2001.2.25 

安全センター情報


2000年1月号




アスベスト: カナダとWTO―シアトルでの報告


Barry Castleman, U.S.A., 1999.11.29 Seattle


これは、11月29日のシアトルの「環境と健康の日」のイベントの一部として行われた報告である。

われわれが直面している、WTO体制のなかでの最悪のやり方での「世界政府」の進路について、人々の関心と理解を高めようとする厳粛な努力の一環としてなされたものである。WTOにおいて各国政府から持ち出される問題のほとんどはビッグ・ビジネスの意向を代表したものであるなかで、アスベスト問題は例外である。ビッグ・ビジネスはほとんどアスベストの使用を見捨ててしまっており、WTOへの提訴は、世界のアスベストの指導的輸出国であるカナダによって提起された。Barry Castleman

WTOのアスベスト問題とその健康と貿易に対する影響

アスベスト問題は、実際にはどういうことなのか?
この問題は、フランスによるすべての種類のアスベストの全面禁止に対する、カナダの挑戦である。カナダは、アスベストの規制(すなわち「管理使用」)によって、労働者、住民に対する残された危険は検知されない状態にすることが可能であり、したがって容認できるものであるのだから、アスベスト禁止は不相応かつ不必要に極端な手段であると主張している。これは、少なくとも2つの重要な結果をもたらすと考えられている。ひとつは、WTOの法的システム、および、それがどれくらい人類の健康を犠牲にしてまで貿易の利益を促進しようとするかというキャパシティに関して。もうひとつは、自国における有害な労働条件と環境におけるヘルス・ハザーズを管理するために、開発途上諸国がどれくらい効果的に干渉する力を持つかということに関して、である。
意義深いことには、アメリカ合衆国は、欧州連合の側に立ち、自国内において容認できるリスクの程度を決定し、自国民を防護する適切なレベルを決定することは各国の権利であるとして、WTOにこのカナダの申立てを退けるように要求した。このポジションは、合衆国においては、責任と規制によってアスベストの使用をやめてしまったために、おそらく21世紀のアスベスト産業に何が起こるかについて関心を持つような巨大企業が残っていないという事実によって説明される。

われわれがここで取り上げているのは、世界中で最もよく知られた人間の職業がんの原因物質であり、かつて人類が吸入した有毒粉じんのなかで最も徹底的に研究されているもののひとつである。もしWTOの紛争解決パネル(小委員会)が、アスベストの使用(建築物のパネルやパイプ、車両のブレーキ、より安全な代替物質がすでに利用可能な危険な用途に主に使用されている)を禁止する十分な証拠が存在しないとしたとしたら、何を禁止することができるだろうか? したがって、これは、アスベストを禁止するということだけの問題ではない。たとえ、厳格に「管理使用」を適用することによって、輸出諸国(すなわちカナダ)が受容できる(自国においてでなければ、採掘したアスベストの97%を輸出している相手国にとって)と考えるレベルにまで、労働者、住民に対するリスクを減少させることができるとしても、これは、各国が有害な製品の使用を禁止する主権を有するのかどうかという問題なのである。簡単に言えば、このケースは、かりに管理使用が厳格に適用されて労働者のリスクを十分に減少させることができたとしても、リスクを根絶するわけではないという状況のもとで、各国が、有害だとわかっている製品を自国内から締め出すことについて、WTO協定がどこまで制限を課すことができるかという問題なのである。

アスベストの管理使用について語られていることを、誰が信用しているだろうか? ヨーロッパ中の政府がすでに、建築物の建設、修理、解体作業におけるアスベスト・セメント製品の「管理使用」が実際本当に満足のいくように機能するという議論を、拒絶しているのである。また、何万ものブレーキを取り付けた機械のブレーキを修理する際に、ブレーキを研いだり、圧縮空気を使うことを完全にやめさせることができると保証できる政府があるだろうか? WTOにおける自由貿易至上主義者たちは、どんなにすばらしい内容の法規であっても、アスベストのような広くいきわたった、致死的で、静かなヘルス・ハザーズから労働者や一般住民を防護するのには限界があるのだということを考慮する分別を持っているのだろうか?

