2002.1.5

安全センター情報


2001年8月号




マレーシアにおけるアスベスト禁止キャンペーン


ペナン消費者協会, 2001.4.26-5.6


前号で2月に開催されたインド労働衛生学会の会議に参加したマレーシアの医師が、マレーシアでは年内にもアスベストを禁止するだろうと発言していることを紹介した。

その後、4月26日-5月6日にかけて、マレーシアのペナン消費者協会が、アスベスト禁止キャンペーンの一環として、インド労働衛生学会の会長だったジョシ医師と同会議でも報告したアメリカのバリー・キャッスルマン氏を招いている。この間に、精力的に関係政府機関への働きかけや多彩な集会などが開かれたようだ。届けられたレポートから、概要を紹介する。

× × ×

マレーシアでは、1986年に、クロシドライト(青石綿)の輸入が禁止された。アスベスト処理規則が、それ以外の種類のアスベストに係る作業の「管理」状況を扱っており、曝露限界、よい維持管理、個人保護機器、排気設備、医学的モニタリング、個人曝露モニタリング、衛生設備、教育訓練、記録の保存、およびアスベスト処理区域内の喫煙禁止を規定している。これによって、マレーシアは1986年に世界労働機関(ILO)石綿条約を批准した。

1986年から1988年にかけて、アスベストを含む17の管理物質について、関係機関の間での協議が行われた。この時は、アスベストの用途が減少し、多数のアスベスト関連産業の(企業)が閉鎖するか、代替物質を使用するようになっていると報告されたという。

保健省と科学技術環境省は、アスベストがどこで使用されており、そうした製品の使用を中止するために何ができるかについて話し合いをもった。

貿易産業省は、アスベスト禁止が産業界全体にいかに影響を及ぼす可能性があるかを調査する中心となる機関であった。当時の時点における合意は、クロシドライトを禁止することだけであり、その他の種類のアスベストについては何の決定もなされなかった。それ以来、大きな用途向けのアスベスト使用の傾向が下落を示すにつれて、その他の種類のアスベストの禁止に関連しては何もなされてこなかった。

なお、政府建築物および公共建設工事におけるアスベスト使用は段階的に禁止され、その後は(5年前から?)建築材料へのアスベストの使用は中止されているとのことである。

アスベスト研究所(カナダ)によると、マレーシアは、1995年の時点で年間21,000トンのアスベストを消費しており、世界第16位である(日本は195,000トンで、ロシア、中国に次いで世界第3位)。

以下に関係行政機関の対応の要点を紹介する(順番は話し合いが行われた順)。

● 科学技術環境省環境局

廃棄物対策部、基準計画策定担当が対応。

環境局は1989年、アスベストを含めた有害廃棄物の処理に関する新たな規則を公示した。マレーシアには、アスベスト廃棄物とスラッジのための免許を受けた指定処分施設がある。

環境局は、公衆衛生と環境の防護を支援しており、直接の任務は、アスベスト廃棄物の適正な処理である。環境局の目的は、予防、管理および汚染を排除することにある。また、環境局としては、他の諸国と同水準にいることを望んでおり、したがって、アスベスト禁止に何の支障もない(ただし、決定権は上級機関にあるとのこと。貿易産業省に働きかけたほうがいという示唆もあったようだ)。

● 労働安全衛生局(DOSH)

人的資源省、局長と副局長が対応。

労働安全衛生局は1994年に設立され、働く人々の安全と健康、福祉を一層追及し、労働に関連した安全健康リスクからその他の者を防護するための規定を定める労働安全衛生法(OSHA)も制定された。

以前は、工場・機械法の対象範囲はごくわずかな産業に限定されていた。労働安全衛生法は実際ほとんどの職業を対象としているが、まだもれている仕事もいくらかある。労働安全衛生法は、実行可能である限り労働者の安全、健康、福祉を確保しなければならないというすべての使用者および自営業者の一般的義務を規定している。

