大森さん(東京電力の変電所で保守点検、清掃作業に従事。悪性胸膜中皮腫) | ||
被害者の声 目次 |
大森華恵子さん 美華子さん 埼玉在住の大森華恵子です。 夫大森は、東京電力の変電所内の保守・点検及び清掃の仕事を週3日、一日3〜4ヶ所まわって働いていました。 室内は暑く、埃とアスベストがひどい環境の中、マスクもしないで働いていたそうです。1997年9月初め、咳と痰がひどいので風邪だと思い病院に行き診察してもらいました。レントゲンの結果肺に胸水が溜まっているということで末期の肺ガンで余命3ヶ月といきなり診断されました。 11月27日地域ガンセンターに移り再検査の結果、アスベストによるびまん性悪性胸膜中皮腫という聞いたこともない診断名を担当の先生に告知されました。そしてこの病気は労災認定が認められる病気なのだという事を教えていただきました。12月22日大学付属医療センターに移り、平成10年1月7日、「胸腔鏡下胸膜生検」を行い病名が確定されました。 1月23日びまん性悪性胸膜中皮腫の手術を行ないました。左肺と胸膜を摘出し、心膜の一部も切除しました。手術は成功しましたが術後は体調が思わしくなく、食欲もありませんでした。肺を摘出した為に胃が上に持ち上げられてしまい、「く」の字に曲がってしまったからです。それと肺を摘出した時に肋骨を2本抜いてワイヤーで繋いだそうです。 「まるでロボットのような体になってしまった。」と主人は言っていました。苦しさで夜も眠る事が出来ず、「もしも窓が開くなら、飛び込んで死にたい。」と言っていました。それ程大変な、手術後も大変な病気です。そして3月9日夜、嘔吐した異物が右肺に入り様態が急変し、3月25日急性間質性肺炎になり、26日亡くなりました。 私は亡くなったと思っていません。国と企業に殺されたと思っています。あと会社の対応について話させていただきます。12月中頃、労災認定される病気だということで、主人が会社に電話した時に、「労災にするのは大変なので労災にしないで欲しい。」という事を言われました。それで主人は、「会社に迷惑をかけるので労災にしないように」という事だったのですが、その後の会社側の対応の悪さが色々あったので、2月頃労災を申請しました。会社側からの協力・理解がないままに労災申請をしたので、大変な思いをしました。 労災認定に2年かかりなかなか東京電力の現場には、はいってもらえませんでした。私どもが調べて欲しいという粉塵のひどい変電所は調査してもらえず、調査したのは既にきれいに直してしまった変電所ばかりでした。東京電力の指導の下に調査が行われたらしいです。また、東京電力や下請業者に対して国が指導して欲しい。変電所内施設に今なお吹付アスベストが、ボロボロになったアスベストの状況を調査し、安全確保とアスベストばくろの防止対策を確定するよう指導して欲しいと思います。あと娘に話してもらいます。 大森美華子さん: 娘の大森美華子です。 労災を通すにあたって父の死後、東京労働安全衛生センターを知り、相談と協力を求めました。東京労働安全衛生センターを通じ、アメリカの胸膜中皮腫の世界的権威である鈴木先生という方に、お父さんの肺の組織の残っているものを送って鑑定して頂いたんです。それが結局労災認定に大きな決定的な証拠になりました。日本ではそのような専門的医療機関が少ないんです。 相談に行く場所も生前は知らなかったし、キチンと診てくれる先生もあまりいないし、そういったことでものすごく精神的に辛かったんですね。最初に病院に行ってから正確な診断がでるまでに2ヶ月かかってしまいました。手術後も容体が悪く退院する事もなく亡くなってしまったので、父本人の口から現場での作業内容等詳しい事を労働基準局へ行って話す機会を失ってしまいました。 日本でも専門的診断のできる先生なり医療機関を各地にキチンと作っていただきたいと思います。実際最初に肺ガンと誤診されてしまったんですが、その後地域ガンセンターで悪性胸膜中皮腫と分かったので労災認定までたどり着くことができたんですが、うちの場合は本当に不幸中の幸いだったと思います。ただの肺ガンだとか、違った病気として扱われて処理されている方はたくさんいると思うんですよ。 実際には悪性胸膜中皮腫やアスベストで亡くなっている方はもっとたくさんいるはずです。今あがっている数字だけでなくて、実際は診断がつかずに処理されている方はもっとたくさんいると思うので、本当に危機感をもって考えていただきたいです。アスベストを輸入するしない、使用するしないという問題は人の命に関わっている問題だという事を本当に分かっていただきたいです。これ以上、父と同じ様な被害者を増やさないために、一日も早くアスベスト全面禁止をしてほしいと思います。 |
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