このケースは、法律的に厳密に言えば、フランスが適用した禁止にのみ関係したものであるにもかかわらず、世界貿易機関(WTO)のパネルの決定は疑いなく、自国においてアスベストを禁止しようとするすべての諸国に関係してくる。カナダを支持する決定であれば、ヨーロッパ中およびその他の諸国の国内における禁止措置を脅かすことになるだろう。

このケースの真のターゲットは、今日カナダのアスベストの主要な輸入先となっている〈日本と〉第3世界諸国、とりわけアジア諸国なのである。カナダは実際のところ、このケースで勝利したとしても、フランスや他のほとんどの産業化諸国に対して、大きなアスベスト輸出が再び開始できるとは期待していない。したがって、このケースは、開発途上諸国とそれら諸国において影響を受ける労働者にとって、最も重要な問題なのである。第3世界諸国から、EU諸国においては2005年までに禁止されることが決まっているような致死的な製品を、なぜ使用しなければならないのかと聞かれることをカナダが望んでいないことも、また明らかである。しかし、WTOパネルが、管理されない使用が一般的であるアジア、アフリカ、ラテン・アメリカにおいて「管理使用」を適用させる技術的可能性に関する証言を集めようとしていないことに、注意しておく必要がある。であるから、このケースの形式的な内容と真実の内容との間には、このようにその関連と帰結が遠くまで及ぶような決定をする上でのWTOの役割と処理原則やカナダ政府の名誉に疑問を抱かせるような危険な相違が存在しているのである。 このケースに関する決定は、2000年3月になると予測されている。

透明性

このアスベストのケースは、これまでにジュネーブのWTOパネルによって決定がなされた他のすべてのケースと同様に、透明性に関する根本的な問題を浮き彫りにさせている。実際、ジュネーブのWTOにおける紛争解決システム全体が、全く秘密裏に行われている。これは、われわれが知っているいかなる民主的な法律概念やシステムとも全く正反対のものである。いかなる一国内のあるいは国際的な紛争解決システムにおいても、裁判官による当該事案に関する聴取は完全に公開されている。しかし、WTOにおいてはそうなっておらず、パネルおよび上訴機関による聴取は完全に扉の向こう側で隠れて行われているのである。

一般に、パネルおよび上訴機関に対する関係者の陳述は、その関係者自身が一般に公開しない限り、機密扱いとされている。アスベストのケースのように、ジュネーブで何が行われているのかについてわずかな手がかりも知らされない。何百万人もの人々に大きな影響を与える可能性がある問題であってもである。

NGOがその手続に参加し、その見解を示す権利は認められていない。彼らが法定助言者としての提案を提出したとしても、紛争参加国がパネルに対してそうすると明示して要求しない限りは、その提案が考慮される法的保障は全くない。これは全く容認しがたく、不適切である。WTO協定の広さと影響は巨大なものであり、当然のことながらNGOは、各国政府が手続のなかで、人権、労働者保護、消費者保護や環境保護に関して、彼らの立場やその国民の立場をを正しく代表するものと当てにすることはできない。このような状態は直ちに改善されなければならない。