労働安全衛生局は、同法を補足するガイドラインを策定している。ある意味では、法およびガイドラインは使用者に、危険有害要因を管理する方法に関しての柔軟性を与えている。規則は以前のように規範的なものではなく、使用者に技術を改善する余地を与えようとするものである。

労働安全衛生法は労働安全衛生局にすべての工場の巡視を義務づけている。巡視する前には使用者に通知される。突然の巡視や抜き打ち検査をすることもある。とくに建設業に対して巡視を行っている。

労働安全衛生局には合計510名の職員がおり、そのうち372名が技術分野の者である。定員にはまだ25%不足している。最適な職員数は700名である。最近政府は、農業、漁業、林業の分野の訓練を受けた職員71名を増員することを承認した。

ペナン消費者協会は、アスベスト曝露に関連した疾病―すなわち石綿肺、中皮腫、肺がんの把握率の問題を指摘した。一般開業医に対する業務に関連した疾病を見極める訓練が欠如しているという問題もある。企業に雇われている認定医(panel doctor[日本の労災指定医療機関のようなもので企業に雇われているわけではない])は、業務に関連した疾病を政府に通知しようとしない。そうすれば雇用契約を打ち切られることになるからだ。

労働安全衛生局長は、一定の目的のためにある物質の使用を禁止する権限をもっている。労働安全衛生局は、アスベスト含有物質に関わる作業や解体・改修時にとられるべき適切な手段に関する実践コードやガイドライン、規則を策定するための委員会を設置していた。

ペナン消費者協会の要請のフォローアップとして、保健大臣は、アスベストを禁止することに関する労働安全衛生局の見解を求めることになるだろう。そうなれば、アスベストの発がん性とその有害性についての見解を答えることになるだろうと、局長は言った。

● 住宅・地方自治省地方自治局

副局長が対応。政府の建物等の建築計画では、アスベストを使用しないことを明記している。これは5年前に導入された。政府および公共建築物の建築については、標準契約仕様書によって指定されている。アスベスト禁止に関するこの会合のレポートをまとめ、上部に報告する。

● 建設産業開発評議会(CIDB)

技術開発部の上級管理者が対応したが、建設企業のISO14000認証の取得にともなって、安全な製品の使用という面にも注意が払われるようになるだろうなどという話をした。

最終的には、CIDBはアスベストの全面禁止を勧告できるかもしれない、また、安全に関するセミナーを実施し、もし必要なら、アスベストの危険性について地方巡業も行うと述べた。

● 貿易産業省(MITI)

産業政策部、貿易促進部、有害産業・環境ユニットが対応。

産業政策部のスタッフは、どこかの政府機関がアスベスト禁止を率先しなければならない。政府がアスベスト禁止を決定したら、国際貿易産業省はその手順を提案しよう。アスベスト禁止と貿易や産業の関わり合いについて調査しなければならないだろう。問題のひとつは、代替品を使用した場合のコストである、と述べた。

また、国際貿易産業省は国内通商・消費者問題省と、国内におけるアスベスト製品の販売について話してみるとも語った。この問題に関するレポートが大臣に届けられることになるだろう。

● 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)

NIOSH、DOSH、保健省、SOCSO(労災補償の実施機関のようである)、コンサルタント、Muda Holdings等の民間企業の代表ら約50名が参加した討論会になったようだ。

ここで、バリー・キャッスルマンは、(たぶん顔ぶれを意識しながら)アスベスト禁止の導入と合わせて、以下のような提案を行っている。

・ 政府によるアスベストの輸入および使用の実態の把握
・ 政府・使用者による労働者防護措置の保証
・ 労働者に対する定期的な健康診断
・ 退職後のフォローアップも重要
・ アスベスト疾患診断基準の確立
・ 労災認定制度の改善
・ 医療関係者への包括的トレーニング
・ 中皮腫登録(病理診断・分析、患者訪問・曝露歴聴取)

