2002.1.5

安全センター情報


2001年7月号




職場関係大臣がアスベスト禁止に同意

ACTU, Australia, 2001.5.22


ACTU(オーストラリア労働組合総評議会)は、アスベスト・クライシスのなかで重要なブレークスルーをかちとった。オーストラリア連邦職場関係大臣評議会が、先週金曜日(5月18日)に、原料アスベストおよびアスベスト含有物質の輸入禁止を決定したのである。

禁止措置は、2003年までに実施される。また、この決定は、最も発生率の高い職業病のひとつであるアスベスト関連疾患の発生状況の把握をハワード政権が怠ってきたことに焦点を当てた、4月28日の第6回国際被災労働者追悼の日のキャンペーンを受けたものでもあった。

「(職場関係大臣)アボットは1,500トンの原料(クリソタイル)アスベストと100万のアスベスト含有製品の輸入についていかなる措置を講ずることも拒否してきたが、オーストラリアは、2020年までにアスベスト関連疾患によって56,000人の人々が死亡すると予測されるという事態に直面している」とACTU事務局長グレッグ・コンベットは言う。

「彼がわれわれの警告に耳を貸したことは歓迎するが、職場におけるこの致死的な物質への曝露によって多くの労働者がアスベスト関連疾患によって死亡していることは悲しむべきことである。」

4月27日に行われたデモ行進において、コンベットは、アスベストを根絶・管理していくための5つの提案のあらましを示した。

@ 原料アスベストおよびアスベスト含有製品の輸入および国内生産の禁止
A アスベストに汚染された建築物の公的な登録制度の確立
B 既存のアスベストの除去の促進
C アスベスト被災者へのよりよいケアの確保
D 地球規模におけるアスベスト禁止の実現

「最初のステップを実現できたとは言え、アボット氏には、アスベストのない社会を確実にするための長い道のりが残されている。」

今回の決定は、1999年に制定されたヨーロッパにおけるアスベスト禁止の流れにオーストラリアを導いたことになる。ヨーロッパで製造され、オーストラリアに輸入されるすべての自動車には、ブレーキやクラッチライニングにアスベストが含まれていてはならない。これまでは、いったんオーストラリアに来た自動車は、アスベスト含有製品を使った部品に取り替えることが認められていた。
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オーストラリア連邦、州、準州、ニュージーランド
職場関係大臣の共同コミュニケ


Joint Communique from Australia and New Zealand WRMC, 2001.5.21


2001年5月18日、職場関係大臣評議会(WRMC)がシドニーで会合を持った。(オーストラリア)連邦、州、準州、ニュージーランドの各大臣および代表は、以下のことを含む広範囲にわたる職場関係の重要な進展について討議した。(中略)

● 労働安全衛生・労災補償

評議会は、2003年12月までには達成されるべき、オーストラリアにおけるクリソタイルおよび他の種類のアスベストの輸入および使用の禁止の義務づけに向けて、共同して取り組むことに同意した。諸大臣は、全国労働安全衛生委員会(NOHSC)がパブリック・コメント手続の結果にハイライトをあてた報告書を要求していることに留意した。

評議会はまた、(トニー)アボット(連邦雇用・職場関係・中小企業)大臣が、クリソタイル・アスベストのオーストラリアへの輸入禁止を実施するための手順を開始していることにも留意した。

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クリソタイル使用禁止の提案に関する
パブリック・コメント募集


NOHSC Media Release, Australia, 2001.3.14


全国労働安全衛生委員会(NOHSC)は、本日(3月14日)、「オーストラリアにおけるクリソタイル・アスベストの使用の禁止に関する提案」についての協議用文書を発表した。クリソタイルはよく知られたヒトに対する発がん物質である。この提案の目的は、将来のクリソタイル繊維曝露による死亡および疾病を減少させ、また、この減少を効率的かつ効果的な方法で保証することにある。

協議用文書は、使用禁止に関連した諸問題を提示している。それには、禁止措置が段階的に導入されなければならない期間、アスベスト及びアスベスト関連製品の輸入禁止、輸送用機器用途への使用との関係、法令による禁止に代わる代替案を含んでいる。

本提案および協議用文書で記述された諸問題に関するコメントは、Eメールで、2001年6月12日まで募集される。

NOHSCは、提出されたすべてのコメントを検討し、2001年末までに職場関係大臣評議会(WRMC)に最終勧告を提出する予定である。WRMCの決定の実施は、各州・準州政府の問題になるだろう。

