット座等を考慮して選定することとされており、石綿製品と非石綿製品では下表のとおり使用温度、圧力、厚さが異なる。
 (注:図表はHP掲載時に省略しました)

○ 石油学会規格「石油工業用石綿ジョイントシート JPI-7S-4-1998」
石綿ジョイントシートの寸法、性能、試験方法等を規定している。

○ 石油学会規格「配管用渦巻き形ガスケット JPI-7S-41-1998」
渦巻き形ガスケットの寸法、性能、試験方法等を規定している。

○ 石油学会規格「配管用PTFE被覆ガスケット及びPTFEソリッドガスケット JPI-7S-75-1998」
非石綿製品であるPTFE(四フッ化エチレン樹脂)被覆ガスケット及びPTFEソリッドガスケットの寸法、性能、試験方法等を規定している。

○ 石油学会規格「配管用膨張黒鉛シートガスケット JPI-7S-79-1998」
非石綿製品である膨張黒鉛シートガスケットの寸法、性能、試験方法等を規定している。本規格の適用範囲の解説では、一部の流体(酸化性酸、酸化性塩、ハロゲン化合物等)については、流体の濃度、温度、圧力によっては黒鉛が酸化し、長期的にはシール性に影響を与える場合があるとして使用しない方がよいとされている。

○ SOLAS 条約及び船舶安全法に基づく船舶設備規程においては石綿を含む材料の使用が禁止されているが、「摂氏350℃を超える高温下又は7MPaを超える圧力下で火災若しくは腐食の危険性又は毒性がある液体の循環に使用される水密継手及び内張」についてはその適用が除外されている。

○ 英国の石綿禁止法令においては、次のものは施行時期を猶予されている。
 ● 危険性、侵食性、毒性、可燃性、高可燃性の範疇に入るものに使用される圧縮石綿繊維ガスケット、
 ● 航空機・ヘリコプターの部品で安全運転に必要なもの
 ● 石綿とフェノール・ホルムアルデヒド混合樹脂又はクレオソートとの樹脂製品で、
  □ 回転式真空ポンプ用ベーン
  □ 回転式コンブレッサー用ベーン
  □ ベアリング・ハウジング
  □ 最低直径150mmのスプリットフェースシールで水力発電タービン、化石燃料、原子力発電所の冷却用ポンプからの漏水を防止するもの
 ● 蒸気ボイラのドアを密閉する成形ジョイントで、石綿を含む布で作られたものでゴム又はエラストマーポリマーを透過防止加工したもの

○ フランスの石綿禁止法令においては、次のものは施行時期を猶予されている。
 ● 工業プロセスにおいて高温又は高圧下で火災・腐食・毒性のうち2つのリスクが組み合わさっている場合に流体循環に用いられる密閉パッキン・ジョイント
 ● 航空機用品
 ● 羽根式真空ポンプ、コンプレッサー用品

(3) ヒアリング結果

委員会等において石綿製品のメーカー、ユーザーからヒアリングを行ったところ、次のような意見があった。

● 性能の問題
・ 温度が100℃以上の場合には石綿ジョイントシートガスケットの代替品として膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケット、膨張黒鉛シートガスケットがあるが、取扱い性、シール性、厚さ等の問題がある。代替見込時期は1〜3年後である。
・ タイヤ加硫材のプレスの石綿布入りゴムパッキンについては代替材料がない。
・ 非石綿製品は、石綿製品に比べて耐久性に劣る。
・ 水、蒸気等を対象とし、温度が100〜200℃程度の場合にも非石綿製品への代替化は困難である。
・ 膨張黒鉛テープの酸化防止を図った渦巻き形ガスケットも開発されており、非石綿の渦巻き形ガスケットの使用可能な範囲は広がってきている状況にある。

● 膨張黒鉛の使用の限界に係る問題
・ 酸化性酸(濃硫酸、硝酸、クロム酸、重クロム酸等)、酸化性塩(塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等の腐食性流体の場合に、膨張黒鉛シートガスケット、膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケットは使用できない。
・ 一部のハロゲン及びその化合物(臭素、フッ素、ヨウ素、二酸化塩素等)のガス系流体の場合に、膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケットは使用できない。
・ 黒鉛を使用するパッキンは硝酸ナトリウム等と反応して爆発する危険性があるため、温度が430℃から450℃で硝酸ナトリウム等の酸化性塩に使用するグランドパッキンの代替化は困難でかつ代替時期は未定である。