● フォーラム「アスベスト: 殺人粉じん」

輸送機器関連産業労働組合、非金属労働組合、建設労働組合および政府、医療関係者、NGOなど約70名が参加。

バリー・キャッスルマンとジョシ医師が各々、アスベストおよびその他の労働衛生問題について話した。質疑は非常に刺激的だった。

建設労働組合の代表は、1991年以来すべての種類のアスベストを禁止することを要求してきたが、政府はアスベスト関連の健康問題にはあまり大きな関心を払ってこなかった。アスベスト関連疾患を監視するための中皮腫あるいはがん登録がないことも問題だ。労働組合はこれまで温熱手当や粉じん手当を獲得するために闘ってきたが、手当を要求するのはやめて、職場から危険有害要因をなくすことを要求しようと訴えた。

非金属労働組合の代表は、アスベスト製品を製造してきたUAC、Hume、Malex社におよそ800人の労働者が働いていたと思われる。自分自身、1976-1998年の22年間Hume社で働いてきたが、同社は1960年代に操業を開始し、1998年に閉鎖された。アスベスト工場の操業を中止するだけでは不十分であり、すでにアスベストに曝露した労働者が多数いる。1999-2001年の間にHumeの6名の元労働者ががんで死亡した。この労働者たちは、1996年に禁止されるまで、何の規制も防護措置もないまま直接クロシドライトに曝露してきた。Humeには134名の労働者がいたが、元労働者に対する定期的健康診断が必要だ。UACはノン・アスベスト製品に転換しようとしているが、600人の労働者が働いている。操業を継続しているMalexの労働者は、今もアスベストに曝露している(別の労働者からは、Malexはシリカに代替するかもしれないが、シリカの危険性は?という質問もあった)。これらの工場のすべての労働者の将来はどうなるのか、などという発言もあった。

労働安全衛生局/保健省のあるスタッフは、保健省では、アスベスト関連産業の元労働者を追跡しようとしてきたが、うまくいっていないと述べ、Hume社の元労働者が同社の名簿をもっているので提供すると応答。

別の労働安全衛生局のスタッフは、同局はアスベスト問題に関心をもっており、すべての部門、労働者、労働組合、使用者との安全衛生に関連した問題についての対話をこばんでいない。すでに労働安全衛生局長が白アスベスト禁止の可能性に関心をもっていることを明らかにしており、同局は規則を提案するつもりである。そこには、アスベスト産業労働者の医学的サーヴェイランスの義務づけも盛り込まれるだろう、とのこと。

ペナン消費者協会のスタッフは、現行の社会保障法のもとでは、労働者は企業/使用者を訴えることができない。SOCSOは労働者に補償を提供しているが、離職してから60日の期間以後は、労働者が以前の仕事に関連した疾病に罹患したとしても、補償を受けることができないと聞いている(発言者自身このことは確認が必要としているが)。喫煙者で肺がんになった場合には補償が受けられないかもしれないと警告もされている。

全体的に、このフォーラムは、アスベスト問題について、労働者と関係政府当局者とが対話する機会になった。これをフォローアップすることが労働者の利益になり、また、アスベスト禁止導入に向けた政府の関与が高まることを期待したい。

● ペナンでの取り組み

以上はクアラルンプールにおける主な取り組みだが、ペナン消費者協会があるペナンでも、同事務所のセミナー・ホールでの集会や卒後研修医・医師との昼食討論会、Sains Malaysia大学内に設置された国立毒物センターでの会合等々、様々な取り組みが行われている。

バリーらは各種メディアの取材も受け、テレビ局RTMが5月13日夜の30分間のグローバル・トークショーで取り上げ、また、シンガポール・ニュース・ラジオもマレーシアにおけるアスベスト禁止を求める取り組みについて放送したとのことである。

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再び国際アスベスト・スキャンダル
Support Fernanda Giannasi, Brasil, 2001.6.20


アスベスト研究所(AI、カナダ)は、ブラジルの労働/安全衛生監督官でアスベスト・キャンペーン活動家でもあるフェルナンダ・ギアナジを労働省から解雇させようと努力している。後掲の、バリー・キャッスルマンがこの問題の背景事情を説明したメモにあるように、ブラジル労働省宛てのアスベスト研究所の手紙には、フェルナンダを沈黙させるために「必要な措置をとるよう」要求している。