現時点において、クリソタイルの2003年末までの段階的禁止を支持する意志表明(Statement of Intent)には、ヴィクトリア、ニューサウスウェールズ、クイーンズランド、ウェスタンオーストラリアおよびタスマニアの各州政府が署名している。

協議用文書は、以下の補助文書によって支持されている。
・ 「オーストラリアにおいてクリソタイル・アスベストを段階的に禁止した場合における代替物質に関する技術的アセスメント」(PDF 455K)
・ 「オーストラリアにおいてクリソタイル・アスベストを段階的に禁止した場合における代替物質に関する健康アセスメント」(PDF 576K)
・ 「提案されたオーストラリアにけるクリソタイル・アスベスト段階的禁止の初期の経済的インパクトに関するアセスメント」(PDF 446K)

協議用文書・補助文書は、NOHSCのウエブサイト http://www.nohsc.gov.au/whatsnew_index.htm で入手できる。
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協議用文書:
オーストラリアにおけるクリソタイル・アスベストの使用の禁止に関する提案




● はじめに

1. 全国労働安全衛生委員会(NOSHC)は、特定の用途向けのクリソタイル・アスベストの禁止を、職場有害物質管理に関する全国モデル規則[NOHSC: 1005(1994)]別表2に含めるべきことを提案する。

2. 1985年全国労働安全衛生委員会法(Cwth)第38(4)条にしたがって、この禁止提案に関するパブリック・コメントが募集されるべきである。

● 背 景

3. クリソタイルは既知のヒトに対する発がん物質であり、連邦政府、州および準州によって制定された有害物質法令のもとで職場において規制されている。規制は、管理手段、表示(ラベリング)、物質安全データシート(MSDS)、曝露基準、分類および健康サーヴェイランスなどの問題/要求事項を扱ったNOHSC有害物質モデル規則に基づいている。

4. 1999年2月、全国産業用化学物質通知・評価計画(NICNAS)は、クリソタイル・アスベストに関するフルパブリック・レポート既存化学物質優先順位(PEC)No.9を発行した。これは、輸出目的の製造を含むオーストラリアにおけるクリソタイルの使用は、関連する規制当局によって決定される段階的期限付きで、将来に向けて禁止されるべきであると勧告した(PECレポートの勧告1)。

5. この勧告は、クリソタイル・アスベストの使用に関する国際的な動向と一致している。1999年7月27日に欧州委員会は、2005年1月1日までに、現行の禁止措置をアスベスト・セメント製品、摩擦材製品(ブレーキおよびクラッチ・ライニング)、シール材およびガスケットにまで拡張することに合意した。唯一の例外措置は、一定の塩素プラント向けのダイヤフラム(隔膜)へのクリソタイルの使用の継続である。

6. イギリスは、この動きを受けて1999年8月に、3か月以内にクリソタイルのほとんどすべての使用を禁止すると発表した。特に危険な状況のもとで使用されるガスケットや高温下で使用される衣服の製造へのクリソタイルの使用などの、いくつかの用途について、限定された期間のみ、使用の継続が認められた。すべての例外措置が、欧州委員会が設定したデッドラインである2005年以前に見直されることになっている。

● クリソタイル・アスベスト使用禁止の提案

7. 提案する別表2への挿入文は以下のとおりである。

クリソタイル・アスベスト[ケミカル・アブストラクト(CAS)No. 12001-29-5]は、交換が必要な場合のクリソタイル・アスベスト製品の交換を含めて、すべての使用を禁止する。ただし、真実の研究または分析あるいは既存の建材に含有されている場合は除く。

本禁止措置は、除去またはクリソタイル製品をしかるべきものに交換することには適用されない。

本提案の目的は、現在および将来の、クリソタイル・アスベスト製品へのクリソタイル・アスベストの輸入、製造および加工によるクリソタイル繊維への曝露による将来の死亡および疾病を減少させ、また、この減少を適切な期限内に費用効果がある方法で保証することにある。

● 使用禁止を達成するための手段

8. 職場有害物質管理に関する全国モデル規則別表2へのクリソタイル・アスベストの包含は、1985年全国労働安全衛生委員会法(Cwlth)以外の何らかの法律または法律に基づいて策定された文書がそれを義務づけている場合を除いて、たんなる助言者としての勧告にすぎない。そういうものとして、クリソタイル・アスベストの使用を禁止するというNOHSCの勧告をいずれかの司法権に適用させることは、その司法権の権限に属するものである。