科学的証拠と専門家の意見

そのケースが科学的な問題にかかわる場合には、WTOパネルは、科学専門家のアドバイスを求める権利を与えられる。しかし、パネルに助言するために選ばれた科学者の氏名、科学者たちの利害の衝突の可能性についてのディスクロージャー、科学者たちに対する質問内容、科学者たちが与えた回答内容、回答の質とバイアス、専門性に関する関係者によるコメント、および、科学的問題に関してパネルのヒアリングで交わされた内容については、すべて完全に機密とされる。 パネルがこの「専門家」の意見を広範囲にわたって利用したケースが、これまでに5件ある。しかし、われわれは、専門的アドバイスというものが、選ばれた科学者たちの知識、経験、プロフェッショナル・スタンダードや倫理的関心に左右される主観的なものであることを知っている。さらに、公正かつ、すべての利害の衝突を解消させることはできなくとも明らかにさせるような、科学者の選考を成し遂げるには大きな困難が伴う。これらのきわどい問題のすべてが、パネルのメンバーによって、実際には、表には出ないWTOのスタッフ(事務局)がパネルを手助けして、すでに述べたように全く不透明な状況で行われているのである。われわれはまた、自国の法律システムを通じて、よく訓練され、経験を積んだプロの裁判官たちが、複雑な科学的問題をかかえた事件について決定を下すのに、大きな困難に直面していることを知っている。訓練も受けておらず、経験もない貿易外交官たちが、アスベストや遺伝子組み替え生物のような複雑なケースを、6か月という時間のなかで、どのように判定しようというのだろうか? 完全にブレーク・ダウンしてしまったり、科学的に不備で社会的に災厄となる結果を生み続けるという事態になる前に、WTOの紛争解決システムは迅速に修正される必要がある。

WTOの手続の弱点

各国の法律システムのなかでは通常4〜7年かけて決定を下すような複雑な科学的問題が、ジュネーブのWTOにおいてはわずか数か月のうちに決定されている。WTOの手続では、ほとんどの処理しにくい問題を1年以内に解決することを強いられ、上訴についてはそれから6か月以内に決定されることになっている。 パネルのメンバーは、WTO加盟諸国があらかじめ推薦した氏名のリストから選ばれる。それは、元貿易行政官や現に多忙な貿易外交官、弁護士、経済学者、等からなっている。パネルのメンバーになるなどということはおそらく生涯に一度きりの仕事であろうし、多大な労力を費やすわけではない。これらの人々のほとんどは、法的な予備知識を持っておらず、これらのケースについて提出される何十万頁にもなる科学的文書をすべて読みこなすには多忙すぎる者もいるだろう。にもかかわらず、事件判定するために選ばれたパネルのメンバーは裁判官であるが、実際は、彼らのうちの誰も実際には裁判官ではなく、複雑な科学的事件はもちろんのこと、事件の判定のために何をすればよいかという特別の訓練も受けていない、ということは明らかである。(アスベスト・ケースの)パネルの3人のメンバーは、典型的なことに、2名の多忙な貿易外交官と1名の弁護士である。

必然的に、実際の仕事は事実上、WTO事務局のなかの表に出ない官僚が行っている。WTOの職員の多くは、政治学者、経済学者や弁護士である。WTOに雇われている実際の科学者はいない。そのほとんどが各国政府から派遣された、永久的な地位を持たないWTOの職員は、議論されている技術分野における専門性を欠いているだけでなく、自国政府と産業界の利益の影響を受けやすい。国家の貿易の利益、産業界のロビイスト、コンサルタントやWTOのスタッフと結びついた科学的協力者たちの影響を排除するルールはないのだろうか? 厳密に言えば、政府によって提訴される個々の企業はこれらには含まれない。

結 論

ようするに、WTOの紛争解決手続は、一般の人々の生活のすべての面に実際的に影響を与える権力を持ちすぎるようになってしまっている。最も重要なことは、WTOの決定が、人類と生物の健康および環境に直接的な影響を及ぼすということである。その運営全体が全く秘密裏に行われ、民主的なコントロールを完全に欠いている。このシステムは実際にはそうはいかない。その賭金は人類の健康と環境に関心を持つわれわれ全員にとって高すぎ、そのまずさと締め出していることがコントロールなしに物事が進められるのを許しているのである。

* このケースでは、1998年10月4日にカナダがWTOに紛争解決のためのパネルの設置を要求し、11月25日にパネルが設置されている。
*****


白アスベストの禁止は国民の健康を守る


U.K.-DETR Press Release, 1999.11.24


本日(11月24日)以降、イギリスにおけるすべての種類のアスベストの使用は違法であると、白アスベストの禁止が施行されたことを受けて、環境大臣 Michael Meacher は発表した。