このような産業界によるいじめ、いやがらせに抗議の声を上げることが重要である。

× × ×

アスベスト研究所(AI)が、フェルナンダ・ギアナジのブラジル市民としての職を困らせる抗議をはじめた。

フェルナンダは、インド労働衛生学会でアスベスト禁止に関するパネルを開催することに対して圧力・妨害を受けているインドのDrジョシを支援する在ブラジル・インド大使館宛ての手紙に署名した。この手紙は、ブラジル・アスベスト被災者団体のレターへッドのついたものだった。サインの下に、彼女は、他の関連事項とともに自分が政府の技術者で監督官であると書いた。明らかに、労働省の公式見解ではなかったわけである。

WTO(世界貿易機関)に対する提訴の失敗、また、アスベストを禁止した州がブラジルの歴史的市場の過半数を占めるに至っているにもかかわらず、カナダのアスベスト関係者たちは、こりもせずにまた、ブラジルの公衆衛生労働者に対する迫害を続けているということに注目していただきたい。

アスベスト研究所の手紙は、次のように言っている。「もしこの人物がアスベスト関連問題に関するスポークスマンとして、貴省から公式に権限を与えられているのだとしたら、ブラジル政府の公式な立場に反するのではないかと危惧している。ブラジル産のクリソタイルを外国の客に買ってもらうようにすることも、ヨーロッパの例にまねてこの物質に使用を禁止することも、どちらも彼女の職務の一部なのだろうか? そうではないとしたら、われわれは慎んで、フェルナンダ女史が彼女の個人的な活動を進めるのに、専門家としての責任をこれ以上悪用しないように、必要な措置をとることを求めるものである」。

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ブラジル議会へのアスベスト研究所の意見書

Asbestos Institute, Canada, 2001.5.21


※ 以下は、前掲記事にも登場するカナダのアスベスト研究所(AI)がブラジル連邦議会に宛てた手紙の抄訳である。

アスベスト研究所の理事会を代表して、まず最初に、委員会に対してアスベストの使用に関するわれわれの立場を表明する機会を与えていただいたことに感謝したい。アメリカ大陸におけるクリソタイルの主要な生産者として、また、この鉱物資源の管理使用における世界のリーダーとして、カナダとブラジルは、共有すべき多くの共通の関心と経験を有している。

両国には、われわれが極端な手段であると考えている、純然かつ単純な禁止に反対するものとして、厳格な規制の枠組みのもとでクリソタイル・アスベストの使用を認めるというわれわれの政府がとっている立場に対する抗議が存在している。われわれは、クリソタイル産業を安全な作業環境にするための貴国政府の継続的な努力が、すべてのブラジルの労働者と国民のために続行されるべきであることを明らかにしたい。

しかし、最初に、皆様方の何人かはご存知の、われわれの組織について説明すべきであろう。アスベスト研究所は、1984年に設立された非営利団体(NPO)である。産業界、労働組合、政府関係の代表からなる理事会を有している。その主要な役割は、世界中でクリソタイル・アスベストの安全使用のための規則、基準、作業方法や適切な技術の採用と実行を促進し、また、クリソタイルを使用している諸国において世界労働機関(ILO)第162号条約の履行を支援することにある。

ご参考までに、カナダのアスベスト産業は、ケベック州南部のセットフォードマインズとアスベスト[どちらも地名]の2つの地域で1,500名をこす人々に直接の雇用を提供している。カナダのクリソタイルの輸出は、60か国以上に、毎年、約32万トン、総額1億5千万USドルである。

(以下、途中見出しのみ紹介)

1. 問題
2. クリソタイルの安全使用
・ 管理使用:神話か現実か?
3. 代替製品
・ 健康問題
・ クリソタイルなしのアスベスト・セメント
・ ブレーキ用代替品の信頼性と性能
・ ジョイントのクリソタイルの代替化
4. 禁止運動の背後にある動機
結 論

