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2005.9.16 

アスベスト新法に対する緊急の意見表明


2005年9月15日

 石綿対策全国連絡会議
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Email: banjan@au.wakwak.com
URL: http://park3.wakwak.com/~banjan/
(連絡担当: 事務局長 古谷杉郎)

  1987年の設立以来、アスベストの早期全面禁止と総合的対策の確立を訴え続け、被災者とその家族、労働者、市民の取り組みを支援してきた石綿対策全国連絡会議は、この2か月余のアスベストに対する社会的関心の高まりのなかで、すでに7月26日に「アスベスト問題に係る総合的対策に関する提言」(http://park3.wakwak.com/~banjan/050726teigen.html)として、取り組まれなければならない諸課題を提起しています。
 また、8月3日の参議院厚生労働委員会におけるアスベスト問題集中審議に、事務局長の参考人としての出席に応じ、とりわけ緊急に政治的決断が必要と思われる課題を提起し(http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/で検索可能)、今般の衆議院選挙にあたっても同様の趣旨から、8月24日に「アスベスト対策に関する公開質問状」を各政党に送り、9月1日には各党から寄せられた回答も公表しています(http://park3.wakwak.com/~banjan/situmonjyo.html)。
 さらに昨日(9月14日)、7月6日に送付した「要望書」(http://park3.wakwak.com/~banjan/youseisyo.html)に基づいて(社)日本石綿協会との話し合いの場ももったところです。マスコミ関係の皆様方には同日午後に行った結果報告の記者会見で報告させていただいたところですが、同協会は私たちの要請を受け入れて、少なくとも今年5月に発行した『既存建築物における石綿使用の事前診断監理指針』(定価2千円で販売中―http://www.jaasc.or.jp/new/pdf/sisinpr0505-1.pdf。一部は前日に「石綿含有建築材料の商品名と製造時期」(http://www.jaasc.or.jp/other/ganyu_05.pdf)として公表済み)、及び、1983年以降の協会加盟各社事業場の作業環境測定結果、1989年以降の工場敷地協会における大気中石綿濃度測定結果、2001年以降のPRTR(環境汚染物質排出・移動登録)排出推計量、の各データについてはできるだけ早く同協会のホームページ上で公開すると回答しました。
 私たちからは、さらに一層の内容のある情報開示に努めること、被害者に対する補償責任の履行を真摯に果たすことなどをあらためて要請しました。被害者救済のための新たな立法的措置が取りざたされるなかで、労災保険が法律による最低限の補償でしかないことなどから各企業が独自に定めている「上積み補償制度」の内容を公表することが、とりわけ重要であると指摘したところです。
 問題のひとつは、アスベストの輸入・製造・使用等に携わってきた企業で、同協会に加盟していなかったり、アスベストの取り扱いを中止したとたんに同協会を脱会する企業も少なくなく(現在の同協会の会員は29社・2団体にすぎません)、それら企業が私たちの要請にどう応えるかを含めて、どのように社会的責任を果たしていくのかということです。自社には要請がなかったから知らない、ではすまされない問題であると考えています。
 さらに問題なのは国の対応です。率直に言って、この2か月間、不十分な法制度を改革するという点においては、国は何も実行していないと言わざるを得ない現状だと考えます。しかも最近、「労災補償を受けずに死亡した労働者、家族及び周辺住民への対応については、救済のための新たな立法措置を講ずることとし、次期通常国会への法案の提出」をめざし、「9月末までに具体的な結論を得る」とされた(8月26日改訂、アスベスト問題に関する関係閣僚による会合「アスベスト問題への当面の対応」)、新法の内容について、いくつかの報道がなされているところです。
 私たちは、伝えられるような内容の被害者救済のための新法のみで、不十分な法制度の改革の幕引きがなされるような事態を看過するわけにはいきません。昨日、記者会見後に開催した運営委員会において、このような状況を踏まえて緊急に以下の見解を表明することを決定いたしました。

1. 労災補償の対象でない周辺住民や労働者の家族、一人親方や個人事業主などのアスベスト被害者およびその家族に対する補償を―すでにクボタ、関西スレート、ニチアスが住民被害者に対して支払ったような見舞金を新法で肩代わりするかのような―一時金で済ますのでは、到底「補償」制度とも呼べず、断固反対します。それらのアスベスト被害者に対して、治療費はもとより労災補償に準じた所得・遺族補償等がなされるべきです。

2. 「時効」のために労災補償が受けられなかったアスベスト被害者に係る補償を、労災が適用された際の遺族年金と同程度の給付額に限定することに、断固反対します。本来受けられた労災補償を受けられるよう、時効を適用しないようにする法的措置がとられるべきです。

3. 中皮腫の事例については、労災補償または新法による補償制度いずれかの対象とされるべきです(アスベスト曝露によるものでない事例を除くことはありえますが、そのことを科学的に立証することはほとんど不可能であろうと考えられます)。

4. すでに死亡してしまっている中皮腫患者の事例等について、実施不可能な追加検査等、理不尽な負担を遺族等に負わせて、補償を遅らせたり、補償を受けられなくなるようなことがないよう、そのような場合には、死亡診断書記載の主治医の診断名を尊重するなどの原則を明確にすべきです。

5. アスベスト関連肺がん、その他のアスベスト関連疾患についても、労災補償の取り扱いに準じて、新法による補償制度の対象とされるべきです。

6. 青石綿(クロシドライト)が使用されていた時期にアスベストに曝露したと推定される者に限るなどの時期指定や、特定のアスベスト関連工場周辺住民に限る等の地域指定など、補償にあたって限定条件をつけるべきではありません。

7. 新規立法による対応が必要な課題は、上述のような被害者の補償の問題に限るものではありません。とりわけ、私たちの身のまわりに残されている既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄等を通じた首尾一貫した対策の確立は、現行の複数の法律が関係しながら整合性を欠く面も少なくなく、また、いずれにもカバーされない(縦割り行政の隙間に埋もれる)課題も多いため、新規立法による対応が不可欠であると考えています。そのような内容を含めた、アスベスト対策基本法を制定すべきです。

以上



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