● 実証試験の必要性の問題
・ ジョイントシート及びガスケット等のシール材については、ほとんどのものが代替可能と考えるが、代替品の使用実績、実証試験が不十分なため代替に時間を要する。
・ 代替品についてユーザーの実機で性能(安全性、耐久性等)が検証されていない製品がありその検証は個別に行う必要がある。
・ 膨張黒鉛を使用するジョイントシートについては、実証試験でその性能が確認できているものは一部しかない。
・ パッキン、シール材については、用途が広く代替の統一的基準を決められない。
・ 化学プラント等に使用するシール材については気密性について高い信頼性を必要とすることから代替化の検討に時間を要する。

● 仕様上の問題
・ 温度が450℃以上の水系流体の場合に、フランジのガスケット座が全面座、平面座等の配管フランジに使用できる非石綿のガスケットがない。
(膨張黒鉛シートガスケット、膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケットは酸化消耗するため使用できない。リングジョイントガスケットは性能的には使用可能であるが、ガスケット座の形状が異なるためそのままでは使用できない。)
・ ガラスライニングフランジは歪みやうねりがあるため、テフロン包みガスケット(石綿ジョイントシートを芯材としてテフロンで被覆したもの)しか使用できず、その代替化は困難であり代替見込時期は1年後である。
・ 石綿製品と代替品では厚さが異なるため、既設の配管のガスケット等の代替化に当たって問題が生じる可能性がある。
・ 膨張黒鉛ジョイントシートは、石綿ジョイントシートに比べ1枚のサイズが小さいため、配管の口径等が大きい場合には何枚かをつないで使う必要があり信頼性が低下する。

● 設備・装置の改造に係る問題
・ 石綿ジョイントシートガスケットを非石綿の渦巻き形ガスケットに変更する場合、最小締付け圧力の増加により、求められるフランジの強度が大きくなることから、設計の見直し、設備・装置の改造等の必要性がある場合がある。
・ バルブの駆動部をシールするためのシール材(グランドパッキン)については、黒鉛系への代替化により摺動抵抗が増加するため、電気駆動の場合、駆動部の改造等が必要になる場合がある。

(4) ジョイントシート、シール材の代替可能性について


@ ジョイントシート・シール材に使用されている石綿製品については、次に示すこと等から代替化が可能なものがあると考えられる。
・ 厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品のメーカーは、89種類のうち14種類の商品についてのみ安全確保のために石綿製品の使用が必要と回答していること
・ 100℃以上の流体の場合に石綿を使ったガスケットが広範に使われていると考えられるが、それに替えて膨張黒鉛シートガスケットや膨張黒鉛テープの渦巻き型ガスケットの使用が可能であると考えられること
・ 膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケットについて、テフロン等を用いて酸化を防止するための改良を行ったガスケットが開発される等、ガスケットに係る技術開発・改良が進展していること
・ 船舶に使用されるガスケット、パッキンについて、非石綿製品への代替化が進展していること
・ 日本工業規格の関連規格において、性能規定化や非石綿製品の基準が示されていること等から代替化が促進されやすくなっていること
・ 外国、特に欧米において代替化が進行していること

A 特に、今後新たに製造される機械・装置や新たに建設される化学プラント等の設備等においては、非石綿製品の使用を前提とした設計とそれに基づく製造・建設等を行うことができる可能性が高いため、石綿製品の代替化は既存の機械・設備等に比較して容易であると考えられる。

B しかしながら、次のように、現時点で非石綿製品への代替化が困難なものがあると考えられる。
・ 主要な代替物である膨張黒鉛を使用したガスケットは、450℃以上の流体や、酸化性酸、酸化性塩等の腐食性流体、一部のハロゲン化合物等のガス系流体、硝酸ナトリウム等の炭素と反応して爆発するおそれがある物質等がある環境下においては使用できない場合があること
・ テフロンガスケットは、高温使用ではクリープを発生しやすいこと
・ 大口径の配管等に使用するガスケットについては、膨張黒鉛シートガスケットを使用する場合、1枚のサイズが小さいため、何枚かをつないで使う必要があり、気密性等についての信頼性が低下する場合があること
・ 可燃性物質、引火性物質、有害性物質等を取り扱う化学プラントや放射性物質を扱う原子力発電所等で、内部の物質が漏洩し火災・爆発、健康障害等の発生の危険性がある等の箇所については、内部の物質の漏れ等について厳しく管理する必要があり、特にそのような箇所で使用される非石綿製品の耐久性等について、実際の機械・設備による検証が済んでいない場合や、同種の設備での検証データがない場合等があること

C さらに、既に製造又は建設され、使用されている機械・装置や化学プラント等の設備等については、次のような問題がある。
・ 代替品の使用により、フランジの締付け圧力や座面の形状、摺動抵抗、厚さ等 が変化し、設備・装置の設計の見直し・改造等の必要性がある場合があること