9. なお、使用禁止を支えるためには、アスベストおよびアスベスト関連製品の輸入禁止に関する、また、その一般および輸送用途への使用状況に関する調査が必要である。

● クリソタイル・アスベスト使用禁止の影響

10. NICNASの勧告を考慮してNOHSCは、オーストラリアにおけるクリソタイル・アスベストの段階的使用禁止の影響を評価した1)。アセスメントは以下のものからなっている。

・ 代替物の入手可能性およびその使用に伴う安全性能、クリソタイル・アスベストの使用継続に影響を及ぼすその他の要因に関する技術的アセスメント

・ 代替物(アスベスト代替物)の健康アセスメント

・ すべてのクリソタイル・アスベストの製造、輸入、加工、輸出および流通取引を考慮に入れた、クリソタイル・アスベストの段階的使用禁止の費用対効果に関する初期経済アセスメント

11. これらのアセスメントはこの協議用文書に添付されており、また、NOHSCのウエブサイトからダウンロードすることもできる。

● アセスメントの主な結論

12. 要約すれば、これらのアセスメントは、代替物の使用には、その安全性、性能、費用および曝露に係る費用など、多くの不確定要素が存在することを示している。

13. 代替物に固有の有害性(ハザード)についてわかっている限りでは、すべての側面において、クリソタイルはいかなる代替物よりもより有害である。

14. アスベスト製品とノン・アスベスト製品の性能比較に関しては、知られている情報はわずかである。しかし、入手可能な試験データは、交換用のノン・アスベスト摩擦材およびガスケット/シール材を製造することは技術的に可能であることが確認される。

(a) 新しい路面走行用車輌はすでにアスベストを使用しておらず、他の産業向けでは、ノン・アスベスト摩擦材が入手可能であり、また、広く使用されている。

(b) 複雑な高圧加工プラントを使用しているいくつかの大手企業は、すでにアスベストを使用しない政策に転換している。

15. 既存のプラントにおける安全上重要なガスケット/シール材の交換と、ノン・アスベスト摩擦材が不十分であるということが共通認識となっていることに関しては、いくらか考慮する必要がある。この認識は、品質の低いノン・アスベスト製品についての過去の経験および過去輸入されてきた低品質の交換用摩擦材の実例に基づいたものである。

16. ヨーロッパの経験は、品質の高いノン・アスベスト材料は与えられた時間内に開発可能であることを示している。目下のところオーストラリアには、交換用摩擦材の品質に関する有効な規則はないが、航空産業用の他の部門では存在している。

● 例 外

17. 欧州連合およびイギリスの計画では、特定の用途に必要な時間を認める、短期間の限られた範囲の除外措置を提案している。オーストラリアにおいても同様の例外が必要かもしれないが、段階的使用禁止期間が明らかに特別な例外措置の必要性を減少させている。検討すべき、段階的使用禁止期間を超える必要になるかもしれない分野には以下が含まれる。

(a) クリソタイル・アスベストを使用した安全上重要な部品を付けた航空機およびヘリコプター

(b) 交換用のノン・アスベスト摩擦材を製造することが経済的でないような中古の路面走行用車輌(使用期間が25年超)(イギリスはこのような車輌に対して長期間の除外措置をとっている)

● 段階的使用禁止の期間

18. オーストラリアの産業界はノン・アスベスト製品の開発・市場投入に転換してきたとはいえ、今なおアスベスト製品は広く使用されている。したがって、オーストラリアにおいては、以下のことを許すための段階的使用禁止が必要である。

(a) アスベスト部品の在庫の解消(run-down)
(b) 新製品の開発およびマーケティング
(c) 増大する需要に応ずるための現存のノン・アスベスト製品の拡大

19. さらに、段階的使用禁止は特別な例外措置の必要性を明らかに減少させる。

20. NOHSCは、2000年12月の職場関係大臣評議会の会合に、クリソタイルの段階的使用禁止期限を勧告した2)。NOHSCがこの勧告を行った後、ヴィクトリア州政府とヴィクトリア州内の製造業における主要なクリソタイルのユーザー、関係労働組合の間で、2003年12月31日までに同州におけるクリソタイルの使用を段階的に禁止するという合意に達した。段階的使用禁止期限に関するNOHSCの勧告を検討する中で、職場関係大臣評議会は、ヴィクトリア州における事態の進展に言及し、そのことを本協議用文書の中で考慮に入れるよう求めた。以来、多くの他の州政府がヴィクトリア州の段階的使用禁止期限への支持を表明している。