クリソタイル・アスベストは、広範囲にわたる、たしかに潜在的な危険性をもつ天然あるいは合成製品のなかのひとつである。多数の重金属、混合物と有機溶剤、放射性物質や汚染ガスが、日夜使用されており、それらを完全に禁止すると考えることですら不可能である。労働条件を規制してそれらの製品を使用し、予防に焦点を合わせ、労働者に適切な教育訓練を提供することは可能である。これが、管理使用の定義である。まさにクリソタイル・アスベストに関して、何十年間も行われてきていることである。

豊かな国々は、クリソタイルの禁止を支持ないしそのイメージを貶めることに、大きな金銭的利害をもっている。それどころか、クリソタイル・アスベスト代替製品の製造工場は、主に裕福な諸国にあるのである。これらの裕福な諸国はまた、過去長期にわたってアスベストの使用によって富を築きあげた有力な多国籍企業が存在する国々でもある。今日それらは、禁止のために闘っており、また、人々にとってよりよいと言われている他の製品を売り出してもいるのである。災いをもたらした歳月は背後におしやってしまっている。法外な粉じんまみれの作業環境に労働者がさらされ、肺の中に吸入されることになる残留繊維で大気中が満たされた、恐るべき状況のもとで何千人もの人々を働かせてきた企業と同じ企業なのである。これが、何年もたってから、今なお肺疾患や肺がんに罹患する労働者を目の当たりにしている理由なのである。われわれは皆、これらの同じ労働者たちが、アンフィボール系(とりわけクロシドライト)と呼ばれる一層有害な、クリソタイル以外のあらゆる種類の繊維に曝露していたことを知っている。われわれには、数十年前に実際に何が起こったのかを黙って見過ごす権利はない。現在、物事はすっかり変わってしまっている。われわれは、クリソタイル・アスベストは効果的に管理でき、これが実施される場合には健康リスクは検出できないレベルのものであることを知っている。

われわれの見解では、これらの企業のゲームに付き合い、彼らにブラジルの建設・自動車産業にとって何がベストかを選択するのを許すことは、ブラジルにとって重大な過ちである。危険な前例をつくることにもなる。国際的―とりわけヨーロッパにおける―状況に関してわれわれの理解するところは、わが産業はこうした動きの被害者であるだけでなく、なお悪いことにこの傾向はまだ終わりそうにないと信じさせるものである。鉱物物質についてみるかぎり、われわれの経済におけるアスベスト以外の重要な部門についての最近の訴訟は言うまでもなく、鉛、ニッケル、銅やアルミニウムに関連した健康リスクに関する人騒がせな宣告をしばしば耳にする。企業は、化石燃料を使用することの長所と短所をよく理解している。何千人もの交通事故の犠牲者と自動車利用者の健康に対する影響の重大性(付録II参照)にもかかわらず、自動車を禁止しようと考える人々はわずかである。

ほとんどの場合、禁止は危険と無責任からの逃げ道となりうると信じることは、あながち間違いではない。代替物質の方を選んで使用することの影響を考慮することなしに、すべての種類の使用を禁止することは、われわれを袋小路に追い込むことになる。これは容易に安全に関する間違った認識をもたらすだろう。単純に製品を禁止することが安全を保障するというのは真実ではない。物事をそのように眺めることは深刻かつ重大な誤りである。

議員諸氏、皆様の配慮に感謝するとともに、実りある議論が行われ、よい結論が得られることを記念いたします。

付録1 今日のアメリカ合衆国におけるアスベストをめぐる状況
付録2 BBC健康ニュース―「排気ガスは自動車事故よりも人を殺す」(1999.6.15)
※ 原文は、http://www.asbestos-institute.ca/main.htmlで入手できる。
*****