D これらのことから、ジョイントシート・シール材として使用されている石綿製品については、非石綿製品への代替化が可能なものがあると考えられる。しかしながら、高温の流体、腐食性の流体、ハロゲン化合物等のガス系流体が存在する環境下で使用されるものや内部の物質が漏洩し、火災・爆発・健康障害等の発生の危険性がある等の箇所に使用されるもの等については、安全確保の観点から石綿の使用が必要とされており、現時点で非石綿製品へ代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である。これらを代替化するに当たっては、非石綿製品の開発、非石綿製品の耐久性等の実証や当該製品が使用されている機械・設備等の設計の見直し・改造等に時間を要するものがあると考えられる。

4. その他の石綿製品


(1) 摩擦材


@ 調査結果等

厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品のメーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、石綿製品の使用が必要と回答があった。
代替が困難なものは、クラッチ、ブレーキライニング材との回答があった。これらの製品の非石綿製品への代替見込時期は、2003年頃との回答がある他、時期未定との回答があった。

A ヒアリング結果

委員会等において、石綿製品のメーカー、ユーザーからヒアリングを行ったところ、次のような意見があった。
● エレベータのブレーキについては既に非石綿化されている。エスカレー夕、特に自動運転式のエスカレー夕のブレーキについては、停止頻度が高く摩耗量が多いために石綿製品が使用されているが、2003年中に非石綿製品への代替が可能である。
● クレーンの走行部分やコンベアの制動用に使用されているブレーキについては石綿製品が使用されているが、非石綿製品への代替化は可能である。
● フォークリフトのブレーキは非石綿化が進んでおり、石綿が使用されている機種についても、部品の交換の際に非石綿製品への代替化を予定している。
● 自動車のブレーキについては、業界の非石綿化への自主的取組みにより、平成7年以降の自動車のブレーキは非石綿化されている。
● 鉄道車両のブレーキについては、新造車両のものは既に非石綿化されており、旧来の車両のものについても非石綿化が進んでいる。
● 航空機の滑走用車輪のブレーキについては、石綿は使われていない。
● 原子力発電所の制御棒駆動機構の摩擦材については石綿製品が使われているものがあり、石綿製品を使わない機構の適用を検討中である。
● 代替材としては、ブレーキライニング及びディスクパッドにアラミド繊維、クラッチフェーシングにガラス長繊維が主として用いられている。また、焼結合金が自動車のブレーキに用いられている。

B 規格・関係法令等


日本工業規格においては、「JIS R3455 産業機械用石綿ブレーキライニング」、「JIS D4311 自動車用クラッチフェーシング」、「JIS D4411 自動車用ブレーキライニング及びパッド」で性能等が規定されている。
英国の石綿禁止法令において、車のブレーキライニング、航空機又はヘリコプターの部品で安全運転に必要なものは施行時期が猶予されている。
フランスの石綿禁止法令において、航空機用品は施行時期が猶予されている。
C 石綿製品の代替可能性について
摩擦材については、次に示す理由により、非石綿製品への代替は可能と考えられる。
● 厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品のメーカーからは石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。
● 自動車、鉄道車両、フォークリフト、クレーン・エレベータ・エスカレー夕等産業機械のブレーキについては、既に非石綿化されているか、今後代替化が予定されており、技術的には代替化が可能と考えられること。
石綿を含有するクラッチ、ブレーキライニングは製造の際のみならず、当該製品の使用において摩耗することにより、メンテナンス時等に関係労働者が石綿に曝露されるおそれがあることからも、代替化することが必要である。
(2) 石綿布、石綿糸等
厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品メーカーは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、半製品であるためにユーザー、最終製品メーカーでないと代替可能性等について判断することは困難と回答があった。
また、ヒアリング等の結果、防炎服には現在石綿は用いられていないとの回答があった。
日本工業規格においては、「JIS R3451 石綿布」及び「JIS R3452 石綿組みひも」で性能等が規定されていたが、これらの規格は現在廃止されている。
石綿布、石綿糸等の代替可能性については、それら製品がシール材等として使用されるか、二次的にシール材等に加工されることから、シール材等の代替可能性に連動すると考えられる。