21. ヴィクトリア州の協定は輸入される原料クリソタイル・アスベストの最も大量な部分に関係するものではあるが、オーストラリア全体で同様の成果を達成するためにはさらなる取り組みが必要であろう。この文書に示したように、NOHSCの勧告は助言的なものにすぎない。この期限内にすべての原料アスベストおよびアスベスト関連製品の輸入禁止を確実にするためには、州および連邦規則が策定される必要がある。車輌の設計および交換に適用される規則も、必要に応じるように吟味し、改正されなければならない。それでもなお、いくらかの限定的例外措置についての問題は残るだろう。

● 意見を募集する特別な問題

21. 本提案のすべての側面についてのパブリック・コメントを募集するが、以下は、NOSHCが関係者からの特別なアドバイスを求めている分野である。

(a) 以下のことを考慮に入れた適切な段階的禁止の期限
(i) 2003年12月31日までに同州におけるクリソタイルの使用を段階的に禁止するという、ヴィクトリア州政府とヴィクトリア州内の製造業における主要なクリソタイルのユーザー、関係労働組合の合意
(ii) 一定の州政府が2003年12月31日という段階的使用禁止期限を支持する用意ができているということ
(b) 何らかの合意された期限内の段階的使用禁止という目的を達成するための自主的アプローチの能力
(c) クリソタイル・アスベストの輸入、供給および使用を段階的に禁止するための適切な一定の法令によるアプローチの開発および適用
(d) 何らかの合意された段階的禁止期限を超える必要のある例外(とりわけ、技術レポートが指摘する部門/用途―航空部門、中古車、その他の産業用途)およびその期間
(e) 個人輸入への適用が含まれる場合に、特定の例外に関する必要なマネジメント

● 経済的影響アセスメント

23. 提案する段階的禁止の初期経済的影響のアセスメントに関して、特別のコメントを募集する。とりわけ、NOSHCでは、以下の点についてのアドバイスおよび情報を求めている。

(a) 提案する段階的禁止が著しい影響を及ぼすかどうか
(b) 経済的影響に関する分析においてふれられていない影響があるかどうか

● 提案に関するコメント案内

24. オーストラリアにおけるクリソタイル・アスベスト使用禁止の提案に関して、関心のある方は2001年6月8日正午までに意見を表明していただきたい。

25. コメントは文書化されたものでなければならず、郵送またはEメール、FAXでNOHSCに送っていただきたい。

26. パブリック・コメントを準備するうえで、注意していただきたい点は以下のとおり。

(a) 受け取ったコメントの質が最終勧告の質に重要な役割を果たす。
(b) 専門的性格のコメントの場合には、データまたはデータの照会先のかたちのそれを支持する証拠を付けていただきたい。
(c) NOHSCの多様な関係者があなたのコメントにアクセスし、検討することを容易にするには、複数のコピーを提供していただくことが必要だろう。電子的手段によるのではない場合には、複製可能なよい質のものがありがたい。
(d) 期限に遅れたコメントはNOHSCで検討できないかもしれない。

27. NOHSCは、寄せられた意見を検討して、職場関係大臣協議会に対する最終勧告を準備する。NOHSCの方針にしたがって、意見提出者には、パブリック・コメントで寄せられた主要な問題点に対する意見およびNOHSCの検討結果をお届けする予定である。

1. これらのアセスメントは、パラグラフ20に示す事態の進展以前に、NOHSCによって準備・検討されたものであることに留意されたい。

2. NOHSCは当初、技術および経済アセスメント・レポートを考慮し、また、欧州連合のとったアプローチとも一致する、5年間という段階的禁止期限を提案した。イギリスは、1987年以来ノン・アスベスト代替製品の使用を要求する法令をもっていたことを反映して、より短い期限を定めている。

3. [以下参照]


意志表明

発がん物質クリソタイル・アスベストの段階的禁止に関連し、また、ヴィクトリア州における重要な進展を踏まえた全国労働安全衛生委員会の提案を熟考して、本同意書に署名した各州は、2003年12月31日という段階的禁止期限(本段階的禁止期限)を支持する用意ができている。

本段階的禁止期限は、ヴィクトリア州政府とBendix Mintex社およびその他関係者の間で到達したアスベスト製品の段階的禁止に関する合意の共同声明に盛り込まれたものであった。Bendix Mintex社は、オーストラリアにおける原料アスベストの全輸入および使用量の約95%に責任をもっている。

例外的な状況における限定的な除外措置の必要性、また、より早い段階的禁止期限が実行可能かどうかを決定することを含めて、上記の提案に伴う論点に関連して、すべての州の関係者と協議が行われることになるだろう。

以下の各州は、本意志表明に同意する。

ヴィクトリア、ニューサウスウェールズ、クイーンズランド、タスマニア、ウェスタンオーストラリア、 ノーザンテリトリー(北部準州)サウスオーストラリアおよびオーストラリア首都特別地域政府もまた、2003年という期限枠は支持することを表明している。