新しい規則によって、
― イギリスにおける白アスベストの輸入、流通および使用は禁止される。
― 白アスベストよりも安全な代替品を使用することが必要となる。
― 近年、毎年3,000名以上の人々に死をもたらしているアスベスト関連疾患から、将来の世代を防護することになる。
― 新しい規則に違反したものは、厳しいペナルティーを受けることになるだろう。 今回の動きは、この夏の、欧州連合における新たな白アスベストの禁止に関するヨーロッパ法令を受けたものである。

この禁止措置を歓迎して、環境大臣 Michael Meacher は次のように語った。
「本日は、アスベスト関連疾患による人類の苦難を終わらせるための、われわれの取り組みにとって画期的な日である。現在の政府が就任してから、健康と安全のための最初の優先事項は、可能な限り速やかに白アスベストの禁止を導入する意向を知らしめることであった。安全衛生委員会(HSC)とのパートナーシップによってわれわれは、すべてのEU加盟諸国のために、ヨーロッパ・レベルでの解決に向けて努力してきた。われわれは、禁止の裏づけとなる科学的証拠を確立する先頭に立ち、それを現実のものにする指令を獲得した。」

「本日の規則は、EU指令が設定した最終期限よりも5年早く、わが国において新たな禁止措置を実施するものである。青および茶アスベストはすでに禁止済みである。安全衛生委員会の援助を受けた政府のこの行動は、わが国が、すべての種類のアスベストを禁止した状態で新世紀を迎えるということを意味している。」 「われわれは、ずっとこの禁止の断固とした擁護者であったし、ヨーロッパにおいても強力に推進してきた。これは、わが政府が働くものの健康と安全に真剣な態度でのぞんでいるということを示している。」

編注

1. 1999年アスベスト(禁止)(修正)規則は、1999年8月24日に、副首相 John Prescott によって署名され、議会の承認を受けた。
2. 本規則は、安全衛生委員会の助言を受けて作成され、一定の危険な物質および製品の流通および使用に関する理事会指令76/769/EECの1999年7月26日の第6次技術進歩への適合である委員会指令1999/77/ECを実行するものである。
3. すべてのEU加盟諸国は、2005年までに新指令を実行しなければならない。本指令は、各国がこの期限以前に実行することを認めている。
4. 3種類(青、茶、白)のアスベストのいずれへの曝露も、致死的な肺疾患である石綿肺、肺がんおよび中皮腫を引き起こす。安全衛生委員会では、現在のアスベスト関連疾患による年間死亡数は約3,000と推計し、管理が不十分であったずっと以前の曝露のためにこれはさらに増加するものと予測している。

5. 禁止の除外措置
・ 飽和
・過熱蒸気用および一定の可燃性、中毒性、腐食性化学物質用ガスケットに用いられる圧搾アスベスト繊維(CAF)の使用については、2001年1月1日まで
・ 塩素用ガスケットに用いられるCAFの使用については、2003年1月1日まで
・ 乾燥した状態で1,900kg/m3超の比重をもち、摂氏500度超の温度のもとで使用されるシート材の使用については、2003年1月1日まで
・ 飛行機、ヘリコプターに用いられるアスベスト含有部品の使用については、2004年1月1日まで
・ ロータリー・バキューム・ポンプ、ロータリー・コンプレッサーの羽根、水力発電タービンまたは発電所の冷却水ポンプの水漏れ防止用ベアリングまたはそのsplit-faceシール収納容器に用いられる、アスベストとフェノル・ホルムアルデヒドまたはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂の混合物から成る製品の使用については、2004年1月1日まで
・ ドア、スチーム・ボイラー密封用のプルーフ・アスベスト布で作られた形成済みジョイントのアスベストの使用については、2004年1月1日まで
・ 超高温(摂氏500度以上)下で使用される個人防護衣のアスベストの使用については、2005年1月1日まで
(注: EUの新指令で2008年1月1日まで除外が認められる、電解装置用ダイヤフラム(隔膜)用についても禁止されることになるようである。)
*****