欧州アスベスト・セミナーの決議

European Asbestos Seminar, Brussels, 2001.6.7-8


● 序 文

欧州連合(EU)が2005年までにすべての種類のアスベストの使用を禁止する指令を採択したとはいうものの、科学者たちは、今後30年間におけるアスベスト関連の死者の合計は西ヨーロッパだけで50万人を超えると予測している。アスベストに曝露する原因は圧倒的に職業上なものである。しかし、環境上の曝露源によるアスベスト関連死亡もかなりのものになる可能性がある。増大するアスベスト被災者の数を考慮して、欧州議会において2001年6月7-8日に開催された欧州アスベスト・セミナーの参加者は、欧州委員会、欧州議会および加盟諸国の政府に対して、以下の勧告をしたい。

● 予防戦略

・ 職業上・環境上のアスベスト曝露源の確認、それらの曝露源の目録編纂作業に対する現実的・財政的援助の提供のための、地域、国および国際レベルのネットワークの支援

・ リスクにさらされている人々に対する、アスベストとアスベスト製品の存在および危険性に関する正確な情報の提供
・ 廃棄物のアスベスト濃度(含有率)に関して現行の許容できるレベルを引き上げようとする提案の拒絶
・ アスベスト含有廃棄物の処理技術の開発および実行
・ 現行指令で塩素製造設備へのアスベストの使用継続が許されているような、現在および将来におけるアスベスト使用の例外の拒絶

● 被災者の権利

・ 職業上・環境上曝露によるアスベスト関連疾患の同定および補償の基準の整合化
・ アスベスト関連疾患に対する法的(補償)責任に関する各国の法令の相違の調査

● 新たな調査研究の優先順位

・ 被災者に効果的な医学的治療と補償を提供するための、曝露人口の医学的サーヴェイランスの実施
・ アスベスト関連疾患に対する効果的な診断および治療上のアプローチの開発
・ アスベスト関連疾患の現状の監視および疫学的予測の継続的最新化
・ 臨床上の調査研究の、アスベスト関連疾患の被災者とその家族に対する人間的・社会的費用に関する調査への統合

● 二重基準(ダブル・スタンダード)

・ EU以外の諸国におけるEUの企業とその子会社の活動の監視、ヨーロッパのアスベスト規則を侵害する企業行動の確認および告発
・ EU企業がEUの労働者、住民と環境をアスベストに曝露させることが有罪であり続けるようにするための法令の策定と執行、加盟諸国の拠出による基金によって保証される補償水準の設定
・ 欧州指令の線に沿ってILO第162号条約やクリソタイル(に関する環境保健)クライテリアNo.203等のアスベスト関連基準を最新化するようILO(世界労働機関)・WHO(世界保健機関)を促進

● 結 論

セミナーは、アスベスト被災者の苦境を改善するうえでのアスベスト被災者団体の重要な役割を認め、国連の慣行同様、被災者団体、この分野で活動するその他の社会団体やNGOとの協力を強く勧める。われわれは、アスベスト被災者の状況を改善するためのプロジェクトに対する財政的支援の必要性と緊急性を強調するものである。

多くの東ヨーロッパ諸国がアスベストの無規制かつ継続的使用に関連した諸問題をかかえていることは明らかである。われわれは、このような問題の広がりを評価するための具体的手順をとるべきことを強く勧告する。

確立された市場経済の外部では、アスベスト曝露は深刻な職業上・環境上のハザードである。この観測は、セミナーに参加したインドとブラジルの代表によって確認された。「安全な閾値」は存在しないのであり、アスベストへのいかなる曝露/接触もがんを含む致死的な肺疾患を引き起こす可能性がある。開発途上諸国のアスベスト市場を拡大しようとする努力が、世界のアスベスト産業によって強められている。アスベストをまだ禁止していない諸国に対して、アスベストの危険性とより安全な代替品の入手可能性に関する客観的な科学的情報を提供するために可能なあらゆる努力がなされることが必要である。加えて、アスベスト使用と製品の過去および現在の量の調査が実施され、その情報が「リスクのある」すべての人々に周知されなければならない。

まだアスベストを禁止していないEU諸国―ルクセンブルグ、ギリシャ、スペイン、ポーランド、ポルトガル―は速やかに実施すべきである。
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