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リオ、そしてサンパウロ州もアスベスト禁止

Fernanda Giannasi, Brasil, 2001.5.10/17


私は喜んで、リオ・デ・ジャネイロ州議会(下院)が昨日(5月9日?)、アスベスト禁止法を通過させたことをお知らせする。UNCED(国連環境開発会議)/92の期間中に法案を提出した、この法律の起草者でPT[政党名]の環境運動家であるCarlos Minc議員はこの結果を歓迎している。

ブラジルでは、とどまることを知らぬドミノ効果によって、すでにサンパウロ州の8つの市および2つの州がアスベスト禁止を承認した。サンパウロ州議会(下院)は、遅くとも5月までに同様の法律を承認することを約束している。

世界における5本の指に入る主要アスベスト産出国のひとつであるわが国のアスベスト製造業者のロビイストたちからわれわれが受けている圧力と抵抗に対して、アスベスト禁止に向けた地球規模の取り組みからの支援も強化されている。

× × ×

昨夜(5月16日?)サンパウロ州下院は満場一致で、ヨーロッパの今なおアスベストを使用している諸国のデッドラインと同じ2005年1月1日までに、(ブラジルで最も工業化した豊かな州である)同州全体においてアスベストを禁止することを承認した。サンパウロ州内のいくつかの都市はすでに同様の決定を採用していた。

Valter Feldman議長の任期のもとで、PT[政党名]のRoberto Gouveiaによって提出されたこの法案は、同様の法案を提出していた他の議員も含めて94議員の反対なしで承認された。これは、アスベスト鉱山を擁するゴイアス州の極右政党や反動勢力から議員たちに強力な圧力が加えられていた中での、ブラジルにおけるアスベスト禁止運動の偉大な勝利である。

すでに同様の法案を承認しているリオ・デ・ジャネイロ州、マト・グロッソ・ド・スル州と合わせて、ブラジルにおけるアスベスト消費量の50%以上を使用している州で使用が中止されることになる。ドミノ効果はもはや避けようがなく、デッドライン以前にブラジル政府もこの「殺人粉じん」の使用を中止することを希望する。



インド: 労働衛生におけるヒロイズム

Barry Castleman


Dr. TK Joshiは、2月1-4日にニューデリーで開催されたインド労働衛生学会(IAOH)会議の最後まで、最も攻撃的なアスベスト企業のドクターたちを黙って脱会させるというアスベスト産業の最大級の圧力に負けなかった。Joshiは、IAOH会長として公式に示した「インドにおけるアスベスト禁止」という立場の「訂正文」を出すことを拒否した。IAOHに「アスベスト禁止に関するシンポジウム」というセッションを開催させないようにする命令を裁判所に求めるという、アスベスト・セメント産業の書面による脅迫は実現することはなかった。大部分が企業医である出席者たちは、Dr. Arthur Frankによるハザーズの評価と、労働衛生において何の信憑性も持たない(予防とアスベスト疾患に対する補償の両方の費用を避けるためのものである)とした私のインド・アスベスト産業界に対する非難を聞いた。

討論の中で、IAOHの次期会長は、紙巻きタバコの方が公衆衛生にはるかに多くの損害をもたらしているのに、なぜ私がタバコの仕事をしないのかと尋ねた。Aチームの何人かのドクターは、インドのアスベストは有害ではないと主張し、ある者は、アメリカはアスベストを禁止していないではないかと大声を上げた。アスベストは自然に生成するものであるから、神からの贈り物だと指摘する者もあった。アスベストのハザーズが認識される前には、アスベスト疾患を引き起こすかもしれない状況があったと言う者もいた。別のドクターは、インドでは1980年以前に断熱材や蒸気機関車にアスベストが使用されていたことを知らずに、それらの製品はインドでは使われたことがないと述べた。自分が関与しているアスベスト・セメント工場では管理された使用がなされていると言ったドクターもいる。Dr. Frankは、かりにそれが真実だったとしても、それらの製品の使用における管理された曝露には見込みがないと応答した。

インドでは建設労働者は電動鋸ではなく手動の鋸を使っているので、事実上吸入するような粉じんは発散しないと断言された。これに限らず事実関係の誤りがあまりにもはなはだしいため、戦略が早急に打ち立てられないと思いつくかぎりの嘘が出されるのではないかと心配された。その場にいた偏見をもたない人またはジャーナリストの心に少なくとも何がしかのことが届いたことを期待したい。Dr. Joshiはその間、彼が働く病院で最近目撃した、壊れたアスベスト・セメント屋根材のかけらで遊び、ぎざぎざした断面から繊維をちぎっていた子供たちの話をした。