アスベスト禁止規則が施行


U.K.-HSE Press Release, 1999.11.24


イギリスにおけるクリソタイル(白アスベスト)の輸入、供給および使用が違法とする、1999年アスベスト(禁止)(修正)規則が、本日(11月24日水曜日)施行される。

本規則は、最終期限よりも5年早く、ヨーロッパ指令に応じた国内的な禁止措置を実行するものである。欧州委員会の流通・使用指令の技術的修正は、すべての加盟諸国に、2005年1月1日までにクリソタイルの流通および使用を禁止することを求めているが、各国がそれ以前に禁止措置を実行することも許している。

安全衛生委員会(HSC)議長の Bill Callaghan は次のように語った。
「HSCは昨年、広範な公開協議(日本のパブリック・コメント手続に該当)を行ったが、圧倒的に禁止を支持するものであった。イギリスにおいて、毎年約3,000名の人々がアスベスト関連疾患によって死亡し、過去の曝露の結果、短期間のうちにこの数字は増大すると予測されている。本規則が最終期限よりもかなり前に実行されるという事実は、アスベストの恐るべき遺産から労働者を防護するためにわれわれが献身していることを示している。」

本規則は、アスベストの新たな使用を中止することを目的としており、また、アスベスト・セメント製品の中古品の供給および使用をも違法とするものである。本規則はまた、塗料、アスベスト含有プラスター生地で塗装または被覆されたボード、タイル、パネルの供給および使用も禁止する。

この禁止措置は、すでに使用されてしまっている製品を除いて、アスベスト部品を含む製品にも適用される。車両や産業プラントの部品のような、現在すでに使用されているアスベスト部品を含む製品は、使用し続けることができ、中古品として他者に供給することも可能である。しかしながら、現在倉庫に貯蔵されて装備または設置されるのを待っているスペアの部品(例えば、新品のシール材やガスケット)は、使用することはできない。これらの製品は、有害廃棄物として廃棄されなければならない。

他にも若干の、適切な代替品が開発されるまでの一定の期間、アスベストの使用の継続が許される安全上の問題がある分野がある。これらのわずかな分野においては、アスベストの使用を中止し、他の物質を含む製品に移行することががいまだ可能になっていない。
法律は、そのままにしておくことよりも健康に対するリスクを増大させる可能性があることから、既存の建築物のアスベストを除去することを要求していない。しかしながら、HSCでは、来年、職場の建築物のアスベストの効果的な管理に関する、追加提案について協議を実施する予定である。

編注

1. 省略(環境庁(DETR)プレスリリースの編注1と同じ)
2. アスベスト作業管理規則8(1A)条は、適切なアスベストの代替品が存在する場合には、アスベストに代えてそれを使用しなければならないと述べている。結果的に、わが国で使用されるアスベストの総量は減少してきた。1964年には、クロシドライト(青アスベスト)、アモサイト(茶アスベスト)を含め186,946トンの原料アスベストがイギリスに輸入された。1998年には、わずか1,840トンの原料アスベストがイギリスに輸入されただけである。
3. 3種類(青、茶、白)のアスベストのいずれへの曝露も、石綿肺、肺がんおよび中皮腫のような潜在的に致死的な肺疾患を引き起こす。1985年アスベスト(禁止)規則は、青および茶アスベストの輸入、供給および使用を禁止した。
4. アスベストの使用の継続が認められる分野

(省略(前頁プレスリリースの編注5と同じ))
*****

アスベスト禁止に関するブレーキングなニュースU.K.-DETR Press Release, 1999.11.24 自動車産業は今日(11月24日)、イギリスで白アスベストの供給、製造、輸入の禁止が施行されたのを受けて、アスベストの使用から決別することを宣言した。
すべての国内製品に対して拡張されたこの禁止は、1973年1月1日以降に登録された車両に、アスベストを含有したブレーキ・ライニングを供給、装備することは違法になることを意味している。それはまた、車両の年数にかかわらず、アスベストを含有したクラッチおよびガスケットにも適用される。
しかし、圧搾アスベスト繊維(CAF)を含有したガスケットは、有毒または可燃性物質用については、2001年1月1日まで使用することが可能で、それ以降は代替品を使用しなければならない。
白アスベストへの曝露は、肺がん、石綿肺、中皮腫のような致死的な疾患の潜在的なリスクの増大をもたらす。1992年以来、自動車産業では、代替品を使用することにより、アスベスト製品を徐々に廃止してきた。