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第6部
代替化の促進について


石綿製品について、今後非石綿製品への代替化を促進するためには、石綿製品メーカーやユーザー及びそれらの団体並びに国がそれぞれの役割を果たすことが期待される。

1. 石綿製品メーカー及びメーカー団体

石綿製品メーカーは、必要に応じ石綿製品ユーザーの協力を得つつ、非石綿製品への代替化を推進するための計画を策定する等により、計画的に、また速やかに、非石綿製品の製造技術の開発・改良、製造方法の変更等を促進し、非石綿製品の生産・供給体制の整備に努めることが重要である。
また、メーカー団体は、団体としての代替化を推進するための計画の策定、共同研究の実施、非石綿製品への代替化の技術情報の提供等の構成企業に対する技術的な支援等により、構成企業における非石綿製品への代替化の促進に努めることが重要である。

2. 石綿製品ユーザー及びユーザー団体

石綿製品ユーザーは、石綿製品の使用状況を把握するとともに、非石綿製品への代替化を推進するための計画を策定する等により、それらの代替可能性を検討し、代替が可能なものについては、当該製品を使用する施設・設備・機器等の建設、製造、設置等の機会又は当該製品の点検、交換等の機会を捉え、計画的に代替化の促進に努めることが重要である。また、現時点で代替化が困難な石綿製品については、石綿製品メーカーの非石綿製品の開発等に必要に応じ協力するとともに、それらの製品が使用されている施設・設備・機器等の設計、施工方法の変更等を検討することにより、代替化の促進に努めることが重要である。
また、ユーザー団体は、構成企業における石綿製品の代替化推進状況を把握し、団体としての代替化を推進するための計画の策定、非石綿製品への代替化の技術情報の提供等により、構成企業における非石綿製品への代替化の促進に努めることが重要である。
なお、非石綿製品は石綿製品と特性等が異なることから、非石綿製品の使用に当たっては、必要に応じその特性等を考慮した施工方法の採用やメンテナンスの実施に配慮する必要がある。

3. 国

国においては、代替可能な石綿製品について禁止措置のための関係法令等を整備ること、必要に応じ非石綿製品の使用を念頭においた規格等の整備を図ること、石綿製品を取り扱う企業及びそれらの業界団体に対し、円滑な代替化推進に向けて、きめ細かな情報提供をはじめとした相談援助・支援を行うことが必要である。
また、石綿製品メーカー及びユーザーにおける代替化推進状況をフォローアップするとともに、石綿及び石綿製品の代替可能性を明らかにすること等により、石綿製品メーカー及びユーザーにおける代替化の促進を図ることが重要である。
さらに、石綿製品メーカーやユーザー及びそれらの団体等に対し、石綿に係る既存の法令の周知・徹底を一層図ることが重要である。


※注意:図表等はHP掲載時に省略しています。詳細は厚生労働省が発表する報告書で御確認ください。

(資料1)
石綿について


1. 石綿の種類
2. 石綿の有害性
石綿粉じんを吸入することにより、主に次のような健康障害を生じるおそれがある。
● 石綿肺
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つである。肺の線維化を起こすものは他の鉱物性粉じん等多くの原因があるが、石綿のばく露によって起きた肺線維症を特に石綿肺として区別している。
● 肺がん
肺胞内に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされている。発がん性の強さは、石綿の種類により異なる他、石綿の太さ、長さにも関与する。
● 悪性中皮腫
肺を取り囲む胸膜や、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜等にできる悪性の腫癌である。


(資料2)
石綿の使用状況

(1)輸入量
日本の石綿輸入量は1960年代より増加し、1974年の35万トンを最高に年間約30万トン前後で推移してきたが、1990年代から年々減少傾向にあり、2001年は7万9千トンとなっている。2002年の輸入量は4万3千トンであり、前年比45%減、ピーク時の88%減となっている。[グラフ省略]
日本への主な輸入元は、カナダ(56.4%)、ジンバブエ(25.8%)、ブラジル(6.9%)である(2002年)。
(2) 石綿品の用途
石綿の使用量のうち 9割以上が建材に使用されており、その他、化学プラント設備用のシール材、摩擦材等の工業製品等に使用されている。


(資料3)
石綿の代替繊維の種類と有害性

(1) 人造鉱物繊維
ガラス、岩石を溶融し、繊維状に加工したもの。
(2) 天然鉱物繊維
天然に産出する繊維状の鉱物。
(3) その他
化学的に合成した繊維、天然の有機繊維等。


注: IARC(国際がん研究機関)の評価について
(1)についてはIARCモノグラフVol.81評価(2001年10月)
(2),(3)についてはVol.79 までの評価

【評価カテゴリー】
グループ1 :「ヒトに対して発がん性がある」
グループ2A:「ヒトに対しておそらく発ガン性がある」
グループ2B:「ヒトに対して発がん性の可能性がある」
グループ3 :「ヒトに対する発がん性については分類できない」
グループ4 :「ヒトに対しておそらく発がん性がない」
注2:石綿は全ての種類についてグループ1



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