すでに21か国、直近ではチリが、アスベストを禁止しているが、これはインドでは不適切だとして退けられた。インドは貧しい国で、より多くの住宅が求められているのであり、インドの労働者が職を失うようになることについて外国人がとやかく言う余地はないというのである。多くのドクターたちがこれらの発言に拍手喝采を送ったが、これまでにも何度このような古くさい産業界寄りの発言を世界各地で聞かされてきたことであることか。私は、アウシュヴィッツ強制収容所の労働者たちが石炭からゴムを生成するIGファルベンの工場建設作業で被った状況を、「この仕事がなかったとしても、彼らは死んでいた」と言って正当化するメンゲレ博士の図を思い浮かべたものである。他のいかなる国にも劣らず過酷なインドの労働市場の現実を軽視するつもりは毛頭ない。しかし、国の貧しさは、有害な企業犯罪の免罪符にはならないのである。

国立労働衛生研究所(NIOH)のDr. SK Daveは、NIOHが30年間に訪れたインドのアスベスト鉱山と工場における、ぞっとするほど首尾一貫した調査結果を報告した。彼のこの産業の代表―ほとんどの企業が肺活量計や大気汚染監視装置に通じていない―に対する印象は、当然のことながら感情的なものであった。彼は、インドにおけるこの産業の問題点については何時間もぶっ続けで話すことができるし、スライドを使って完全に示すことができると述べた。

ある産業医は、NIOHが石綿肺と診断した多くの事例は否定されるか結核を誤って診断ものだと主張して、NIOHの評価に異論を唱えた。彼は、補償事件における障害の評価の最終的な権限がNIOHにあるとした、アスベスト事件に関する1995年の最高裁の決定に明らかに腹を立てているようだった。残念なことに、これまでにNIOHに付託された事件はわずかしかないが、これは部分的には、最高裁がなされるべき整った医学的評価の費用の支払いを使用者に命じなかったこと、および政府関係機関がこのために利用できる基金を用意しなかったことによるものである。

ICI India Ltd.のDr. N Chakrabortiは、彼の会社では、アスベスト・セメント屋根材を含むアスベスト含有物除去のための特別の手順を整えており、また、工場および事務所の建設にあたってアスベスト含有材料は使わないという方針をもっていると述べた。

インドでは現在、年間20,000MT(トン)のトレモライト・アスベストを採掘しているが、鉱石を砕いて販売する小規模の企業で、母石から繊維を抽出するような粉砕作業は行っていない。これは粉末状で安価なものである。どうもこのユニークなアスベスト資源抽出物は、相対的にピュアなクリソタイル・アスベストと混合して、水道管を製造するのに使われ、それは少なくとも設置されて土に覆われるまでは持つらしい。IAOHのメンバーたちは、この産業部門の企業が一度も医師を雇ったことがないことを非難すべきであると勧告された。

インドは、ロシアもしくはカナダからクリソタイル・アスベストを輸入するために多額の使い、何年間にもわたって合計85,000MT(トン)以上を輸入している。この手はずは、アスベストのトン当たり輸入関税を引き下げるという贈り物をアスベスト製造業者に与えた元首相によって促進された。ベルギーに本拠を置くEtexの子会社であるEverest Eternit社は、歴史的なアスベスト依存から離脱しつつあり、3つの工場をPVAセメント製造設備に転換しつつあるが、この「近代化」はすでに1つの工場では完了している。Etexは、ブラジルにおけるフランスの多国籍企業Saint-Gobainのように、「ダブルスタンダード」について叩かれてきたのかもしれない(ベルギーは1998年にアスベストを禁止した)。この会社はまた、ポリビニル・アルコール繊維の輸入関税がアスベストのおよそ2倍であることから、インド政府が輸入関税のいくぶんかの平等化を認めるよう働きかけてもいる。ほとんど同時期に、その他のアスベスト代替品も商業的に入手可能になってきている。鉄鋼業のある会社の広報担当者はIAOHの会合で、彼の会社では、場合によってはこの問題で最高裁に法廷助言者としての意見提出をするために、アスベストの代替化に役立つ証拠を収集中であると述べた。