編注

1999年アスベスト(禁止)(修正)規則(S.I.1999 No.2373)は、1999年8月24日に、議会の承認を受け、1999年11月24日に施行される。これは、利用できる適切な代替品が存在しない特別の用途向けに、一定の期間を限定した除外という例外措置付きで、白アスベストの輸入、供給および使用を禁止している。この規則は、四輪車両に用いられる車両用ブレーキ・ライニングを、その適用対象から外している。

1999年道路車両(ブレーキ・ライニング安全)規則(S.I.1999 No.2978)もまた、1999年11月24日に施行される。これは、すべての二輪、三輪、四輪車両を包括した車両の定義をもって、アスベストを含有したブレーキ・ライニングの車両向け供給および装備を禁止している。

政府は、2つの規則の定義の食い違いを解決し、合法的なまま残ってしまうブレーキ・ライニング製造業者向けの白アスベストの輸入を禁止するために、アスベスト禁止規則を改正することを決定した。1999年アスベスト(禁止)(修正)(No.2)規則もまた、アスベストを含有したブレーキ・ライニングの製造を禁止する。この規則もまた、11月の他の2つの規則と同じ日に施行されることになる。

1999年アスベスト(禁止)(修正)(No.2)規則は、当分の間、1973年以前に登録されたオートバイを含む車両向けのアスベスト含有ブレーキ・ライニングの装備を許している。そうした古い車両はノン・アスベストのブレーキ・ライニングを装備して走行する必要があるという安全上の関心はある。にもかかわらず、アスベストの流通および使用に関するEUの禁止措置を実行することは、この例外措置を2005年までにはなくさなければならない。

1987年アスベスト作業管理規則(1992年修正)の8(1A)条は、「製造工程または製品の設置作業中に、労働者がアスベストに曝露するおそれのある場合には、実行可能な場合には、それを使用した状態のもとで労働者に健康リスクを生じさせないまたはアスベストによるリスクよりも少ないリスクの代替品によってアスベストを代替することによって、アスベスト曝露防止措置がなされなければならない」と要求している。
× × ×

イギリスの労働組合、市民団体からは、禁止導入を歓迎するとともに、取り組みを次のステップに進めるというコメントが寄せられている。「イギリス中の建築物のなかに600万トンのアスベストが存在する。これには、あとで防音のために設置されたアスベストは含まれていない。」
*****


法廷でできないことを議会で獲得する企み


U.S.A.-NYCOSH Update, 1999.10-11


労働者の健康と福祉に対する新たな脅威が、アメリカ合衆国議会のなかで不気味に迫りつつある。今回の犯罪者は、アスベスト製造業者たちであり、彼らの過失によって害を受けあるいは殺された労働者や消費者に損害賠償を支払うことから、事実上免れることができる法律が議会を通過することを望んでいる。

紛らわしくも「公正アスベスト補償法」と名付けられた法案には、下院と上院の双方に強力なスポンサーがついており、労働組合、活動家その他が緊急に大きな反撃を開始しなければ、議会を通過しそうな勢いである。

この法案の支持者のほとんどは共和党員であるが、ニューヨーク―ニュージャージー―コネチカット選出の有力な民主党員の小さなグループも影からこれに支持を投げかけており、反対派を結集するのを困難にさせている。 この法案は、下院の司法委員会において10月19日に最終的な検討が予定されているため、活動家は緊急に行動を起こす必要がある。下院版の法案はH.R.1283であり、上院版はS,758である。 もし、「公正」法案が立法化されたならば、アスベストに曝露したことのある何十万もの労働者、消費者は、責任を有する企業から損害の賠償を得ようとした場合に、ほとんど乗り越えることのできない障害物に直面することになる。