IAOH会議の最中に、Dr. Joshiは、保健大臣のオフィスからの呼び出しを受けた。彼は、この論争は専門家の集まりの中での科学的議論であって、政府が関与するようなことではないと答えた。会議の数週間前に、鉱山安全局の副局長は、政府は1985年と1995年に書かれたレポートで「管理使用」を容認していると言って、Dr. Joshiに、アスベスト禁止セッションの名称を変えるようしきりに促した。筆者は、なぜ彼は政府のレターヘッドがついた用箋を使ってこのような本質的に個人的見解を述べた手紙を書いたのだろうと尋ねられて、面食らってしまった。保健大臣は、インドにおける来るべきアスベスト禁止の必然性を受け入れて、政治的にスマートにことを運ぼうとしたのかもしれない。しかし、アスベスト産業は、彼が、Lok Nayak病院のDr. Joshiの労働・環境保健センターに対する政府の援助を削減することの方を望むだろう。

会議の終盤に向かい、Dr. Joshiは、組織としてのIAOHはアスベストが禁止されるべきだとは信じていないと言明した「訂正文」をマスコミに発表するよう求める20名以上のIAOHメンバーに取り囲まれた。Dr. Joshiは、IAOHがそのインド支部にあたるとも言われるであろう国際的団体である国際労働衛生学会(ICOH)は昨年8月にアスベストの全地球的禁止の要求を発表していると主張した。彼はまた、地震が襲ってきたときのアスベスト・セメント材の特別な危険性についても言及した。Joshiがその立場を変えることを拒絶し、誰か別のものが自身でこれに対処するよう促したとき、出席していたドクターたちで、プレスリリースを書きインタビューに応じようと進み出たものはいなかった。

インドのマスコミは、この問題を取り上げ、注意喚起を開始した。マスコミへの広報とインドにおけるアスベスト問題の情報の提供は、デリーに本拠を置くToxics Link―Madhumita Duttaによって行われた。アジア参加型調査研究協会(PRIA)および国際木産建設労働組合連盟(IFBWW)の地方組織もまた、IAOHの会議開催を支援し、インドにおけるアスベストへの関心を高めるのに協力した。問題をより明らかにするために、少なくともデリーにおいて中皮腫登録システムを確立することは可能だろう。

この厳しい試練を通じて、国際的支援のヴァーチャル・ネットワークは、Dr. Joshiが脅迫に屈せずに決心を維持し、また尊敬を失わないようにするという両面において彼を支え続けた。労働環境保健学会から促されて、アメリカ大使館は、インドではドクターたちが専門家の集まりで医学的問題を議論するのに自由な発言が許されているのか問い合わせていた。ブラジルのアスベスト被災者団体であるABREAは、インド首相に手紙を送った。さらに、オーストラリアや、ロンドンの国際アスベスト禁止書記局からも、吹き付けアスベストはインドでは使用されたことがないというインドの産業界の主張を論駁する共同文書などの支援が寄せられた。Dr. Joshiの不屈の原則的立場、そして最近まで一握りの企業医によって運営されてきたIAOHの魂を救う努力に対しては、継続的な支援と尊敬が必要であり、またそれに値するものである。

会議では、マレーシアのDr. Jayabalanから、彼の国は今年末までにアスベストを禁止するだろうと発表された。労働組合が一体となっており、マスコミが関心を寄せており、製造業者たちは代替物に転換しつつある。マレーシアによる禁止は、今後2-3年のうちに、日本やその他のアジア諸国において事態を同じ方向に加速させることになりそうである。

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シンガポール: 工場(アスベスト)規則違反で建設業者に罰金

Singapore Ministry of Manpower, Press Release, 2001.5.24


1. シンガポール人材開発省は、工場(アスベスト)規則の定める安全衛生基準に違反する建設業者が増加してきていることに関心をもっている。

2. 過去数か月の間に、5つの企業が、建築物の改修または解体中にアスベスト材料にかかわる作業に関して、人材開発省に届出をしなかったとして罰金を課せられた。他の4つの企業は、工場(アスベスト)規則の他の要求事項違反により罰金を課せられた。これらの企業のうちの3社に対しては、作業中止命令も出されている。

3. アスベスト規則のもとでは、アスベストにかかわる作業を行う建設業者または個人はいずれも、作業前に主任工場監督官に届出をしなければならない。これは、そのような作業を行う者の健康を守るために予防措置がとられることを、人材開発省の職員が保証できるようにするものである。建材にアスベストが入っているかどうか確信のない建設業者は、建材のサンプルを検査機関での分析にまわすことを要求されている。

4. 建築物へのアスベストの使用は1989年以降禁止されているとはいえ、シンガポールの多くの建築物には今なおアスベスト含有材がある。波形屋根板、仕切り壁、天井仕上げ板、パイプ断熱材といったかたちの建材である。適切な予防手段なしにこれらの建材を除去あるいは解体することは、アスベスト粉じんを発生させ、それは、大量に吸入すれば石綿肺、肺がんや中皮腫を引き起こすことがある。これらの疾病は潜行性で、発現するまでに何年もかかる。