アスベスト製造業者たちは、議員たちに気前のよい寄付を振りまきながら、大いに奔走して法案に対する支持を得ようとしている。この立法から最も恩恵を受ける者のひとりは、アスベスト被害者からの何百万ドル相当の請求に直面している GAF Corporation であろう。GAFの会長で最高執行役員の Samuel J. Hayman とそのファミリーは、少なくとも47,000ドルを、上院におけるこの法案の民主党側の支持者である、Charles Schumer(20,000ドル)、Robert Torricelli(16,000ドル)、Christopher Dodd(11,000ドル)の3人の民主党員に寄付した。直接的な寄付に加えて、Heyman ファミリーは、Schumer のキャンペーンを支援しているニューヨーク勝利キャンペーン委員会に62,000ドルを寄付した。

なぜアスベスト製造業者がこの法案を支援するのか考えることはたやすい。それは、罹患した労働者に、新たに設置される準政府機関によって統括される強制的な調停に従うことを強いることになるだろう。もし、調停の後に、労働者が請求を裁判所に持ち込んだとしても、この法案は、集団訴訟や被害者のグループが集団で訴訟を提起することを可能にする他の手段を禁じるだろう。懲罰的損害や精神的苦痛に対する損害の賠償も不可能にするだろう。わずかな弁護士しか引き受けることができないような限定的な裁判所選任弁護士制度によって、労働者が弁護士の援助を獲得することを困難にするだろう。裁判所選任弁護士の報酬は明らかに制限されているのに、製造業者は高額の報酬を支払う弁護士が代理人となって、代理人をつけられない労働者に対して、高度に技術的かつ律法的な手続を申し立ててくるだろう。

この法案の支持者たちはどうも、この法律によって損害を受けるのは法廷弁護士だけであると、多くの国会議員たちに思い込ませているようである。連邦議会の何人かの議員たちは、労働組合や労働者が接触して、この法案が通過した場合の最大の損害を受ける者は、すでに損害を受けていて、製造業者にその過失の責任を支払わせるためだけに法律システムを使おうと努力している人々であると説明したときに、驚きを表明した。NYCOSH(ニューヨーク労働安全衛生委員会)がある国会議員と接触したとき、彼は、われわれからの電話がこの法案に反対する最初の要請だったと語った。連邦議会の議員たちが、この立法の真の被害者が誰になるのかを学ぶことが、緊急の課題である。

続報: アスベスト製造業者が財政援助した法案は活動家の憤激によって失速した

労働者、消費者、環境、医療グループからの反対の噴出は、アスベストによって損害を受けあるいは殺された労働者に損害賠償を支払うことから事実上免れることができるようにする、Ashcroft-Hyde 法案に関する連邦議会の行動を延期させることに成功した。

11月2日、下院の司法委員会委員長 Henry Hyde(R-Ill.)は、この法案の議事日程は来年はじめまで中止されると発表した。しかしながら、Hydeは、二党間のサポートを受けて数か月のうちに作成されることを期待する、法案の新しいバージョンには高い優先順位が与えられるだろうと述べた。司法委員会メンバーの Anthony Weiner(D-N.Y.)はNYCOSHに対して、この法案には、アスベスト責任事件を解決するための「真に自発的」な代替システムを提供するものとして広い支持があるかもしれないと言って、来年新しい法案が取り上げられると思うと語った。
*****


石綿対策全国連絡会議
〒136-0071 東京都江東区7-10-1 Zビル5階
TEL(03)3636-3882/FAX(03)3636-3881
銀行預金口座 東京労働金庫田町支店(普)9207561 石綿対策全国連絡会議
郵便振替口座 00110-2-48167 石綿対策全国連絡会議




このホームページの著作権は石綿対策全国連絡会に帰属しています。
許可なく転載、複写、販売等を行うことを禁じます。