5. したがって、建築物におけるアスベストを含有した構造の改修・解体中にアスベスト粉じんの発生を防止または最小化するための予防措置が必要なのである。予防手段には、アスベスト材料の湿潤化や破損を最小限に抑えた除去が含まれる。建設業者が工場(アスベスト)規則の規定する条項を遵守するのを援助するために、人材開発省では建築物におけるアスベスト材料の除去に関するガイドラインも発行している。

6. 人材開発省にアスベスト作業の届出を怠った、あるいは工場(アスベスト)規則の何らかの要求事項に違反した建設業者は、$2,000以上の罰金を課せられるか、度重なる違反の場合には裁判所に起訴される。

7. 人材開発省は、作業の届出、労働者防護措置をとるよう、建設業者を促しており、安全規則無視が発見された建設業者に対して、作業を中止させ、罰金を課すことを含めて、厳格な行動をとることを躊躇していない。
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ビル・メンテナンス作業用ガイドブックを発行
HSE Press Release, U.K., 2001.4.30


安全衛生庁(HSE)は、アスベストに焦点を当てた進行中のキャンペーンの一環として、関連する2つのガイドブックを発行した。このブックレットは、アスベスト含有物(ACMs)と関わるビル・メンテナンス作業を安全かつ法律を遵守して実行するために必要なツールを提供している。人々がアスベスト関連疾患で死亡するのを予防するHSEの総合戦略の重要な要素となるものであり、既存のアスベスト関連のガイダンスを補完するものでもある。

『アスベスト必携の紹介』は、ACMsに関わるメンテナンス作業の管理または実行に責任を有する者を対象にしたものである。ビル内におけるACMの一般的に想定される所在していそうなところを図表で示している。手順を明確にするためのフローチャートと、巻末には推薦図書目録もついている。

『アスベスト必携作業マニュアル』は、労働者を対象としており、作業の進行中にアスベストに接触しそうな者に対する明解かつ簡潔なアドバイスを提供している。これには、配管工、電気工、コンピュータ設置作業者、電機通信技士などが含まれる。アスベストがどのように体内に入り込み、影響を与えるか、どうすれば最も効果的に自らを守ることができるかを説明している。このブックレットは携行するようにデザインされ、8つの作業別シートと、別に8つの追加シートがついている。前半は、上述の職業に関連した共通の作業に要点をあて、後半では、作業別シートで指摘されている機器や手段について記述している。労働者がACMを確認し、ふとしたことからそれをかき乱すことがないようにどうしたらよいか知ることを助け、また、ビルの図表やフローチャートも掲載されている。

ブックレットの著者であるHSE技術部のDaimian Stearは次のように言っている。

「本日発行されたガイダンスは、アスベストを含有した物がかき乱されない限り、アスベスト繊維に曝露することはないということを明らかにしている。しかし、当該物質が穴を開けられ、切断され、または何らかのかたちでかき乱された場合には、繊維が大気中に飛散し、労働者はリスクにさらされる。このことから、いかに小さな作業であっても、メンテナンス作業に関係する者が真剣に取り上げなければならない問題である。」

● 背 景

アスベストは、20世紀後半における主要な職業病の原因である。イギリスでアスベスト関連疾患は年間3,000の死亡をもたらし、1968年からこれまでに中皮腫その他により50,000人が死亡していると推計されている。現在の死亡数の約4分の1が建設およびメンテナンスの―『アスベスト必携』が直接対象としている―職業で発生している。

発行されたガイダンスは、メンテナンス労働者のアスベスト曝露減少に重要な貢献をするものと期待しているが、安全衛生委員会では、建築物にアスベストがあるかどうかという情報が必ずしも入手できないことが労働者をリスクにさらしているということに関心をもっている。委員会はそれゆえ、職場のビルに責任をもつ者に対して、ビル内のアスベストの存在を確認し、当該物質によるリスクを評価・管理する新たな法的義務を提案しようと考えている。

昨年、委員会は新たな規則と実践コードについての広範囲にわたるパブリックコメント手続を行ったのではあるが、そこで重要な意見の数々が寄せられた結果として、当初の提案に対する多くの改善点に関して再度パブリックコメント手続きを行うという通常でない手続をとることになるだろう。その間に、HSEは今年夏、ビル内のアスベストによるリスクに注意を喚起する全国キャンペーンを展開する予定である。
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